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し、本が自由に読めない世の中になってしまったら・・・

 10月10日に公開された映画、「図書館戦争 THE LAST MISSION」を観てきました。楽しみにしていた「図書館戦争」シリーズの続編です。直前に放送されたスペシャルドラマもしっかりチェックして、映画館に足を運びました。

 「図書館戦争」シリーズは私が大好きな作品です。恋愛とアクションを絡めて描いたこの作品は、エンターテイメントとして抜群の面白さを誇ります。でもそれだけではなくて、私が一番惹きつけられるのは作品のテーマである「本を読む自由」です。「本を読む自由」というテーマがあることによって、この作品は単に面白くて好きな作品ではなく、何度も読み返したい「大切な作品」になりました。

※ネタバレを含むので、映画を観ようと思っている方はぜひ鑑賞後にご覧ください。



自信を持って、前作以上


 


 
 公開3日目、お昼の上映回はたくさんのお客さんの姿でいっぱいでした。一番多い客層は女子中高生で、その次は30~40代くらいの女性という感じでした。原作のファンはもちろん、恋愛の要素を楽しみにしている人や、岡田准一さんを中心とするキャストのファンの人がたくさん集まったようです。

 男女比は7:3くらいで女性の方が多かったように思いますが、若い世代から高齢の世代まで、割とまんべんなくお客さんが集まっていたことには驚きました。高齢の方がこの作品に興味を持たれるイメージがほとんどなくて、キャストもどちらかといえば若い人向けなのでかなり意外でした。私が思っている以上に、「図書館戦争」は多くの方に受け入れられているのかもしれません。

 観客満足度98.2%

 2013年の前作が叩き出した数字です。すごい数字であると同時に、私にとっては納得の数字でした。「図書館戦争」は原作をリスペクトしたうえで、大切に作り込まれています。キャストや脚本など、作者の有川浩さんは作品に納得の太鼓判を押しています。素晴らしい作品とその作品を愛する素晴らしいスタッフが集まったからこそ生まれた数字だと思います。

 これまでの映画とドラマで完全に信頼を寄せていたので安心して観ることができましたが、それでも前作のハードルは高かったと思います。前作並みの作品では、今度は「98.2%」にはならないはずです。

 鑑賞を終えて、驚きました。今回観客満足度が出るのかは分かりませんが、98.2%を何事もなかったように超えてしまうのではないか、と思わせるくらいの素晴らしい出来でした。恋愛もアクションも、前作よりはるかにパワーアップしていました。ファンなので贔屓目もあるかもしれませんが、自信を持って前作以上と言える作品だと思います。

 キャストやスタッフのインタビューがたくさん収録されたパンフレットを購入しました。そこに収録されていたインタビューも引用しながら振り返っていこうと思います。

アクションの中での恋愛



 今回堂上や郁たちタスクフォースが守るのは、「図書館法規要覧」という1冊の本です。この本は、この世に1冊しかない”自由の象徴”。「表現の自由」をテーマにした芸術展の会場に展示されることになったこの本を、メディア規制を進める良化隊がいかなる手段も辞さずに狙ってきます。堂上や郁は、この本を会場まで届けることができるのでしょうか。

 映画の内容は、アクションが8割、恋愛が2割といった感じでした。直前に放送されたドラマは恋愛を前面に押し出していたのですが、大きなスクリーンで公開される映画ということで、スケールの大きい迫力のあるアクションが展開されていました。冒頭から激しいアクションシーンで幕を開けます。銃撃戦の音響などは圧倒されるものがあって、アクション通の方でも十分に満足できる内容ではないでしょうか。

 恋愛が2割とはいえ、恋愛要素に物足りなさはありませんでした。榮倉奈々さん演じる笠原郁と岡田准一さん演じる堂上篤。これまでずっと2人を追ってきたファンの心をくすぐる描写が要所要所に凝縮されていました。

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<映画のみどころ 恋愛編>

・査問会で尋問を受ける郁の帰りを、堂上がずっと待っていたシーン
・手塚の兄、慧(さとし)に呼び出され、レストランで揺さぶりをかけられる郁を、堂上が迎えに来るシーン
・激しい戦闘の合間に一瞬の静寂が訪れ、堂上と郁が言葉を交わすシーン
・書店でのキスシーン
・最後、照れながら堂上が郁をデートに誘うシーン  などなど

 ちょっといい雰囲気になってもすぐに緩んでしまう2人のグダグダぶりは相変わらずで、もどかしい気持ちで見ていました。戦場で2人きりになってお好み焼きの話を始めたり、2人で見つめ合ったのに身長の話になったり、この2人にはどうしようもないところがあります。

 そんなもどかしさは、最後のシーンで吹き飛びます。5つ挙げた中で、唯一グダグダがないのが書店でのキスシーンです。「戻ったら、好きって言いますから!!」・・・もう一度映画館に行きたくなります。

 このシーンは書店が舞台となっていて、「ここは・・・!」と勘付くものがあったのですが、やはりそうだったようです。

野木: そして、キスシーンを撮った書店は、明示されていないんですが、堂上と郁の出会いの場所なんです。

佐藤: 現場ではそれがわかるように撮ったんですが、あえて切ったんですよ。(中略)もうそこを強調しなくてもいいんじゃないかと。よく見てもらうと同じだということがわかると思います。
(パンフレットより 野木→脚本の野木亜紀子さん 佐藤→佐藤信介監督)



 たしかに、明示しなくても多くのお客さんは分かっていたはずです。過去のエピソードも詰まったこのシーンは、目に焼き付けるようにして見ました。

 郁は本当に応援したくなる主人公です。映画を観ていて改めて思ったのですが、郁は純粋で、大切なものを一生懸命守ろうとします。査問会で堂上の責任が問われた時は自分の首をかけてまで堂上を守り、手塚の兄と対峙する場面では、「手塚が傷つくから」と言って頑なに態度を貫きました。堂上でも手塚でも1冊の本でも、郁は自分以外の人や物が傷つくことを絶対に認めず、全力で守ろうとします。

 「誰かが犠牲になっても成し遂げらなければいけない正義がある」という慧の考えと、「誰かが傷ついていい正義なんてない」という郁のスタンスは、この作品だけではなく、いろいろなところでぶつかり合うのだと思います。

 そして、堂上役の岡田准一さん。私は岡田さんのどこか照れを隠せない演技が好きで、男らしく貫禄のある雰囲気から一気に隙が覗いてしまうところがすごく癖になります。

 岡田さんは、やはりというか恋愛シーンにはかなり苦労されているようです。

ラブに関しては、得意分野じゃないし、恥ずかしいですね(笑)。僕は恋愛ものは苦手意識があるんですけど、『図書館戦争』じゃなかったら、やめてほしいと思ったシーンもたくさんあるんです。でも、『図書館戦争』の世界観だからできると思えるというか、台本を読んで物語に上手く絡んでいたので必要なことだと思って、いろいろトライしました。(パンフレットより)



 岡田さんがいろいろ苦労されていることや、撮影中のいい感じの雰囲気が伝わってくる恋愛のシーンがすごく好きです。でも、岡田さんの照れは地のものではなく、あくまで「演じている」のだ、と別の対談で本人がおっしゃっていますね。演技なのかもしれませんが、岡田さんの言う「苦手意識」なるものはよく伝わってきます。

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<映画の見どころ アクション編>

・「格闘技オタク」の岡田さん、代役を使わない圧倒的なアクション
・前作終了後からトレーニングを続けていた榮倉さん、大幅に増えたアクションシーンをこなしきる
・手塚(福士蒼汰さん)、小牧(田中圭さん)も最前線で奮闘 などなど

 恋愛ものは苦手という岡田さんですが、アクションシーンは普段から鍛えておられることもあり、圧倒的な演技です。岡田さんは3つの格闘技で師範資格を持つ、自他共に認める「格闘技オタク」です。

「仕事のない時は練習している感じ」というほどの精進ぶり。「練習も仕事のひとつとして、スケジュールを組んでもらってます。決して趣味でやっているわけではないので」 (『be』 2015年10月3日朝日新聞朝刊)



 そんな岡田さんのアクションがふんだんに盛り込まれています。それに負けないほどの活躍を見せたのが榮倉奈々さん。今回はアクションシーンが大幅に増えて、作品の中終盤では郁と堂上が戦場で2人行動を続けます。前回の映画のあとからトレーニングを続けていたという榮倉さんが、このアクションシーンを見事に演じ切りました。岡田さんがいても見劣りがしなくて、これはすごいことだと思います。

 アクションシーンの合間に恋愛シーンが盛り込まれるのもすごくよいのです。先ほど紹介した、戦場で堂上と郁がお好み焼きの話をするシーンや、銃撃戦の現場で手塚が柴崎(栗山千明さん)を思い出すシーンなど、今回はアクションと恋愛ものが上手く混ざり合ったという印象があります。

架空の戦時下の世界で、僕らと同じような目線の人々が、恋をしたり、自由を守りたいという意思を貫いたりするのは映画ならではで、『図書館戦争』ならでは。現実ではありえないことですが、20代の人々がこんなふうに自由を守るための戦いに巻き込まれたらどうなるのか。彼らにも日常はあり、恋した人もいるはず。そういうところが『図書館戦争』の魅力だと思っていて、そのちぐはぐさを描きたいという思いは常にありました。(パンフレットより 佐藤監督)



 アクションの中の恋愛というのはかなり特異な世界観ですが、これを読むとその世界観こそが「図書館戦争」の生命線だということがよく分かりますね。

おかしいことが起きている



 「図書館戦争」は一部のマニア向けの作品、と言われることがあります。たしかに、好きな人同士なら私も延々と盛り上がれるのですが、あまり関心のない人とはかなり壁があるというか、距離を感じる作品だなと感じます。やはり「図書館で本を巡って戦争を繰り広げる」という設定が受け入れられない方が多いようです。

 「1冊の本を巡ってこんな戦闘をするなんておかしい」と言われたこともあります。その人は「図書館戦争」を馬鹿にするようなニュアンスで言ったのですが、私は逆に「この人はよく分かっている」と思いました。

 おかしいことが起きている、というのはその通りです。その「おかしさ」こそが作品のテーマであり、作品で問われ続けているわけですから、私はむしろ、「こんな話はおかしい」と思う人にこそ観てほしい作品だと思います。そうやって「おかしい」と思うことこそが正常の感覚です。ではどうしておかしいことが起きているのか、おかしい世界になってしまったのか、作品ではずっと問われ続けます。そう考えると、この映画は「おかしい」と思う人むけなのです。

 「みんなが人任せにしているうちに、こんな世界になっちゃったんだよ!」

 ドラマに出てきたこのセリフが、もっと多くの人に広まってほしいです。おかしいけど、馬鹿馬鹿しくはない。

 当たり前になっていて考えることもなくなっていた「本を読む自由」ということを教えてくれたこの作品は、私にとって本当に大切な作品です。大切な作品を素晴らしい映画にしてくださったキャスト、スタッフの皆さん、そして大切な作品を生み出してくださった作者の有川さんに感謝したいと思います。



オワリ

『図書館戦争』公式サイト

「図書館危機」 有川浩さん
 シリーズ第3作、「図書館危機」のレビューです。今回の映画はこちらの「図書館危機」の話をベースにして作られています。シリーズの他の作品のレビューも追加していきたいです。


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有川浩,



  •   13, 2015 06:25