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桜田門の闘争  -『宰領 隠蔽捜査5』 今野敏

 12, 2015 22:14

 久しぶりのブックレビューは今野敏さんの人気シリーズ、「隠蔽捜査」です。これまで、本編5冊、スピンオフ2冊の計7冊が刊行されています。私はこれで6冊目!ですが、このブログで紹介するのは意外に初めてでした。

宰領: 隠蔽捜査5
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今野 敏
新潮社
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 1つのシリーズを6冊も読んだのは、いろいろなシリーズをかじっている私からしたらかなり多い方だと思います。次の作品も見たくなる、そんな「隠蔽捜査」シリーズの魅力がどこにあるのか、今日は見ていきたいと思います。



最強の唐変木



 唐変木(とうへんぼく)という言葉を私はこの作品で初めて知りました。偏屈もの、という意味です。このシリーズの主人公、竜崎さんは奥さんからよく「あなたは唐変木だ」とあきれ半分に言われます。

 どのあたりが変人なのでしょうか?まず、徹底的な原理・原則主義者です。警察のキャリア組の竜崎ですが、自身の出世や利害関係などまったく気にすることはありません。目の前の事件を解決すること「だけ」しか見ていない彼は、よく言えば理想的な警察官、悪く言えば「唐変木」ということになります。

 正直、最初は彼のことを受け入れられませんでした。1巻のはじめ、彼は「東大以外は大学ではない!」というようなことを言ってのけます(!!)その他にも、かなり強烈な発言がいくつもありました。間違っても「共感」できる主人公ではないなぁ・・・と最初はタジタジでした。

 それでも、こうやってシリーズ6冊目まで読んできました。何に惹かれたのだろう・・・と考えると、やはり竜崎さんの「ブレなさ」だと思います。何度もピンチに陥るのですが、彼の信念は決して揺るぎません。息子の邦彦君が麻薬に手を染めていた(!!)というショッキングな事件もあったのですが、彼は息子の過ちを正し、自ら降格処分を受け入れました。(この「降格処分」も作品の面白さのミソになっています)。

 すっかり彼の変人ぶりにも慣れて来た6冊目。今回彼が挑むのは、衆議院議員の誘拐事件です。

完全アウエー



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 隠蔽捜査のもう一つの魅力は、「警察の階級間闘争」です。普通の警察ものは、現場で捜査に挑む刑事たちが主役になることが多いのですが、この作品で主役になるのは、そんな現場の刑事たちを指揮するキャリアたちです。

 警視、警視正、警視長、警視監、そして警視総監!(警察のトップです)。すごい階級の人たちが、わんさかわんさか出てきます。これだけキャリアが登場するシリーズはなかなかないと思います。私はドラマ「相棒」が好きなのですが(今はいろいろと言いたいこともありますが・・・)、相棒で好きなのも、警察の上層部の権力争いが描かれて重厚な雰囲気になっているところでした。

 こういったシリアスで重厚な展開が好きな私にはたまらなく好きなシリーズです。初めて読んだときは、こういう切り口の警察ものが読みたかったんだ!と思わず膝を打ちたくなるくらいでした。

 今回も「権力争い」がたっぷりと描かれています。それは「警視庁vs神奈川県警」の争いです。警視庁と神奈川県警といえば事件の主導権争いや縄張り争いで知られる「犬猿の仲」の関係です。今回、誘拐事件を受けて、竜崎さんは完全なアウエーである神奈川県警に乗り込み、指揮をとります。

 当然、神奈川県警の人たちは快く思いません。露骨に嫌な態度を示したり、反論してみたり・・・ピリピリしたムードが漂います。果たして、そんな状況で竜崎さんは現場を指揮し、事件を解決に導くことができるのでしょうか!?

 今回も竜崎さんがお見事でした。ぶれない信念、人心掌握術、そして捜査手腕!小説だから描ける人物かもしれませんが、やはり抜群のエリートで、その指揮ぶりには惚れ惚れしてしまいます。

 事件解決後、あれだけ竜崎さんを邪険に思っていた神奈川県警の捜査員が、竜崎さんのことを認め、態度を改めます。こうやって信頼を勝ち得ていくだなあ・・・と少し胸が熱くなる場面でした。

 こういう警察ものが大好きなので書いていてテンションが上がってしまいます。「権力争い」や「内部の不祥事」を描いた作品が好きって、よく考えたらすごい趣味ですね 笑。ドラマの見すぎ、小説の読み過ぎで、「警察の上層部=不祥事」というイメージがついてしまいました。実際はそんなことはないはずです・・・・よね?

ぶっきらぼうな愛



隠蔽捜査
ドラマ「隠蔽捜査」 公式サイト

 隠蔽捜査は昨年TBS系列でドラマ化されています。実は、私はドラマ→小説の順にこの小説に入りました。ですから、竜崎さんは頭の中でずっと主演の杉本哲太さんです。ぶっきらぼうだけど、情熱にあふれ、実直。そんなイメージにピッタリのナイスキャスティングだったと思います。

 このドラマ版「隠蔽捜査」、完成度が異常に高かったです(ビックリするくらい)。ちなみに、yahooのテレビガイドではこのドラマの点数は4.63点(5点満点 ※今日現在)とすごい数値になっています。100点満点に換算すれば92.6点ですから、いかに高評価か分かります。やはり、私のように警察官僚ドラマにワクワクする人が多いのでしょうか。シリアスに作り込まれている「神ドラマ」でした。

 事件は現場だけじゃない!会議室と家庭でも起きているんだ!

 こんなキャッチコピーがあります。その通りで、この作品は竜崎さんの家庭のエピソードも同時進行していきます。仕事一筋の竜崎さんですが、そんな時に家族にも「事件」が起きてしまい、仕事と家族のジレンマに悩むことになります。これも魅力の1つです。

 今回は、浪人して東大に挑んでいた息子の邦彦君が、ついに試験本番を迎えます。しかし、邦彦君が試験会場で倒れてしまい・・・!?いろいろ大変だったこの家族、最後まで一筋縄ではいきませんでした。それでも、結果は「合格」!良かったです。長く読んできたシリーズだけに、感慨もひとしおでした。

 変人の竜崎さんは、息子にかける言葉もどこか堅苦しく、ぶっきらぼうです。「自分の力を出すだけだ」「受験をするのは俺じゃない、邦彦だ」などなど・・・かなり不器用なお父さんでした。

 それでも、シリーズを読んでいれば分かるようになります。これは、ぶっきらぼうながらも1人の父親が示す「愛情」です。そこに気付くと、この話をもっと深く、そして温かく読めるようになります。

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詰まる警察官僚の攻防!!警察・刑事ドラマ好きの方には必見のシリーズです。

 シリーズは全7冊。これまで6冊読んできて、ついにあと1冊になりました。「隠蔽捜査5.5」というスピンオフシリーズだそうです。あと1冊、と言わず、今後も増えて行ってほしいシリーズです。



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