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 私が勉強している統計学に関する本を紹介しようと思います。難しい数字や公式がメインとなる本ではありません。そういった数字や公式も出てきますが、主なテーマとなっているのはタイトルにもなっている「統計思考力」です。

不透明な時代を見抜く「統計思考力」 (日経ビジネス人文庫)
神永 正博
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 80,741


 「統計思考力」というのは、データをどう見るか、データから何を見出すかなどの「データを利用する力」と言い換えられると思います。計算や公式と同じくらい、あるいはそれ以上にこの「統計思考力」は大切です。この力がないと、都合よく切り取られたデータに騙されたり、せっかくのデータから正しい情報を読み解けなかったりします。

 この本は、初級編、中級編、上級編に分かれており、ステップアップする形で統計思考力を学ぶことが出来ます。統計学を全く知らない人でも十分ためになる内容だと思いますが、対象としては、ちょうど私のように統計学を学び始めて少しは知識のある人に効果的な一冊だと思います。



内容紹介



ブックレビューリトル

そのデータ、正しく読み解けていますか?
どこを見る?何を集める?どう読み解く?筆者がイチから教えます


 統計は「自分でモノを考える際に強力な武器になる」と筆者は述べます。そんな強力な武器になる統計を「使いこなす」ために。データを集める力、分析する力、利用する力・・・そんな「統計思考力」を教えます。

 中級編以降は、統計学の本格的な内容も登場します。そして上級編では、目から鱗の「データを利用する力」を教えます。難しい内容も噛み砕いて説明されるので、初学者にも優しい内容となっています。

 巻末に掲載されている、筆者が利用しているデータのリストは必見です!データを使いこなして強力な「武器」にしたい方は、ぜひ手に取ってみてください。

ブックレビューwith「ブクログ」



 ブックレビューコミュニティ「ブクログ」に投稿した私の感想です。クリック先にあるブクログのページでは、他の方が書かれた感想も読むことができます。

 統計学を学び始めて1年が経ちました。その段階で読んだのですが、これまで学んできたことの復習にあたる部分が6割、これまでには学んでいない、「そうなのか!」というような目から鱗の内容が4割、という感触でした。統計学をこれから学ぶという人には導入として使える1冊だと思いますし(本当の初学者には若干内容が難しいかもしれません)、私のように統計学をほんの少しだけ理解しているという人にとっても多くのことが学べる1冊だと思います。

 この本で新しく学んだこととしては、正規分布とべき分布の違い(fat tailの問題)、正規分布と「独立」の関係、ワイブル分布、ポアソン分布(重ね合わせによるランダム化)などがありました。中でも、最後の「上級編」で説明される「データを見る力」についての記述は本当に勉強になりました。例の一つに挙げられていた失業率の話を紹介しますが、単に失業率の数字を見るだけでは正しい判断が出来ず、生産年齢人口の推移も考慮する必要がある、という説明は大変分かりやすく、タイトルにもなっている「統計的思考力」を身に付ける上で大変有益な論が展開されていると思います。

 最後に筆者が述べているのが、「データからすべてが分かるわけではない」ということ、そして「自分は分かっている、という『過信』の危険」です。これは本当にその通りだと思います。データと自力を過信せず、謙虚な姿勢を保っている。これはこの分野の専門家に何よりも必要とされる姿勢ではないかと思います。


ブログ+コンテンツ



 ブクログのレビューに加えて、ブログだけのオリジナルコンテンツを掲載しています。

 今回は「AUTHOR IS HERE」のコーナーです。本の中にある記述から、著者の思想や信条、人柄に迫ってみようというコーナーです。今回のテーマは、「過信の危険性」です。

autour is here

 筆者の神永さんは、こんなことを述べておられます。上の感想にも書いたのですが、もう少し詳しく見てみることにしましょう。

今になって、あらためてデータをにらんできて、いかに自分が社会について知らないかを痛感します。同時に、知らないということが、いかに危険なことかを思うと、ぞっとすることもしばしばです。



 この記述は、本のおわりに出てきました。私はこの部分を読んで、この本、そしてこの著者への信頼がぐっと高まりました。筆者は統計の専門家です。専門家というのは、何か(その分野について)何でも知っている人、というイメージがあります。しかし、本当の専門家というのはその逆だと思うのです。つまり、自分が「知らない」ことをどれだけ自覚できているか。無知を自覚している人、自覚し続けられる人というのが「専門家」なのではないかと私は考えています。

 神永さんは、このように続けます。

おそらく、自力で考えることの最大の敵は、自分にはわかっているという過信です。いちばんむずかしいのは、正気を保つことなのです。正気を保つために、データ分析ほど強力な薬はないでしょう。



 統計学を学び始めた時、私はデータをちょっとばかし利用できるようになってかなり調子に乗りました。「データからこんなことが分かるんです!」ということをとにかく言いたかったのです。

 専門家の神永さんはその対極をいきます。統計を扱う人は、この考え方を肝に銘じておかなければいけないと思います。データは万能ではないし、データを扱う人間も完璧ではないのです。「正気を保つために」、データを分析するという考えを私も持ちたいと思います。

 今日は、統計の専門家がどんなことを考えてデータに向き合っているのか、という点に迫ってみました。知れば知るほど、自分の無知を自覚し、謙虚になる。学ぶことの本質を見た気がします。



オワリ

『面白くて眠れなくなる社会学』 橋爪大三郎さん

 このブログでは社会学の初心者向けの本をよく紹介しています。社会学や社会統計学に興味のある方は、こういった易しい一冊から始めてみるのがよいかと思います。


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一般書, 社会,



  •   10, 2016 18:39
  •  今日は「階層意識」についての興味深い論文を集めた1冊を紹介します。自分が社会の中でどのグループに属すると思うか選択肢(上、中の上、中の下、下の上、下の下 など)から選んだものを「階層帰属意識」と呼ぶのですが、この階層帰属意識からは見えてくることがたくさんあるというのです。

    社会意識からみた日本--階層意識の新次元

    有斐閣
    売り上げランキング: 583,823


     階層帰属意識というのは人々が主観的に答えるもので、何だか扱いにくそうな感じがします。それはその通りで、たしかに階層帰属意識を分析するというのは困難を要することなのです。ですが、その分析結果には「困難を要してでも」手に入れたい興味深い知見が多く見られるということを教えてくれる1冊です。



    内容紹介



    ブックレビューリトル

    いまの日本社会はいかなる時代を迎えているのか?政治意識、職業倫理、市民活動など、現代人のものの考え方や世の中との向きあい方をあざやかに描き出す調査データにもとづく現代社会論。

    (「BOOK」データベースより)

    400字書評



    400字書評


     社会階層と人びとの社会意識との関わり、すなわち階層意識に関する論文を集めた1冊。政治意識や労働倫理、ボランティアへの参加度合いなど、階層意識が人々に与える興味深い様々な影響が提示され、階層意識の研究が持つ意義を知ることができます。

     私自身、いわゆる「総中流」から「格差社会」への流れを、あたかも格差が突然発生したかのように誤解していました。そうではなく、この流れは「今までみえていなかった貧しい人びとの姿が社会の多くの人びとにみえるようになった」(p136)ために生じたものでした。これまで「出来事」しか見ていなかった私にとって、「人びとの社会に対する主観的なイメージ」(p115)が提示する新たな知見は大変興味深いものでした。

     また、人びとの階層帰属意識に関しても、本書で議論されるように、「中」という回答は詳しく解明されるべきものだと思います。新たに発足したSSPプロジェクトが、さらに有意義な知見を提示されることを期待しています。(406)

    ピックアップ



    語句  階層意識の「静かな変容」

    「階層帰属意識」の分布は大きく変化しないにもかかわらず、年齢・学歴・職業・世帯収入の4つの要因が階層帰属意識に与える総合的な影響力を表す数値である「決定係数」の値が、1975年以降上昇していること。つまり、人びとが次第に自分の客観的な社会経済的地位の高低と対応した階層帰属を回答するようになったこと。(44)



     階層帰属意識を尋ねると多くの人が「中」と回答する・・・そのことは変わらないのですが、そこで分析を終わらせてはいけないのです。ここでは本書の大きなトピックとなっている階層意識の「静かな変容」を挙げてみました。どうしてそのようなことが起っているのか、くわしくは本をご覧ください。回答結果は同じようなものだったとしても、その「中身」が常に変質を続けている・・・そんなイメージでしょうか。

     それからもう一か所書き残しておきたいところがありました。

    社会を正しく理解するためには、単に客観的な事実とみなしうるものを明らかにするだけでは不十分である。それらに加えて、人びとの社会に対する主観的なイメージや価値観も明らかにしていかなければならない。(115)



     「主観的なイメージ」の部分を軽視していたことを痛感させられた一節でした。私たちの社会は、客観的なデータ以上に私たちの主観的なイメージを通して形作られている部分が大きい。言われてみればその通りです。



    ブックレビューリトル

     関連書籍を紹介します。

    階級社会 日本
    階級社会 日本
    posted with amazlet at 16.02.15
    橋本 健二
    青木書店
    売り上げランキング: 901,823


     今の私のレベルでは大変難しい内容で、頭を抱えながら読んでいるところです。逆に言えば、それだけ詳細で緻密な分析がされている本だと言えると思います。「階級」と「階層」の違いを知りたい人には特におすすめできそうです。



    学術書, 社会,



    •   16, 2016 00:00
  • 子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)
    阿部 彩
    岩波書店
    売り上げランキング: 3,950


    相な貧困観の改善を

     前回紹介した『子どもの貧困と社会的排除』につづき、「子どもの貧困」について書かれた本です。

     著者の阿部彩さんは、貧困や社会的排除を専門に研究をしておられます。今回は2008年に岩波新書から出版された『子どもの貧困―日本の不公平を考える』の情報をまとめます。



    内容


    健康、学力、そして将来…。大人になっても続く、人生のスタートラインにおける「不利」。OECD諸国の中で第二位という日本の貧困の現実を前に、子どもの貧困の定義、測定方法、そして、さまざまな「不利」と貧困の関係を、豊富なデータをもとに検証する。貧困の世代間連鎖を断つために本当に必要な「子ども対策」とは何か。

    (「BOOK」データベースより)

    400字書評


    400字書評

     筆者はまず子どもの貧困の蓄積を指摘する。15歳時の貧困は大人になっても解消されていなかったというのである。力のない子どもが生まれた時から貧困を背負わされ、それを乗り越えられない社会の現状は問題だろう。

     子どもの貧困による社会的損失の推計が先日発表された。子どもは将来への可能性を秘めた社会の財産であり、社会がその可能性を潰すようなことは絶対にあってはいけないと改めて強く感じる。後半には、日本の合意基準アプローチ(必需品であると社会が認めたもの)の基準が他国より非常に厳しいことが明らかにされた。このデータの解釈は様々であろうが、日本が貧困に対して「仕方ない」「自己責任だ」と捉えるような風潮は根強いものがあるのではないだろうか。

     そのような風潮の根底にあるのが、筆者が指摘する日本人の「貧相な貧困観」である。子どもの可能性を奪い、ゆくゆくは社会全体も衰退させていく貧困を、私たちは危機感を持って捉えなければいけない。(407)

    ピックアップ



    栞

    「教育の平等」「機械の平等」が支持されない社会とは、どのような社会なのであろうか。不利な状況を背負って生まれてきた子どもたちが、そのハンディを乗り越える機会を与えられない社会とは、どのような社会なのであろうか。自らが属する社会の「最低限の生活」を低くしか設定せず、向上させようと意識しないことは、次から次へと連鎖する「下方へ向けてのスパイラル」を促し、後々には、社会全体の生活レベルを下げることになる。私たちは、まず、この貧相な貧困観を改善することから始めなければいけない。



     「貧相な貧困観」ということばが大変印象に残りました。貧困について勉強を始めてから、私自身も痛感していることです。筆者が指摘するように、相対的貧困の概念は理解されにくいのかもしれません(いくら「6人に1人」などと言われても…)。

     その意味では、第6章で紹介されている「合意基準アプローチ」は日本人の貧困観がよく分かる概念だと思います。子どもたちに最低限何が必要なのか、自らに問うてみることで貧困を引き寄せて考えられるようになりたいと思います。



    ブックレビューリトル

     関連書籍の情報などをお届けします。



     社会的包摂・社会的排除の概念について詳しく知りたい方は、同じく阿部彩さんが書かれたこちらの本がおすすめです。

    ◇ ブックレビューリトルは通常更新の合間に不定期で更新しています。更新情報については「図書館だより」をご覧ください。

    新書, 社会, 阿部彩,



    •   15, 2016 18:01
  • 子どもの貧困と社会的排除
    テス リッジ
    桜井書店
    売り上げランキング: 412,495


    こえていますか、子どもの叫び

     先日のニュースで「子ども食堂」の話題が取り上げられていました。かなり時間が割かれていたように思います。最近、「子どもの貧困」への問題意識が高まってきました。「日本の子どもの6人に1人が貧困状態にある」、というインパクトのあるデータと共に、テレビやネットでも取り上げられることが多くなったと思います。

     このブログでも貧困に関する本をたくさん紹介してきました。小説以外の本では、貧困がメインテーマという感じになっています。ですが、「子どもの貧困」だけをピックアップするのは今回が初めてでしょうか。子どもの貧困の何が深刻で、何が問題なのか。短い記事ではありますが、少しでも伝えられたらと思います。

    (約3,200字)

    届かない声



     子どもの貧困は貧困の中でも最も深刻な問題だと思います。その理由は「当事者目線からの知見の圧倒的な欠如」ではないでしょうか。何だか仰々しい言葉になってしまいましたが、要するに「子どもたちの声が届かない」「実態がつかめない」ということです。

     注目が高まってきたと最初に書きましたが、まだまだ危機感が足りないとも感じています。子どもたちは貧困に抵抗する力をまだ持ち合わせていません。そんな力のない子どもたちが貧困に苦しみ、声をあげることもできない状況にあります。貧困が子どもたちの未来を奪っている、という点も深刻です。そして、子どもたちの未来を奪うということは「国の未来を奪う」ことと同義です。昨年子供の貧困による社会的損失の推計も発表されましたが、この問題は「国の未来」にかかわる本当に深刻な問題なのです。

     今日紹介する本はテス・リッジの『子どもの貧困と社会的排除』です。著者のリッジも、「当事者目線」の重要さを訴えています。そして、実際に子どもたちに取材して得られた声をもとに貧困を論じています。イギリスの話ではありますが、日本でも共通して問題になりそうなことはたくさんあります。

    子どもたちの生活は多種多様であり、貧困のリスクや経験も人によって異なる。子どもたちの生活や彼らの貧困経験について、その多様性をより豊かに、より総合的に見なければ子どもたちの生活を蝕む要因だけでなく、彼らの生活を安定させたり、向上させたりしている要因を見過ごしてしまうことになる。



     子どもたちは「もの言わぬ階級」だという指摘も出てきます。この問題の本質を鋭く突いた言葉ではないでしょうか。いかに子どもたちが苦しめられ、聞こえない叫び声を上げているのか。今日は、本の4章で言及されている「学校」の問題を中心に見ていきたいと思います。

    学校はサバイバル



     子どもたちには「衣服」が大切である

     そう言われたら、どうしてそうなのか、どんな理由が想像できるでしょうか。「寒さを乗り切るため」「清潔感が大切だから」、そんな理由を浮かべられた方、それはもちろん間違いではないと思います。しかし、衣服が大切な理由には見落としがちなこんな側面もあります。

    ちゃんとした服を着ないと、仲間内で浮いたようになってしまう。みんなと違っちゃうのよ。ちゃんとした服を着ることが正解ね。」



     筆者が取材した子どもの声です。寒さを乗り切るといった側面より、私はこちらの側面の方がある意味子どもたちにとって深刻な問題なのではないかと思います。

     子どもたちがある集団に「溶け込む」ために衣服が必要である、衣服は「アイデンティティ」であると筆者は指摘します。そして、子どもたちがいかに衣服に気を使っているか、切実な声が多く紹介されています。学校で私服で登校するとき、怖くて震える子どもがいました。「前と同じ服を着ているとばれないだろうか」、貧しい子どもたちは深刻に悩むのです。

     着る服があればそれでいい、寒さがしのげればそれでいいという訳ではありません。貧困はそんな浅い次元にはないと思います。「社会から排除されることの恐ろしさ」、子どもたちの場合は「学校の中で友人から排除される恐ろしさ」にその本質があります。

     衣服の他にも、様々なトピックが挙げられています。例えば学校行事。貧しい子供たちは、行事がやってくるたびに震えます。いいえ、正確には行事のたびにやってくる「集金袋」に震えます。そう、自分の家にはそんなお金を払う余裕がないからです。

    「友だちは、あなたはこれするの?とか、それするの?とか言ってくる。わたしはいいえと答える。お金に余裕がないからとか、そんな理由よ。友だちがなにかしようと計画を立てても、わたしはお金を用意することができない。だから、『だめ、わたしはそれをできない。わたしにはお金に余裕がないから』と言うの。」



     行事に参加できないダメージはその時にとどまらないとリッジは指摘します。行事に参加できなければ、「思い出」が共有できないのです。クラスの中で自分だけが行事の思い出を共有できない、あるいは友人の中で自分だけが遊びに行けず思い出を共有できない。・・・再び、「排除」という闇が見えてきました。

     友人関係や行事などで得られる「思い出」というのは、お金に替えられるものではなくイメージがしにくいと思うのですが、子どもたちを貧困から救う貴重な「資源」です。学校はそんな資源を提供するこれまた貴重な場所なのですが、逆に「排除を生み出す可能性もある」というのが厄介なところです。

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      「給食費を払えない家の子どもには、無料で給食を提供しよう」

     


     上の意見に、「そうだ!」と思った方がいたら、要注意です。本の中では無料給食の実際も紹介も取り上げられています。無料給食にお世話になる子どもは、とても辛い思いをします。「自分だけ無料で、他の子どもたちに白い目で見られないだろうか」「自分の家が貧しいとばれてしまう」、そうやって子どもたちは震えます。そして、もっと深刻な問題も。給食がない休み明けに、子どもたちは学校に帰ってくるのです。ガリガリにやせ細った姿で。

     上のような一見良さそうに見える意見が、実は表面的なものでしかなく、かえって子どもたちの首を絞める可能性があることに注意しなくてはいけません。無料で給食を、貧しい家庭には給付金を、そんな表面的な考えでは絶対に解決しない問題です。

     「排除」の恐ろしさを考えなくてはいけません。子どもが生活するのは学校だけではなく、「家庭」が学校以上に重要であることは忘れてはならないと思います。何より、子どもたちの「繊細な心」に気付かなくてはいけないと思います。

    誰よりも繊細な存在



     子どもは、大人が考えているよりも、はるかに繊細な存在です。

     些細なことで傷つき、悩み、思い煩います。大人になってから振り返ると、「小さい世界だった」と思うかもしれません。しかし、その世界の真っただ中にいる子どもにとってはどんなに些細なことも重大な問題で、そこには大人が思いもしないような悩みが隠されていることがあります。

    子どもたちは鋭い感覚を備えた一個の主体であり、自分の親のニーズやパースペクティヴに共感する能力を十分に持っている



     著者のリッジもこう指摘します。子どもたちが「主体」であるということを私たちは決して忘れてはいけないと思います。未熟で力がない子どもたちですが、未熟だから何も考えていないというのは大間違いです。わんぱくで素直で何の悩みもない・・・そんなイメージがあるとしたらそれは幻想です。何も考えていないどころか、子どもたちは大人よりもずっと鋭い視線で大人や社会を見つめています。学校で子どもたちが繊細なコミュニケーションをとる様子を紹介しましたが、子どもたちは本当に驚くほど繊細なのです。

     そんな子どもたちに「貧困」が襲いかかっている・・・改めて考えてみると、こんな恐ろしいことはないでしょう。社会全体で取り組み、子どもたちを守っていかなくてはいけないと思います。子どもの声はとてもか細く、届きにくいものです。その声を受け止められるかどうかに、まさに国の未来がかかっています。



    オワリ

     子どものまっすぐな目を見ると、どこかいたたまれない気持ちになります。そんな気持ちになって目をそらしたくなるということは、どこかに「うしろめたいもの」があるということでしょう。自分がどうしてそんな風になってしまったか、社会がどうしてそんな風になってしまったか、最近よく考えます。

    『現代の貧困』 岩田正美さん

     貧困をテーマに本を紹介し続けています。前回紹介した岩田正美さんの本です。記事では「子どもの貧困」についても言及しています。貧困の本がだいぶ増えてきたので、特集ページを作ることを考えています。


    テス・リッジ, 社会,



    •   13, 2016 02:05