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し、本が自由に読めない世の中になってしまったら・・・

 10月10日に公開された映画、「図書館戦争 THE LAST MISSION」を観てきました。楽しみにしていた「図書館戦争」シリーズの続編です。直前に放送されたスペシャルドラマもしっかりチェックして、映画館に足を運びました。

 「図書館戦争」シリーズは私が大好きな作品です。恋愛とアクションを絡めて描いたこの作品は、エンターテイメントとして抜群の面白さを誇ります。でもそれだけではなくて、私が一番惹きつけられるのは作品のテーマである「本を読む自由」です。「本を読む自由」というテーマがあることによって、この作品は単に面白くて好きな作品ではなく、何度も読み返したい「大切な作品」になりました。

※ネタバレを含むので、映画を観ようと思っている方はぜひ鑑賞後にご覧ください。



自信を持って、前作以上


 


 
 公開3日目、お昼の上映回はたくさんのお客さんの姿でいっぱいでした。一番多い客層は女子中高生で、その次は30~40代くらいの女性という感じでした。原作のファンはもちろん、恋愛の要素を楽しみにしている人や、岡田准一さんを中心とするキャストのファンの人がたくさん集まったようです。

 男女比は7:3くらいで女性の方が多かったように思いますが、若い世代から高齢の世代まで、割とまんべんなくお客さんが集まっていたことには驚きました。高齢の方がこの作品に興味を持たれるイメージがほとんどなくて、キャストもどちらかといえば若い人向けなのでかなり意外でした。私が思っている以上に、「図書館戦争」は多くの方に受け入れられているのかもしれません。

 観客満足度98.2%

 2013年の前作が叩き出した数字です。すごい数字であると同時に、私にとっては納得の数字でした。「図書館戦争」は原作をリスペクトしたうえで、大切に作り込まれています。キャストや脚本など、作者の有川浩さんは作品に納得の太鼓判を押しています。素晴らしい作品とその作品を愛する素晴らしいスタッフが集まったからこそ生まれた数字だと思います。

 これまでの映画とドラマで完全に信頼を寄せていたので安心して観ることができましたが、それでも前作のハードルは高かったと思います。前作並みの作品では、今度は「98.2%」にはならないはずです。

 鑑賞を終えて、驚きました。今回観客満足度が出るのかは分かりませんが、98.2%を何事もなかったように超えてしまうのではないか、と思わせるくらいの素晴らしい出来でした。恋愛もアクションも、前作よりはるかにパワーアップしていました。ファンなので贔屓目もあるかもしれませんが、自信を持って前作以上と言える作品だと思います。

 キャストやスタッフのインタビューがたくさん収録されたパンフレットを購入しました。そこに収録されていたインタビューも引用しながら振り返っていこうと思います。

アクションの中での恋愛



 今回堂上や郁たちタスクフォースが守るのは、「図書館法規要覧」という1冊の本です。この本は、この世に1冊しかない”自由の象徴”。「表現の自由」をテーマにした芸術展の会場に展示されることになったこの本を、メディア規制を進める良化隊がいかなる手段も辞さずに狙ってきます。堂上や郁は、この本を会場まで届けることができるのでしょうか。

 映画の内容は、アクションが8割、恋愛が2割といった感じでした。直前に放送されたドラマは恋愛を前面に押し出していたのですが、大きなスクリーンで公開される映画ということで、スケールの大きい迫力のあるアクションが展開されていました。冒頭から激しいアクションシーンで幕を開けます。銃撃戦の音響などは圧倒されるものがあって、アクション通の方でも十分に満足できる内容ではないでしょうか。

 恋愛が2割とはいえ、恋愛要素に物足りなさはありませんでした。榮倉奈々さん演じる笠原郁と岡田准一さん演じる堂上篤。これまでずっと2人を追ってきたファンの心をくすぐる描写が要所要所に凝縮されていました。

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<映画のみどころ 恋愛編>

・査問会で尋問を受ける郁の帰りを、堂上がずっと待っていたシーン
・手塚の兄、慧(さとし)に呼び出され、レストランで揺さぶりをかけられる郁を、堂上が迎えに来るシーン
・激しい戦闘の合間に一瞬の静寂が訪れ、堂上と郁が言葉を交わすシーン
・書店でのキスシーン
・最後、照れながら堂上が郁をデートに誘うシーン  などなど

 ちょっといい雰囲気になってもすぐに緩んでしまう2人のグダグダぶりは相変わらずで、もどかしい気持ちで見ていました。戦場で2人きりになってお好み焼きの話を始めたり、2人で見つめ合ったのに身長の話になったり、この2人にはどうしようもないところがあります。

 そんなもどかしさは、最後のシーンで吹き飛びます。5つ挙げた中で、唯一グダグダがないのが書店でのキスシーンです。「戻ったら、好きって言いますから!!」・・・もう一度映画館に行きたくなります。

 このシーンは書店が舞台となっていて、「ここは・・・!」と勘付くものがあったのですが、やはりそうだったようです。

野木: そして、キスシーンを撮った書店は、明示されていないんですが、堂上と郁の出会いの場所なんです。

佐藤: 現場ではそれがわかるように撮ったんですが、あえて切ったんですよ。(中略)もうそこを強調しなくてもいいんじゃないかと。よく見てもらうと同じだということがわかると思います。
(パンフレットより 野木→脚本の野木亜紀子さん 佐藤→佐藤信介監督)



 たしかに、明示しなくても多くのお客さんは分かっていたはずです。過去のエピソードも詰まったこのシーンは、目に焼き付けるようにして見ました。

 郁は本当に応援したくなる主人公です。映画を観ていて改めて思ったのですが、郁は純粋で、大切なものを一生懸命守ろうとします。査問会で堂上の責任が問われた時は自分の首をかけてまで堂上を守り、手塚の兄と対峙する場面では、「手塚が傷つくから」と言って頑なに態度を貫きました。堂上でも手塚でも1冊の本でも、郁は自分以外の人や物が傷つくことを絶対に認めず、全力で守ろうとします。

 「誰かが犠牲になっても成し遂げらなければいけない正義がある」という慧の考えと、「誰かが傷ついていい正義なんてない」という郁のスタンスは、この作品だけではなく、いろいろなところでぶつかり合うのだと思います。

 そして、堂上役の岡田准一さん。私は岡田さんのどこか照れを隠せない演技が好きで、男らしく貫禄のある雰囲気から一気に隙が覗いてしまうところがすごく癖になります。

 岡田さんは、やはりというか恋愛シーンにはかなり苦労されているようです。

ラブに関しては、得意分野じゃないし、恥ずかしいですね(笑)。僕は恋愛ものは苦手意識があるんですけど、『図書館戦争』じゃなかったら、やめてほしいと思ったシーンもたくさんあるんです。でも、『図書館戦争』の世界観だからできると思えるというか、台本を読んで物語に上手く絡んでいたので必要なことだと思って、いろいろトライしました。(パンフレットより)



 岡田さんがいろいろ苦労されていることや、撮影中のいい感じの雰囲気が伝わってくる恋愛のシーンがすごく好きです。でも、岡田さんの照れは地のものではなく、あくまで「演じている」のだ、と別の対談で本人がおっしゃっていますね。演技なのかもしれませんが、岡田さんの言う「苦手意識」なるものはよく伝わってきます。

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<映画の見どころ アクション編>

・「格闘技オタク」の岡田さん、代役を使わない圧倒的なアクション
・前作終了後からトレーニングを続けていた榮倉さん、大幅に増えたアクションシーンをこなしきる
・手塚(福士蒼汰さん)、小牧(田中圭さん)も最前線で奮闘 などなど

 恋愛ものは苦手という岡田さんですが、アクションシーンは普段から鍛えておられることもあり、圧倒的な演技です。岡田さんは3つの格闘技で師範資格を持つ、自他共に認める「格闘技オタク」です。

「仕事のない時は練習している感じ」というほどの精進ぶり。「練習も仕事のひとつとして、スケジュールを組んでもらってます。決して趣味でやっているわけではないので」 (『be』 2015年10月3日朝日新聞朝刊)



 そんな岡田さんのアクションがふんだんに盛り込まれています。それに負けないほどの活躍を見せたのが榮倉奈々さん。今回はアクションシーンが大幅に増えて、作品の中終盤では郁と堂上が戦場で2人行動を続けます。前回の映画のあとからトレーニングを続けていたという榮倉さんが、このアクションシーンを見事に演じ切りました。岡田さんがいても見劣りがしなくて、これはすごいことだと思います。

 アクションシーンの合間に恋愛シーンが盛り込まれるのもすごくよいのです。先ほど紹介した、戦場で堂上と郁がお好み焼きの話をするシーンや、銃撃戦の現場で手塚が柴崎(栗山千明さん)を思い出すシーンなど、今回はアクションと恋愛ものが上手く混ざり合ったという印象があります。

架空の戦時下の世界で、僕らと同じような目線の人々が、恋をしたり、自由を守りたいという意思を貫いたりするのは映画ならではで、『図書館戦争』ならでは。現実ではありえないことですが、20代の人々がこんなふうに自由を守るための戦いに巻き込まれたらどうなるのか。彼らにも日常はあり、恋した人もいるはず。そういうところが『図書館戦争』の魅力だと思っていて、そのちぐはぐさを描きたいという思いは常にありました。(パンフレットより 佐藤監督)



 アクションの中の恋愛というのはかなり特異な世界観ですが、これを読むとその世界観こそが「図書館戦争」の生命線だということがよく分かりますね。

おかしいことが起きている



 「図書館戦争」は一部のマニア向けの作品、と言われることがあります。たしかに、好きな人同士なら私も延々と盛り上がれるのですが、あまり関心のない人とはかなり壁があるというか、距離を感じる作品だなと感じます。やはり「図書館で本を巡って戦争を繰り広げる」という設定が受け入れられない方が多いようです。

 「1冊の本を巡ってこんな戦闘をするなんておかしい」と言われたこともあります。その人は「図書館戦争」を馬鹿にするようなニュアンスで言ったのですが、私は逆に「この人はよく分かっている」と思いました。

 おかしいことが起きている、というのはその通りです。その「おかしさ」こそが作品のテーマであり、作品で問われ続けているわけですから、私はむしろ、「こんな話はおかしい」と思う人にこそ観てほしい作品だと思います。そうやって「おかしい」と思うことこそが正常の感覚です。ではどうしておかしいことが起きているのか、おかしい世界になってしまったのか、作品ではずっと問われ続けます。そう考えると、この映画は「おかしい」と思う人むけなのです。

 「みんなが人任せにしているうちに、こんな世界になっちゃったんだよ!」

 ドラマに出てきたこのセリフが、もっと多くの人に広まってほしいです。おかしいけど、馬鹿馬鹿しくはない。

 当たり前になっていて考えることもなくなっていた「本を読む自由」ということを教えてくれたこの作品は、私にとって本当に大切な作品です。大切な作品を素晴らしい映画にしてくださったキャスト、スタッフの皆さん、そして大切な作品を生み出してくださった作者の有川さんに感謝したいと思います。



オワリ

『図書館戦争』公式サイト

「図書館危機」 有川浩さん
 シリーズ第3作、「図書館危機」のレビューです。今回の映画はこちらの「図書館危機」の話をベースにして作られています。シリーズの他の作品のレビューも追加していきたいです。


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有川浩,



  •   13, 2015 06:25
  •  図書館危機    

    切なものを守れるか―激動のシリーズは第3弾

     今日紹介するのは、秋に映画とスペシャルドラマの放映が控えている有川浩さんの人気シリーズです。私はこれで3作目!今回も楽しませていただきました。

     毎回毎回山場続きで、手に汗を握りながら3作目までやってきました。キャラクターの成長がうれしくなるのは、シリーズものならではですね。この「図書館危機」も相変わらずの面白さでした。



    図書館戦争とは



     図書館戦争シリーズを読んだことのないという方のほうが多いと思うので、まずは図書館戦争シリーズについておさらいです。

     舞台は、「表現の自由」そして、「本を読む自由」が失われた世界―。「メディア良化法」という法律が成立し、不適切な著作物は「メディア良化委員会」の検閲にかかり、つぎつぎに回収されていきます。そんなメディア良化委員会の手から、人々の「本を読む自由」を守るため、図書館は武装化し、「図書隊」となりました。自由は守れるのか―図書隊とメディア良化委員会の戦いが幕を開けます・・・。

     このシリーズが生まれたきっかけは、作者の有川さんが図書館であるプレートを目撃したことにありました。

    思いつきのきっかけは近所の図書館に掲げてあった「図書館の自由に関する宣言」のプレートです。一度気づくとこの宣言ってかなり勇ましかないかい、と妙に気になっていろいろ調べているうちにこんな設定が立ち上がってきました。(「図書館戦争」単行本版あとがきより)



     「図書館の自由に関する宣言」は実際に存在します。読みたい本が読める、そんなことが当たり前になっている時代に、あまり存在感のある宣言ではないかもしれません。ここに目をつけてこんなシリーズを生み出した有川さんは本当に素晴らしいです。と同時に、「読みたい本が読める」ということの尊さを改めて感じます。そんな意味で、本好きには胸が熱くなるシリーズです。

    「図書館の自由に関する宣言」(日本図書館協会)

     かといって、堅苦しいお話ではありません。有川さんの作品は「大人のラノベ」とも言われ、文章は軽めです。とはいえ、その設定の面白さもあり、十分読みごたえのあるシリーズになっています。SFの要素、恋愛の要素、そして「本を読む自由」という大切なテーマを盛り込んだ、おすすめのシリーズです。

    苦難の中の力

     
     
     主人公の郁(いく)は自分の前で本を守ってくれた「王子様」にあこがれて図書隊に入りました。その王子様の正体が、郁の現在の上司、堂上(どうじょう)です。前作では郁が「王子様」の正体が堂上だと知ってしまうのです。2人の関係がどう変わってしまうのか、どぎまぎしながら読み始めます。

     ・・・何も変わりませんでした 笑。相変わらず照れてばかりでいいムードもすぐについえてしまう2人・・・何だかじれったくなりますし、あまりに「ベタ甘」な展開に体のあちこちがむず痒くなってきます。

    「あたし、王子様からは卒業します!」



     郁はいきなりすごい宣言をしてしまいました。いつまでも「王子様」にこだわるのではなく、上司としての堂上教官を見ようと決心したようですが、あまりにも甘いセリフになってしまいました。対する堂上の方も、郁を意識するあまり素直になることができず、2人の不器用さが際立ちます。

     それでも今回は、2人が距離を縮めつつあることを感じることができました。王子様でなく、堂上のことを上司として尊敬し、思いを寄せていく郁。そして部下である郁の目を見張るような成長とたくましい背中を見て、徐々に彼女を認めていく堂上。少しずつ惹かれあっていく2人の姿を見ていると、感慨すら覚えます。

     とはいえ、甘い恋愛だけを楽しんでいるわけにはいきません。今回も、人々の自由を脅かす出来事がたくさん起こります。郁と堂上、そして図書隊のメンバーたちは「自由を守る」という思いで1つになり、苦難に立ち向かっていきます。

     図書隊の階級章にほどこされいるのは「カミツレの花」。この花の花言葉が、今作で明かされます。それは、「苦難の中の力」-。それはまさに、苦難と戦う図書隊のためにある言葉でした。そしてこの花は、郁と堂上との間の恋愛にも絡んできます。なかなか憎い演出です。

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     さて、終盤には激しい戦闘シーンも出てきます。芸術作品を検閲の名のもとに奪おうとするメディア良化委員会に、図書隊が立ち向かいます。図書館で銃撃戦が行われる光景ははっきりいって異常です。それが異常だということは、前線で戦っている郁たちが一番理解していることでした。

    英雄になりたくて銃を撃つだなんて!図書隊はそんなことのために銃を撃つのじゃない。

    いつからか知らない、郁が生まれる前にはもう歪んでいたこの社会で、検閲に抗うために銃が必要になってしまっていた社会で、
    あたしたちはもう撃たなくては仕方のない状態になったいるのだ。



     たくさんの戦闘を乗り越え、郁は大きく成長していきます。今回の戦闘では負傷をせずに戻ってくることができました。だからといって、胸を張って帰還というわけにはいきません。郁は今回初めて、相手に引き金をひきました。それは相手の命を奪わなかったとはいえ、郁にとって、大きな1つの線を踏み越えたということにほかなりませんでした。

    引き金を引いた瞬間、結果的にはどうあれ、郁の中では攻め込もうとする敵を殺した。この手はもう血に塗れた。知事の言葉は郁の手が汚れたことを容赦なく指摘し、しかしそれを指摘してもらえたことに救われる。

    手を汚していると分かってくれている人たちがいることに。その人たちがいると分かっているのなら、この手を汚すことなどいくらでも。



     本当に、強くなりました。なんだか郁の背中がとても遠くにいってしまったような、そんな気分です。銃を構えるしかない世界は、もう変えられない。そんな世界で、自分の正義を貫き、「本を読む自由」を守ろうとする郁。

     いちばん大事なものは、もう手に入れたでしょう。

     そう思うと同時に、「読みたい本を読む」ために銃を構えなくてはいけない、そんな世界が訪れないことを願うばかりです。

    ラスト・ミッション



     そんな図書館戦争シリーズは、映画やアニメなど、さまざまなメディアに展開されています。今年の10月10日、映画の第2弾となる「図書館戦争 THE LAST MISSION」が公開されます。それに合わせ、秋にはスペシャルドラマも放送されるそうです。私の周りにもファンが多いこのシリーズ、これから秋にかけて、盛り上がりは必至です。

    図書館戦争 映画

     郁・堂上役を演じるのはそれぞれ榮倉奈々さんと岡田准一さん。2人をはじめ、キャストがとてもいいですね。よくぞ揃えてくれた・・・という感じで、本を読んでいても自然に姿を当てはめることができます。映画の続編も素晴らしい作品に仕上がっていることでしょう。本で残っているシリーズも、至急読まなければと思っています。

     ずいぶんとたくましくなった郁。もうどんなことでも乗り越えられそうですが、有川さんのことですから、この先もたくさんの試練を用意しているのだと思います。「苦難の中の力」で乗り越えられるでしょうか。自由をめぐる戦いと、甘い恋の行方のつづきは、次作の「図書館革命」のレビューにて・・・。

    レコメンド

    から次へと襲い掛かる試練・・・乗り越えるのは、仲間と、思いと、「恋」の力。

     あらためて思い返してみると、この作品ではすごいことが起こっています。図書館で銃弾が飛び交い、隊員たちが命をかけて戦っているのです。そんな状況を乗り越えていくのは、仲間と、思いと、「恋」の力です。



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    図書館戦争:ドラマ&映画のプロジェクトが全撮影終了 激しいアクションに榮倉「記憶が薄れた」
     映画とドラマに関する記事です。くわしく知りたい方はどうぞ。

    有川浩さんの本棚
     有川浩さんの本棚に「図書館危機」を追加しました。別名「ベタ甘コレクション」、図書館戦争シリーズ以外の作品もとても気になっているのですが、ひとまずこのシリーズを読み切ろうかなと思っています。
    小説, 有川浩,



    •   16, 2015 21:59

  •  有川浩さんの作品はいつも楽しく読ませていただいています。この本は5冊目になります。ただ、今回はいつものように「楽しく」とはいきませんでした。

    レインツリーの国 (新潮文庫)
    有川 浩
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     図書館戦争シリーズから生まれた作品、「レインツリーの国」です。今日は長文になると思います。それに、批判的な目線が入ると思います。自分でもどうまとめてよいか分からない、そんな作品でした。



    「障がい」という言葉



     この本は、「図書館内乱」という作品とリンクしています。そして、「図書館内乱」の中の世界では、この作品が痛烈に批判されている一説があります。

    一言で言って薄っぺらい。身障者をダシにお涙頂戴を狙う思惑が鼻について怒りさえ覚える。キャラクターも人間としての厚みがまったくなく、感情移入できない。デビューしてから今まで読んできたが、今作で見切った。はっきり言ってこれがこの作者の限界。こんなものは小説ではなく自分の願望を投影した妄想だ。


     面白いのは、この批判は誰かから浴びせられたものではなく、有川さんが自分で自分の作品に浴びせたものである、ということです。この作品を出したら、こういった批判を口にする人がいるだろう、ということを有川さんはあらかじめ予想しているようです。そして、「図書館内乱」を読めばわかるのですが、そういった批判を有川さんは憎んでいます。

     上の批判は全くの的外れです。特に、「身障者をダシにお涙頂戴を狙う思惑が鼻について怒りさえ覚える」の部分がそうですね。この本を読んだ感想がそれだというのなら、こんなに悲しいことはありません。有川さんもそういうことは十分に分かってこの部分を執筆し、おそらく自分に対する戒めにされたのでしょう。

     たしかに、障がい(難聴)を扱った1冊です。ですが、私は「健常者と障がい者」といったようなテーマでこの本の感想を書こうとは思えませんでした。これは、障がいの有無は関係なく、誰にでもあてはまる話です。

     自分と同じ人間は1人もいない

     当たり前のことです。自分と同じ人間は1人もいないですから、他者を理解することは「分からない」から始まります。分からないのに、人と関わらなければ人は生きていくことができません。誰にとっても、誰が相手であろうとこれは同じです。

     そう考えると、「障がい」がメインテーマではないことが分かります。障がいは1つの特徴、アクセサリに過ぎないのではないでしょうか。背が高い、低いと同じ1つの「特徴」です。私たちは傲慢にもそれに「障がい」という名前を付けて差別しています。「障がい」・・・改めて見ると吐き気のするような言葉ですね。「がい」の字をひらがなにして和らげてはいますが、それでもこの言葉がいかにひどいものか分かります。

     1つの特徴に私たちが勝手に与えた「障がい」という言葉はいったん切り離すことにします。私たち全員に、永遠に問われ続ける「他者理解」というテーマでこの本を読んでいくことにします。

    想像を絶すること



     自分と違う他人のことを想像しなければいけない、という感想がまずは浮かびます(このブログでもそういったことを書いたことがあります)。ですが、私が浮かんだのは「想像を絶する」という言葉でした。「想像力の限界」といってもいいかもしれません。

     主人公の伸さんは、難聴であるひとみさんのことを懸命に理解しようとします。難聴について調べ、思いをぶつけ、分かり合おうとする。その過程が丁寧に描かれていて、「他者理解」について多くのことを考えさせます。

     それでも、「限界」だというのだから私が言っていることは残酷です。率直に言うと、伸さんに共感できない箇所が何か所かありました。

    「今お前が突き飛ばした女の子、耳に障害持ってんねんぞ!」


     歩道でひとみさんがカップルが突き飛ばされた時、伸さんは激昂してこう叫びます。二人の「ズレ」として描かれるこの場面ですが、本当に残念でした。

     ひとみさんが突き飛ばされたことに怒るのは当然です。しかし、伸さんは「耳に障害」と口に出してしまいました。激昂した時に思わず口にした言葉がどんな意味を持つかは、すぐに分かると思います。それは「本音」です。

     一生懸命難聴について調べたから「こそ」でしょう。思わず飛び出た「障害」のことば(この本では障害、と漢字で表記されているのでそれにならいます)。1つの特徴が「障害」と呼ばれてしまうことを、私は重く捉えています。この部分は「すれ違い」といった生易しいものではありません。「断絶」です。

     この場面の後、言い争う二人。世界で不幸なのは君だけじゃない、と思った伸さんは、自分のとっておきの不幸エピソードをひとみさんにぶつけてしまいます。父親が脳腫瘍を患い、自分のことを忘れてしまったというものです。そして、そのあと・・・。

    「頼むから慰めんといてな。君が俺には障害のことホントの意味で慰められんし、理解できひんて何度も言うように、俺にとってもこれはどうしようもない種類のことやから。(中略)そこは俺が君を突っぱねてええよな?君が俺を突っぱねるみたいに


     「断絶」第2弾です。伸さんもこれを口に出してしまったことを「忌々しい」「自分のプライドに沿わない」と嫌っていますが、私はそれを含めてもやはり、これを口に出してしまったことに闇を感じました。

     有川さんはどうして伸さんにこの設定を付け加え、このセリフを言わせたのでしょうか。他人の不幸など、他の人間がどれだけ想像しても決して分かるものではありません。ましてや、比べてよいものではありません。

     不幸なのはあなただけじゃない
     傷ついているのはあなただけじゃない
     私も不幸なんだ、私も傷ついているんだ

     不幸なんて分かりえもしないのに、こういうことを言っているわけです。もちろん、理解することの難しさ、壁の大きさ、人間の未熟さ、そういったことを克明に描写している点で、この作品は素晴らしいのかもしれません。ですが、正直に思いを吐露すると、私はこの主人公をどうしても受け入れることができませんでした。(上に挙げた2か所の他にも、です)

    分からない時、どうするか



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     有川さんの作品は容赦ありません。内面に潜んでいる汚い気持ちや打算的なことも容赦なくあぶりだします。それでいて展開はどストレートでベタ甘。分かりやすく、楽しく、そして心をえぐってきます。

     ただ、私がその「分かりやすさ」に甘えていた部分があったのかもしれません。共感した、感動したとよく言っていましたが、その無責任さを痛感したような気がします。

     分からないものは、分からない

     私が思ったのはそんなことです。もちろん、一生懸命「分かろう」と努力することは大切です。「分からないから」と最初から切り捨てていいわけではありません。

     でも、分かろうと精一杯努力したうえで、「分からない」にたどりつくことは絶対にあります。そんな時どうすればいいか。私は、「分からないことは分からないままにして、黙って寄り添う」ことだと思っています。

     伸さんが口にした言葉を、正直私は受け入れられませんでした。
     
     俺には障害のことホントの意味で慰められんし、理解できひん

     こう自分で言っている伸さん。それなら、黙って寄り添ってほしかった気がします。分からないことは普通で、精一杯想像した上でそこにたどり着いているのだから、何も悪くありません。そこにたどり着いたのなら、言葉にせず、黙ってほしかった・・・というのが私の感想です。言葉にすることの愚かさ、とでも言いましょうか・・・。

     感情をストレートに言葉で起こしてくれる有川さんの作品。でも、時には「沈黙」もほしい気がします。




    こちらもどうぞ

    作家さんの本棚 002 有川浩さんの本棚
     有川さんの本を5冊読んだので、本棚のページを開設しました。こちらもあわせてチェックしてみてください。
    小説, 有川浩,



    •   24, 2015 16:59
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     私が読んだ有川浩さんの作品をまとめるページです。新しい本を読むたびに順次更新します。



    有川浩(ありかわ・ひろ)さん

    プロフィール

    972年生まれ。第10回電撃ゲーム小説大賞を受賞した作品、「塩の街」でデビュー。以降、SF、ミリタリー、恋愛ものを中心に多くの作品を発表。中でも2006年以降発売された「図書館戦争」シリーズは大反響を呼び、漫画や映画、アニメも制作された。他、代表作に「植物図鑑」「県庁おもてなし課」など。「空飛ぶ広報室」は第148回直木賞候補となる。



    私が読んだ作品    6作品

    ・図書館戦争   ( 2014.5.27 )
    ・県庁おもてなし課   ( 2014.7.18 )
    ・植物図鑑   ( 2014.9.15 )
    ・図書館内乱   ( 2014.11.23 )
    ・レインツリーの国   ( 2015.3.23 )
    ・図書館危機   ( 2015.8.16 )

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    タ甘、と称される恋愛描写にはときめくこと間違いなしです。恋愛模様はほぼすべての作品に絡む要素であり、ベタベタな展開と感情をストレートに言葉にする文が魅力になっています。作品のエンタメ性が非常に高く、本で読んでも、映像化された作品を読んでも楽しめます。






    品リスト

    おすすめ度 ★★★★★

    イチオシ


    ・県庁おもてなし課

    県庁おもてなし課県庁おもてなし課
    (2011/03/29)
    有川 浩

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     あれもない。これもない。何もない。-「ない」の中に埋もれた「ある」。
    地域活性化がテーマの小説。地方の行政の課題を浮き彫りにしつつ、地方の魅力もまた、最大限に引き出します。いつもの恋愛模様ももちろん絶好調!

    ・図書館戦争

    図書館戦争図書館戦争
    (2006/02)
    有川 浩

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     押しも押されぬ代表作。恋愛要素、ミリタリー要素が全開です。「本を読む自由」というテーマは私の読書の原点になっています。

    おすすめ度 ★★★★☆

    ・図書館内乱

    図書館内乱図書館内乱
    (2006/09/11)
    有川 浩

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     図書館戦争シリーズの第2弾です。個性豊かなキャラクターたちのエピソードが掘り下げられおり、「図書館戦争」シリーズの虜になること間違いなしの1冊。この本から「レインツリーの国」が誕生しました。

    ・植物図鑑

    植物図鑑植物図鑑
    (2009/07/01)
    有川 浩

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     ベタ甘の中のベタ甘、とでもいいましょうか、読んでいて体じゅうがくすぐったくなるような恋愛ものです。開始早々強引な展開ですが、読み終えた後はそんなことを忘れて幸せになれるかも。

    ・図書館危機

    図書館危機
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    有川 浩
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     図書館戦争シリーズ、第3弾!王子様の正体がばれてどうなることかと思いきや、相も変わらずの2人・・・。じれったさとかわいさでどうにかなりそうでした。ただ、郁の成長を大きく感じる作品でもあります。

    #66 自由を守るために (図書館危機 / 有川浩さん)

    おすすめ度 ~★★★☆☆

    ・レインツリーの国

    レインツリーの国レインツリーの国
    (2006/09/28)
    有川 浩

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    #29 分からないままで (レインツリーの国 / 有川浩さん)


    有川浩, 作家さんの本棚,



    •   24, 2015 00:00