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 今日のブックレビューはショウペンハウエルの「読書について」をご紹介します。大学の講義で取り上げられた本です。教授がすごくおすすめしていたので、気になって読んでみました。

 読書について書かれた本はたくさんあります。その多くは、読書を肯定的に捉え、「とにかくたくさん本を読め!」と主張するものです。そんなことが言われると期待してこの本を読むと、手痛いしっぺ返しを食らいます。読書好きにはなかなか厳しい言葉が並んだ1冊で、ちょっと今落ち込んでいます・・・。どんなことが書かれているのでしょうか。それでは、以下「読書について」のレビューです。

読書について 他二篇 (岩波文庫)
ショウペンハウエル
岩波書店
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読書は借り物



 ショウペンハウエル(ショウペンハウアー)はドイツの哲学者です。「幸福について」や「自殺について」などの著作があります。この本「読書について」では、思索、著作と文体、そして読書と3つのテーマについて語っています。岩波文庫で読んだのですが、わずか113ページしかない薄い本です。ですが、内容は真理を鋭く突いていて、全く「無駄」を感じさせない文章でした。

 著者は読書をこんな風に捉えています。

読書は、他人にものを考えてもらうことである。本を読む我々は、他人の考えた後を反復的にたどるにすぎない。


読書は思索の代用品にすぎない。読書は他人に思想誘導の務めをゆだねる


 て、手厳しい・・・。読書をしているときの私たちの頭は「他人の思想の運動場」だと述べ、自分の頭で考えていないから私たちは読書をしてほっとした気持ちになるのだと主張しています。そして、読書をしていくうちに、私たちはものを考える力を失っていく、と警鐘を鳴らすのです。今時の言い方で言えば、「読書をディスっている」一冊です。読書が好きで、読書は自分のためになっていると思っているような私にとっては、あまりにも厳しい言葉が続きます。

 著者の厳しい言葉はまだまだとどまるところを知りません。

引用の是非



 著者が批判するのは読書だけにとどまりません。著者は、読書を批判するというより、「自分の頭でものを考えないこと」を批判しているといった方がいいかもしれません。

 他人の知識をかき集めて、量だけ増やしてもそれは見かけ倒し!
 難しい言葉を使って深遠な文章に見せるけども、結局は何が言いたいのか分からない!
 引用は他者の権威を借りて、手軽に喜びを感じているだけ!

 厳しい批判がこれでもかと続きます。鋭く正論をついてくるだけに、言い返すことばもありませんでした。特に私が気になったのは、引用について述べられた部分です。私はレビューを書くときに作者の文をたくさん引用しています。ですから、安易な引用をいさめる著者の主張がとても気になりました。

世間普通の人たちはむずかしい問題の解決にあたって、熱意と性急のあまり権威ある言葉を引用したがる。彼らは自分の理解力や洞察力の代わりに他人のものを動員できる場合には心の底から喜びを感ずる。



 うーん・・・。確かに、そういった一面もあるかもしれません。引用をすると、一気に文の質が上がったように見えます。有名な作品の有名な一説であればなおさらです。権威のある言葉を借りて、自分の文を着飾っているというのは鋭い指摘です。

 私は「引用=信用」だと思っています。何を引用するか、どのように引用するかによって、その人の力量が分かります。ショウペンハウエルの言うように、単に有名な作品を引用するだけでは、書いている人に力がないことが明らかになってしまいます。大学の先生も言っていました。「参考文献を見れば、レポートのクオリティーがだいたい分かるんだよ」-。

 また、引用をすることでその作品の雰囲気を分かってもらえる、という良さもあります。ですからレビューでは必ず引用を入れるようにしています。それが「自分の頭で考えていない」というのはすごく痛い指摘ですね。だからこそ、「自分が何を思ったか」が重要になってきます。引用が単なるコピーにならないように、自分の文の中で最大限に生かせるように、そんな教訓にたどり着きます。

真理は美しい



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 読書をしている自分が馬鹿にされているようで、腹立たしい箇所もあるのですが、総合的に見ればやはり真理を鋭く突いた名著だと思います。こんな一説があります。

真理はそのままで最も美しく、簡潔に表現されていればいるほど、その与える感銘はいよいよ深い



 その通りだと思います。そして、それを体現しているのがこの本です。薄い本ですが、それゆえに無駄がない。簡潔に、包み隠さず真理を突いてきます。読書をしていること自体は別にえらくもなんともないし、読書が役に立つかと言えば必ずしもそうではありません。役に立たせる必要もないと思います。

 それを踏まえても、やっぱり本を読もうという気になります。「趣味」とか「娯楽」とか、読書はそういった次元でいいのだと思います。レビューもまたいつものように書いていきますね。結局は、読むことも書くことも大好きです。

 書いていて気付いたのですが、今は「読書すら」しない時代です。大学生の4割は、月に1冊も本を読まないそうです(それがいいのか悪いのかは別にして)。この作品が書かれた時代は、読書は何も生み出さない、読書をするくらいなら外で遊べ、そんなことが思われている時代でした。ですが今は、昔の「読書」のポジションが「スマホ」に変わっています。

 読書をしたら、ものを考えなくなる、と警鐘を鳴らす著者。もし、今の時代にやってきたらなんと言うでしょうか。

◆殿堂入り決定!

「最果ての図書館」は『読書について』を「シルバー」に認定しました。おめでとうございます!





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 今日は岩波文庫の本を紹介しました。岩波文庫は日本や世界の名著が揃う歴史ある文庫です。大学の図書館でよく借りています。内容は難しいですが、背伸びをせず、自分の分かる範囲で噛み砕いて読んでいます。岩波文庫のレビューはこれで4冊目。なるべく分かりやすく書いているので、過去のレビューもぜひどうぞ。

「福翁自伝」 福沢諭吉

「忘れられた日本人」 宮本常一

「武士道」 新渡戸稲造


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  •   01, 2015 17:34