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  • 教科書への旅 #5 「わらぐつの中の神様」 杉みき子さん

     20, 2015 20:59
    教科書


     「教科書への旅」のコーナーです。「ごんぎつね」や「少年の日の思い出」など重苦しい話が続いていたので、今回は趣向を変えてみました。心が温かくなるこの名作です。

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     杉みき子さんの「わらぐつの中の神様」(小学5年生)です。「わらぐつの中には神様がいなさるでね」孫にそんな風に語りかけるおばあさん。いったい、どんな神様がいるというのでしょうか・・・。



    あらすじ



     マサエという女の子が、おばあちゃんとこたつにあたりながら話をしていました。わらぐつはみっともない、そんな風に話すマサエに、おばあちゃんはこう諭します。

     「そういったもんでもないさ。わらぐつはいいもんだ。あったかいし、軽いし、すべらんし。そうそう、それに、わらぐつの中には神様がいなさるでね
     おばあちゃんは、マサエに「わらぐつの神様」の話を始めました―。

    ・・・
     昔、村におみつさんという娘が住んでいました。朝市に野菜を売りに来ていたおみつさんは、げた屋さんの前で、かわいい雪げたを見つけます。普段は余計なものなど欲しがらないおみつさん。ですが、その雪下駄のことはおみつさんの頭を離れませんでした。

     家は貧しく、おねだりが叶う状況ではありません。おみつさんは、お父さんがわらぐつ作りをしているのを見て、自分もわらぐつを作って売ろうと考えました。見よう見まねでやってみるのですが、なかなか上手にわらぐつを作ることはできません。不恰好になってしまったわらぐつを持って、おみつさんは町に出ていきました。

     「そのわらぐつ、見せてくんない」
     なんと、不恰好なおみつさんのわらぐつを見て、そう声をかける人が現れたのです・・・。

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    この作品の思い出



     おみつさんが不恰好ながらも一生懸命にわらぐつを編む姿に胸を打たれたものでした。方言の会話も、温かく胸に迫るものがあります。

     たしか、先生が実際にわらぐつを持ってきて、見せてくださった記憶があります。丁寧に、端正に編み込まれたわらぐつを実際に触ってみると、この話に込められたメッセージが自然に理解できました。

     また、胸キュンのラブストーリーも詰まっています。「わらぐつが結んだ恋」!!今読み返しても、ほっこりできるラストシーンです。

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    再読!「わらぐつの中の神様」



     八百万(やおよろず)の神。

     古代の日本から伝わる観念です。神羅万象、あらゆるものに日本人は「神」を見出します。数年前、「トイレの神様」という曲が大ヒットしました。「トイレには それはそれはキレイな 女神様がいるんやで・・・」あの曲も、日本に古から伝わる八百万の神の思想ですね。

     この作品も、八百万の神の思想を取り上げた作品です。小学生の当時は、八百万の神という言葉など知りませんでしたが、私たち日本人は知らずのうちにこの思想を学び、そして心に染み込ませていっているのですね。その役割を果たしているのが、「教科書」です。

     他人から手作りの品をもらったら、うれしくはなりませんか?私は手作りのプレゼントが一番うれしいです。どうしてだろうと考えると、やはり「その品にその人の心が乗り移っているように感じる」からではないでしょうか。そう感じるからこそうれしいですし、簡単には捨てられません。

     それを、「神様」と表現したのがこの作品です。

     おみつさんの作った不恰好なわらぐつを買ってくれたのは、若い大工さんでした。大工さんは毎回毎回おみつさんのわらぐつを買ってくれます。もしかしたら、すぐに壊れてしまうからではないか・・・。おみつさんはそう思います。

    「あのう、いつも買ってもらって、ほんとにありがたいんだけど、あの、おらの作ったわらぐつ、もしかしたら、すぐいたんだりして、それで、しょっちゅう買ってくんなるんじゃないですか。もし、そんなんだったら、おら、申し訳なくて――。」



     不恰好なのに・・・そんな風に気にしてしまうおみつさんに、大工さんは真面目な顔になってこう語りました。

    「おれは、わらぐつをこさえたことはないけども、おれだって職人だから、仕事のよしあしは分かるつもりだ。いい仕事ってのは、見かけで決まるもんじゃない。使う人の身になって、使いやすく、じょうぶで長もちするように作るのが、ほんとのいい仕事ってもんだ。おれなんか、まだわかぞうだけど、今にきっと、そんな仕事のできる、いい大工になりたいと思ってるんだ」


     見た目ではなく、中身。そんなメッセージです。「不恰好なわらぐつ」というのがいい材料ですね。おみつさんの地道で一生懸命で真面目な性格がこのわらぐつによって上手く表現されています。そこに現れたのが若い大工さん。彼も、中身を大切にした仕事をしたいと考える人でした。

     そんな考えの持ち主だからこそ、おみつさんのわらぐつに込められた真心を感じることができたのだと思います。そして、この話の最期は、こう締めくくられます。

     使う人の身になって、心を込めて作ったものには、神様が入っているのと同じこんだ。それを作った人も、神様とおんなじだ。

     日本人の「八百万の神」の感覚は、とても誇らしいものだと思います。神様が見ているから悪いことはしてはいけないよ、とはよく言いますよね。そうやって、物を大切にする心や、人を思いやる心を育んできたのではないでしょうか。日本に根付いてきたくさんの神様たちに感謝です。

     さて、わらぐつをきっかけに出会った2人。最後、思わず頬が赤らむような幸せなシーンがあります。今日のブログはそのシーンで締めくくりたいと思います。

     それから、大工さんは、いきなりしゃがみこんで、おみつさんの顔を見つめながら言いました。
    「なあ、おれのうちに来てくんないか。そして、いつまでもうちにいて、おれにわらぐつを作ってくんないかな。」
     おみつさんは、ぽかんとして、大工さんの顔を見ました。そして、しばらくして、それが、おみつさんにおよめに来てくれということなんだと気がつくと、白いほおが夕焼けのように赤くなりました。



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     おみつさんの正体は、話をしていたおばあちゃん自身。そして、大工さんはおみつさんの結婚相手、マサエのおじいちゃんだったんですね。まさに「わらぐつが結んだ恋」・・・きゅんとしてしまいます。




     「わらぐつの中の神様」の紹介でした。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



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    杉みき子, 教科書,



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