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 カテゴリ「エッセイ」のまとめページです。このブログで紹介しているエッセイの本を一覧で掲載しています。リンクからそれぞれの本の書評をご覧になることができます。蔵書は少ないですが、一冊一冊、心を込めて紹介するようにしています。ぜひご覧ください。なお、掲載順は作者名のあいうえお順です。

 この図書館では、とくに優れていると感じた本について、「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」の3段階で「殿堂入り」としています。殿堂入りとした本には、作品名と作者名のあとにランクを記しています。ぜひ、本選びの参考にしてみてください。

 あなたの、あなただけの一冊が見つかりますように。



エッセイ




『学生時代にやらなくてもいい20のこと』 朝井リョウ


『働く男』 星野源


『人生って?』 よしもとばなな



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  •   01, 2015 00:00

  •  「リア充」という言葉が私はあまり好きではありません。ですが、「リア充」の王道を行くようなこの方の作品はけっこう楽しく読めるのです。

    学生時代にやらなくてもいい20のこと
    朝井 リョウ
    文藝春秋
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     朝井リョウさんの「学生時代にやらなくてもいい20のこと」です。自己啓発本のようなタイトルですが、中身は朝井さんの大学生活を赤裸々につづったエッセイになっています。共感出来る箇所もあれば、そうではない箇所もあり・・・という感じの1冊でした。今日は、あまりまとまりのない感想になるかもしれません。



    リア充と腐臭



     リア充と当たり前のように書いていましたが、この言葉は約10年前に生まれた新しい言葉だそうなので、定義を整理しておく必要があるかと思います。一言で言えば「現実(リアル)が充実している」人のことを指します。

     簡単に定義をしたのですが、この定義には問題があります。「充実している」、この部分です。何をもって充実とするかはそれぞれ人により異なるものであり、この世で自分と同じ「充実」の定義を持った人はいないと思っています。

     私がこの言葉があまり好きではないといったのは、そういった「充実」の多様性をこの言葉が捉えきれていないと思うからです。「みんながそれぞれの人生を楽しんでいる、みんなリア充だね」・・・こんな使い方はされません。この言葉をよく使う若い世代の方はよく分かると思うのですが、「リア充」にはある程度のイメージと定義があります。充実している人を定義していながら、実は充実していない人の影を色濃くするような、そんな「腐臭」のある言葉です。

     都会の大学
     学園祭
     仲間と旅
     やりがいのあるバイト

     この本に書いてあることです。「リア充」という言葉を知っている人がこの本を読めば、おそらくこう思うはずです。「リア充の定義みたいな1冊だな」・・・。私もそうでした。それで終わらせればそれまでなのですが、今日はもう少し突っ込んでみたいと思います。

    他人の目



     充実、ということを考えるにあたって、印象的な部分がありました。

    たとえそれがかっこよくなくても、これマジかっこいい!と百パーセント信じられるような、そんな世界の中で生きているのだ。それがいとしい。それがうらやましい。(中略)相手が何なのか、勝ち負けとは何なのか、そんなもの何もわかってはいなかったが、とにかく、高校生であったあのころは誰でも、何にも負ける気がしなかったはずだ。



     充実を定義するのは容易ではありませんが、私はこの部分が定義のヒントになるのではないか、と思います。百パーセント信じる、と書いてありますが、では自分が百パーセント信じていることはあるか、と考えます。わき目もふらず百パーセント没頭していることがあるかと考えます。 ・・・なかなか思いつきません。

     なかなか百パーセントと言い切れない原因は、他人にどう思われるか、他人と比べて自分はどうか、そういった思いだと思います。世の中にはいろいろな趣味や生き方がありますが、残念なことにそれらの趣味や生き方には確実に「ランク」が存在しています。そういった「ランク」が頭をかすめてしまうようなら、本当の「充実」とはいえないのではないでしょうか。

     この本の素晴らしいところは、そういったものを限りなく排除して、「充実」に振りきれている点にあります。学園祭や旅行、都会の生活・・・いずれも「充実ランク」「充実偏差値」が高いものだと思います。ですが、そういった行動を形だけ真似したところで、充実が得られるわけでないことはすぐに分かります。

     そんな中、「充実」に振りきれているこの本は素晴らしいです。そして、その充実をありのままに言葉にできる才能もまた、素晴らしいと思います。朝井さんが充実ランクの高いことをしてきた、とか、男性最年少で直木賞を受賞した、とかそういったこととはいったん切り離します。切り離した時に見えてくる「ひとりの人間の充実した人生」、ここに価値があると思います。本当の充実がどれだけ難しいか、それを踏まえたうえで、そう思います。

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     朝井さんも、リア充という言葉のことは意識しているようです。

    素敵リア充みたいなエッセイを書いてしまった。バカバカ。(中略)自分を貶めるふりをしてリア充をアピールするエピソードを振りかざすなんて、私の嫌いなタイプのツイッターユーザーと同じではないか。


     朝井さんというのは世間がイメージする「リア充」そのもののような人なのですが、そんな朝井さん自身は世間のイメージする「リア充」とほどよく距離を置いているというところが面白いです。

     リア充を「アピール」する(しかも、自分を貶めるふりをして)
     他人を指してリア充と言う

     どちらも「他人」が入っています。充実している人が自分は充実している、とわざわざアピールする必要はありませんし(上で言ったことと反して、他人の目を気にしています)、他人のことを指して「リア充」というのもまたおかしな行為です(他人の充実など分かるはずもないので)。

      本当の充実を示しながら、リア充、という言葉の欺瞞を明らかにしている、そんな1冊かもしれませんね。(たぶん、朝井さんはそのことをかなり意識しています。面白おかしく書いているようで、戦略的な面も感じます)

    自分を映す鏡



     楽しく読める作品ですが、案外「自分を映す鏡」になっているという一面があるかもしれません。

     何も考えずに楽しく読める、という人が多分本当の充実に一番近い人だと思います。逆に、朝井さんのことをひがんだり、ねたんだり、あげつらったり、そんなことをし出すと、本当の充実とはかけ離れてしまうのかも。

     でも、そうすると、この本を読んでこんな小難しい感想を書いている私は、「最も充実していない人間」になってしまいますね (^_^;)



    こちらもどうぞ

    「何者」 朝井リョウさん

     リア充、他人の目、そういったことはこの小説でもかなり意識されています。どんでん返しの結末もあり、ストーリーを追っても十分に面白いです。男性最年少での直木賞受賞作。

     
    エッセイ, 朝井リョウ,



    •   23, 2015 19:56

  •  私はよく同じ大学生の方のブログも拝見するのですが、ここ最近の大学生ブログの記事の足並みが、見事に揃っています。「新学期が始まった、憂鬱・・・」-。例にもれず、私もおんなじ気持ちです。「1年の3分の1以上も休んでいる大学生が何を言っているんや!」と怒られそうですが、環境が変わること・新しい日々が始まることへの憂鬱は、逃れられない宿命のようだと思います。

    Q人生って? (幻冬舎文庫)
    よしもと ばなな
    幻冬舎 (2011-08-04)
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     よしもとばななさんのエッセイを紹介します。よしもとさんが自らのサイトに寄せられた質問に対する答えを綴った、Q&A形式のエッセイです。疲れ切った今日の1日に読んだのが奇跡のような1冊でした―。



    てきとうな強さ



     こんな質問が出てきます。

    女性が社会で働くというのは、いろいろな意味でものすごく大変なことに思われます。なにを心がけたら、心身ともに健康でいられるのでしょうか?



     ばななさんの回答を読む前に、考え込んでしまいました。この「いろいろな意味」に込められた悔しさ、憤り・・・。そこに思いを馳せると、たった2行に収まりきる質問ではありません。女性の立場改善というのは、今私が大学で学んでいることとも大変深く関わってくることです。その差別の長い歴史を学べば学ぶほど、動かしがたい「巨大な岩」を見ているようで力が抜けるような思いになります(信じられないような話ですが、今でも「女性は家庭、男性は仕事」と答える男性はかなりの割合でいる、という調査結果もあります)。

     そんなことを考えながら、ばななさんの回答のページを読みました。

    もう少し、てきとうでワイルドになっても、いいと思うのです。

    むしろ、とにかく無理をせず、どこかゆるくて、自分を愛していて生き生きしてるあなたのほうを応援して思わぬラッキーをくれるのです。


     こういうことばを言える人が、私はとてもうらやましいです。私は、「悩み過ぎ」「クヨクヨしすぎ」とよく指摘されます(ブログをいつも読んでくださる方は勘付かれているでしょうか・・・)。それだけに、こういったことばには一種の憧れがあるのだと思います。

     てきとうに生きることの難しさ、ワイルドになることの難しさ・・・自分で一番痛感しています。だけど、他人からこういったことばをもらうのはとても励まされることです。この回答は女性が社会で生きづらいことを訴えた質問者に贈られたものですが、私は憂鬱な自分の人生に当てはめて読みました。明日からすぐに変われるといった話ではないけれど、このことばに出会ったことで、どこかで、何かが変わっていくような気がします。

    学校が嫌だ!



     続いては、こんな質問。

    テスト勉強がイヤでイヤでしょうがありません。どうしたらいいでしょうか?



     なんともストレートな質問です。「テスト勉強」を「大学」に置き換えたら、誰かさんの今の気持ちに当てはまるような・・・。

     私だったらなんと答えるでしょうか。「嫌だけど仕方ないよ。学生なんて社会から見れば最高に幸せ者なんだから」こんな感じで答えると思います。嫌だという気持ちは消せないけれど、やるしかないじゃない!・・・というのが私の考え方です。

     ばななさんの回答を見てみましょう。ここでもぐっさり、単刀直入に答えています。

    学校は自分が望んで属しているシステムなわけで、そこにいて「勉強がいやだ、遊んでいたい」っていうのは、つまり、「自分からレストランに行っておいて『おなか減ってない』という」のと何も違いません」(中略)それはばかばかしいな、そう思えば、ある程度はがんばれると思います。



     笑ってしまいました。私は勉強が嫌で憂鬱になっているわけではないのですが、自分で選んで大学に行って、こんな風に憂鬱を抱えているとしたら、それはばななさんの言うように「ばかばかしいこと」です。

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     ネガティブな私が、無理やり前を向こうとすると何だかぎこちなくなります。ですが、人生を前向きに歩くか、後ろ向きに歩くかで見えてくる景色が全然違う、という当たり前のことに気付きます。

     前を向くのも後ろを向くのも自分が決めたこと。それなら、後ろを向いて歩いている人生って、なんて「ばかばかしい」のだろう―そう気付きました。

     ばかばかしい、くだらない、どうでもいい。・・・それらはとても乱暴で、投げやりな言葉です。でも、自分がクヨクヨしたり、イジイジしたりしているときにこの言葉をかけられると、言葉の雰囲気はたちまち変わります。

     そんなこと、ばかばかしい
     そんなこと、くだらない
     そんなこと、どうでもいい

     不思議と背中を押されているようです。たぶん、今の私に一番足りていない要素だからだと思います。何だか勇気が湧いてきて、手帳にこれらの言葉を書き留めてしまったことはここだけの秘密です。(他の人が見たら、「この人は何があったんだ!?」と思われそうですが・・・) 

    自分らしく


     
     読んでいた方は気付かれたと思いますが、今日の記事は完全に自分に向けて書いたものです。もはやレビューになっていませんね。「おともだちパンチの4月憂鬱日記ブログ」になってしまいました。

     こんなに独りよがりに読んでしまったら、本のレビューとしては失格です。でも、たまにはこういうことがあってもよいのではないか、と思いました。自分のためだけに本を読んで、文を書く、そんなことです。

     最後に、とても勇気をもらった一説を、メモがてら書き残しておきたいと思います。

    「自分をかわいそうな人にしないで『そうだよなあ、ついうらやましく思うよなあ、でもやっぱしかたないよな、自分は自分だけだし、自分だからこそいいこともあるんだし』と自分だけはせめて思ってあげてください」



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    ンコインで買える、人生をちょっとだけ変える一冊

     200ページにも満たないエッセイということで、文庫本は500円以内で買えるようです。人生にちょっと疲れているかもしれない、そんな人はぜひ。
    エッセイ, よしもとばなな,



    •   09, 2015 23:49
  • 働く男 (文春文庫)
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    星野 源
    文藝春秋 (2015-09-02)
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    の人は、どうしてこんなにかっこいいんや。

     星野源さん。最近知名度が上昇しているように思うので、「知っている!」という方も多いかもしれません。知っている!という方が浮かべたのは、どんな星野源さんだったでしょうか。ミュージシャン、俳優、物書き、ラジオDJ・・・星野源さんを浮かべる方の中にも、いろいろな星野源さんがいるのだと思います。

     そんな星野源さんの肩書は、「音楽家・俳優・文筆家」。多方面で、マルチな才能を発揮しておられます。今日紹介するのは、そんな星野源さんのエッセイ、「働く男」です。まるで星野さんの脳内をのぞいているような、そんな1冊になっていました。



    心境の変化



     単行本が発売されてからこの文庫本が発売されるまで、星野源さんの中では大きな変化が生じていました。それは、この本のタイトルをひっくり返してしまうような変化です。あらたに加えられた「まえがき」で、その変化のことが書かれています。

     まずは、心境に変化が生じる前、「働く男」の一説です。

    自分のやりたいと思ったことを仕事にするために、そしてその仕事を成功させるために、努力は惜しみません。どれだけ忙しくても、働いていたい。ハードすぎて過労死しようが、僕には関係ありません。(中略)これを一生やり通せるなら、僕は喜んで病人になる。それが、僕の思う「働く男」です。



     今読み返すと、つらい・・・。星野源さんは、この本の入稿後、倒れました。くも膜下出血です。2度の活動休止を経て、現在は元気に活動しておられます。病気を経て、星野源さんの心境に変化が生じました。

    休養中、『働く男』を読むと別人が書いたもののように感じた。何かに取り憑かれたように、苦しみを、仕事を自分に課しているようだった



     働きたくない。この本のまえがきは、その言葉から始まります。タイトルとまるっきり逆行する言葉に、一瞬焦ってしまいました。しかし、星野源さんは腐ってしまったわけではありません。むしろ、以前よりもっとかっこいい、魅力のある大人になったように思います。

    過酷な入院生活で、私は大人になった。仕事が中心の生活ではなく、己が中心の生活に変わった。「仕事がないと生きていけない」ではなく、「仕事って楽しい」「でもなるべくサボって遊んでいたい」という性格に変わった。私は「働く男」から、「働きたくない男」になった。

    (中略)

    昔のような依存感、中毒感、過剰な苦しみは一切感じない。楽しい。人前に立つ喜び、アイデアを表現する面白さ、そんな仕事をできる立場になった達成感。すべてを自分中心に、平熱で感じることができる。



     「楽しい」「自分中心」。そんな言葉が、読んでいて心地よかった。病気の一報を聞いた時は息が止まりそうになりましたが、ますます魅力的な大人になって活躍の場を広げられていることをうれしく思います。

    楽しませたい



     大きく「エッセイ」というくくりになるのかもしれませんが、内容は本当に盛りだくさんです。エッセイ、「ひざの上の映画館」、ショートストーリー、「急須」、コラム、「モニカ病」をはじめ、星野源さんをよく知る人に星野源さんがどんな人かを尋ねたインタビュー、過去に作った楽曲や出演した作品の振り返りコーナー、ミニコーナー「俺を支える55の○○」などなど、「詰め込めるだけ詰め込んでみました!」といった感じの内容です。

     読み手を全力で楽しませたい!という星野源さんの思いを感じる内容でした。また、一人の人間がどのように生きてきたか、その変化を追いながら読むのも楽しいです。冒頭で書かれていたように、人間というのは何か一つの出来事で180°生き方が変わってしまうこともあります。どんな生き方が正しいということはありません。そうやって変わり続けることこそが人間であり人生なのではないかと思います。

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     ここでは書けないような、ちょっと下の方のネタも満載です・・・。そのあたりは、本を手に取って楽しんでいただけたらと思います。

     私が星野源さんを知ったのはわりと最近で、「くだらないの中に」という歌を聞いた時です(2011年)。この歌の歌詞が、今でもどうしようもなく好きです。何だか、体のいろいろなところがくすぐったくなってきます。

    ♪ 首筋の匂いがパンのよう すごいなって讃えあったり くだらないの中に愛が 人は笑うように生きる

     この曲の解説もついていました。星野さんいわく、「真摯な変態の歌」だそうです。上の歌詞の部分に下線が引っ張ってあって、「変態の気持ちで!!己の変態さを前面に出して!!」と書いてあったのには、思いきり笑いました。

     変態だけど、温かいんだよなあ。

    又吉さんと語る



     本の最後を飾るのは、ピースの又吉直樹さんとの対談、名付けて「『働く男』同士対談」です。「働く」をテーマにしたこの対談はとても味わい深い内容になっていました。今をときめく2人ですが、よい意味で「ちっぽけな存在」なのだということを感じさせます。

     自分に付けられる肩書の空しさであったり、規制だらけになった今の世の中への嘆きだったり、生きづらさだったり・・・この隊普段は、今という時代を貫き通しています。

     そんな対談が、最後はこんな方向に向かっていったことに私は好感を覚えました。

    星野 そうですね。だから俺、人間が好きだったんだなと最近改めて思います。
    又吉 僕も好きですね。「人間が好き」という発言自体が、妖怪っぽいですけど(笑)。



     いろいろな話が展開された中で、最後にこういう発言に収束していくことこそが、星野さんと又吉さんの魅力なのではないかと思います。様々な分野で活躍を続ける星野源さん。その魅力は、この「人間が好き」という発言に凝縮されている気がしました。

    レコメンド

    と笑いにあふれた、当代屈指のエンターテイナー!

     体にだけは気を付けていただいて、これからも私たちに多くの楽しい時間を届けてほしいと思います。マルチに才能を発揮する星野源さんの魅力と秘密を詰め込んだ1冊です。



    オワリ

     「くだらないの中に」、本当に大好きです。この曲だけではなく、星野源さんの歌うバラードは本当に温かいです。一日の終わりによく聴いています。


    星野源, エッセイ,



    •   13, 2015 23:00