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 カテゴリ「SF」のまとめページです。このブログで紹介しているSFの本を一覧で掲載しています。リンクからそれぞれの本の書評をご覧になることができます。蔵書は少ないですが、一冊一冊、心を込めて紹介するようにしています。ぜひご覧ください。なお、掲載順は作者名のあいうえお順です。

 この図書館では、とくに優れていると感じた本について、「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」の3段階で「殿堂入り」としています。殿堂入りとした本には、作品名と作者名のあとにランクを記しています。ぜひ、本選びの参考にしてみてください。

 あなたの、あなただけの一冊が見つかりますように。



SF




『時をかける少女』 筒井康隆


『美しい星』 三島由紀夫


『ギフテッド』 山田宗樹
『百年法』 山田宗樹


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  •   01, 2015 00:00
  •  こんにちは、おともだちパンチです。今日のブックレビューは、山田宗樹さん「百年法」をご紹介します。
    先日発表した2014年年間ランキングでは第7位に選んだこの作品。手に汗握るストーリー展開もそうですが、作品が投げかけてくるメッセージにも惹きつけられます。詳しく見ていきましょう。以下、「百年法」のレビューです。

    百年法 上百年法 上
    (2012/07/28)
    山田 宗樹

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    抜群の構成力



     新技術「HAVI」により、老化しない身体を手に入れた人類。そんな不老化処置を受ける代わりに受け入れなければいけなかったのが「寿命百年」。処置を受けた者は、その百年後に国家によって安楽死させられます。逃亡すればそ即犯罪者。国家に追われ、強制的に安楽死処置を受けることになります。

     この「百年法」を巡って揺れ動く世界を描いた、壮大なSF作品、それが「百年法」です。そのスリリングで先の読めないストーリー展開はこれまで読んだ本の中でもトップクラス! 上巻は百年法が国民投票によって凍結されるという出来事に憤慨した遊佐という男が、ある政治家を見方につけて権力を掌握していく過程が緊迫感たっぷりに描かれます。期待して読む下巻はさらに圧巻!後半の「クーデター」以降は息もつけないような流れの連続です。そして、ようやく事態が落ち着いかと思われた時、突きつけられたのは「百年法」そのものを覆す衝撃的な事実でした・・・。

     いやー、煽りがいのある小説です(笑)。しかし、ここに書いたことは決して過剰な煽りではありません。この小説の抜群の構成力には本当に驚かされます。極上のエンターテインメント、そんな言葉を送りたい作品です。

    百年という年月



     この小説、現代社会に訴えてくるものも多いと思います。その理由の1つに「百年」という年月があるのではないか、と思います。「老化しない代わりに、寿命を百年に定める」。さてこれはどうなんだろうと考えた時に、「百年」という寿命が絶妙な位置にあることに気付きます。厚生労働省の発表によると、2013年現在の日本人の平均寿命は女性が86.61歳(世界1位)、男性が80.21歳(世界4位)となっています。寿命百年、おそらくそう遠くない時代の出来事です。この、現実と、遠くない未来の間にくっきりと浮かんでくる「百年」という数字。SFでありながら作品に入り込める所以はここにありそうです。

     老化しないで百年生きられるなら万々歳でしょう、と思う人もいるかもしれません。私も、読むはじめは「百年生きられれば上等じゃない?」そんな風に思っていました。でも、違うんですね。大事なのは、

           自分の命が終わる日が決まっていること。自分の命が、国家によって奪われること。 
    このことの恐怖を軽視していました。実際、百年法を突き付けられて世界は儚いほどに脆い・・・。以下は本文からの引用です。

    人間は、無限の時間を生きるには、複雑すぎる生き物だ



    生と死の境界を失った者にとって、永遠に生きることは、死ぬことと完全にイコールとなる。


    「人間の心は弱いものです。しかし、死を恐れるその弱さこそが、人類の文明をここまで発展させてきた原動力でもあると、私は考えます。人間の人間たる所以は、その弱さにある。だからです」



    生死という禁断の領域に足を踏み入れてしまった世界。そんな世界には、当然のごとく報いが待っていました。皮肉にも、「百年法」のある世界は、その半分である50年もたたないうちに・・・。気になった方はぜひ手に取ってみてください。

    迫りくるリアリティー




     最後の1行はまさに渾身。嘆息してページを閉じます。しかし、そこで終わらないのがこの小説の凄みです。「現代社会はどうだろう」そう考えた時に、身に迫ってくる感覚があります。

     寿命百年の時代は、そう遠くないうちにやってくるでしょう。ただ、忘れてはいけないのが、「高齢者を支える若者が圧倒的に不足している」ということ。「孤独死」「地方消滅」そんな言葉で、近い将来に警鐘が鳴らされています。果たして、この先、人間の生命の尊厳は保たれるのか・・・。もしかしたら、近い将来に行き場のない人間が路上で死に果てていく光景があるのかもしれない。そんな想像すらさせてしまう、どこまでも恐ろしい作品でした。


    小説, 山田宗樹,



    •   27, 2015 22:20

  •  小説に「超能力」や「テレポート」が出てきたら、みなさんはどう思われるでしょうか?私は、正直言って白けるかもしれません。私は現実感のある小説、特に社会派小説が好きです。その反面SF作品は設定が現実離れしているところに白けてしまい、なかなか入り込めないことが多いように思います。

     しかし、今日ご紹介する作家、山田宗樹さんの作品は別格です。今日は「ギフテッド」という作品を取り上げます。山田宗樹さんの作品の紹介は、「百年法」以来2冊目。それでは、以下「ギフテッド」のレビューです。

    ギフテッド
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    超能力とテレポート



     冒頭で超能力とテレポート、と書きましたが、この話に出てくるのはそんな超能力とテレポートを使いこなす特殊な能力を持った人間、「ギフテッド」です。

     ギフテッドとは、普通の人間にはない未知の臓器を持った人間のことです。未知の臓器により、ギフテッドは二つの特殊能力を手に入れました。「思念によってものを変化させる力」(=超能力)と、「瞬間的に空間を移動する力」(=テレポート)です。特殊能力を持っていることは政府の人間のみが知る事実であり、政府は誰がギフテッドが把握するために、国民に検査を義務付けています。ただ、ギフテッドがすぐさまこの力を使えるというわけではありません。力の覚醒には、死に追いつめられるという極限の状況が必要でした。

     ギフテッドに特別な配偶をしていた制度が廃止されたことがきっかけに、国民のギフテッドに対する反感が芽生えます。高まる反感がある事件を呼び、ついに・・・。世界の秩序が根底から覆されるような恐ろしい出来事が始まったのです。

    渾身



     超能力にテレポート、という荒唐無稽な設定です。でも、私は全く白けませんでした。どうして白けなかったのか、その理由は作者の力量にあると思います。

     まずはフィクションであることを感じさせない迫力のある描写です。例えばこれは、ギフテッドの超能力により人間が殺害される場面です。

    はっきりと歪んだ。表情が、ではない。文字通り顔そのものが大きく歪んだ。蝋人形が高熱を浴びたように。眼球がねじれて白目と黒目が入り混じる。(中略)男だった物体は、無数の破片となって静かに舞い上がり、美しく幾何学的な模様を宙いっぱいに描いたあと、引力に捉えられ、ゆっくりと降り注ぐ


     
     ・・・渾身の描写です。超能力によって人がばらばらにされるという現実にはありえない場面を描いているのに、この迫力。否が応でも想像力がたきつけられます。太字にした部分は、まるで時間が止まって宇宙が見えるような、そんな壮大さがあります。人が殺害される場面でこういっては何なのですが、美しささえ感じてしまいます。

     そして、構想力と抜群に練られたプロット。予想の斜め上を行くような容赦ない展開が続きます。「百年法」でもそうでしたが、ラスト100ページあたりから怒涛の展開が始まります。今回の結末は「百年法」に比べれば割とおとなしいものでしたが、結末に至るまでは一切気が抜けない緊張した展開が続きます。

     百年法は10年の構想を経て書かれた作品ということです。そこには途轍もないエネルギーが費やされたことと思います。実際、山田さんはインタビューでこんな風に語っています。
     

    山田:次もSFっぽい設定になりそうです。ただ、『百年法』のオビに「これ以上のものは書けません」とコメントしたように、50年に渡る話を10年かけて書いて、上下巻で出してもらったので、それを全部超えるのは今の段階ではまだ想像できませんが。



     そんなことを言いつつ、百年法の発売から2年でこの作品です。確かに百年法を全部超える、とはいかないと思いますが、このクオリティーの高さには舌を巻きます。作家としてのエネルギーに満ち溢れておられるのだと思います。そんなエネルギーを惜しげもなく使った、渾身の作品です。

    現実のちゃぶ台返し



     SF作品の力量は2つで測れると個人的には思っています。

     まずは、「現実にも起こるのではないか、ありえるのではないか」と思わせてしまう迫力のある描写。私は「現実のちゃぶ台返し」と勝手に名付けています。そして、現代社会への教訓です。現実にありえない話を書きながら、最後は現代社会に警鐘を鳴らす。この展開は絶対に必要だと思っています。

     素晴らしい作品はやっぱりどちらも満たしてくれます。

    「人間はどれほど残虐な行為にも、正義という仮面を被せて平気でいられるということだ」


    人は、だれかの血が流れて、自分たちの過ちに気づく。でもまた血は流れる。そしてやっぱり間違っているのだと知る。それでも血は流れつづける。今度流れる血は自分のものかもしれない。本気でそう感じなければ、人は動こうとしない。



     現実を思い起こさせるような描写でゾクリとさせたあと、グサリとくる一言がきます。

    「これが現実です。否定できない現実なのです。目を背けるのはもう止しましょう。(中略)必ずその時は来る。なぜ直視しないのですか



     現代社会がこれからどうなっていくか、誰にも分かりません。私たちが信じられないような「その時」が来るかもしれない。そんな風に思ったとしたら、すっかりSFの虜になっています。現実というちゃぶ台が、ひっくり返されるような錯覚・・・それがSFの醍醐味ですね。





    こちらもどうぞ
    インタビューはこちらから引用しました。
    作家の読書道 山田宗樹さん

    「百年法」のインタビューですが、この作品にも通じる部分が多いです。
    小説, 山田宗樹,



    •   24, 2015 20:25
  •  偉大な作家の文章には「圧」があります。文章からものすごい「圧」が押し寄せてきて、それが読者を「圧」倒し、制「圧」します。単純に面白いだけの作品を書く作家とは乗り越えられないような大きな差があって、それこそがこの「圧」の存在だと私は思うのです。

     先日紹介したカズオ・イシグロさん(『わたしを離さないで』)はまさに圧で読者を凌駕した作家でした。イシグロさんの素晴らしかったところは「抑圧」の力です。徹底的に抑圧された文体は、一見波風が立たない静かな雰囲気を醸し出しつつも、その裏で蠢く圧倒的な感情が作品を際立たせていたのです。文学界の巨星と呼ぶにふさわしい、偉大な作家でしょう。

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     今日はもう一人、文学界の巨星を紹介したいと思います。文章の「圧」・・・ということを考えていて私が真っ先に思い浮かべたのが、今日ご紹介する作家、筒井康隆さんの書く文章でした。今日は代表作の『時をかける少女』を紹介します。去年読んだ『旅のラゴス』が秀作で相当期待値が高まっていましたが、期待に違わず「圧」を感じさせる文章でした。しかも、その「圧」はイシグロさんとは全く異なるタイプのものだった、というのが面白いところです。

    (約3200字)

    時をかけても



     たまには、私の「率直な感想」から始めようかな、と思います。ブログを書こうとすると、公開する以上はちゃんとした文章を書かなければいけないと思っていつも肩に力が入ってしまいます。いつも自分を大きく見せようと思って何だか文章が肩肘張ったものになってしまうので、たまには自分の率直な感想を書いてみよう、と思った次第です。

     読んでいた時に感じていた率直なこと、というと以下のような感じになります。


     すごい
     面白い
     ビリビリする
     なんだこの「ワクワク感」は!

     これだとあまりにも貧しくて、チラシの裏に書いておけ、という感じのブログになってしまいます。ただ、今作に関しては、長々と難しいことを書くよりも、上のような率直な感想の方が作品の魅力をより正確に捉えているような気がするのです。『時をかける少女』はどういう小説ですか、と聞かれたら、「すごく面白くて、ビリビリして、なんだこの『ワクワク感』は!と叫びたくなる小説です」と私は答えたいです。

     ストーリはSFの王道をゆくものです。主人公の和子は、「時間をさかのぼる」という不思議な体験をします。最初は和子の言うことなど信じなかった友人の吾朗も、彼女が未来で体験した火事や地震のことを過去の世界でぴたりと言い当てたので、彼女の言うことを信じるようになります。

     もう1人の友人、一夫が言いました。

    「ううん。ぼくもよく知らないけれど、本で読んだことがあるんだ。世の中にはときどき、超能力のある人がいて、その人は、自分の思った場所へ、瞬間に移動することができるんだってさ。テレポーテーション(身体移動)っていうんだそうだ。君はきっと、トラックにひかれそうになったとき、君自身も知らなかった君の能力を使って、時間と空間を移動したんじゃないだろうか?」



     「ザ・SF」という感じの、王道の展開ですね。和子に起こったのは、テレポーテーション(身体移動)タイムリープ(時間跳躍)でした。

     この作品の刊行から約50年がたっているということに心から驚きます。全く色あせない。1967年に子どもたちをワクワク指せた小説は、2016年にも変わらずに子どもたちをワクワクさせることでしょう。映画にドラマと何度も何度も繰り返し映像化されている理由がよく分かります(おそらく、シリーズもの以外の小説では映像化された回数が最も多い作品ではないでしょうか)。50年の時をかけ、これからもかけ続けていく作品だと思いますが、その魅力は未来永劫色あせないような気がします。

    筒井康隆の「圧」



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     『時をかける少女』は少年少女向けに書かれた作品です。ですから、文章はとても平易なものとなっています。冒頭で『旅のラゴス』に触れましたが、『旅のラゴス』のような硬派で本格的な文章とは大きく異なります。

     文章の「圧」という話をするなら、『旅のラゴス』を引っ張ってくるべきだと思います。あの作品にはこちらの体を突き動かすような圧がありました。思い返すだけでワクワクします。

     ですが、『時をかける少女』にも、私はたしかに筒井さんの「圧」を感じました。硬派な作品とは全く趣が異なるのですが、そうだからこそ際立つ圧というものもあるのではないでしょうか。

     作品をリードする福島先生はこう語りかけます。

    栞

    「科学というものは、不確かなものを確実にしていかなければならないためのその過程の学問なんだ。だから、科学が発展していくためには、その前の段階として、つねに不確実な、ふしぎな現象がなければならない



     この場面を読んでいて、これは筒井康隆さんの「決意表明」のようなものではないか、と私は思いました。科学の前提にある「不確実性」、そこに「物語」が絡むとこんなにも胸躍るストーリーが生まれるのです。SF世界を自由自在にかける筒井さんが立つ、たしかな土台の存在を感じました。

    福島先生は、熱心にしゃべりはじめた。目は、急に輝きだした。和子はこんな福島先生を見るのははじめてだった。一夫も吾朗も、先生の調子にのまれてかたずをのんで聞いていた。



     福島先生は「筒井さん」で子どもたちは「読者」。私にはそんな風に思えました。胸躍るSF世界を語ってくれる筒井さんと、かたずをのんでそれを聞く私たち。この一説には、筒井作品の魅力がぎゅっと詰まっています。

     上に引用した中盤の場面が、私の言う「圧」だったのですが、伝わったでしょうか。ダイナミックな文章は紙の上で躍動し、時代を超え、世代を超えて私たちを夢中にさせます。

     テレポーテーションとタイムリープの結末はどうなるのでしょうか。読み進めていくと、期待を膨らませた読者を裏切らず、さらに惹きつけるような終盤が待ち受けていました。

    未来への照射力



     結末を知る面白さを損なわないためにネタバレを最小限にさせていただくと・・・終盤にはある「未来人」がやってきます。その未来人が暮らしていたのは、西暦2600年の世界です。

    二六二〇年。原子力の平和利用で、地球の文明は大きく飛躍し、さまざまな科学的な発明が行なわれた。だが一方では、あまりに科学が高度に発達したため、一般の人たちは、これらの科学知識に、ついていくことができなくなってしまった。

    ・・・(中略)そして、二六四〇年。とうとう画期的な発明がなされた。これが・・・



     このあたり、好きな人は本当に好きだと思います。私も大好きです。小学校の時に星新一さんのショートショートをむさぼるように読んでいたことを思い出しました。星さんのショートショートで鍛えられただけあって、このあたりになると想像力がたくましくなります。未来人が時をさかのぼって現代にきたわけとは?一文字も逃すまいと夢中になって読みました。

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     はるか先の未来を描くわけですから、作者は想像力に頼るしかないわけです。想像力が乏しい人だったら、物語はここで一気に枯れていくでしょう。しかし、筒井さんは真逆でした。この場面から、物語はさらにギアを上げ、加速していったのです。そのことが、筒井さんの持つ想像力の豊かさを雄弁に物語っていました。

     誰も知らないことなのに、説得力すら感じてしまうのです。筒井康隆さんは、どんな未来を、どこまで見抜いていたのでしょうか。実際の2600年が訪れるとして(それまでに地球は滅びていると思いますが・・・)、筒井さんの描く世界が待っていたとしても不思議ではない、そんな説得力を帯びた描写でした。

     未来を射抜く、たしかな「照射力」。それもまた筒井さんの作品の魅力です。序盤はまさに「時をかける」ようなストーリーに胸を躍らせ、中盤から終盤にかけての謎解きで圧倒する。筒井康隆さんを堪能させていただいた1冊でした。



    オワリ

     筒井さんの最新作、まだ読んでいないのですが読んでみたいです。ご本人があそこまでおっしゃるのですから、読み手としても相当気合を入れて挑まなければいけないと思っています。

    『旅のラゴス』筒井康隆さん

     『旅のラゴス』のレビューです。謎のヒットが続いているということですが、読まれればきっとその理由が分かると思います。


    小説, 筒井康隆,



    •   24, 2016 18:32