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 カテゴリ「思想・哲学」のまとめページです。このブログで紹介している思想・哲学の本を一覧で掲載しています。リンクからそれぞれの本の書評をご覧になることができます。蔵書は少ないですが、一冊一冊、心を込めて紹介するようにしています。ぜひご覧ください。なお、掲載順は作者名のあいうえお順です。

 この図書館では、とくに優れていると感じた本について、「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」の3段階で「殿堂入り」としています。殿堂入りとした本には、作品名と作者名のあとにランクを記しています。ぜひ、本選びの参考にしてみてください。

 あなたの、あなただけの一冊が見つかりますように。



思想・哲学




『読書について』 ショウペンハウエル


『武士道』 新渡戸稲造


『福翁自伝』 福沢諭吉(ゴールド)


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  •   01, 2015 00:00
  • 新訂 福翁自伝 (岩波文庫)
    福沢 諭吉
    岩波書店
    売り上げランキング: 4,125

    由で鷹揚な学びの姿

     こんにちは、おともだちパンチです。昨日今日と大学入試センター試験が開催されました。無事に試験を終えられた受験生の皆様、お疲れ様です。厳しい戦いはまだまだ続きますが、今日1日ぐらいは体と心を休めてあげてください。応援しております。
     さて、今日のブックレビューです。センター試験終了日にお届けする1冊として福沢諭吉「福翁自伝」を選びました。輝きを放つ「学び」という営みを知ることができる一冊だと思います。以下、「福翁自伝」のレビューです。



    自分をさらけ出すこと



     1万円札の肖像になっており、「学問のすすめ」で名高い思想家、福沢諭吉がその人生の集大成として世に残したのがこの自伝書、「福翁自伝」です。大変優れた自伝書としてその評価を確立させている本冊。その要因は、福沢諭吉が自分の弱い面、至らない面も含めすべてをさらけ出している点に挙げられると思います。岩波文庫版解説の小泉信三・富田正文両名もこの点を指摘しておられます。大酒をくらい、全裸で横になっているときに名前を呼ばれ、そのまま全裸で飛び出していく諭吉、暗殺を恐れ、偽名で旅を続ける諭吉など、「学問のすすめ」からは想像もつかない姿が描かれます。自分の未熟さ、至らなさ、そういった面も直視できていることがこの自伝の大きな魅力です。

    枕のない部屋



     こんな印象的なフレーズがあります。

    「なるほど枕はない筈だ、これまで枕をして寝たことがなかったから」


     

     自分の部屋に枕がないことに気付いた諭吉はふと思案します。「なぜこの部屋には枕がないのだ?」、その思案の末にたどり着いた答えがこちらです。朝から晩まで夢中で書物を読み漁り、「寝る」という行為にはまったく意識がむいていなかった諭吉。そのまま床で横になるなどしていたため、枕など必要なかったんですね。そして、枕がないことに気付きもしなかった、と。新たな書物に目を輝かせ、貪欲に知識を吸収しようとする諭吉の姿が目に浮かぶような印象的な一説です。

    「目的のない」学び



     諭吉が緒方洪庵の開いた適塾の下で同士と学んだ環境は、まさに学問の理想郷でした。自由で鷹揚としており、刺激に満ち溢れたその空間の素晴らしさがありありと伝わってきます。そして、そんな日々を振り返って、諭吉は「目的のない勉強」が大切だ、と説くのです。あくせくした勉強では決して真の勉強はできない、就学勉強中は静かに居るべき、こんな風に説いています。よく「何のために勉強するのか」という問いがなされます。しかし、この問い自体が間違いなのかもしれません。学びに没頭する諭吉には学ぶ目的など必要なかったようです。

     そんな理想の学びを見てみましたが、現実はこんなに美しくありません。センター試験を受験された皆さんは、大学進学という目的のもと、「成果」を求めて試験に挑まれたことと思います。大学に入っても、後半になれば就活を迎え、また成果を求めてあくせくする日々。そして、就職すると・・・以下省略です。
     成果を求めるという側面が薄まる時期が大学生の前半だと思います。この時期は自分の過ごしたいように過ごしてよいと思います。よい意味で「目的のない」素晴らしい日々が送れる最後のチャンスかもしれません。辛い受験ですが、この大学生前半を過ごす資格を得るためのものと考えて耐えてほしいです。長いこと書きましたが、とにかく・・・・がんばれ!

     受験が冬にあるのって辛いですよね。まだまだ寒い時期が続くように、センターが終わっても厳しい戦いが続きます。手をかじかませながら、足元で滑らないように気を付けながら・・・。「受験=冬」というのは残酷です。あ、でも・・・。

     あと2か月もすれば、春がやってくるんですね。

    ◆殿堂入り決定!

     「最果ての図書館」は『福翁自伝』を「ゴールド」に認定しました。おめでとうございます!






    福沢諭吉, 岩波文庫,



    •   18, 2015 18:35
  •  今日のブックレビューは、新渡戸稲造「武士道」をご紹介します。すうっと背が伸びるような、緊張感が走る文章でした。ただ、全面的に肯定できるかと言われたら、そうではない部分もあったかもしれません。それでは、以下、「武士道」のレビューです。

    武士道 (岩波文庫 青118-1)
    新渡戸 稲造
    岩波書店
    売り上げランキング: 10,061



    溢れる知性と誇り



     武士道は、新渡戸稲造が1900年に著した思想書です。日本の土壌で育まれてきた精神、すなわち「武士道」について考察しています。

     特徴は、高潔で知性と誇りに溢れる文体です。引用や引き合いに出される表現は豪華絢爛です。たとえば伊達政宗、吉田松陰から上杉謙信、さらにはソクラテスにシェイクスピアから孔子、孟子まで! いくつか名前を出してみましたが、その豪華さが伝わるかと思います。古今東西の偉人、名言を存分に詰め込んだ教科書のような1冊です。そして、そんな豪華な引用に気圧されることなく、新渡戸の文体にも高潔さが漂います。たとえば冒頭の文。

    武士道はその表微たる桜花と同じく、日本の土地に固有の花である。(中略)それは今なお我々の間における力と美との活ける対象である。



     武士道を桜の花にたとえています。思わず嘆息しました。「美しい文」とはこういう文のことをいうのでしょうね。

    命と隣り合わせ



     全体的に見れば、その思想の深さと論理の明快さで名著で間違いないと思います。ただ、何か所かこちらが気圧されるというか、考え込んでしまう箇所がありました。それは、「死」が絡んでくる箇所です。

     例えば、名誉について書かれた第8章。世間的賞賛を浴びる名誉は至高善である、として貴ばれています。そして、こんな記述が。

    もし名誉と名声が得られるならば、生命そのものさえも廉価と考えられた。それ故に生命よりも高価であると考えられる事が起れば、極度の平静と迅速とをもって生命を棄てたのである。



    ん、ん、ん・・・・。

     第12章は自殺や仇討について。切腹の様子がまざまざと描かれており、その緊張感に思わず息を飲みます。血が吹きばしる様子、静寂の中で落ちる首・・・そんな凄惨な死にざまなのですが、新渡戸は切腹を高貴な死であると評価するのです。ガースのこんな歌を引用しています。

    名誉の失われし時は死こそ救いなれ、死は恥辱よりの確実なる避け所



    ん、ん、ん・・・・。

     ページをめくる手が止まります。武士が潔く、名誉を重んじ、屈辱を恥じる生き方ができた原因は、その懐に携えていた刀にあります。「命」という究極の方法で、穢れた生き方を断ち切ろうとしたのです。ここまで読んでくださった皆さん、この考えにどこまで共感しますか?

     おそらく、日本人は多少共感する部分があるかと思います。先週から緊張が続いているイスラム国による日本人人質事件で、某有名人がこんなコメントをしました。

     「被害者は自らの行為で多大な迷惑をかけた。自決すべきである」
     まさに、といった感じの日本人的考えです。そして、このコメントに対するリアクションに多いのが、「そういったことを有名人が言ってはいけないが、本質はそうである」というもの。 

    ん、ん、ん・・・・。
    どうなのでしょうね?

    やむにやまれぬ大和魂



    かくすれば かくなるものと 知りながら やむにやまれぬ大和魂

     吉田松陰が処刑される前日に詠んだ歌です。新渡戸も引用しています。「大和魂」これは日本人が背負う宿命なのだと思います。人情や、義理、名誉を重んじ、恥を徹底的に嫌う。誇るべき精神です。ずっとそんな精神を持っていたい。 

     だけど、違いますよね。変な同調圧力で、失敗した人を徹底的に叩きのめすことは。

     責任を、命をもって償えということは。

     「武士道」を読み違えないようにしたいのです。

    一般書, 岩波文庫, 新渡戸稲造,



    •   31, 2015 23:35
  •  
     今日のブックレビューはショウペンハウエルの「読書について」をご紹介します。大学の講義で取り上げられた本です。教授がすごくおすすめしていたので、気になって読んでみました。

     読書について書かれた本はたくさんあります。その多くは、読書を肯定的に捉え、「とにかくたくさん本を読め!」と主張するものです。そんなことが言われると期待してこの本を読むと、手痛いしっぺ返しを食らいます。読書好きにはなかなか厳しい言葉が並んだ1冊で、ちょっと今落ち込んでいます・・・。どんなことが書かれているのでしょうか。それでは、以下「読書について」のレビューです。

    読書について 他二篇 (岩波文庫)
    ショウペンハウエル
    岩波書店
    売り上げランキング: 4,761





    読書は借り物



     ショウペンハウエル(ショウペンハウアー)はドイツの哲学者です。「幸福について」や「自殺について」などの著作があります。この本「読書について」では、思索、著作と文体、そして読書と3つのテーマについて語っています。岩波文庫で読んだのですが、わずか113ページしかない薄い本です。ですが、内容は真理を鋭く突いていて、全く「無駄」を感じさせない文章でした。

     著者は読書をこんな風に捉えています。

    読書は、他人にものを考えてもらうことである。本を読む我々は、他人の考えた後を反復的にたどるにすぎない。


    読書は思索の代用品にすぎない。読書は他人に思想誘導の務めをゆだねる


     て、手厳しい・・・。読書をしているときの私たちの頭は「他人の思想の運動場」だと述べ、自分の頭で考えていないから私たちは読書をしてほっとした気持ちになるのだと主張しています。そして、読書をしていくうちに、私たちはものを考える力を失っていく、と警鐘を鳴らすのです。今時の言い方で言えば、「読書をディスっている」一冊です。読書が好きで、読書は自分のためになっていると思っているような私にとっては、あまりにも厳しい言葉が続きます。

     著者の厳しい言葉はまだまだとどまるところを知りません。

    引用の是非



     著者が批判するのは読書だけにとどまりません。著者は、読書を批判するというより、「自分の頭でものを考えないこと」を批判しているといった方がいいかもしれません。

     他人の知識をかき集めて、量だけ増やしてもそれは見かけ倒し!
     難しい言葉を使って深遠な文章に見せるけども、結局は何が言いたいのか分からない!
     引用は他者の権威を借りて、手軽に喜びを感じているだけ!

     厳しい批判がこれでもかと続きます。鋭く正論をついてくるだけに、言い返すことばもありませんでした。特に私が気になったのは、引用について述べられた部分です。私はレビューを書くときに作者の文をたくさん引用しています。ですから、安易な引用をいさめる著者の主張がとても気になりました。

    世間普通の人たちはむずかしい問題の解決にあたって、熱意と性急のあまり権威ある言葉を引用したがる。彼らは自分の理解力や洞察力の代わりに他人のものを動員できる場合には心の底から喜びを感ずる。



     うーん・・・。確かに、そういった一面もあるかもしれません。引用をすると、一気に文の質が上がったように見えます。有名な作品の有名な一説であればなおさらです。権威のある言葉を借りて、自分の文を着飾っているというのは鋭い指摘です。

     私は「引用=信用」だと思っています。何を引用するか、どのように引用するかによって、その人の力量が分かります。ショウペンハウエルの言うように、単に有名な作品を引用するだけでは、書いている人に力がないことが明らかになってしまいます。大学の先生も言っていました。「参考文献を見れば、レポートのクオリティーがだいたい分かるんだよ」-。

     また、引用をすることでその作品の雰囲気を分かってもらえる、という良さもあります。ですからレビューでは必ず引用を入れるようにしています。それが「自分の頭で考えていない」というのはすごく痛い指摘ですね。だからこそ、「自分が何を思ったか」が重要になってきます。引用が単なるコピーにならないように、自分の文の中で最大限に生かせるように、そんな教訓にたどり着きます。

    真理は美しい



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     読書をしている自分が馬鹿にされているようで、腹立たしい箇所もあるのですが、総合的に見ればやはり真理を鋭く突いた名著だと思います。こんな一説があります。

    真理はそのままで最も美しく、簡潔に表現されていればいるほど、その与える感銘はいよいよ深い



     その通りだと思います。そして、それを体現しているのがこの本です。薄い本ですが、それゆえに無駄がない。簡潔に、包み隠さず真理を突いてきます。読書をしていること自体は別にえらくもなんともないし、読書が役に立つかと言えば必ずしもそうではありません。役に立たせる必要もないと思います。

     それを踏まえても、やっぱり本を読もうという気になります。「趣味」とか「娯楽」とか、読書はそういった次元でいいのだと思います。レビューもまたいつものように書いていきますね。結局は、読むことも書くことも大好きです。

     書いていて気付いたのですが、今は「読書すら」しない時代です。大学生の4割は、月に1冊も本を読まないそうです(それがいいのか悪いのかは別にして)。この作品が書かれた時代は、読書は何も生み出さない、読書をするくらいなら外で遊べ、そんなことが思われている時代でした。ですが今は、昔の「読書」のポジションが「スマホ」に変わっています。

     読書をしたら、ものを考えなくなる、と警鐘を鳴らす著者。もし、今の時代にやってきたらなんと言うでしょうか。

    ◆殿堂入り決定!

    「最果ての図書館」は『読書について』を「シルバー」に認定しました。おめでとうございます!





    こちらもどうぞ

     今日は岩波文庫の本を紹介しました。岩波文庫は日本や世界の名著が揃う歴史ある文庫です。大学の図書館でよく借りています。内容は難しいですが、背伸びをせず、自分の分かる範囲で噛み砕いて読んでいます。岩波文庫のレビューはこれで4冊目。なるべく分かりやすく書いているので、過去のレビューもぜひどうぞ。

    「福翁自伝」 福沢諭吉

    「忘れられた日本人」 宮本常一

    「武士道」 新渡戸稲造


    岩波文庫, ショウペンハウエル,



    •   01, 2015 17:34