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  • logo_1453274_web.jpgcoollogo_com-181051360_convert_20150228005446.png2015年3月

     月末に発行している最果ての図書館の「図書館だより」。今回は3月号です。今月のアクセス数や、人気記事ランキング、来月の予告にお知らせなど、内容盛りだくさんでお届けします。ぜひ読んでいってください!



    今月のアクセス数

     先月に開館したこの図書館。2か月目の今月はどれくらいの方が訪問してくださったのでしょうか。FC2のアクセス解析によるデータです。

    先月(17日~31日まで 15日間)

    訪問者 151 (10.1人 / 日)    閲覧ページ 261 (17.4ページ / 日)

    今月(1日~27日まで 27日間)

    訪問者 360 (12.9人 / 日)    閲覧ページ 607 (22.5ページ / 日)

     ありがとうございます!1か月目から順調に成長しているようです。特に毎日来てくださる方には本当に感謝しています。私は前にもブログをしていたのですが、全くアクセスがなくて撃沈した苦い思い出があります。まだ一日10人弱ですが、毎日訪問があるのはとても嬉しいです。来月もよろしくお願いします。

    人気記事ランキング

     今月訪問が多かった記事トップ5です。googleアナリティクスの解析で調べています。こんなランキングになりました。



    芥川賞受賞作「九年前の祈り」を読む 1 (九年前の祈り / 小野正嗣さん)(2月17日)



    芥川賞受賞作「九年前の祈り」を読む 2 (九年前の祈り / 小野正嗣さん)(2月18日)

    位 

    芥川賞受賞作「九年前の祈り」を読む 3 (九年前の祈り / 小野正嗣さん)(2月19日)

    九年前の祈り九年前の祈り
    (2014/12/16)
    小野 正嗣

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     な、なんと!芥川賞のレビューがトップ3を独占です。この記事はヤフーやグーグルからの検索で見に来られる方が多かったです。中には20分以上かけて3つの記事を全て読んでいかれた方もいて、うれしかったですね。1番力を入れて書いた記事だったので、こういったランキングになってよかったと思います。

     そして、4位と5位です。



    #12 果てしなく深い海 (舟を編む / 三浦しをんさん)(2月12日)

    舟を編む舟を編む
    (2011/09/17)
    三浦 しをん

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     本屋大賞を受賞した三浦しをんさんの代表作。遅ればせながら今月に読みました。この記事では初めて記事にコメントをいただき、なおかつブログにリンクまで貼っていただきました。あらためてありがとうございます。



    今読みたい「新・戦争論」 〔前編〕 (新・戦争論 / 池上彰さん・佐藤優さん)(2月15日)

    新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方 (文春新書)新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方 (文春新書)
    (2014/11/20)
    池上 彰、佐藤 優 他

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     普段は小説を読むことが多いのですが、大学生になって新書やノンフィクションもよく読んでいます。イスラム国の人質事件を受けて読んだ本。とても分かりやすい内容で、世界情勢を整理することができました。

     以上、今月の人気記事ランキングでした。当たり前のことですが、有名で話題になっている作品にアクセスが集まりますね。今後の参考にしたいと思います。ただ、ここは「図書館」ですから、あまり一般には知られていないような作品も、積極的に紹介していきたいです。

    お知らせ

    bird_aoitori_bluebird[1]_convert_20150228172636 twitterをやっています

     このブログの開設と同時に、twitterを始めました。twitterでは2つのことをつぶやいています。

    おともだちパンチのTwitter

    ①ブログ更新情報・・・ブログを更新したらツイートします。

    ②本の感想140字バージョン・・・読んだ本の感想をぎゅっと短くしてつぶやいています。タイトルと作家の名前が入るので、実質は120文字くらいになります。120字というのは、とても短く、そして難しいです(;´∀`) 毎回さらっと書いてツイートしているようですが、実は字数が足りないことが多く、四苦八苦しています。こちらもぜひ注目してみてください。

     ツイートの内容はこのブログからものぞくことができるのですが、興味のある方はフォローしていただけると嬉しいです。1か月半ほどたって、フォロワーさんはぽつぽつ増えながら現在は33人です。今後もこのブログのツイッターの方よろしくお願いします。

     そうそう、実はツイッターからのアクセスはけっこう多いんです。ふらふら~っと立ち寄ってくださってくれる方が結構いるようです。ヤフーのリアルタイム検索からのアクセスもあります。SNSは苦手なのですが、自分のブログを広めるには結構有効な手段なようなので、使いこなせるように頑張りたいと思います。

    来月の予告

     重松清さんの「流星ワゴン」、今月に読むといったのですが寝かせたままでした。来月の上旬に読みたいと思います。また、西加奈子さんの「サラバ!」もずっと読みたいと思っていたので、来月中には読もうと思います。そして、今度買いに行く予定なのが、「神様のカルテ0」。大好きな神様のカルテシリーズ、ついに続編が出ました。読むのが楽しみです。

     「こんな本が面白い!」というおすすめがあったらぜひコメントでお知らせください。コメントは必ず返信するようにしています。私のレビューを読んで「読んでみたくなりました」とコメントされるのもうれしいですが、「こんな本はどうですか?」とおすすめされるのは本との出会いが広がるのでよりうれしいです。コメントお待ちしています。




    あなたの、あなただけの1冊が見つかりますように
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    •   28, 2015 17:53

  •  図書館で宮部みゆきさんの本棚に行くと、作品のボリュームにびっくりします。「蒲生邸事件」「模倣犯」など分厚い本がずらり。重厚感、ということばがピッタリです。その極め付けが「ソロモンの偽証」ですね。700ページ超えの単行本×3冊!読むのも大変ですが、書くことに使われたエネルギーは想像もつかないものだと思います。

     そんな大長編にはまだ手を出せずにいるのですが、宮部みゆきさんの作品は少しずつ読み進めています(「ソロモンの偽証」は第1部まで読みました)。今日ご紹介するのは、直木賞を受賞した「理由」という作品です。

     実は昨年、この作品を読んで大学のレポートを書きました。この作品も文庫本で700ページに迫るような長編で、しかも情報量が多いため、読むのに莫大なエネルギーを費やした記憶があります。ですが、エネルギーを費やした分、宮部みゆきさんの力量を思い知る作品になりました。そういったあたりも振り返ってみたいと思います。では、以下「理由」のレビューです。

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    隣近所はサバイバル


     
     東京荒川区の超高層マンション「ヴァンダール千住北ニューシティー」で起きた殺人事件をドキュメンタリー的手法で描いたこの作品。まるで雑誌の特集記事のように、淡々と事件が語られていきます。小説を読んでいるような気がせず、だいぶ戸惑いました。

     高層マンションの1室で3人の死体が見つかり、さらに1人の転落死体が見つかる・・・ということでミステリーとしても十分に楽しめるのですが、この作品の魅力は、「現代の家族」というテーマです。マンションで見つかった死体となった人々にも、「家族」に関するある事情がありました。バブル崩壊でこれまでの幻想が崩れ、停滞と暗黒に突入していく時代が舞台。作品全体に暗く、不気味な雰囲気が漂っています。

     舞台となった高層マンションで描かれる人間関係は、隣近所に気を許すことができない、殺伐とした関係でした。事件が起こった部屋の隣にいた主婦がこう言います。

    「現代ではね、隣近所は頼りがいのある存在じゃなくて、警戒すべき存在なんです。排他的であるくらいが、ちょうどいいんですわ」


    わたしたち一家は以前に『隣人』の怖さを味わっていました。『隣人』が怖いということは『世間』が怖いということですし、結局は『コミュニティ』そのものが怖いということなんですよ。ですから、いつ何があったって不思議じゃないんです」



     殺伐として乾いた時代の空気がよく伝わってきます。常に互いを監視しあい、警戒しあうコミュニティー。そこに漂う互いへの不信感が、この事件の謎を深めていきました。

    血には逆らえない




     高層マンションでは冷たく、乾いた人間関係を描きましたが、マンションの周りにある下町で描かれるのは、昔ながらの「血が通った」家族の姿でした。

     作品にはたくさんの家族が登場します。1つの事件の周りには多くの人が関わっています。宮部さんは事件に関わる人物たちの姿を、その家族も含めて詳細に、綿密に描ききりました。まるで、「ざるからこぼれる一滴も逃さない」といったような渾身の描写に圧倒されます。冒頭でも書きましたが、読むのが大変な以上に、書く方が大変です。この作品に費やされたエネルギーは膨大なものだと思います。宮部さんの筆力、構成力には凄まじいものがありますね。

     下町の家族たちはそれぞれに複雑な事情を抱えていますが、共通するのは「家族の血のつながりを強く感じさせる」ことです。家族の一人の痛みは家族全体の痛みになります。家族があやまちを犯しても決して見捨てることはできません。「血のつながり」がそうさせるのです。作品を通して血のつながりのもつ強さが強調されます。まるで、「血の宿命」とでも言うような、強い強いつながりです。

     マンションの冷たく乾いた人間関係と、下町の血が通った人間関係が色濃く対比され、お互いを印象付けています。事件のカギを握っていたのもまた「家族」でした。終盤に印象的なセリフがあります。

    「家族とか、血のつながりとか、誰にとっても面倒くさくてやりきれないもんだよ。だけど、本気でそういうものをスパッと切り捨てて生きていこうって人たちがいるんだね」


    帰る場所があるってことと、自由ってことは、全然別だと思うけどね」



     ここでも「血のつながり」が強調されています。宮部さんは血のつながりを何度も何度も強調し、その強調ぶりは徹底しています。

     人間は、家族のつながりを切り捨てて生きることはできない。血のつながった家族の存在は、人間が一生逃れることのできない宿命である

     宮部さんが伝えたかったメッセージはこのような感じでしょうか。家族のつながりがだんだん希薄化していく現代社会に警鐘が鳴らされます。ラストではそのメッセージがはっきりと示されます。長い作品の最後の部分ですから、かなり重く響くメッセージです。

    時代を経て高まる力



     この作品の刊行からさらに時代は進みました。今は一人一人がスマホを持ち、自分の部屋で自分の世界に没頭することができるような時代です。つながりがますます弱まっているので、その分この作品が訴えかけてくる力は高まっているように思えます。

    人を人として存在させているのは「過去」なのだ



     ずっしりと響く重いことばがありました。自分がこれまで生きてきた過去は決して切り捨てることができません。自分と血のつながった家族もまた、切り捨てることができません。よく考えると、人間はいろいろなものにがんじがらめにされて生きています。がんじがらめにされていることが、いいことなのか、悪いことなのか・・・私には分かりません。でも、それが人間の「宿命」であるということは間違いがなさそうです。

    ◆殿堂入り決定!

    「最果ての図書館」は『理由』を「シルバー」に認定しました。おめでとうございます!






     宮部みゆきさんの作品をたくさん読んでおられる方、おすすめの作品を教えていただけると嬉しいです。今まで読んだのは、うろ覚えですが「名もなき毒」「魔術はささやく」「理由」、そして「ソロモンの偽証」(途中)です。これ以外に、あちこちで絶賛されている「火車」は絶対に読もうと思っています。現代ミステリーだけでなく時代物やファンタジーもあるので何から読もうか迷いは尽きません・・・。
    小説, 宮部みゆき,



    •   27, 2015 18:47

  •  今日ご紹介するのは辻村深月さんの「島はぼくらと」という作品です。辻村さんの作品は、「ツナグ」 以来2作目のレビューになります。本土から離れた島に暮らす高校生4人組。それぞれの思いを抱えながら、故郷からの巣立ちに向けた時が流れます。それでは、「島はぼくらと」のレビューです。

    島はぼくらと (講談社文庫)
    辻村 深月
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    綺麗なことばかりじゃない



     このブログで紹介した本はまだ20冊にも満たないのですが、「地方の暮らし」をテーマにした作品が図らずも多くなっています。「忘れられた日本人」「神去なあなあ日常」、それにこの間紹介した「九年前の祈り」がそうですね。これで4冊目です。

     地方はどんな風に書かれているのか、大きく2つに分かれます。「忘れられた日本人」や「九年前の祈り」は、村の閉鎖的、排他的な雰囲気を描いており、地方の「影」が濃い作品です。それに対して「神去なあなあ日常」は田舎の開放感、人々の優しさや温かさを描いており、地方に「光」を当てた作品です。

     では今日紹介する「島はぼくらと」はどちらなのか。この作品は「光」と「影」のバランスが非常によくとれています。地方独特の荒んだ感じを上手く出しつつ、包容力と温かさを持った地方の良さも感じさせる、という素晴らしい作品でした。

     舞台は瀬戸内海に面する島である冴島(さえじま)。本土とはフェリーでつながっており、島で暮らす子どもたちは高校を卒業したら本土に働きに出る、つまり島を離れることになります。主人公はそんな故郷からの巣立ちを控えた高校生4人、朱里(あかり)、衣花(きぬか)、新(あらた)、源樹(げんき)です。

    a1180_014867.jpg

    自然体と包容力



     冴島には、Iターン(都会から地方へ移住すること)してくる人がたくさんいます。単に田舎でのんびりした暮らしをしたいという人もいれば、複雑な事情を抱えて地方に逃れてきた人もいます。

     昔から島に暮らしている人と、よそからやってきた人。普通に考えたら、そこには溝や距離が生じるものだと思います。しかし、冴島はそうではありません。もちろん最初から心を通じ合わせているわけではありませんが、冴島の人はよそから来た人を決して拒みはしません。よそ者として扱うのではなく、そこで暮らすうちに家族同然の親しさで接するのです。そんな風によそから来た人にも心を開けるのは、冴島の人が「自然体と包容力」をもっているからだと思います。

    「何か問題が起こって、お互いぶつかっても、時間が経てば何もなかったようにお互い忘れてやっていける。ここは、そういう場所だよ」



     優しいとか、温かいとかそういうのとは違います。言いたいことを分け隔てなく言ってくるし、ずけずけとお節介をすることもあります。そういったことも含めて「自然体」なのです。島にやってきた人が、どこから来ていようが、過去にどのような事情を抱いていようが、島の人たちは気にしません。そこにいるのは一人の「人間」。地位も、身分も、名誉も、お金もありません。そんな風に自分を受け入れてくれる島の人たちに、よそからやってきた人たちは自然と心を開くことができます。

    これまで、故郷なのにうまくいかないのかと思ってきたのは間違いだった。そうじゃない。故郷だからうまくいかなかったのかもしれない。故郷ほど、その土地の人間を大切にしない場所はないのだ。


     これは、ある事情で傷ついて、島にやってきた女性のことばです。自分の故郷と世間に苦しさを覚えた彼女が、島にやってきて島の人たちに触れてこのように思います。

     よく「第二の故郷」などといいます。自分の生まれた場所が一番自分にとって住みよい土地か、といったらそうではないのかもしれません。生まれたかどうかより、「自分の居場所があるかどうか」。島の人びとに大切にしてもらった彼女は、すっかり人びとに心を開き、最後には「地元の人」になっていました。冴島の包容力を感じて温かい気持ちになります。

     狭い島に暮らす人たちですから、家族(血縁)よりも深い「地縁」がありました。島の人たちは家族とは別に「兄弟」という契りを交わします。

    島の限られた人間の中でそうやって繋がり、有事の際には助け合って生きる仕組みが自然とできていた。周りを海に囲まれたこの場所では、“何かの際”の繋がりが親戚以外にも必要だったから、きっとこうなった。



     主人公たち4人も、この「兄弟」の契りを巡って揺れ動きます。同じ土地で過ごしてきたつながり・絆はとても深いものがあります。単なる「友情」や「恋愛」とは違った、色濃い人間関係が描かれます。

    小さな島の、大きな決断



     島には働く場所がほとんどありません。ですから、一部の子供たちをのぞいて、ほぼ全ての子供たちが高校卒業と同時に島を出ていくことになります。朱里は不安を隠せません。

    狭い島の外にひとたび出れば、それまで自分たちだけとしかつきあうことのなかった友達にも、別の世界ができる。頭ではわかっていたつもりが、源樹が急に遠いところへ連れて行かれるような気がした。



     必ずやってくる別れ。残酷です。ですが、巣立ちの時が近づくにつれ、それぞれが、それぞれの思いを固めていきます。
    離れ離れになっても、島で暮らしたものどうし、「兄弟」のつながりは決して消えることはありません。「別れ」によって、「兄弟のつながり」の強さが確かめられる、そんな素敵な話でした。

     最後は大人になった彼らの姿が描かれます。島に残った衣花は、ある決断をしていました。「小さな島の、大きな決断」、ちょっと驚きのラストです。でも、胸がいっぱいになります。

     夢やつながりは、その大きさではなく、「強さ」が大切なんだな、と思いました。小さな島で、大きな決断があり、新しい世界が始まる、そんな素晴らしいラストです。




    こちらもどうぞ

     地方の暮らしを舞台にした作品のレビューです。

     田舎のみずみずしさ、温かさが伝わる三浦しをんさんの名作!
     「神去なあなあ日常」 三浦しをんさん

     今年の芥川賞受賞作。3回シリーズでたっぷり読み込みました。
     「九年前の祈り」 小野正嗣さん

     こちらは小説ではなく、民俗学の名著。日本の村社会の様子をありありと描いています。
     「忘れられた日本人」 宮本常一
    小説, 辻村深月,



    •   26, 2015 17:45

  •  小説に「超能力」や「テレポート」が出てきたら、みなさんはどう思われるでしょうか?私は、正直言って白けるかもしれません。私は現実感のある小説、特に社会派小説が好きです。その反面SF作品は設定が現実離れしているところに白けてしまい、なかなか入り込めないことが多いように思います。

     しかし、今日ご紹介する作家、山田宗樹さんの作品は別格です。今日は「ギフテッド」という作品を取り上げます。山田宗樹さんの作品の紹介は、「百年法」以来2冊目。それでは、以下「ギフテッド」のレビューです。

    ギフテッド
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    山田 宗樹
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    超能力とテレポート



     冒頭で超能力とテレポート、と書きましたが、この話に出てくるのはそんな超能力とテレポートを使いこなす特殊な能力を持った人間、「ギフテッド」です。

     ギフテッドとは、普通の人間にはない未知の臓器を持った人間のことです。未知の臓器により、ギフテッドは二つの特殊能力を手に入れました。「思念によってものを変化させる力」(=超能力)と、「瞬間的に空間を移動する力」(=テレポート)です。特殊能力を持っていることは政府の人間のみが知る事実であり、政府は誰がギフテッドが把握するために、国民に検査を義務付けています。ただ、ギフテッドがすぐさまこの力を使えるというわけではありません。力の覚醒には、死に追いつめられるという極限の状況が必要でした。

     ギフテッドに特別な配偶をしていた制度が廃止されたことがきっかけに、国民のギフテッドに対する反感が芽生えます。高まる反感がある事件を呼び、ついに・・・。世界の秩序が根底から覆されるような恐ろしい出来事が始まったのです。

    渾身



     超能力にテレポート、という荒唐無稽な設定です。でも、私は全く白けませんでした。どうして白けなかったのか、その理由は作者の力量にあると思います。

     まずはフィクションであることを感じさせない迫力のある描写です。例えばこれは、ギフテッドの超能力により人間が殺害される場面です。

    はっきりと歪んだ。表情が、ではない。文字通り顔そのものが大きく歪んだ。蝋人形が高熱を浴びたように。眼球がねじれて白目と黒目が入り混じる。(中略)男だった物体は、無数の破片となって静かに舞い上がり、美しく幾何学的な模様を宙いっぱいに描いたあと、引力に捉えられ、ゆっくりと降り注ぐ


     
     ・・・渾身の描写です。超能力によって人がばらばらにされるという現実にはありえない場面を描いているのに、この迫力。否が応でも想像力がたきつけられます。太字にした部分は、まるで時間が止まって宇宙が見えるような、そんな壮大さがあります。人が殺害される場面でこういっては何なのですが、美しささえ感じてしまいます。

     そして、構想力と抜群に練られたプロット。予想の斜め上を行くような容赦ない展開が続きます。「百年法」でもそうでしたが、ラスト100ページあたりから怒涛の展開が始まります。今回の結末は「百年法」に比べれば割とおとなしいものでしたが、結末に至るまでは一切気が抜けない緊張した展開が続きます。

     百年法は10年の構想を経て書かれた作品ということです。そこには途轍もないエネルギーが費やされたことと思います。実際、山田さんはインタビューでこんな風に語っています。
     

    山田:次もSFっぽい設定になりそうです。ただ、『百年法』のオビに「これ以上のものは書けません」とコメントしたように、50年に渡る話を10年かけて書いて、上下巻で出してもらったので、それを全部超えるのは今の段階ではまだ想像できませんが。



     そんなことを言いつつ、百年法の発売から2年でこの作品です。確かに百年法を全部超える、とはいかないと思いますが、このクオリティーの高さには舌を巻きます。作家としてのエネルギーに満ち溢れておられるのだと思います。そんなエネルギーを惜しげもなく使った、渾身の作品です。

    現実のちゃぶ台返し



     SF作品の力量は2つで測れると個人的には思っています。

     まずは、「現実にも起こるのではないか、ありえるのではないか」と思わせてしまう迫力のある描写。私は「現実のちゃぶ台返し」と勝手に名付けています。そして、現代社会への教訓です。現実にありえない話を書きながら、最後は現代社会に警鐘を鳴らす。この展開は絶対に必要だと思っています。

     素晴らしい作品はやっぱりどちらも満たしてくれます。

    「人間はどれほど残虐な行為にも、正義という仮面を被せて平気でいられるということだ」


    人は、だれかの血が流れて、自分たちの過ちに気づく。でもまた血は流れる。そしてやっぱり間違っているのだと知る。それでも血は流れつづける。今度流れる血は自分のものかもしれない。本気でそう感じなければ、人は動こうとしない。



     現実を思い起こさせるような描写でゾクリとさせたあと、グサリとくる一言がきます。

    「これが現実です。否定できない現実なのです。目を背けるのはもう止しましょう。(中略)必ずその時は来る。なぜ直視しないのですか



     現代社会がこれからどうなっていくか、誰にも分かりません。私たちが信じられないような「その時」が来るかもしれない。そんな風に思ったとしたら、すっかりSFの虜になっています。現実というちゃぶ台が、ひっくり返されるような錯覚・・・それがSFの醍醐味ですね。





    こちらもどうぞ
    インタビューはこちらから引用しました。
    作家の読書道 山田宗樹さん

    「百年法」のインタビューですが、この作品にも通じる部分が多いです。
    小説, 山田宗樹,



    •   24, 2015 20:25
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