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  •  金沢生まれの詩人、室生犀星。犀星は多くの小説も書き残しています。小説では、詩人犀星の美しい感性が瑞々しい文章で綴られています。詩とは異なる魅力を感じることができる小説。手に取ってみてはいかがでしょうか。



     岩波文庫版には、「幼年時代」「性に眼醒める頃」、そして表題作の「或る少女の死まで」の三篇が収録されています。



    一行レビュー図書館



    一行レビュー図書館

     本の内容や魅力を箇条書きで簡潔に紹介する「一行レビュー図書館」です。

    ・室生犀星の自伝的小説
    ・金沢で生まれ、詩人を志し、そして東京へと旅立つ犀星
    ・その人生が小説の形で、美しく、瑞々しい筆致で描かれている

    ・金沢の雄大な自然、そして北陸の厳しい冬
    ・そこで育まれた詩人としての豊かな感性
    優れた色彩感覚とどこか宗教的な雰囲気が読者を魅了する

    ・「金魚」や「鯉」、「子供の表情」を捉える独特の色彩感覚
    ・詩人の美しき感覚世界を体験できる贅沢な描写
    ・性的衝動や、大切な人の死-それらに出会った時の心の揺れ動きも絶品

    ・おすすめの一篇は「性に眼醒める頃」
    ・十七歳の少年が、性的衝動に出会う時…
    ・「罪悪感」「秘密の共有」と絡まり昂ぶる恋心。
    ・誰もがきっと共感できる、瑞々しい恋のおはなし。

    ブクログ感想 & 引用



     ブクログに投稿した感想と本の中から印象的なフレーズを抜き出した引用のコーナーです。ブクログには他の方の感想も多数投稿されています。本との出会いを探しに行ってみてはいかがでしょうか。


    室生犀星の自伝的小説です。「幼年時代」「性に眼醒める頃」「或る少女の死まで」の三篇が収録されています。詩人犀星の美しい感性が織りなす瑞々しい文章と全体に漂うどこか宗教的な雰囲気に魅了されました。

    最も印象的な一篇として「性に眼醒める頃」を挙げたいと思います。小説としての完成度がとても高いと感じました。作品の中に効果的に山が設けられ、読者の感情の昂揚を誘います。自伝的小説とのことでしたが、この作品に関しては完成度の高い創作物を読んでいる気分になりました。

    恋心に眼醒める17歳の少年。芽生えたその思いが、「罪悪感」や「秘密の共有」といった刺激と絡みついて昂ぶりを見せていきます。彼女の雪駄にそっと足を差し入れてみるシーンなどはもうたまりません。作中で全身を火照らせる少年と同じく、読んでいる私の身体まで火照ってしまいました。性的衝動を瑞々しく、見事に綴ってみせた佳篇です。



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    何者をもその存在する事実は許さなければならない。たとえ盗人でも殺人でも、そうしたものの必然に生れてゆくことを根絶することはできない。ただ、その事実に愛をもてない。喜べない。 234ページ



     室生犀星 『或る少女の死まで 他二篇』 の紹介でした。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



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    室生犀星, 岩波文庫, 近代日本文学,



     
     今日のブックレビューはショウペンハウエルの「読書について」をご紹介します。大学の講義で取り上げられた本です。教授がすごくおすすめしていたので、気になって読んでみました。

     読書について書かれた本はたくさんあります。その多くは、読書を肯定的に捉え、「とにかくたくさん本を読め!」と主張するものです。そんなことが言われると期待してこの本を読むと、手痛いしっぺ返しを食らいます。読書好きにはなかなか厳しい言葉が並んだ1冊で、ちょっと今落ち込んでいます・・・。どんなことが書かれているのでしょうか。それでは、以下「読書について」のレビューです。

    読書について 他二篇 (岩波文庫)
    ショウペンハウエル
    岩波書店
    売り上げランキング: 4,761





    読書は借り物



     ショウペンハウエル(ショウペンハウアー)はドイツの哲学者です。「幸福について」や「自殺について」などの著作があります。この本「読書について」では、思索、著作と文体、そして読書と3つのテーマについて語っています。岩波文庫で読んだのですが、わずか113ページしかない薄い本です。ですが、内容は真理を鋭く突いていて、全く「無駄」を感じさせない文章でした。

     著者は読書をこんな風に捉えています。

    読書は、他人にものを考えてもらうことである。本を読む我々は、他人の考えた後を反復的にたどるにすぎない。


    読書は思索の代用品にすぎない。読書は他人に思想誘導の務めをゆだねる


     て、手厳しい・・・。読書をしているときの私たちの頭は「他人の思想の運動場」だと述べ、自分の頭で考えていないから私たちは読書をしてほっとした気持ちになるのだと主張しています。そして、読書をしていくうちに、私たちはものを考える力を失っていく、と警鐘を鳴らすのです。今時の言い方で言えば、「読書をディスっている」一冊です。読書が好きで、読書は自分のためになっていると思っているような私にとっては、あまりにも厳しい言葉が続きます。

     著者の厳しい言葉はまだまだとどまるところを知りません。

    引用の是非



     著者が批判するのは読書だけにとどまりません。著者は、読書を批判するというより、「自分の頭でものを考えないこと」を批判しているといった方がいいかもしれません。

     他人の知識をかき集めて、量だけ増やしてもそれは見かけ倒し!
     難しい言葉を使って深遠な文章に見せるけども、結局は何が言いたいのか分からない!
     引用は他者の権威を借りて、手軽に喜びを感じているだけ!

     厳しい批判がこれでもかと続きます。鋭く正論をついてくるだけに、言い返すことばもありませんでした。特に私が気になったのは、引用について述べられた部分です。私はレビューを書くときに作者の文をたくさん引用しています。ですから、安易な引用をいさめる著者の主張がとても気になりました。

    世間普通の人たちはむずかしい問題の解決にあたって、熱意と性急のあまり権威ある言葉を引用したがる。彼らは自分の理解力や洞察力の代わりに他人のものを動員できる場合には心の底から喜びを感ずる。



     うーん・・・。確かに、そういった一面もあるかもしれません。引用をすると、一気に文の質が上がったように見えます。有名な作品の有名な一説であればなおさらです。権威のある言葉を借りて、自分の文を着飾っているというのは鋭い指摘です。

     私は「引用=信用」だと思っています。何を引用するか、どのように引用するかによって、その人の力量が分かります。ショウペンハウエルの言うように、単に有名な作品を引用するだけでは、書いている人に力がないことが明らかになってしまいます。大学の先生も言っていました。「参考文献を見れば、レポートのクオリティーがだいたい分かるんだよ」-。

     また、引用をすることでその作品の雰囲気を分かってもらえる、という良さもあります。ですからレビューでは必ず引用を入れるようにしています。それが「自分の頭で考えていない」というのはすごく痛い指摘ですね。だからこそ、「自分が何を思ったか」が重要になってきます。引用が単なるコピーにならないように、自分の文の中で最大限に生かせるように、そんな教訓にたどり着きます。

    真理は美しい



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     読書をしている自分が馬鹿にされているようで、腹立たしい箇所もあるのですが、総合的に見ればやはり真理を鋭く突いた名著だと思います。こんな一説があります。

    真理はそのままで最も美しく、簡潔に表現されていればいるほど、その与える感銘はいよいよ深い



     その通りだと思います。そして、それを体現しているのがこの本です。薄い本ですが、それゆえに無駄がない。簡潔に、包み隠さず真理を突いてきます。読書をしていること自体は別にえらくもなんともないし、読書が役に立つかと言えば必ずしもそうではありません。役に立たせる必要もないと思います。

     それを踏まえても、やっぱり本を読もうという気になります。「趣味」とか「娯楽」とか、読書はそういった次元でいいのだと思います。レビューもまたいつものように書いていきますね。結局は、読むことも書くことも大好きです。

     書いていて気付いたのですが、今は「読書すら」しない時代です。大学生の4割は、月に1冊も本を読まないそうです(それがいいのか悪いのかは別にして)。この作品が書かれた時代は、読書は何も生み出さない、読書をするくらいなら外で遊べ、そんなことが思われている時代でした。ですが今は、昔の「読書」のポジションが「スマホ」に変わっています。

     読書をしたら、ものを考えなくなる、と警鐘を鳴らす著者。もし、今の時代にやってきたらなんと言うでしょうか。

    ◆殿堂入り決定!

    「最果ての図書館」は『読書について』を「シルバー」に認定しました。おめでとうございます!





    こちらもどうぞ

     今日は岩波文庫の本を紹介しました。岩波文庫は日本や世界の名著が揃う歴史ある文庫です。大学の図書館でよく借りています。内容は難しいですが、背伸びをせず、自分の分かる範囲で噛み砕いて読んでいます。岩波文庫のレビューはこれで4冊目。なるべく分かりやすく書いているので、過去のレビューもぜひどうぞ。

    「福翁自伝」 福沢諭吉

    「忘れられた日本人」 宮本常一

    「武士道」 新渡戸稲造


    岩波文庫, ショウペンハウエル,



    •   01, 2015 17:34
  •  今日のブックレビューは、新渡戸稲造「武士道」をご紹介します。すうっと背が伸びるような、緊張感が走る文章でした。ただ、全面的に肯定できるかと言われたら、そうではない部分もあったかもしれません。それでは、以下、「武士道」のレビューです。

    武士道 (岩波文庫 青118-1)
    新渡戸 稲造
    岩波書店
    売り上げランキング: 10,061



    溢れる知性と誇り



     武士道は、新渡戸稲造が1900年に著した思想書です。日本の土壌で育まれてきた精神、すなわち「武士道」について考察しています。

     特徴は、高潔で知性と誇りに溢れる文体です。引用や引き合いに出される表現は豪華絢爛です。たとえば伊達政宗、吉田松陰から上杉謙信、さらにはソクラテスにシェイクスピアから孔子、孟子まで! いくつか名前を出してみましたが、その豪華さが伝わるかと思います。古今東西の偉人、名言を存分に詰め込んだ教科書のような1冊です。そして、そんな豪華な引用に気圧されることなく、新渡戸の文体にも高潔さが漂います。たとえば冒頭の文。

    武士道はその表微たる桜花と同じく、日本の土地に固有の花である。(中略)それは今なお我々の間における力と美との活ける対象である。



     武士道を桜の花にたとえています。思わず嘆息しました。「美しい文」とはこういう文のことをいうのでしょうね。

    命と隣り合わせ



     全体的に見れば、その思想の深さと論理の明快さで名著で間違いないと思います。ただ、何か所かこちらが気圧されるというか、考え込んでしまう箇所がありました。それは、「死」が絡んでくる箇所です。

     例えば、名誉について書かれた第8章。世間的賞賛を浴びる名誉は至高善である、として貴ばれています。そして、こんな記述が。

    もし名誉と名声が得られるならば、生命そのものさえも廉価と考えられた。それ故に生命よりも高価であると考えられる事が起れば、極度の平静と迅速とをもって生命を棄てたのである。



    ん、ん、ん・・・・。

     第12章は自殺や仇討について。切腹の様子がまざまざと描かれており、その緊張感に思わず息を飲みます。血が吹きばしる様子、静寂の中で落ちる首・・・そんな凄惨な死にざまなのですが、新渡戸は切腹を高貴な死であると評価するのです。ガースのこんな歌を引用しています。

    名誉の失われし時は死こそ救いなれ、死は恥辱よりの確実なる避け所



    ん、ん、ん・・・・。

     ページをめくる手が止まります。武士が潔く、名誉を重んじ、屈辱を恥じる生き方ができた原因は、その懐に携えていた刀にあります。「命」という究極の方法で、穢れた生き方を断ち切ろうとしたのです。ここまで読んでくださった皆さん、この考えにどこまで共感しますか?

     おそらく、日本人は多少共感する部分があるかと思います。先週から緊張が続いているイスラム国による日本人人質事件で、某有名人がこんなコメントをしました。

     「被害者は自らの行為で多大な迷惑をかけた。自決すべきである」
     まさに、といった感じの日本人的考えです。そして、このコメントに対するリアクションに多いのが、「そういったことを有名人が言ってはいけないが、本質はそうである」というもの。 

    ん、ん、ん・・・・。
    どうなのでしょうね?

    やむにやまれぬ大和魂



    かくすれば かくなるものと 知りながら やむにやまれぬ大和魂

     吉田松陰が処刑される前日に詠んだ歌です。新渡戸も引用しています。「大和魂」これは日本人が背負う宿命なのだと思います。人情や、義理、名誉を重んじ、恥を徹底的に嫌う。誇るべき精神です。ずっとそんな精神を持っていたい。 

     だけど、違いますよね。変な同調圧力で、失敗した人を徹底的に叩きのめすことは。

     責任を、命をもって償えということは。

     「武士道」を読み違えないようにしたいのです。

    一般書, 岩波文庫, 新渡戸稲造,



    •   31, 2015 23:35

  •  さて、今日はブックレビューをお届けします。前々回のレビュー、#4 「密やかなライフヒストリー」では小川洋子さんの「人質の朗読会」を取り上げ、ライフヒストリーについて考えてみました。そして前回のレビュー、#5 「命、みなぎる」では三浦しをんさん「神去なあなあ日常」で日本の村社会をのぞいてみました。レビューを書いていて気付いたのですが、この「ライフヒストリー」と「日本の村社会」という2つのキーワードを両方とも満たす作品があるんですね。それが、今日お届けする宮本常一「忘れられた日本人」という本です。早速見ていきましょう。以下、「忘れられた日本人」のレビューです。

    忘れられた日本人 (岩波文庫)
    宮本 常一
    岩波書店
    売り上げランキング: 3,040





    宮本常一の見た日本



     宮本常一さん(1907~1981)は日本の民俗学者です。民俗学者としては、柳田国男さんに次いで有名な方かと思います。柳田さんに影響を受けて民俗学の道に進んだ宮本さんは、その研究人生の大半を日本の村へのフィールドワーク(現地に出かけ、調査すること)に費やしました。そんな彼の代表作であり、集大成ともいえるのがこの「忘れられた日本人」です。

     日本の村社会というと、現代では否定的なコンテクストの中で使われることが多いかと思います。閉鎖的で排他的という特徴を持つものとして論じられ、「村八分」などの慣習が現代社会にも残る日本人の悪習として批判されることも多いです。閉鎖的で排他的な村社会は、宮本さんの綿密な描写によってこの本でも語られています。しかし、それは一概に否定すべきものなのでしょうか・・・?


    見事な「連帯」



     たった5ページしかないのですが、「子供をさがす」 という短篇があります。ある村で子供が行方不明になり、村人総出でその子供を探すという話です。この話から見えてくる村の特徴は3つあります。

    「村の人たちが、子どもの家の事情やその暮し方をすっかり知り尽くしている」様



    「だれに命令せられると言うことでなしに、ひとりひとりの行動におのずから統一ができている」様



    村の者とよそ者の温度差



     子供がいなくなったという一大事に、村の人たちが驚くべきチームワークを発揮するんですね。いつも酒におぼれている男が、真っ先に山奥に子供を探しに行くなど、村の人々の連帯の強さには目を見張るものがあります。そして、もっとも驚くべきは、それが誰の命令ということでもなく自然に連帯しているということ。村全体で、一つの家族といったら分かりやすいでしょうか。いや、当時の村の連帯は、今の家族よりもはるかに強かったと感じさせるのです。

     その一方で、よそ者とは温度差があります。村の人たちが必死に子供を探す間、よそ者たちは噂話に夢中になっていました。ここに、村の人々との絶対的な壁を感じさせます。揺るぎない連帯が、排他へ。排他が、さらなる連帯へ。築き上げられた連帯が、閉鎖的空間へ。日本の村社会の構造がよく分かります。

    その歴史に、意味はあるのか



     村の中には、生まれてから一度も村を出たことがなく、おそらくそのまま村で生涯を終える人もいます。宮本さんは、そんな人にも目を向け、話を聞きました。そして、「一言も逃さない」とばかりにその人のライフヒストリーを丁寧な記述で描いていくのです。

     村から一度も出ないで生涯を終える人の歴史に、意味はあるでしょうか。歴史を大局的に見れば、全くないと言ってよいと思います。村人以外でその人を知る人は誰もいないのですから。宮本さんが取り上げなければ、その人は誰にも知られることなく亡くなっていったでしょう。

     ・・・。今、重要なことを書きました。宮本さんが取り上げなければ、その人は誰にも知られることなく亡くなっていった、と。そうなんです。ここにこの作品の価値があると思います。誰にも知られるはずがなかった歴史を自らの人生をかけて描き続けた宮本さん。その積み重ねが、「日本人」の姿を形作っていきます。

     でも、そんな人の歴史には何の意味もないじゃん。そんな風に思う人もいるかもしれません。ですが、こんな記述があります。宮本さんが祖父について書いた部分です。

    「納得のいかぬことをしてはならぬ」というのが祖父の信条で、蚕をこうて金をもうけることは大切だが、そのために、米麦をつくる場所をせまくすることには賛成できなかった。だから自分は古いことをまもったが人には強いたわけではない。自分だけは自分の納得できる生き方を生涯通したかったのである。



     人々の歴史を追い続けた理由は、ここにあるのかと思いました。それぞれの人が、自分の信念を持って生きている。例え歴史に何の影響も及ぼさなかったとしても。宮本さんを駆り立てたのは、一人一人が持つ「生き様」だったのだと思います。

    ◆殿堂入り決定!

     「最果ての図書館」は『忘れられた日本人』を「プラチナ」に認定しました。おめでとうございます!


    宮本常一, 岩波文庫,



    •   25, 2015 21:47
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