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  • スパイ・スパイス -『ジョーカー・ゲーム』 柳広司

     19, 2015 23:49

     映画化されて話題になったこの作品を読んでみました。2009年の本屋大賞では、第3位にランクインしています。タイトルにある通り、「スパイ」を題材にした作品です。

    ジョーカー・ゲーム (角川文庫)
    柳 広司
    KADOKAWA/角川書店 (2011-06-23)
    売り上げランキング: 15,223



     短編集だということを知らずに本を開きました。1つ1つの話は独立していますが、いろいろな人物の視点から、スパイの暗躍を描いた傑作です。スリル満点のストーリーはもちろんですが、よかったのは「スパイの背景」でした―。



    ジョーカーは誰だ



     スパイ養成機関、通称「D機関」の活動を描いた短編集です。1つ1つの話は独立していますが、全ての話に「D機関」と、その創始者である結城中佐が登場します。昭和前半の日本が舞台で、日本と諸外国が、水面下で情報戦を繰り広げ、お互いの弱みを握ろうとしています。そこで活躍するのが、D機関で養成されたスパイたちです。

     活躍、などと書くとかっこいいイメージを抱かれるかもしれませんが、実際のスパイは非情で、冷血で、残酷な任務です。何しろ、その存在が表舞台に知られてはいけません。「見えない存在」として生きていかなくてはならないというのです。

    スパイとは、見えない存在だ。それが結城中佐の口癖だった。見知らぬ外国の土地にたった一人で留まり、その地に溶け込み、誰にも正体を知られず、自分の判断のみを頼りにその国の情報を集め、分析し、本国に密かに送り続ける。そのことこそが、優れたスパイの条件なのだという。



     疑われたスパイには価値はない。そんなセリフもありました。見えない存在として裏の世界で息をし続け、スパイだという疑いを少しでも持たれた時点で全てが終わってしまう・・・そんな厳しい状況が、スパイたちを冷血な存在に変えました。闇の世界での、スリル満点の「ゲーム」が始まります―。

    短編の妙



     短編の面白さが存分に生かされた作品でした。短編ならではのスピード感があります。また、伏線の回収も鮮やかで、短編ならではのスマートなまとめ方です。そして、1番よかったのが、「短編ならではの構成」でした。

     最初の話で、D機関のスパイたちが受けた厳しい訓練と、そこから身に付いた華麗なスパイ技術が描かれます。そして、決して表の世界に顔を見せてはいけない、スパイ任務の厳しさも・・・。

     その次からの短編で、この話の余韻が上手くいかされています。スパイとして潜入する男、捕らわれの身となった男、闇の世界で活躍する男、そしてスパイを辞める決心をする男・・・。いろいろな角度から、D機関のスパイたちの「暗躍」を描くのです。こうやっていろいろな角度から話を構成していけるのは短編の面白いところで、その鮮やかな描き方は「短編のお手本」といった感じでした。

     その中でも私が一番うまいな、と思ったのは、「スパイにある背景」でした。己を殺し、いかなる感情も捨てて任務に当たる厳しい仕事。いったいどんな人たちが、そんなスパイになるのだろう、とは思いませんか。

     スパイになるのは、東大や京大など、一流の大学を出た人々です(!)。その中でも、「手に負えない自負心」を持った者が、スパイへの道を進みます。この設定がとても秀逸なのです。

    D機関の奇怪極まりない試験や、想像を絶する課題を与えられたあの訓練―しかもその先に待っているのは徹底した”無名性”にすぎない―に、彼らが喜々として取り組んでいるのは、
    ―この任務を果たすことができるのは自分だけだ。
    あるいは、
    ―自分にならこの程度のことは出来なくてはならない。
    という手に負えぬ自負心によるものなのだ。



     要するに、プライドを突き詰めていった先に孤独になった人間が、スパイへの道を進んだということです。この部分、妙に説得力がありました。自分の成果が決して表舞台に出ることはなくても、「自分だけができる」と思うことで自分を満たすことができる人間・・・。孤独と孤高というか・・・なんにせよ、凡人には理解できないことです。プライドが高まっていくと、最終的には冷血な鬼になれる、こういう人間の姿もあるのですね。

     一番すごいのが、最後の短編に出てくる男です。彼は、自分をあえて、危険な状況に追い込んでいきます(そうする必要はないのですが)。絶体絶命の状況に自分を追い込みながら、「自分はこんなに危険なことをしているんだ」とスリルを味わうことで自分を肯定していくのです。ここにも「プライド」がありました。自分はこんな危険なことをしているんだ、こんなことは自分にしかできないんだ・・・そんな感情でした。常軌を逸しているというか、唖然としてしまいました。想像できるかもしれませんが、そんな風に自分を追い込んでいた彼は、最後あっけない最期を迎えます。

     苦々しい気持ちと、快感を同時に味わいました。こういう、「凡人からは理解できない人たち」が出てくる小説は面白いです。共感はできないのですが、こういうことができるのは小説だけという面白さもあります。

    真の孤独



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     あらゆることを疑ってかかっていると、世の中では生活できません。

     この料理には、毒が盛られているのではないか
     このバスには、爆弾が仕掛けられているのではないか

     この人は、スパイなのではないか

     そんなことを思って生活している人はいないと思います。料理を口にできなくなりますし、バスにも乗れなくなってしまいます。そして、孤独で生きていかなければいけません。

     そんなことができないので、私たちは他人を信用するしかありません。そんな信用を、全て捨て去ったのがスパイです。

    結局のところ、優れたスパイは、己以外の全てを捨て去り、愛する者を裏切ってなお、たった一人で平気で生きていける者たちのことなのだ。



     ずっしりとくるセリフでした。孤独孤独と軽く口にしてしまいますが、「真の孤独」とは何たる恐ろしいものか。少なくとも私が「真の孤独」にたどり着ける日は永遠に来ないと思います。

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    分以外は、全てが敵!裏切りと冷血のスパイ・ミステリー!

     スピード感あふれる展開とスリル満載のスパイたちの暗躍が魅力の1冊です。自分以外の者は全て疑わなくてはならない、「真の孤独」にいるスパイたちの、冷血で、非情な行動が光ります。
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    小説, 柳広司,



    •   19, 2015 23:49
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