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  •  土・日・月と、プレゼンのための資料をつくっていました。久しぶりに更新します。どれだけ頑張って資料を作っていっても、先生に叱られるのが決定事項・・・。なかなか堪えますが、そんなことを言っていても仕方がありません。「先生の前で言い訳をしない」ということだけは心がけておきたいと思います(発表前からすごい悲壮感ですね)。今週は、修羅場!

    海に生くる人々 (岩波文庫)
    葉山 嘉樹
    岩波書店
    売り上げランキング: 539,037


     実生活が修羅場なら本の内容は心が温まるものに・・・と言いたいところですが、残念ながら私が読んだ本は実生活以上の修羅場でした。本から血の生臭い匂いがしてくるようです。葉山嘉樹の「海に生くる人々」という作品を紹介します。



    蟹工船の元ネタ



     これまでに紹介した日本文学に比べると、だいぶ知名度が劣るかもしれません。この作品は、「プロレタリア文学」の代表的な作品の一つにあげられます。

    プロレタリア文学・・・戦前の日本文学のひとつ。1920年代~30年代。社会主義や共産主義の思想を大きく反映している。「プロレタリア」は労働者階級、無産者階級のこと。



     「海に生くる人々」は分からなくても、「蟹工船」ならほとんどの人が分かります。 蟹工船はご存知小林多喜二の小説で、近年「蟹工船ブーム」で再脚光を浴び、爆発的に売れました。特に若い世代からは人気があります。(どうして若い世代に人気があるのでしょう??理由はのちほど)

     恥ずかしながら、私も去年初めて「蟹工船」を読みました。その解説で出てきたのがこの作品です。知名度では圧倒的に蟹工船が有名ですが、実はこの作品、蟹工船の元ネタになった作品です。

     読んでみて驚きます。「蟹工船」とうり二つです。特にプロットはそっくりそのままで、「蟹工船」のアレンジを読んでいるようでした。ですが元になっているのはこちらの作品です。小林多喜二はこの作品から強い影響を受けたと言われています。

     読んでみての感想ですが、私はもっとこちらの作品が脚光を浴びてもよいのではないか、と思います。蟹工船はアマゾンのレビューがたくさんあるのに、この本はわずか1件(!)そりゃないよ・・・という感じです。

    真っ向からの反論



     プロレタリア文学の作品を2冊読んでの感想なのですが、私にとってはあまり好きにはなれないジャンルだと思います。やはり、文学にこれほどイデオロギーが介入していることが受け入れられないのかもしれません(ここでのイデオロギーとは社会主義、共産主義になります)。

     ここまでイデオロギーが介入するということで、プロレタリア文学はかなり特殊なジャンルです。過酷な時代の状況が伝わってきて、まるでページに血の香りがにじんでいるようでもあります。

     そんな風に「苦手」と言っておきながらですが、この作品で語られていることは紛れもない「正論」です。正論だからこそ、読み手に刺さり、読み手を苦しめるのだと思います。「労働者」と「資本者」。絶対に乗り越えられない階級の壁がありありと描かれています。

    人間が人間を喰う時代の存続する限り、労働者は、その生命が軛(くびき)の下にあることを自覚しなければいけない

    疾病や負傷や死までが、生活に疲れ、苦痛になれた人たちにとっては軽視されるものだ。生活に疲れた人々は、その健全な状態においてさえ、疾病や負傷の時とあまり違わない苦痛に満たされているのだ。



     「人間が人間を喰う時代」の部分は思わず唸ってしまいました。もちろんここに書かれていることは全てが純粋な事実というわけではないですし、演出も大いに含まれています。それでも、労働者がゴミのように扱われる様子が克明に綴られていくプロレタリア文学を読む際は、相当の心の痛みを伴います。社会主義や共産主義というのは置いておいても、「人間らしく生きたい」というのは、誰もが思う根源的欲求です。

     この作品の発表から約90年たっても、「人間が人間を喰う時代」自体は何一つ変わっていないことには虚しさを覚えるしかありません。

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     そんな労働者たちが、一致団結しストライキを起こす、というのがこれらの作品の流れです。

    「人間を、軽蔑する権利は、だれもが許されていないんだ。また、他人の生命を否定するものは、その生命も、否定されるんだ!わかったか」


     力強いメッセージだったので、全部太字にしました。この言葉を否定できる人はいないと思います。彼らの主張はまぶしいくらいの正論なのです。

     この作品の結末はどうなると思いますか?この作品も、「蟹工船」もまったく同じです。労働者は団結して声をあげるのですが、それはあまりにあっけなく、一瞬で握りつぶされます―。

    蟹工船ブームに想う




     冒頭でも書きましたが、近年、「蟹工船ブーム」が起こり、「蟹工船」が再び光を浴びるようになりました。2か月で30万部売れたとか!新刊でも2か月30万部はとてつもなく高いハードルです。どれだけ爆発的ヒットか分かります。

     このブームを支えたのが、若年層、特にニートやフリーターと呼ばれる人たちだったそうです。このころは、「格差社会」「派遣切り」「年越し派遣村」「ワーキングプア」こんな言葉が飛び交う時代でした。なるほど、困窮する若者が「蟹工船」に自分たちを重ねたくなるわけです。

     もちろん「蟹工船」からも学ぶことはあると思います。でも、「蟹工船」は小説です。この「海に生くる人々」も小説です。小説の中で労働者は華々しく革命を起こしますが、現実はどうでしょうか・・・。この時代の労働者と、現代の若者を一緒にしていいのか、という問題もあります。「蟹工船ブーム」にはあまり熱くなりすぎず、冷静な目を持つべきだと思います。

     それにしても、悲しいです。「蟹工船」がこんなにも読まれている現代が。特に若者が、「蟹工船」に陶酔する現代が・・・。

     最後に、「海に生くる人々」に戻ります。このタイトルがとても良いです。「海」という言葉にはある意味が込められていました。今日の最後は、その部分で締めくくります。

    海は最も低いところで、そこへ流れて来た「人間のくず」どもは、現社会の一切ののろいを引き受けているように見えた。



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    生這い上がれない社会という海の底・・・。この作品が読み継がれること自体が最大の不幸なのかもしれません。

     今日は気分が悪くなるようなレビューでしたね。プロレタリア文学は好きになれそうにないですが、時間を置いてまた読みたいと思います。というか、「読まなければいけない」と思います。
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    近代日本文学, 葉山嘉樹,



    •   25, 2015 22:43
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