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 カテゴリ「ミステリー・サスペンス」のまとめページです。このブログで紹介しているミステリー・サスペンスの本を一覧で掲載しています。リンクからそれぞれの本の書評をご覧になることができます。蔵書は少ないですが、一冊一冊、心を込めて紹介するようにしています。ぜひご覧ください。なお、掲載順は作者名のあいうえお順です。

 この図書館では、とくに優れていると感じた本について、「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」の3段階で「殿堂入り」としています。殿堂入りとした本には、作品名と作者名のあとにランクを記しています。ぜひ、本選びの参考にしてみてください。

 あなたの、あなただけの一冊が見つかりますように。



ミステリー・サスペンス




『デザイナーベイビー』 岡井崇


『紙の月』 角田光代
『宰領 隠蔽捜査5』 今野敏


『オーダーメイド殺人クラブ』 辻村深月
『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』 辻村深月
『ツナグ』 辻村深月(シルバー)


『鏡の花』 道尾秀介
『カラスの親指』 道尾秀介
『水の柩』 道尾秀介

『Nのために』 湊かなえ

『火車』 宮部みゆき(シルバー)
『理由』 宮部みゆき(シルバー)
『レベル7』 宮部みゆき

『すべてがFになる』 森博嗣



『死命』 薬丸岳
『天使のナイフ』 薬丸岳

『臨床真理』 柚月裕子

『半落ち』 横山秀夫

『追想五断章』 米澤穂信
『ボトルネック』 米澤穂信
『リカーシブル』 米澤穂信



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  •   01, 2015 00:00
  • ツナグ (新潮文庫)
    ツナグ (新潮文庫)
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    辻村 深月
    新潮社 (2012-08-27)
    売り上げランキング: 1,640


    う一度だけ、会えませんか?

     こんにちは、おともだちパンチです。2月最初のレビューは、辻村深月さん「ツナグ」をご紹介したいと思います。先日発表した2014年年間ランキングでは第5位に選んだこの作品。もっと詳しく語りたいと思っていたので、ようやく今日実行です。それでは、以下「ツナグ」のレビューです。



    一度きりのチャンス



     この世に生きる者と死者とのたった一度きりの再会を提供する使者(ツナグ)の物語。正直、読む前は「どうかな」という気持ちがありました。霊が出てくるお話はちょっと苦手で、しかも霊の登場を陳腐な感動ものに帰結させられると、読んでいる側としては興ざめの感があります。初めての辻村さん作品でしたし、どんな風に作品が進むのか少し不安だったのです。

     さて、読み終えて。霊が全編にわたり登場し、なおかつ話のラストは感動にもっていかれていました。それなら他の話のように陳腐だったのか・・・。いえ、全然そんなことはありません!この話の秀逸さは、設定・構成のうまさ、それに今を生きる者へのメッセージ性にあると思います。

     設定や構成の面から見てみたいと思います。この話の緊張感を高めている要因として、「たった1度きりのチャンス」が挙げられるのではないでしょうか。霊を呼び出す側も、呼び出される霊も、そのチャンスはたったの1度、しかも一晩の間だけという設定です。特に霊の方は、1度呼び出されたら、そこで本当に「成仏」することになります。お互いの思いが交錯する中で、残された一晩というあまりに短い時間・・・。生者と死者がホテルの1室で過ごす最後の空間の濃密さは、読み手を圧倒するものがあります。

    紐解かれる想い




     構成のうまさでもう1つ挙げられるのが、「ツナグ」の存在です。生者と死者の媒介の役割を果たす「ツナグ」の歩実くんが、全編にわたって登場しています。しかし、この歩実くんは単なるガイド役ではありません。最終章「使者の心得」は彼自身の物語。最終章に向かって彼の思いが紐解かれていく様子が作品の魅力になっています。

     歩実くん、最初は随分ドライな感じでした。淡々と、粛々と仕事をこなしています。なんだか、手に入れたくない力を手に入れてしまい、その力に苦しめられている、そんな印象を受けました。

     そんな彼の本当の思いが、物語が進むと共に明かされていきます。どうして、「ツナグ」となったのか、どうやって力を手に入れたのか・・・いろいろな謎の答えが見えてくると同時に、最初はドライだった彼の本音も見えてきます。

    「会って、必要なことを伝えなかったせいで、一生、そのことを引きずらなきゃなくなった人もいる」



     終盤の彼のセリフです。淡々と仕事を進めていた彼が、終盤になってついにその本音をぶちまけます。彼がどんな人々を見てきたか、読者の私たちはよく分かっているからこそ、彼の血の通ったセリフが心にドスンと落ちてきます。

     彼だけではありません。霊を呼び出した生者にも、呼び出された霊にも、もちろんそれぞれの思いがありました。それらの何層にもわたる思いが、最終章に向けて見事に収束していきます。

    全てが解き明かされていくミステリー的快感×幾重にも重なる思いの「深さ」

     この2つが見事にかけ合わさっているんですね。陳腐な感じを受ける他の作品と比べ、群を抜いているのはこの点にあります。

    後悔は宿命



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     ホテルの1室で過ごす生者と死者の時間が濃密であり、また残酷であることは話しました。死者がこの世を去ってしまった、つまり手遅れになってしまってから交わす2人の言葉です。短い時間に収まりきらない思いがあふれています。この「手遅れ」という事実が悲しいスパイス・・・。後悔してもしきれない、そんな思いには胸が張り裂けそうになります。

     後悔しないように生きよう。

     ・・・とまとめたくなるところですね。でもそれは違うのではないか、と思いました。この本を読んでの感想は、

     後悔は、宿命である。

     ということです。「失ったものの大事さは、失ってみないと分からない」などとはよく言われます。その通りだと思います。人間はそんな万能ではありません。別れた後で、失った後で、失敗した後で・・・。気付いた時にはいつも「手遅れ」です。

     そんな宿命を受け入れていかなければいけません。この作品ではそんな後悔を取り戻すチャンスが描かれていました。ファンタジーにすぎないかもしれません。ですが、「後悔は宿命である」、ということをまざまざと思い知らせてくれたことにこそ、この作品の価値があるのではないでしょうか。

    ◆殿堂入り決定!

    「最果ての図書館」は『ツナグ』を「シルバー」に認定しました。おめでとうございます!


    小説, 辻村深月,



    •   04, 2015 00:14
  •  ブックレビューの第14回です。今回ご紹介するのは米澤穂信さんの「リカーシブル」という作品です。いろいろな人からおすすめされてはいたのですが、ようやく手に取った米澤さんの作品。予想していた以上に面白かったです。本屋大賞にノミネートされている「満願」も早く読まなければ!と思わせるような出来栄えでした。それでは、以下「リカーシブル」のレビューです。

    リカーシブルリカーシブル
    (2013/01)
    米澤 穂信

    商品詳細を見る




    怪しさの不気味な増幅




     この本は363ページあるのですが、事件が大きな動きを見せるのは222ページと全体の3分の2にさしかかったあたり。そこからの急展開はもちろん見応えがあるのですが、それよりも私が面白いと感じたのは「事件が起こる前の不気味な怪しさ」の方でした。

     主人公の越野ハルカは中学生になった春、母と弟と一緒に見知らぬ町、坂牧市に引っ越してきます。その町は独特の雰囲気と怪しさを醸し出した町でした。街を覆うのは、古くから伝わる奇妙な伝説・・・。自分が「よそ者」としての視線を受けていることを強く意識しつつ、町に潜む「何か」を探るハルカ。・・・とまあ、これだけでも十分に不気味なストーリーです。

     この話のすごいところは、「異質なのは町だけではない」というところです。母と弟、と先程書きましたが、実はこの二人、ハルカとは血のつながりを持っていません。母は父の再婚相手、弟はその母の連れ子です。つまり、ハルカは、全く見知らぬ町で、血のつながりのない「形だけの」家族と生活していくのです。・・・とまあ、これだけでも十分に不気味なストーリーです。

     まだ、あるんです。ハルカの母は、実の子供であるサトルと血のつながりのないハルカに対し、全く同じように接します。あまりにも「優しすぎる」のです。その底の見えなさが不気味な怪しさを醸し出しています。そして、不気味さのラスボスはそのサトル。サトルは、町で起こることを「予言」してしまう、という不思議な能力があったのです・・・。

    強すぎる主人公



    読んでいて気付くのですが、主人公には心を許せる人物がいません。母は怪しく、弟は得体のしれない「予言」の能力を持っています。そして、舞台は見知らぬ町。ハルカはリンカという友達をつくり、クラスでの居場所を確保するのですが、このリンカも完全に信用できる人物ではありません。「友達」はあくまでポーズ。彼女が腹の底で何を考えているのか・・・ハルカは警戒を続けます。

     見知らぬ土地で、一人で暮らしているようなものです。とても正気を保てるような状況ではありません。しかし、このハルカという少女はかなり強靭な精神を持っていました。自分の弱みを見せないように、周りになじめるように、と自分を「演じる」ことに徹します。

    夕暮れに沈む町はどこもかしこ一片の情けもなくよそよそしくて、とてもわたしを受け入れてなどくれそうもない。でももちろん、それは気のせい。にっこり愛想笑いしてお腹に力を入れていれば、どんなことでも、きっとなんとかなるに決まっている。そう信じていないと、気持ちが持ちそうもない


    わたしはまだ弱い。そんな弱さは命取りだ。改めなくてはいけない。改めなくては・・・。



     ・・・すごいタフさです。昨年、宮部みゆきさんの「ソロモンの偽証」を読んだとき主人公の女の子があまりにしっかりしていて驚いたものですが、彼女はそれをゆうに上回っています。太字にした部分のように、もちろん不安でいっぱいなわけですが、決してそれを表には出しません。仮面をかぶりながら、自分の立ち位置を探します。中学1年生のなせる業ではありません。あまりに強すぎて、読者からすれば、彼女の存在もまた一種の「不気味さ」になったかもしれません。

     事件が起こった後は急展開。前半は静かに増幅していく不気味さ、後半は意表をつく展開で魅せます。ハルカは最後も機転を利かせ、抜群の行動力と推理力で町に隠れた秘密を明らかにしていきました。人に心を許さず、自分を演じることに徹した彼女の行動が、最後は真実を見抜く鍵になりました。
     
     練られたプロットと、どこまでも怪しい雰囲気。「読ませる力」を持った作家さんだな、と思います。特にうまいのは町の不気味な雰囲気の演出です。

    この町はどこまで行ってもよそよそしく灰色で、錆びたトタンに囲まれた路地も、誰もいない道で点滅する黄信号も、わたしを受け入れようとしない。店を閉じ看板を下ろした跡がもの寂しい民家や、いつのものとも知れないチラシが破れて糊の跡だけ残った電柱、そうしたものから目を逸らす。



     一つだけ注文するなら主人公が強すぎることですね。弱さをのぞかせる場面も少しはあるのですが、先程引用したようにそれを決して見せようとしない。もう少し弱さを見せてくれれば、読者も共感でき、町や家族の異様さがなお際立ったのではないか、と思います。

    町の魔性



     一見現実離れした物語なんですが、実はとても鋭い。「町の魔性」を上手く捉えている、と思います。

     この間紹介した芥川賞作品、「九年前の祈り」でもそうでしたが、町にはその町にしかない独特の空気があります。そこで暮らす人々が、無意識のうちに作り出す空気。よそからきた人にとってはそれは不気味なものになります。 

     「よそ者」を主人公にしたことで、そういった雰囲気がとてもよく描けていました。ラストで明かされるのは町全体に仕組まれていた大きな「仕掛け」。町の魔性を小説に上手く生かし、壮大なフィクションに仕立て上げたラストは見ものですよ。

    小説, 米澤穂信,



    •   21, 2015 19:15

  •  図書館で宮部みゆきさんの本棚に行くと、作品のボリュームにびっくりします。「蒲生邸事件」「模倣犯」など分厚い本がずらり。重厚感、ということばがピッタリです。その極め付けが「ソロモンの偽証」ですね。700ページ超えの単行本×3冊!読むのも大変ですが、書くことに使われたエネルギーは想像もつかないものだと思います。

     そんな大長編にはまだ手を出せずにいるのですが、宮部みゆきさんの作品は少しずつ読み進めています(「ソロモンの偽証」は第1部まで読みました)。今日ご紹介するのは、直木賞を受賞した「理由」という作品です。

     実は昨年、この作品を読んで大学のレポートを書きました。この作品も文庫本で700ページに迫るような長編で、しかも情報量が多いため、読むのに莫大なエネルギーを費やした記憶があります。ですが、エネルギーを費やした分、宮部みゆきさんの力量を思い知る作品になりました。そういったあたりも振り返ってみたいと思います。では、以下「理由」のレビューです。

    理由 (朝日文庫)
    理由 (朝日文庫)
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    宮部 みゆき
    朝日新聞社
    売り上げランキング: 22,214




    隣近所はサバイバル


     
     東京荒川区の超高層マンション「ヴァンダール千住北ニューシティー」で起きた殺人事件をドキュメンタリー的手法で描いたこの作品。まるで雑誌の特集記事のように、淡々と事件が語られていきます。小説を読んでいるような気がせず、だいぶ戸惑いました。

     高層マンションの1室で3人の死体が見つかり、さらに1人の転落死体が見つかる・・・ということでミステリーとしても十分に楽しめるのですが、この作品の魅力は、「現代の家族」というテーマです。マンションで見つかった死体となった人々にも、「家族」に関するある事情がありました。バブル崩壊でこれまでの幻想が崩れ、停滞と暗黒に突入していく時代が舞台。作品全体に暗く、不気味な雰囲気が漂っています。

     舞台となった高層マンションで描かれる人間関係は、隣近所に気を許すことができない、殺伐とした関係でした。事件が起こった部屋の隣にいた主婦がこう言います。

    「現代ではね、隣近所は頼りがいのある存在じゃなくて、警戒すべき存在なんです。排他的であるくらいが、ちょうどいいんですわ」


    わたしたち一家は以前に『隣人』の怖さを味わっていました。『隣人』が怖いということは『世間』が怖いということですし、結局は『コミュニティ』そのものが怖いということなんですよ。ですから、いつ何があったって不思議じゃないんです」



     殺伐として乾いた時代の空気がよく伝わってきます。常に互いを監視しあい、警戒しあうコミュニティー。そこに漂う互いへの不信感が、この事件の謎を深めていきました。

    血には逆らえない




     高層マンションでは冷たく、乾いた人間関係を描きましたが、マンションの周りにある下町で描かれるのは、昔ながらの「血が通った」家族の姿でした。

     作品にはたくさんの家族が登場します。1つの事件の周りには多くの人が関わっています。宮部さんは事件に関わる人物たちの姿を、その家族も含めて詳細に、綿密に描ききりました。まるで、「ざるからこぼれる一滴も逃さない」といったような渾身の描写に圧倒されます。冒頭でも書きましたが、読むのが大変な以上に、書く方が大変です。この作品に費やされたエネルギーは膨大なものだと思います。宮部さんの筆力、構成力には凄まじいものがありますね。

     下町の家族たちはそれぞれに複雑な事情を抱えていますが、共通するのは「家族の血のつながりを強く感じさせる」ことです。家族の一人の痛みは家族全体の痛みになります。家族があやまちを犯しても決して見捨てることはできません。「血のつながり」がそうさせるのです。作品を通して血のつながりのもつ強さが強調されます。まるで、「血の宿命」とでも言うような、強い強いつながりです。

     マンションの冷たく乾いた人間関係と、下町の血が通った人間関係が色濃く対比され、お互いを印象付けています。事件のカギを握っていたのもまた「家族」でした。終盤に印象的なセリフがあります。

    「家族とか、血のつながりとか、誰にとっても面倒くさくてやりきれないもんだよ。だけど、本気でそういうものをスパッと切り捨てて生きていこうって人たちがいるんだね」


    帰る場所があるってことと、自由ってことは、全然別だと思うけどね」



     ここでも「血のつながり」が強調されています。宮部さんは血のつながりを何度も何度も強調し、その強調ぶりは徹底しています。

     人間は、家族のつながりを切り捨てて生きることはできない。血のつながった家族の存在は、人間が一生逃れることのできない宿命である

     宮部さんが伝えたかったメッセージはこのような感じでしょうか。家族のつながりがだんだん希薄化していく現代社会に警鐘が鳴らされます。ラストではそのメッセージがはっきりと示されます。長い作品の最後の部分ですから、かなり重く響くメッセージです。

    時代を経て高まる力



     この作品の刊行からさらに時代は進みました。今は一人一人がスマホを持ち、自分の部屋で自分の世界に没頭することができるような時代です。つながりがますます弱まっているので、その分この作品が訴えかけてくる力は高まっているように思えます。

    人を人として存在させているのは「過去」なのだ



     ずっしりと響く重いことばがありました。自分がこれまで生きてきた過去は決して切り捨てることができません。自分と血のつながった家族もまた、切り捨てることができません。よく考えると、人間はいろいろなものにがんじがらめにされて生きています。がんじがらめにされていることが、いいことなのか、悪いことなのか・・・私には分かりません。でも、それが人間の「宿命」であるということは間違いがなさそうです。

    ◆殿堂入り決定!

    「最果ての図書館」は『理由』を「シルバー」に認定しました。おめでとうございます!






     宮部みゆきさんの作品をたくさん読んでおられる方、おすすめの作品を教えていただけると嬉しいです。今まで読んだのは、うろ覚えですが「名もなき毒」「魔術はささやく」「理由」、そして「ソロモンの偽証」(途中)です。これ以外に、あちこちで絶賛されている「火車」は絶対に読もうと思っています。現代ミステリーだけでなく時代物やファンタジーもあるので何から読もうか迷いは尽きません・・・。
    小説, 宮部みゆき,



    •   27, 2015 18:47