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  •  小説に「超能力」や「テレポート」が出てきたら、みなさんはどう思われるでしょうか?私は、正直言って白けるかもしれません。私は現実感のある小説、特に社会派小説が好きです。その反面SF作品は設定が現実離れしているところに白けてしまい、なかなか入り込めないことが多いように思います。

     しかし、今日ご紹介する作家、山田宗樹さんの作品は別格です。今日は「ギフテッド」という作品を取り上げます。山田宗樹さんの作品の紹介は、「百年法」以来2冊目。それでは、以下「ギフテッド」のレビューです。

    ギフテッド
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    山田 宗樹
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    超能力とテレポート



     冒頭で超能力とテレポート、と書きましたが、この話に出てくるのはそんな超能力とテレポートを使いこなす特殊な能力を持った人間、「ギフテッド」です。

     ギフテッドとは、普通の人間にはない未知の臓器を持った人間のことです。未知の臓器により、ギフテッドは二つの特殊能力を手に入れました。「思念によってものを変化させる力」(=超能力)と、「瞬間的に空間を移動する力」(=テレポート)です。特殊能力を持っていることは政府の人間のみが知る事実であり、政府は誰がギフテッドが把握するために、国民に検査を義務付けています。ただ、ギフテッドがすぐさまこの力を使えるというわけではありません。力の覚醒には、死に追いつめられるという極限の状況が必要でした。

     ギフテッドに特別な配偶をしていた制度が廃止されたことがきっかけに、国民のギフテッドに対する反感が芽生えます。高まる反感がある事件を呼び、ついに・・・。世界の秩序が根底から覆されるような恐ろしい出来事が始まったのです。

    渾身



     超能力にテレポート、という荒唐無稽な設定です。でも、私は全く白けませんでした。どうして白けなかったのか、その理由は作者の力量にあると思います。

     まずはフィクションであることを感じさせない迫力のある描写です。例えばこれは、ギフテッドの超能力により人間が殺害される場面です。

    はっきりと歪んだ。表情が、ではない。文字通り顔そのものが大きく歪んだ。蝋人形が高熱を浴びたように。眼球がねじれて白目と黒目が入り混じる。(中略)男だった物体は、無数の破片となって静かに舞い上がり、美しく幾何学的な模様を宙いっぱいに描いたあと、引力に捉えられ、ゆっくりと降り注ぐ


     
     ・・・渾身の描写です。超能力によって人がばらばらにされるという現実にはありえない場面を描いているのに、この迫力。否が応でも想像力がたきつけられます。太字にした部分は、まるで時間が止まって宇宙が見えるような、そんな壮大さがあります。人が殺害される場面でこういっては何なのですが、美しささえ感じてしまいます。

     そして、構想力と抜群に練られたプロット。予想の斜め上を行くような容赦ない展開が続きます。「百年法」でもそうでしたが、ラスト100ページあたりから怒涛の展開が始まります。今回の結末は「百年法」に比べれば割とおとなしいものでしたが、結末に至るまでは一切気が抜けない緊張した展開が続きます。

     百年法は10年の構想を経て書かれた作品ということです。そこには途轍もないエネルギーが費やされたことと思います。実際、山田さんはインタビューでこんな風に語っています。
     

    山田:次もSFっぽい設定になりそうです。ただ、『百年法』のオビに「これ以上のものは書けません」とコメントしたように、50年に渡る話を10年かけて書いて、上下巻で出してもらったので、それを全部超えるのは今の段階ではまだ想像できませんが。



     そんなことを言いつつ、百年法の発売から2年でこの作品です。確かに百年法を全部超える、とはいかないと思いますが、このクオリティーの高さには舌を巻きます。作家としてのエネルギーに満ち溢れておられるのだと思います。そんなエネルギーを惜しげもなく使った、渾身の作品です。

    現実のちゃぶ台返し



     SF作品の力量は2つで測れると個人的には思っています。

     まずは、「現実にも起こるのではないか、ありえるのではないか」と思わせてしまう迫力のある描写。私は「現実のちゃぶ台返し」と勝手に名付けています。そして、現代社会への教訓です。現実にありえない話を書きながら、最後は現代社会に警鐘を鳴らす。この展開は絶対に必要だと思っています。

     素晴らしい作品はやっぱりどちらも満たしてくれます。

    「人間はどれほど残虐な行為にも、正義という仮面を被せて平気でいられるということだ」


    人は、だれかの血が流れて、自分たちの過ちに気づく。でもまた血は流れる。そしてやっぱり間違っているのだと知る。それでも血は流れつづける。今度流れる血は自分のものかもしれない。本気でそう感じなければ、人は動こうとしない。



     現実を思い起こさせるような描写でゾクリとさせたあと、グサリとくる一言がきます。

    「これが現実です。否定できない現実なのです。目を背けるのはもう止しましょう。(中略)必ずその時は来る。なぜ直視しないのですか



     現代社会がこれからどうなっていくか、誰にも分かりません。私たちが信じられないような「その時」が来るかもしれない。そんな風に思ったとしたら、すっかりSFの虜になっています。現実というちゃぶ台が、ひっくり返されるような錯覚・・・それがSFの醍醐味ですね。





    こちらもどうぞ
    インタビューはこちらから引用しました。
    作家の読書道 山田宗樹さん

    「百年法」のインタビューですが、この作品にも通じる部分が多いです。
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    小説, 山田宗樹,



    •   24, 2015 20:25
  •  こんにちは、おともだちパンチです。今日のブックレビューは、山田宗樹さん「百年法」をご紹介します。
    先日発表した2014年年間ランキングでは第7位に選んだこの作品。手に汗握るストーリー展開もそうですが、作品が投げかけてくるメッセージにも惹きつけられます。詳しく見ていきましょう。以下、「百年法」のレビューです。

    百年法 上百年法 上
    (2012/07/28)
    山田 宗樹

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    抜群の構成力



     新技術「HAVI」により、老化しない身体を手に入れた人類。そんな不老化処置を受ける代わりに受け入れなければいけなかったのが「寿命百年」。処置を受けた者は、その百年後に国家によって安楽死させられます。逃亡すればそ即犯罪者。国家に追われ、強制的に安楽死処置を受けることになります。

     この「百年法」を巡って揺れ動く世界を描いた、壮大なSF作品、それが「百年法」です。そのスリリングで先の読めないストーリー展開はこれまで読んだ本の中でもトップクラス! 上巻は百年法が国民投票によって凍結されるという出来事に憤慨した遊佐という男が、ある政治家を見方につけて権力を掌握していく過程が緊迫感たっぷりに描かれます。期待して読む下巻はさらに圧巻!後半の「クーデター」以降は息もつけないような流れの連続です。そして、ようやく事態が落ち着いかと思われた時、突きつけられたのは「百年法」そのものを覆す衝撃的な事実でした・・・。

     いやー、煽りがいのある小説です(笑)。しかし、ここに書いたことは決して過剰な煽りではありません。この小説の抜群の構成力には本当に驚かされます。極上のエンターテインメント、そんな言葉を送りたい作品です。

    百年という年月



     この小説、現代社会に訴えてくるものも多いと思います。その理由の1つに「百年」という年月があるのではないか、と思います。「老化しない代わりに、寿命を百年に定める」。さてこれはどうなんだろうと考えた時に、「百年」という寿命が絶妙な位置にあることに気付きます。厚生労働省の発表によると、2013年現在の日本人の平均寿命は女性が86.61歳(世界1位)、男性が80.21歳(世界4位)となっています。寿命百年、おそらくそう遠くない時代の出来事です。この、現実と、遠くない未来の間にくっきりと浮かんでくる「百年」という数字。SFでありながら作品に入り込める所以はここにありそうです。

     老化しないで百年生きられるなら万々歳でしょう、と思う人もいるかもしれません。私も、読むはじめは「百年生きられれば上等じゃない?」そんな風に思っていました。でも、違うんですね。大事なのは、

           自分の命が終わる日が決まっていること。自分の命が、国家によって奪われること。 
    このことの恐怖を軽視していました。実際、百年法を突き付けられて世界は儚いほどに脆い・・・。以下は本文からの引用です。

    人間は、無限の時間を生きるには、複雑すぎる生き物だ



    生と死の境界を失った者にとって、永遠に生きることは、死ぬことと完全にイコールとなる。


    「人間の心は弱いものです。しかし、死を恐れるその弱さこそが、人類の文明をここまで発展させてきた原動力でもあると、私は考えます。人間の人間たる所以は、その弱さにある。だからです」



    生死という禁断の領域に足を踏み入れてしまった世界。そんな世界には、当然のごとく報いが待っていました。皮肉にも、「百年法」のある世界は、その半分である50年もたたないうちに・・・。気になった方はぜひ手に取ってみてください。

    迫りくるリアリティー




     最後の1行はまさに渾身。嘆息してページを閉じます。しかし、そこで終わらないのがこの小説の凄みです。「現代社会はどうだろう」そう考えた時に、身に迫ってくる感覚があります。

     寿命百年の時代は、そう遠くないうちにやってくるでしょう。ただ、忘れてはいけないのが、「高齢者を支える若者が圧倒的に不足している」ということ。「孤独死」「地方消滅」そんな言葉で、近い将来に警鐘が鳴らされています。果たして、この先、人間の生命の尊厳は保たれるのか・・・。もしかしたら、近い将来に行き場のない人間が路上で死に果てていく光景があるのかもしれない。そんな想像すらさせてしまう、どこまでも恐ろしい作品でした。


    小説, 山田宗樹,



    •   27, 2015 22:20
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