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  • 仏果を得ず
    仏果を得ず
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    三浦 しをん
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    の道一つで、生き抜きます

     「舟を編む」に「神去なあなあ日常」、そして私が一番好きな「風が強く吹いている」・・・三浦しをんさんの書く「職業もの」は本当に素晴らしいです。今回はそこに新たな一冊が加わりました。どこが素晴らしいのかは、レビューの方で詳しく書こうと思います。

     今回小説の題材として取り上げられたのは、日本の伝統芸能、「文楽(人形浄瑠璃)」です。伝統芸能ではありますが、日本人に馴染みが深いかと言われればそうではないと思います。ですが、そういった馴染みのない分野に新たに光を当てることこそ、三浦しをんさんの本領が発揮される場所なのです。



    生き抜く人びと



     三浦しをんさんの書く「職業もの」には魅力がたくさんあります。

     ①目の付け所・・・私たちにとって馴染みの薄い分野を取り上げて小説にし、私たちが知らなかったその分野・職業の魅力に気付かせてくれます(辞書の編纂、林業、駅伝チーム、文楽・・・)。三浦しをんさん本人の趣味というのも大分反映されているようですが、趣味が反映されているからこそ、本当に楽しく書かれているのだろうと思います。

     ②プロとしての矜持、覚悟が分かる・・・小説に出てくるのは、その分野と本気で向き合い、一生骨をうずめる覚悟で己の研さんに励んでいる「プロ」たち。プロがプライドを持って仕事に取り組む様子には本当に胸を打たれますし、プロの何たるかを教えてもらいます。

     ③等身大で好感の持てる主人公・・・少々未熟ですが、着飾らず、等身大に生きている人物が主人公に設定されることが多いです。最初が未熟な主人公が徐々に成長していくというよくある展開ですが、やはり肩入れしてしまいますし、主人公が応援したくなるような好人物として描かれているので読んでいて心地よいのです。

     このような魅力があります。実は魅力はもう一つあると思うのですが、それについてはレビューの後半で触れようと思います。

     さて、今回のテーマは「文楽」。語りと三味線、そして人形が三位一体となって成り立つ、日本の伝統芸能です。・・・などとさも分かっているように語りつつ、私はほとんど知識を持ち合わせていませんでした。小学校の時、芸能鑑賞会で見たのが唯一触れた機会だったと思います。

     そんな馴染みのない分野の小説を、果たして楽しめるのか・・・。そんな心配は、今回も杞憂だったようです。今文楽を鑑賞したら、全く見方も変わるのだと思います。今回も、真剣に、そしてプライドを持って1つの芸能に打ち込もうとする人々の姿が、小説の中にありました。

    文学の妙味



     主人公の健(たける)は、文楽の太夫(語り)、三味線、人形遣いのうち、太夫をやっています。もう13年も文楽に打ち込んできましたが、何百年も続く伝統芸能の世界ではまだまだ見習い的立ち位置で、学ぶことがたくさんあります。

     そんな健のパートナーになろうとしている三味線弾きが、兎一郎(といちろう)です。彼は寡黙で淡々と芸に打ち込む人物でした。一緒に組んでやっていくどころか、最初はなかなか認めてすらもらえません。健はいかにして兎一郎に認めてもらうのか。ありがちな展開ではありますが、主人公が等身大で応援したくなる人物だけに、すぐに夢中になっていきます。

     文楽についての知識を持ち合わせていなくても、存分に楽しむことができました。「語りで人物を表現する」ということの難しさ、そして妙味に気付きます。語りの中に出てくる人物に時には共感し、時には反発しながら・・・・。簡単なことではありませんが、全てが一体となった時には奇跡のような瞬間がやってきます。

    (引用)
    三百年前の大阪と、現代の大阪と、これから三百年後の大阪とが渾然一体になった、劇の力だけが導くことのできる場所へ。そこでは時間を超えて、ひとの心が交じりあう。三百年前の人々の感情が自分のものになり、自分のものとなった感動が、三百年後の人々にもきっと伝わると信じられる。



     一冊に数回、このように芸術の奇跡とでも言うような瞬間が訪れます。鳥肌が立つような瞬間です。三浦しをんさんの、こういう場面の描き方は見事だと思います。

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     伝統芸能、というのは長い時間をかけて培われ、そして守られてきたものです。最近はなり手の減少などで苦境に際している伝統芸能もあると聞きます。それらを本当に守っていきたいのなら、「どうして守らなければいけないのか」ということを明らかにして、その芸能と本気で向き合っていく人の存在が必要なのだと思います。

     兎一郎が、健にこんなことを言います。

    (引用)
    「義太夫の奥深さと歴史に比して、一人の人間に与えられた時間はあまりにも短い。その短い時間の中で、俺たちは自分の芸道を突きつめつくし、あとにつづくものに伝えていかなきゃならない。これは、義太夫を選んだものの使命だ。うかうか時を過ごしていたら、プロの太夫として手遅れかつ命取りになるということを忘れるな」



     彼の姿勢は時にあまりにもストイックにも思えるのですが、そこまでストイックにならなければいけないわけが分かるセリフです。伝統芸能が受け継がれてきた長さに比べて、あまりに短い人間の人生。 一分だって、一秒だって無駄にはできないのです。

     文楽を知らなかった私ですから、その価値についても分かりません。ただ、このように自分の人生をすべてそこに捧げようとしている人の存在に心を動かされたことは間違いありません。伝統芸能には全般的に馴染みがなかったのですが、この「守らなければいけない」という思いは、私たち一般人も受け止めなければいけないのではないか、と思います。

    覚悟と決意を経て



     真剣さもあれば、コミカルに見せる場面もあるのが三浦しをんさんのよさです。文楽の題目に上手く絡めつつの恋愛模様も展開されていきます。主人公の健は本当にまっすぐで、でも不器用な人物でした。小説が好きな方は分かるかもしれませんが、こういう人物のする恋愛というのは一番応援したくなるものです。

     さて、三浦しをんさんの書く「職業もの」の魅力について書いていました。最後に1つだけ残しておいたものがあります。それは、「最終盤のカタルシス」です。

     三浦しをんさんの作品は、最後の最後、怒涛の勢いで畳みかけてくるような勢いがある作品が多いです。迷いの中にいた主人公が、一気に闇から脱して高みに登っていく感じ、作品の中にあったモヤモヤが最後の最後に全て取り払われる感じ・・・作品の最後の方の勢いという点でいえば、三浦しをんさんを上回る方はなかなかいないのではないかと思います。

     今回も、そんなカタルシス的終わりが待っていました。

    (引用)
    金色に輝く仏果などいるものか。成仏なんか絶対にしない。生きて生きて生きて生き抜く。俺が求めるものはあの世にはない。俺の欲するものを仏が与えてくれるはずがない。

    健は内心で叫ぶ。仏に義太夫が語れるか。単なる器にすぎぬ人形に、死人が魂を吹きこめるか。



     私はこのような終わりが読みたくて三浦しをんさんの作品を手に取っている、と言ってもいいくらいです。今回も期待に応える終わり方でした。「おぉ~」と思わず声が出てしまうくらいの勢いがあるのです。そして、言いようのない気持ちよさを覚えます。この気持ちよさの原因はいったい何でしょうか。

     私なりに答えは見つけています。「迷いのない人間はかっこいい」、たぶん、そのようなことです。

    レコメンド

    を決め、ひたすら直進する―その気持ちよさ。

     馴染みのない分野にこんなにも魅力があることを伝えてくださる三浦しをんさん。この勢いはどこかクセになるものがあって、また次の一冊を手に取りたいと強く思わせます。



    オワリ

    「神去なあなあ日常」 三浦しをんさん

     こちらは林業がテーマのお話。文楽と同じくらい、馴染みのない分野ではないでしょうか。読んだのは今年の1月ですが、「すごく気持ちよかった」ということはよく覚えています。

    作家さんの本棚 007 三浦しをんさんの本棚

     三浦しをんさんの本棚を開設しました。私がこれまでに読んだ三浦しをんさんの本をまとめています。

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    小説, 三浦しをん,



    •   21, 2015 23:07
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    三浦 しをん(みうら・しをん)さん

     私が読んだ三浦しをんさんの本です。新しい本を読むたびに更新しています。このブログで紹介した本については記事へのリンクを貼っています。



    ティーカップロフィール

    976年生まれ。出版社志望で、大学4年時は出版社に就職活動を行っていた。2000年に処女作、「格闘する者に○」を発表。山本周五郎賞候補、直木賞候補を経て、2006年、「まほろ駅前多田便利軒」で直木賞を受賞。「まほろ~」は3作続く人気シリーズとなる。2012年には、「舟を編む」で本屋大賞を受賞、ロングヒットを記録した。

    ティーカップが読んだ作品

    6作品

    ・まほろ駅前多田便利軒 (日付不明)
    ・風が強く吹いている (日付不明)
    ・きみはポラリス ( 2014.11.21 )
    ・神去なあなあ日常 ( 2015.1.21 )
    ・舟を編む ( 2015.2.12 )
    ・仏果を得ず ( 2015.9.20 )

    ティーカップんな作家さんです

     ある職業を取り上げて書く「職業もの」が大変優れている、という印象があります。私たちにあまり馴染みがないと思われる職業に目を付け、エンターテイメントとして書き上げていくさまは一級品です。コミカルな部分もあれば真剣な部分もあり、そのメリハリが心地よいです。また、作品の最後にある勢い、快感といったものも特徴で、すがすがしい読後感を味わえることが多いです。



    品リスト

     風が強く吹いている

    イチオシ

    風が強く吹いている
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    三浦 しをん
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     箱根駅伝をテーマにした1冊。まっすぐでひたむきな登場人物たちが心地よい!作品に気持ちの良い風が吹きます。この本を読めば、お正月の箱根駅伝はテレビの前にしがみついてしまうこと間違いなしです。

     神去なあなあ日常


    神去なあなあ日常
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    「神去なあなあ日常」 三浦しをんさん

     舟を編む

    舟を編む
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    「舟を編む」 三浦しをんさん



    その他

    まほろ駅前多田便利圏

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    きみはポラリス

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    「仏果を得ず」 三浦しをんさん


    作家さんの本棚, 三浦しをん,



    •   01, 2015 00:00
  •  更新が遅くなりました、おともだちパンチです。今日は2012年の本屋大賞受賞作、三浦しをんさんの「舟を編む」をご紹介します。三浦しをんさんの本は、前回の 「神去なあなあ日常」 以来、2冊目のご紹介になります。箱根駅伝に林業、そして辞書の編纂・・・いつも斬新な切り口からそのテーマの新たな魅力を発掘してくださる三浦さん。今作も評判に違わぬ作品でした。では、以下「舟を編む」のレビューです。

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    果てしない嘆息



     タイトルの「舟を編む」とは何を意味するのでしょうか。もう有名になっているかもしれませんが、もう一度確認してみたいと思います。

    辞書は、言葉の海を渡る舟だ」
    「ひとは辞書という舟に乗り、暗い水面に浮かび上がる小さな光を集める。もっともふさわしい言葉で、正確に、思いをだれかに届けるために。もし辞書がなかったら、俺たちは茫漠とした大海原を前にたたずむほかないだろう」



     『大渡海』という辞書の編纂に挑む主人公馬締光也(まじめ・みつや)と周囲の人々の奮闘記。言葉を海に、そして海に乗り上げていく辞書を舟に例えています。この「言葉の海」、「舟」の例えは、作中で何度も何度も効果的に使われています。ため息がでるほど美しく、これ以上ないと思えるような例えでした。果てしなく、底の見えない海。その深遠さは人間を惑わし、畏敬の念を抱かせます。しかしそれでもなお人間は憧れを捨て去ることはできません。終わりがあるかも分からないような船旅に、人は舟をこぎ続けているのです・・・。

    ことばをつかまえる



     海や舟を例えに出しながら作品から浮かび上がってくるのは、「ことばをつかまえる難しさ」。こんな一説があります。

    どれだけ言葉を集めても、解釈し定義づけをしても、辞書に本当の意味での完成はない。一冊の辞書にまとめることができたと思った瞬間に、再び言葉は捕獲できない蠢きとなって、すり抜け、形を変えていってしまう。



     例えを通して言葉の深遠さを見事に表現しているいることが、この部分に深みを出しています。言葉というのは何かを生み出しているようで実はそうではありません。生み出している何かより、はるかに多くのものがその瞬間に消えていくのです。ここで書いている言葉にしたってそうです。本を読みながら思ったことを、100%言葉にできるということはありえません。無限にある言葉の組み合わせから、私はこの言葉の組み合わせで伝えようとしています。そして、それと同時にその他多くの言葉は使われることなく、姿を消しています。

     ・・・ただレビューを書いていただけなのに、見たこともないような深みに片足をつっこんでしまいました。この「海」や「舟」の例えがどれだけ素晴らしい例えだったのか、あらためて実感しているところです。

     そんな風に言葉の深遠さを強調する他方で強調されているのが、辞書の編纂を通じて言葉に向き合おうと必死にもがく人々の姿。どんな言葉を生み出したところで、それは「完全」にはなりえない、そう分かっているのにです。どうして人は言葉と向き合い続けるのか?言葉の魅力って何? そんな疑問は、作者の三浦しをんさんが素晴らしい言葉で紡いでくれました。ここでも、「海」と「舟」が印象的です。

    有限の時間しか持たない人間が、広く深い言葉の海に力を合わせて漕ぎ出していく。こわいけれど、楽しい。やめたくないと思う。心理に迫るために、いつだってこの舟に乗り続けていたい。



     言葉を生み出すのがいかに難しいのか、そんなことを痛感させられる一方で、作者の三浦さんが生み出す言葉の力にはただただ圧倒させられます。これが「作家」なんですよね。一般の人が心には思っても逃してしまう言葉を、その手でがしっとつかみ取る。これまでに何作も読んで大好きだった作家さんですが、今回は初めて「凄味」を感じました。小説の原点である「言葉」というテーマに向き合い、こんな作品を仕上げたんですから・・・。

    言葉は証



     先程は触れずにスルーしましたが、主人公の「馬締(まじめ)」という名前、すごく面白いと思いませんか。この名前で主人公は何度もいじられるんです。でも、彼の名前は彼の人柄や雰囲気にぴったりで、「この名前しかないんじゃないか」と思わせるようなフィット感。ここにも三浦さんの凄味がのぞきます。本当に今回は圧倒され、嘆息するばかりです。

     言葉の裏で多くの言葉にならないものが消えていくと言いましたが、逆に言えば生み出した言葉は一生残り、消えることがないわけです。言い換えれば、言葉はそれを生み出した人間の「生きた証」。ネタバレになるので言えませんが、この話のラストはこのことを強く感じさせるものになっています。とても悲しく、切ないのだろうけど、どこまでも続く青い海を見て、そこに悲しみが溶けていくような、そんな感じ。まだまだ余韻に浸っています。

    ◆殿堂入り決定!

    「最果ての図書館」は『舟を編む』を「シルバー」に認定しました。おめでとうございます!





    こちらもどうぞ

    この小説も「言葉」がテーマ。共通するメッセージがすごく多いです。
    「ふくわらい」 西加奈子さん

    「舟を編む」の公式サイトです。映画の予告篇や作品紹介(素敵なイラスト付き)が見られますよ!
    特設サイト「舟を編む」


    三浦しをん, 小説,



    •   12, 2015 11:59
  •  あなたは今、生きていますか?
     なんだかすごい質問で始めてしまいました。ここは宗教勧誘サイトではありません、本の紹介サイトですからどうぞご安心ください。こんにちは、おともだちパンチです。ブックレビューの第5回は三浦しをんさん「神去(かむさり)なあなあ日常」をご紹介します。冒頭のような質問が出てきたのは、この本を読んで、「自分は今、生きているのだろうか」そんな風に思ったからです。詳しく見ていきましょう。以下、「神去なあなあ日常」のレビューです。

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    「空気がおいしい」小説



     この小説を読んで、「空気がおいしい!」と叫びたくなりました。素敵な装丁を挿絵、それに三浦しをんさんのハートフルな文章。生き生きとして、みずみずしい、そんな作品になっています。主人公は横浜に暮らしていた平野勇気。高校を卒業した彼に、両親を担任の教師の計らいでいきなり、人生の転機が訪れます。それは、「林業の研修生制度」。後継者不足に悩む林業を救うため、国が制定したこの制度に、勇気は勝手に応募されていました。訳も分からず新幹線に載せられた彼は、新幹線からローカル線をはるばる乗り継ぎ、田舎の村にたどり着きます。それが、「神去村(かむさりむら)」。見知らぬ村での勇気の日々が始まりました。

    高まる生命力



     絵にかいたような田舎である神去村。「こんなところ、脱走してやる」最初はそんな風に思っていた勇気ですが、ヨキや清一、繁ばあちゃんなど個性豊かな村の人たちとの濃密な人間関係、そして自然を相手にする林業の魅力に気付き、村の虜になっていきます。以下は、勇気の中盤でのセリフです。

    一時だって、神去村から離れたくない。毎日、退屈する暇もなく生命力を増していく村の風景を、なにひとつ見逃したくない。ダニに噛まれても、ヒルに血を吸われても。



     短期間でこんなにも勇気を変えたもの、それはこのセリフにもある村人の「生命力」でした。古くからの「しきたり」が守られ、山の神さまを信仰してやまない、そんな神去村は、現代から見たら時代遅れに映るかもしれません。ですが、そこに暮らす人々の命は輝きに満ち溢れているのです。それはなぜか、と考えた時、2つのことが浮かびました。まずは「信じるもの、寄り添うものがあること」、そして「自然を受け入れ、自然と共生していること」。勇気もそのことを体で感じ、村の虜になっていきます。自分の地元、横浜にはなんでも揃ってるよ、そう言おうとした勇気はふと考えます。

    この村にはないものがいっぱいある。そう答えようとして、ためらった。でも、(横浜は)俺がいなくてもだれも気にしない場所だ。



     都会の希薄で交換可能な人間関係と、田舎の濃密で交換不可能な人間関係が対比されている印象的な箇所です。そんなことを考えているうちに、冒頭の問いにたどり着きます。「自分は今、生きているのだろうか」「呼吸をしているのだろうか」・・・都会の生命力は、悲しいくらいに、弱い。

    グローバルってなんや?



     神去村の繁ばあちゃんは、カタカナ語に疎く、上手く話すことができません。そんなおばあちゃんに、「グローバル」なんて言葉をかけたら、こんな答えが返ってくるでしょう。
     「グローバルって、なんや?おいしいんか、それ?」
     グローバルグローバルと叫ばれる世の中で、自分の村という小さな世界で一生を終える人もいます。神去村も、世界から見れば取るに足りない一部分にすぎません。しかし、ここで間違えてはいけないのは、「グローバル=善 ローカル=悪」というわけではないということ。世の中の趨勢を見れば、それは間違いなく「グローバル」です。そんな中、たとえ注目はされなくても、生命力を放つ「ローカル」は日本のどこかで、今も確実に存在しています。地方の消滅危機が叫ばれている中、私たちが守らなくてはいけないものを見た気がします。


    小説, 三浦しをん,



    •   22, 2015 00:30
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