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し、本が自由に読めない世の中になってしまったら・・・

 10月10日に公開された映画、「図書館戦争 THE LAST MISSION」を観てきました。楽しみにしていた「図書館戦争」シリーズの続編です。直前に放送されたスペシャルドラマもしっかりチェックして、映画館に足を運びました。

 「図書館戦争」シリーズは私が大好きな作品です。恋愛とアクションを絡めて描いたこの作品は、エンターテイメントとして抜群の面白さを誇ります。でもそれだけではなくて、私が一番惹きつけられるのは作品のテーマである「本を読む自由」です。「本を読む自由」というテーマがあることによって、この作品は単に面白くて好きな作品ではなく、何度も読み返したい「大切な作品」になりました。

※ネタバレを含むので、映画を観ようと思っている方はぜひ鑑賞後にご覧ください。



自信を持って、前作以上


 


 
 公開3日目、お昼の上映回はたくさんのお客さんの姿でいっぱいでした。一番多い客層は女子中高生で、その次は30~40代くらいの女性という感じでした。原作のファンはもちろん、恋愛の要素を楽しみにしている人や、岡田准一さんを中心とするキャストのファンの人がたくさん集まったようです。

 男女比は7:3くらいで女性の方が多かったように思いますが、若い世代から高齢の世代まで、割とまんべんなくお客さんが集まっていたことには驚きました。高齢の方がこの作品に興味を持たれるイメージがほとんどなくて、キャストもどちらかといえば若い人向けなのでかなり意外でした。私が思っている以上に、「図書館戦争」は多くの方に受け入れられているのかもしれません。

 観客満足度98.2%

 2013年の前作が叩き出した数字です。すごい数字であると同時に、私にとっては納得の数字でした。「図書館戦争」は原作をリスペクトしたうえで、大切に作り込まれています。キャストや脚本など、作者の有川浩さんは作品に納得の太鼓判を押しています。素晴らしい作品とその作品を愛する素晴らしいスタッフが集まったからこそ生まれた数字だと思います。

 これまでの映画とドラマで完全に信頼を寄せていたので安心して観ることができましたが、それでも前作のハードルは高かったと思います。前作並みの作品では、今度は「98.2%」にはならないはずです。

 鑑賞を終えて、驚きました。今回観客満足度が出るのかは分かりませんが、98.2%を何事もなかったように超えてしまうのではないか、と思わせるくらいの素晴らしい出来でした。恋愛もアクションも、前作よりはるかにパワーアップしていました。ファンなので贔屓目もあるかもしれませんが、自信を持って前作以上と言える作品だと思います。

 キャストやスタッフのインタビューがたくさん収録されたパンフレットを購入しました。そこに収録されていたインタビューも引用しながら振り返っていこうと思います。

アクションの中での恋愛



 今回堂上や郁たちタスクフォースが守るのは、「図書館法規要覧」という1冊の本です。この本は、この世に1冊しかない”自由の象徴”。「表現の自由」をテーマにした芸術展の会場に展示されることになったこの本を、メディア規制を進める良化隊がいかなる手段も辞さずに狙ってきます。堂上や郁は、この本を会場まで届けることができるのでしょうか。

 映画の内容は、アクションが8割、恋愛が2割といった感じでした。直前に放送されたドラマは恋愛を前面に押し出していたのですが、大きなスクリーンで公開される映画ということで、スケールの大きい迫力のあるアクションが展開されていました。冒頭から激しいアクションシーンで幕を開けます。銃撃戦の音響などは圧倒されるものがあって、アクション通の方でも十分に満足できる内容ではないでしょうか。

 恋愛が2割とはいえ、恋愛要素に物足りなさはありませんでした。榮倉奈々さん演じる笠原郁と岡田准一さん演じる堂上篤。これまでずっと2人を追ってきたファンの心をくすぐる描写が要所要所に凝縮されていました。

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<映画のみどころ 恋愛編>

・査問会で尋問を受ける郁の帰りを、堂上がずっと待っていたシーン
・手塚の兄、慧(さとし)に呼び出され、レストランで揺さぶりをかけられる郁を、堂上が迎えに来るシーン
・激しい戦闘の合間に一瞬の静寂が訪れ、堂上と郁が言葉を交わすシーン
・書店でのキスシーン
・最後、照れながら堂上が郁をデートに誘うシーン  などなど

 ちょっといい雰囲気になってもすぐに緩んでしまう2人のグダグダぶりは相変わらずで、もどかしい気持ちで見ていました。戦場で2人きりになってお好み焼きの話を始めたり、2人で見つめ合ったのに身長の話になったり、この2人にはどうしようもないところがあります。

 そんなもどかしさは、最後のシーンで吹き飛びます。5つ挙げた中で、唯一グダグダがないのが書店でのキスシーンです。「戻ったら、好きって言いますから!!」・・・もう一度映画館に行きたくなります。

 このシーンは書店が舞台となっていて、「ここは・・・!」と勘付くものがあったのですが、やはりそうだったようです。

野木: そして、キスシーンを撮った書店は、明示されていないんですが、堂上と郁の出会いの場所なんです。

佐藤: 現場ではそれがわかるように撮ったんですが、あえて切ったんですよ。(中略)もうそこを強調しなくてもいいんじゃないかと。よく見てもらうと同じだということがわかると思います。
(パンフレットより 野木→脚本の野木亜紀子さん 佐藤→佐藤信介監督)



 たしかに、明示しなくても多くのお客さんは分かっていたはずです。過去のエピソードも詰まったこのシーンは、目に焼き付けるようにして見ました。

 郁は本当に応援したくなる主人公です。映画を観ていて改めて思ったのですが、郁は純粋で、大切なものを一生懸命守ろうとします。査問会で堂上の責任が問われた時は自分の首をかけてまで堂上を守り、手塚の兄と対峙する場面では、「手塚が傷つくから」と言って頑なに態度を貫きました。堂上でも手塚でも1冊の本でも、郁は自分以外の人や物が傷つくことを絶対に認めず、全力で守ろうとします。

 「誰かが犠牲になっても成し遂げらなければいけない正義がある」という慧の考えと、「誰かが傷ついていい正義なんてない」という郁のスタンスは、この作品だけではなく、いろいろなところでぶつかり合うのだと思います。

 そして、堂上役の岡田准一さん。私は岡田さんのどこか照れを隠せない演技が好きで、男らしく貫禄のある雰囲気から一気に隙が覗いてしまうところがすごく癖になります。

 岡田さんは、やはりというか恋愛シーンにはかなり苦労されているようです。

ラブに関しては、得意分野じゃないし、恥ずかしいですね(笑)。僕は恋愛ものは苦手意識があるんですけど、『図書館戦争』じゃなかったら、やめてほしいと思ったシーンもたくさんあるんです。でも、『図書館戦争』の世界観だからできると思えるというか、台本を読んで物語に上手く絡んでいたので必要なことだと思って、いろいろトライしました。(パンフレットより)



 岡田さんがいろいろ苦労されていることや、撮影中のいい感じの雰囲気が伝わってくる恋愛のシーンがすごく好きです。でも、岡田さんの照れは地のものではなく、あくまで「演じている」のだ、と別の対談で本人がおっしゃっていますね。演技なのかもしれませんが、岡田さんの言う「苦手意識」なるものはよく伝わってきます。

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<映画の見どころ アクション編>

・「格闘技オタク」の岡田さん、代役を使わない圧倒的なアクション
・前作終了後からトレーニングを続けていた榮倉さん、大幅に増えたアクションシーンをこなしきる
・手塚(福士蒼汰さん)、小牧(田中圭さん)も最前線で奮闘 などなど

 恋愛ものは苦手という岡田さんですが、アクションシーンは普段から鍛えておられることもあり、圧倒的な演技です。岡田さんは3つの格闘技で師範資格を持つ、自他共に認める「格闘技オタク」です。

「仕事のない時は練習している感じ」というほどの精進ぶり。「練習も仕事のひとつとして、スケジュールを組んでもらってます。決して趣味でやっているわけではないので」 (『be』 2015年10月3日朝日新聞朝刊)



 そんな岡田さんのアクションがふんだんに盛り込まれています。それに負けないほどの活躍を見せたのが榮倉奈々さん。今回はアクションシーンが大幅に増えて、作品の中終盤では郁と堂上が戦場で2人行動を続けます。前回の映画のあとからトレーニングを続けていたという榮倉さんが、このアクションシーンを見事に演じ切りました。岡田さんがいても見劣りがしなくて、これはすごいことだと思います。

 アクションシーンの合間に恋愛シーンが盛り込まれるのもすごくよいのです。先ほど紹介した、戦場で堂上と郁がお好み焼きの話をするシーンや、銃撃戦の現場で手塚が柴崎(栗山千明さん)を思い出すシーンなど、今回はアクションと恋愛ものが上手く混ざり合ったという印象があります。

架空の戦時下の世界で、僕らと同じような目線の人々が、恋をしたり、自由を守りたいという意思を貫いたりするのは映画ならではで、『図書館戦争』ならでは。現実ではありえないことですが、20代の人々がこんなふうに自由を守るための戦いに巻き込まれたらどうなるのか。彼らにも日常はあり、恋した人もいるはず。そういうところが『図書館戦争』の魅力だと思っていて、そのちぐはぐさを描きたいという思いは常にありました。(パンフレットより 佐藤監督)



 アクションの中の恋愛というのはかなり特異な世界観ですが、これを読むとその世界観こそが「図書館戦争」の生命線だということがよく分かりますね。

おかしいことが起きている



 「図書館戦争」は一部のマニア向けの作品、と言われることがあります。たしかに、好きな人同士なら私も延々と盛り上がれるのですが、あまり関心のない人とはかなり壁があるというか、距離を感じる作品だなと感じます。やはり「図書館で本を巡って戦争を繰り広げる」という設定が受け入れられない方が多いようです。

 「1冊の本を巡ってこんな戦闘をするなんておかしい」と言われたこともあります。その人は「図書館戦争」を馬鹿にするようなニュアンスで言ったのですが、私は逆に「この人はよく分かっている」と思いました。

 おかしいことが起きている、というのはその通りです。その「おかしさ」こそが作品のテーマであり、作品で問われ続けているわけですから、私はむしろ、「こんな話はおかしい」と思う人にこそ観てほしい作品だと思います。そうやって「おかしい」と思うことこそが正常の感覚です。ではどうしておかしいことが起きているのか、おかしい世界になってしまったのか、作品ではずっと問われ続けます。そう考えると、この映画は「おかしい」と思う人むけなのです。

 「みんなが人任せにしているうちに、こんな世界になっちゃったんだよ!」

 ドラマに出てきたこのセリフが、もっと多くの人に広まってほしいです。おかしいけど、馬鹿馬鹿しくはない。

 当たり前になっていて考えることもなくなっていた「本を読む自由」ということを教えてくれたこの作品は、私にとって本当に大切な作品です。大切な作品を素晴らしい映画にしてくださったキャスト、スタッフの皆さん、そして大切な作品を生み出してくださった作者の有川さんに感謝したいと思います。



オワリ

『図書館戦争』公式サイト

「図書館危機」 有川浩さん
 シリーズ第3作、「図書館危機」のレビューです。今回の映画はこちらの「図書館危機」の話をベースにして作られています。シリーズの他の作品のレビューも追加していきたいです。


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有川浩,



  •   13, 2015 06:25
  •  岡田准一さんが主演の映画『追憶』を鑑賞してきました。公開初日の、最初の上映回です。ゴールデンウィーク最後の週末に、大変上質で、贅沢な時間を過ごすことができました。今日は、鑑賞してきたばかりのこちらの映画の感想をお届けします。

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     降旗康男監督と木村大作カメラマン。日本映画界を代表するレジェンドふたりがタッグを組んだ本作、『追憶』。主演の岡田准一さんをはじめ、小栗旬さん、柄本祐さん、長澤まさみさん、木村文乃さん、安藤サクラさん、吉岡秀隆さんなど、日本を代表する俳優・女優たちが一堂に会しています。鑑賞前から全幅の信頼をおくことのできる顔ぶれです。そして、高い期待値に違わず、素晴らしい作品に仕上がっていました。

     過去に重い十字架を背負ったまま分かれた3人が、1つの殺人事件を通じて悲しい再会を果たします。3人はそれぞれ「被害者」「容疑者」、そして「刑事」-。苦悩と葛藤が交錯し、新たな時が動き始めます。

     ※公式にあるストーリー以上のネタバレはしていません



    全体の感想



     「いい映画をみた」

     そんな言葉がもっともしっくりくるような気がします。静かで派手な展開はありませんが、とても上質で、濃密な時間を過ごすことができました。ストーリーが落ち着いている分、俳優さんたちの抑えながらも魂のこもった演技や、舞台となっている富山や能登といった北陸の景色の美しさに目が行きます。

     ストーリー自体はテレビで放送されている2時間ドラマでも見かけるようなものかもしれません。ですが、この作品は「映画館で見てよかった」と思わせてくれる作品でした。北陸の風景の、息を飲むような美しさ。そしてノーメイクで撮影したという俳優さんたちの息づかい。大きなスクリーンだからこそ味わえるものだと思います。

     客層についても触れておきたいと思います。お客さんはシニアの方が中心でしたが、若い女性の方の姿も目立ちました。高齢の方は夫婦で鑑賞されている方が多かったように思います。若い女性は岡田さんや小栗さんのファンの方でしょうか。

     岡田准一さんが出演される映画は幅広い世代の方が見に来られている印象があります。もはや1アイドルグループのメンバーという立ち位置を超えて、広く一般の方にも支持される俳優になっているのでしょう。何より、映るだけで画面が一気に引き締まり、「凄み」すら感じさせる演技は圧巻です。

     このあとは、「ストーリー」「キャスト」「風景」の3テーマに分けて感想を書いていこうと思います。



    テーマ感想*「ストーリー」「キャスト」「風景」



    ◆ ストーリー / サスペンスとして、ヒューマンドラマとして

    「……忘れても、いいんだよ」

    「覚えておいて……欲しいんだ」



     幼いころの「ある記憶」を巡って交錯する台詞。幼いころにあまりにも大きな「十字架」を背負ってしまった3人は、大人になり、それぞれの家族と暮らしています。あの日の記憶をずっと閉じ込めておいた者、全てを背負い続けていた者……。3人を再び出会わせたのは、3人のうちの1人が被害者になってしまった、あまりにも悲しい殺人事件でした。

    「俺たちはもっと早くに会うべきだった!」



     「刑事」として、「容疑者」である啓太(小栗さん)に向き合う篤(岡田さん)。向き合ううちに2人は今の立場を超え、「あの日」へと帰っていきます。重い十字架が再び呼び起こされる苦悩、かつての友とこのような形で向き合っていることへの葛藤・・・。複雑な感情が絡み合っていきます。

     ストーリーとしては、サスペンス:ヒューマンドラマ=2:8という感じでした。容疑者となってしまった啓太は、最初なかなか心を開こうとしません。「本当に、かつての仲間を殺してしまったのではないのか」そんな不安も頭をよぎる演技でした。

     犯人が分かるのは、終盤に差し掛かろうかという割と早いところ。「えっ」。あまり推理ものとして見ていなかった私は、結構グサリとくる展開でした。犯人はさらっと分かってしまいますが、これでは殺されてしまった悟(柄本さん)があまりに可哀想で、報われません。観終わってから徐々に心にドスンと沈み込んできます。

     犯人が分かった後、圧巻の人間ドラマが作品を締めくくります。ここでは、もう1つの大きな「秘密」が明らかにされます。やはり私は全く推理などしていなかったので、「な・・・」と絶句してしまいました。その秘密が明らかになった時、この物語に一気に「厚み」が加わります。ネタバレしないと言ったので控えますが、「私たちが想像を絶するくらいの、もっと大きな覚悟があった」そんなところです。

    スクリーンショット (49)
    (公式サイトより)

    ◆ キャスト / まさしく、日本最高峰

    岡田准一さん

     圧巻の一言です。他の追随を許さない存在感、画面に映るだけで「圧」がすごい。まだ30代だとは信じられませんね。

     圧倒的な存在感もあるのですが、私が今回見入ったのは岡田さんの「影」の部分、それに人間の「弱さ」を実直に演じておられることの凄さでした。過去から背負ってきた苦しみの大きさを、こんなにも素直に表現できることは素晴らしいと思いました。母親が自殺未遂を図った後、病院で「寂しさ」を吐露する場面は特に素晴らしかったです。傷付いて、弱りきった心がこんなにも率直に表現できるものか、と思いました。

    小栗旬さん

     岡田さんの圧巻の演技に全く気圧されず、同じくらいの存在感で渡り合っています。岡田さんと小栗さんが2人で演技されるシーンは本当に贅沢で、これだけでもこの映画を見に行く価値はあります。前半で、なかなか篤に心を開こうとしない抑えた演技が素晴らしく、作品全体をきりりと締めているように感じました。

    柄本祐さん

     報われない被害者、悟を演じた柄本さん。真実を振り返ってみると、それは悟にとってあまりにもむごく、救いようのないものでした。柄本さんの演技は、そんな底の見えない悲しみを全て一身に背負っているようで、悟への感情移入度を高めてくれます。ちょっと微笑んだときに、そこに張り裂けんばかりの悲しみも見て取ることができて、胸を締め付ける。そんな演技でした。

    安藤サクラさん

     ・・・作品を見た方は分かるかもしれませんが、ある意味上の3人を上回る存在感を放っていたかもしれない「MVP候補」。演技が上手い方だとは知っていましたが、想像をはるかに上回る素晴らしい演技でした。冒頭、子どもたちを絶対に守り抜こうとして見せた覚悟を見せたと思えば、作品の最後では「温もり」「優しさ」を感じさせる演技で見事に作品を締めくくって見せました。圧巻の一言です。



     もっと書きたいのですが、きりがないのでこのあたりにしておきます。知っている役者さんばかりで本当に豪華ですよ(刑事役で安田顕さんが出演されていることを知らず、登場された時はなんて贅沢な・・・と思いました)。俳優さんたちの渾身の演技の詳細はぜひ劇場でご覧ください。

    ◆ 風景 / 北陸の厳しさと温かさ

     当たり前のように見ている風景が、こんなに感情豊かで贅沢なものだったのか。そう気付かされます。大きなスクリーンで見ることができて本当によかったです。公式サイトにはロケ地の選定や撮影の詳細が書かれていますが、この映画のために選び抜かれ、こだわり抜かれた風景だったことがよく伝わります。降旗監督と木村カメラマン、映画界のレジェンド2人だから撮れた奇跡の連続です。

     立山連峰に囲まれた街並み
     どこまでも広がる雄大な海
     心に染み入る夕焼け

     全て胸に焼き付けておきたいです。北陸の厳しくも温もりのある風景が見事に綴られています。

     そして、エンドロールでちょっとしたサプライズ。なんと、「撮影者・岡田准一」の文字が!事前にほとんど予習もせずに見に行ったのでけっこう驚きました。この映画には岡田さんが撮影したシーンも含まれています。鑑賞後に詳細を確認し、その場面を頭に描きました。これは、ぜひもう一度見に行きたくなる仕掛けかもしれませんね。

    まとめ



    追憶 (小学館文庫)
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    かで、しかし豊潤な「日本映画」-


     「いい映画をみた」、最初に書きました。映画館を出て、最初にそう思って、その後で、

     「いい映画にお金を払えるって幸せなことだな」そんなことも思いました。そんなことを思わせてくれる、素晴らしい作品です。一人でも多くの方に届いてほしいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



    オワリ

    映画『追憶』 公式サイト

     キャストインタビューやロケの詳細などは必見です。





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    年越しの「通過儀礼」- 境界線で石川が選んだ道

     私が一番大好きなドラマが3年ぶりに続編になって帰ってきました。今日は10月29日にテレビ朝日で放送されたドラマスペシャル、「BORDER 贖罪」の感想を紹介します。

     「BORDER」は2014年の4月クールに連続ドラマで放送されていました。もう3年以上前になるんですが、私は最終回をいつまでも忘れることができず、つねにそのことが頭の片隅にありました。ですから、続編が発表された時は本当に興奮しました。あの最終回からは、どうやっても続編は無理だと思っていたのです。

     まさかの続編は、大満足の出来でした。これからも、自信を持って「BORDER」が一番好きなドラマだということができます。



    これまでのBORDER



     ドラマのことを知らない方も多いと思うので、まずはドラマ「BORDER」についてご紹介します。そして、私がこのドラマのどこに惹かれたのかも紹介しようと思います。

     小栗旬さん演じる主人公の石川安吾は、ある事件で頭部に銃弾を受けました。奇跡的に命を取り留めましたが、頭に銃弾は残り、以来彼は死者と話ができるようになったのです。

     BORDERは、死者と会話ができるようになった石川の物語です。実は、私はドラマが始まる前はそんなに期待していませんでした。設定がかなり突飛ですし、死者と話ができたらすぐに犯人を教えてもらえるじゃないか、と素朴なことを考えもしました(インタビューを読むと、主演の小栗さんも同じように思っていたみたいです 笑)。そんな感じであまり期待値は高くなかったのですが、テレ朝の刑事ドラマが好きなのでいつもの視聴習慣でテレビを付けていたんです。

     ・・・それが、回を重ねるごとに夢中になっていきました。まず、死者と会話ができるという設定からいろいろなパターンの話を作れることがすごい。こんな見せ方があるんだ、と毎回唸らされました。そして、なんといっても小栗さんの魂を削っていくような演技力です。死者と話せるというのはすごい能力ですが、裏を返せば「死んでからでないと話せない」ということ。

     「本当は、あなたが生きている時に救いたかった」と今回のドラマにもある通り、石川は被害者を犠牲になる前に救えなかった悔しさ、罪悪感、それに、死者が見えることを周りの誰にも話せない苦しみなどを抱えながらどんどん疲弊していきました。ドラマが始まった時は、スタイリッシュでかっこよかった石川が、回を重ねるごとにどんどんやつれ、目も虚ろになっていきました。「スーツの色がどんどん黒くなっていく」演出がすごかったです。最後は喪服のような真っ黒なスーツになります。

     死者に報いるために、石川はいわゆる違法捜査にも足を突っ込んでいきます。そして最終回、法の力では裁けない、「絶対的な悪」が彼の前に立ちふさがるのです。それが大森南朋さん演じる安藤でした。どんな手を使っても安藤を逮捕することができない。そして、石川は安藤にこう嘲笑われるのです。「私は悪をなすために死ねるが、あなたは正義のために人を殺せない」

     極限まで追い詰められた石川は・・・

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     衝撃的なこのシーンは、ずっと脳裏に焼き付いています。石川はラストで安藤を突き落とし、殺害しました。

     このラストシーンが衝撃だったからこのドラマを推しているわけではありません。いわゆる「闇落ち」なんですが、最終回になって急に湧いてきたような結末ではなく、このラストに向けて全てが計算されていたこと、これがすごいなと思いました。

     連ドラは全9話あったんですが、無駄だと思える回は1つもありません。石川がどんどん追い詰められ、孤独を深めていって最後このシーンに至るまでが丁寧に描かれているので、納得の闇落ちなのです。

     とはいえ、こんな結末になってしまって、続編はないだろうとすっかりあきらめていました。このあとのことは自分で補完しなければいけないのかなと思っていました。そんなところに続編決定のニュースです。しかも、3年以上もたって(!)。大好きなドラマなので、一時も忘れたことはありませんでした。

     見たいような、怖くて見たくないような続編が、いよいよ放送となりました。

     ★ ここからネタバレあります。ご注意ください




    ドラマスペシャル「BORDER 贖罪」感想



    ◆ 境界線の狭間で

     いやー、素晴らしかったですね。正直、続編が蛇足になる心配もしていましたが、まったくそんなことはありませんでした。実際はこの作品が連ドラの「10話」になるような感じですね。3年以上待ったかいがありました。

     石川を殺害してしまった安藤。監察官から聴取を受けることになります。そして、死者が見えるという石川は、自分が殺害した安藤の霊に付きまとわれることになります。まったく、地獄のような話です。

     連ドラの時から、正義と悪、闇と光のボーダーラインで苦しんできた石川。安藤を殺害したことで、完全に闇の世界に落ちてしまったように思っていました。そこをどうフォローするのか、とても興味がありました。殺人を自白し、罪を償う道を選ぶのか、それとも、完全に闇落ちして闇の世界で暗躍するのか。あるいは、罪の意識に苛まれたり、頭の銃弾が原因になったりして命を落とすのか。わたしは、一番最後のパターンだと思っていましたが・・・。

     なんとなんと、一番近かったのは真ん中でした。

     連ドラの時から石川に協力していた闇の世界の住人たちが、安藤が自殺したという嘘の証拠を捏造し、石川を救います。石川もまた、殺人を自白せず、安藤が自ら身を投げたと嘘の証言をしました。そして、安藤の霊にこう言い放ちます。

     自分は安藤を殺害したことで完全に闇の世界に落ちた。安藤の殺害は「通過儀礼」で、自分はそれを受け入れる。

     しかし、今後は闇の世界で自分の正義を遂行する・・・!

     闇を完全に飲みこんで、ダークヒーロー・石川が誕生しました。石川が完全に闇の世界に落ちてしまった以上、これまで石川を揺さぶっていた安藤にはもうどうしようもありません。「負け惜しみを言うな!」と珍しく激昂しましたが、石川の固い決意に完全に負かされ、消えてしまいました。

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    ◆ もう、戻れない

     石川が最後取調室から出たあとのシーンが切なかったですね。外から差し込む光・・・。「もう、自分は『ふつうの世界』、『表の世界』では生きていけない」そのことを突き付けられ、静かに受け入れているように見えました。そして、仲間の刑事たちに声をかけられますが、それをかわす石川。・・・自分は人を殺してしまった。もう、この世界の住人とは普通に交わることができない。そんな決意でしょうか。

     しかし、安易に命を絶つことを選ばなかった(そういうドラマが他では多いですけど)。今後は、死者と会話ができるという自分の特性を生かし、闇の世界で正義を遂行する。法の力では裁けない、光の世界の住人たちには手出しのできない犯罪者たちに、闇の世界にいる自分が制裁を下す。

     すごい覚悟だと思います。もう石川は絶対に幸せになることはできません。闇の世界で正義を遂行した後、いつか自分の罪を認めるか、あるいは命を絶つか、銃弾が原因で命を落とすか。とにかく、「もう戻れない」という石川の悲壮な決意が痛いくらい伝わってきて、それが素晴らしかったです。

     取り調べ中に起こった「もう1つの事件」も面白かったですし、それよりも何よりも、3年以上のブランクをまったく感じさせない役者さんたちがすごい。特に小栗さん。この役は魂が削られて、小栗さん自身とても大変だそうです。3年以上たって石川に戻ってくるのはさすがです。命を削るような演技は見逃せません。

     そして、スーツの色など細部へのこだわりもさすがでした。今回はスーツの色が黒からグレーに戻っていくんです。闇の世界に落ちたのですが、そこで正義を遂行するということ。それこそがグレーの意味でしょう。実に鮮やかな「灰色の結末」、「灰色の答え」でした。

    続編、あるでしょうか



     意外だったのが、すごく続編に前向きな作りだったこと。ご縁があれば、ダークヒーロー石川が活躍する続編が見られるかもしれません。まさかまさか、あの絶望的でどうしようもなかった結末から、続編が期待できるところまでくるとは思いませんでした。

     最後にヤフーのサイトを見てみたいと思います。このサイトはドラマの評価がけっこう辛めなんですが、BORDERは異例の高点数が付いています。

    border評価

     連ドラは4.77点/5

    bordersp評価

     今回のスペシャルは4.76点/5(記事執筆時点)。4点台後半は、なかなかレアなものです。もちろんこのサイトだけでドラマのことは語れませんが、私の中の評価とは完全に一致しています。スペシャルも間違いなく素晴らしい出来でした。

     このドラマは、キャスト、スタッフともにプロフェッショナルがそろっています。ぜひ、続編が見られることを楽しみにしています。



    オワリ

    「BORDER 贖罪」 公式サイト

    小栗旬さんインタビュー

     こちらのインタビューも見ていただきたいです。改めて小栗旬さんはすごい役者だと思いますね。

     そして、今回放送されたドラマはTverで11月12日まで無料視聴できます。気になった方はぜひご覧ください。