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  • 日本の病 -『自殺論』 デュルケーム

     25, 2015 03:05

     金曜日の夜、帰って来るやいなや、ベットにダイブしてしまいました・・・。目を覚ますと、日付が変わって土曜日の深夜0時20分・・・。せっかくの金曜の夜が台無しです。こんな睡眠では疲れもたまるだけですし、気をつけなくてはいけません・・・。

    自殺論 (中公文庫)
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    posted with amazlet at 17.02.13
    デュルケーム
    中央公論社
    売り上げランキング: 10,311



     すごいタイトルの本が出てきました。デュルケームの「自殺論」です。これまで私がブログで紹介してきた本の中では、間違いなく最高難度だと思います。恐ろしいタイトルですが、これは社会学の古典で、自殺が社会によって引き起こされることを膨大なデータを用いて証明した1冊です。2週間かかって読みおえ、ようやく今日紹介することになりました。



    自殺と社会



     この本は絶対に読みたいと思っていました。自分が学んでいる学問分野、ということもあるのですが、それよりも、「自殺は日本の重要な社会問題である」という意識が強かったからです。

     年末になってくると毎年のように聞こえてくる数字、「3万人」。聞き覚えのある方が多いと思います。これは、日本人の年間自殺者です。計算上は、約16分に1人、誰かがどこかで自ら命を絶っているということになります。世界的に見てもこれは非常に高い水準です。

     まさに、「日本の病」といってもよい自殺。デュルケームは、自殺が様々な社会的環境(宗教、家族、政治社会、職業集団など)によって引き起こされるものであると述べて、その社会的環境をデータから探ろうとしています。1897年に刊行された1冊なのですが、導き出される結論が現代社会にも十分通用することに驚かされます。それだけ、膨大なデータをもとに、個人的な事情は一切省いて客観的な考察が行われているということです。

     アマゾンのページでも、すごい高評価です。そして、レビューの質が高い!称賛のレビューを頷きながら眺めていました。それだけ、論の展開、データの観察が素晴らしいのです。この本が生き残るわけが分かります。私の稚拙なレビューに満足できなかった方は、ぜひアマゾンのレビューの方へどうぞ。

     まず、序盤かなりのページを使って、「自殺の定義」が考えられます。自ら命を絶つこと、と簡単に定義したくなりますが、社会学ではそうはいきません。まず、言葉をどのように定義するか、というのが重要な問題です。

     例えば、人間以外の動物は「自殺」をするといえるのか。精神病患者が自分の意識が統制できない状態で行うものは「自殺」と呼べるのか・・・などなど。1つ1つの問題が、しらみつぶしにされていきます。最終的な定義はこうなりました。

    死が、当人自身によってなされた積極的、消極的な行為から直接、間接に生じる結果であり、しかも、当人がその結果から生じうることを予知していた場合



     細かい部分を記述していると大変なので、本論である、「自殺を引き起こす社会構造」に移りたいと思います。ちなみに、本論が始まるのは170ページからです・・・。

    社会結合と自殺



     自殺は、個人の属している社会集団の強さに反比例して増減する(p247)

     これが、1つの結論であり、私が現代社会にも十分通用すると思った部分です。個人が社会集団に密接に関わっていればいるほど、自殺は少なくなります。当たり前のことのようですが、いろいろなデータがこの結論により説明できます。

     まず、「男性の自殺が女性の自殺より圧倒的に多い」ということ。これは、どの国で見ても同じです。どうしてこのようになるのでしょうか。デュルケームは社会集団ということを踏まえて説明します。

    女子は男子よりも共同生活の圏外にいることが多いので、彼女たちのなかには共同生活がそれほど深く浸透していないわけで、この社会の浸透度の低さゆえに、女子にとっては社会の必要性は少ない。


     女性に対する蔑視が全開ですが、時代が違うので仕方がありません。それに、述べられていることは説得力があります。女性の方が社会との関わりが少ないから、自殺が少ないというのです。現在でも社会で重要な立場を多く締めているのは、(残念ながら)男性です。その違いが、自殺率の違いを生んでいるというのです。

     宗教についても出てきます。なぜ、カトリックよりプロテスタントの方が自殺が多いのか。・・・難しいですね。ここでも、集団への所属の強さで説明されます。カトリックの方が、プロテスタントより宗教的統合が強く、プロテスタントは個人の「自由検討」を認めます。その結果、プロテスタントの自殺の方が多くなるというのです。難しくなりましたが、要するにこうなります。

    宗教がひとつの社会だから、集合的状態が多ければ多いほど、また強ければ強いほど、宗教的共同体は緊密に統合され、それだけ自殺を抑制する力も強いことになる。



     長い本のほんの一部だけ抜粋しているのですが、いかに説得力があるか分かると思います。1つ1つにデータで根拠が示されるので、全体を読めばなおさらです。

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     客観的な考察だけでも十分にすごいのですが、この本では「どうして人は自殺するのか」「どうすれば自殺を防げるのか」といったことまで言及されています。自殺について知りたかったらこの本!という感じですね。全てが網羅されているように思います。

     アノミーという言葉が出てきます。社会が崩壊して無統制になり、人々が疎外感を覚える状態です。自殺の大きな要因になります。この状態から、人々が「社会に順応できていない」と苦悩することが、自殺を招くと言っています。自殺というと個人的な動機が大きな原因のように思われますが、実はそうではなく、全ての原因は「社会」に還元されます。言い方を変えれば、「社会に殺されている」ということでしょうか。

     集団との結び付きが強くなればなるほど自殺は減ります。それなら、その社会集団をもっと強固にして、個人を掌握することが自殺の予防になる、とデュルケームは最後にまとめます。当然の結論です。でも、難しいですね。昔のような「ムラ社会」に戻す、と言っているようなものです。近所の子供に挨拶しただけで「不審者」として通報されてしまう今の日本に、「集団の結びつきを強めよう」とは難しい注文です。

     社会がバラバラになれば自殺は増える。日本は典型的です。ですが、簡単に社会とのつながりを強めよう、とも言えません。小さな子供を持つお母さんが、子どもを守るために行う「囲い込み」の動き(上に書いた不審者の声かけがその例)が強まっています。それは当然のことです。それだけ、社会にはたくさんの危険があります。

     つながりを強める ⇔ 危険だからつながれない

     1つの対立が見えてきますね。難しい問題です。

    日本の病は治せるか



     日本の自殺問題について、もっと真剣に考えたいと思います。自殺者は年間約3万人ですが、そこには大量の自殺未遂や、不審死は含まれていません。統計に含まれない自殺を含めると、「16分に1人が自殺」どころでは済まないのです。

     若者の自殺率の高さ
     中高年男性の圧倒的な自殺率

     世界的に見て、日本の自殺で特徴的なことです。なんだか「社会の闇」が見えてきませんか?若者が未来に希望が持てず、働き盛りで給料的にも最も恵まれているはずの中高年男性が自ら命を絶っているのですから・・・。

     デュルケームが言う通り、「日本の社会構造」に大きな問題があります。こんな深夜にブログを書きながら、いろいろなことを考えました。

     ただの大学生に過ぎない私のような人間が、金曜日に帰ってきて放心状態でベットに倒れ込んでいます。世の中には、もっと疲れていて、追いつめられていて、救いを求めていて、・・・それでもベットに倒れ込む暇すら与えてもらえない人がたくさんいるのです。金曜日の夜に帰れない人が。土曜日に休めない人が。恐ろしくなります。これから私は「社会」に出て行けるのでしょうか・・・。

     社会が、人間を殺す。導き出される結論に、ぞっとします。殺されないようにしなければいけません。自分を見失わないようにすること。そして、適度に社会とのつながりを保つこと。肝に銘じておきます。

    ◆殿堂入り決定!

    「最果ての図書館」は『自殺論』を「ゴールド」に認定しました。おめでとうございます!



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    殺の全てが分かる、究極の古典的名著

     日本の重要な社会問題である「自殺」。どうして日本は自殺が多いのか、この本を読めば見えてくる部分があると思います。統計は、嘘をつきません。統計から何が見えてくるか、じっくりと突き詰めている1冊です。
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    デュルケーム, 学術書, 社会,



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