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教科書への旅 #9 「スイミー」 レオ・レオニ

 15, 2015 23:50
教科書


 教科書への旅、第9回です。今回は今までで一番若い、小学2年生の教科書から作品を選んでみました。今までは作品を知っている方、知らない方で分かれましたが、今回はほとんどの方が分かる作品だと思います。

スイミー1

 レオ・レオニの「スイミー」(小学2年生)です。教科書最大手の光村出版で、1977年の教科書から採用されているそうです。もうすぐ掲載から40年!大人も子供も分かる貴重な教科書作品の1つです。物語はいたってシンプルなのですが、そこには小さな子供たちがぜひ学んでほしい、大切な教訓が詰まっているようです。



あらすじ



 広い海で、小さな魚の兄弟たちが暮らしています。みんな赤いのに、一匹だけ真っ黒な魚がいました。名前はスイミーです。

 ある日、おそろしいまぐろが魚たちの群れに突っ込んできます。まぐろは一口で赤い魚たちを飲み込んでしまいます。たった1匹、スイミーだけが生き延びました。

 暗い海の底を寂しく泳ぎ回るスイミー。しかし、海にあるすばらしいものを見るたびに、少しづつ元気を取り戻していきます。

 そんなとき、スイミーは岩かげに潜んでいる赤い魚の兄弟たちを見つけました。みんなであそぼうと声をかけるスイミー。しかし、赤い魚たちは「大きな魚に食べられてしまう」とおびえて出てきません。

 スイミーは考えます。いろいろ考えます。うんと考えます。そして、うんと考えた末に・・・?

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この作品のポイント



・前半と後半に分かれますが、前半のメインはスイミーが海の素晴らしいものを見て元気を出すところです。
暗い海の底から海の美しい光景へのダイナミックな変化。体言止めで次々と語られる海の光景は圧巻です。「水中ブルドーザー」「もも色のやしの木」など瑞々しく潤沢な比喩をたっぷり味わいたいです。想像力を働かせて絵を描いてみるのも面白そうですね。

・後半は赤い魚たちとスイミーが力を合わせて大きな魚になります
→「人と違う」からこその個性。その個性が開花する場面に、個性の尊重や自己肯定観が読み取れそうです。また、赤い魚たちはその他大勢に思えてしまいますが、実は全ての魚が力を合わせたから大きな魚になれたことに気付きます。全員が必要とされている、全員の協力あってこそなしえたことだったんですね。



再読!「スイミー」



 ひとりぼっちになったスイミー。暗い海の底を泳いでいましたが、海の素晴らしい光景を目にするうちに、元気、そして勇気をもらったようです。赤い魚たちを指揮し、大きな一匹の魚になって泳ぎます。「ぼくが、目に なろう」力強い言葉が魚たちをまとめます。

 日本語版の訳は谷川俊太郎さん。力強くダイナミックな文章だと思います。この文をあれこれと批評するのは無粋だと思うので、これは実際の文章を読んで感じていただきたいです。

 前半の比喩は本当に表現豊かで、想像力が高まるものばかりです。

水中ブルドーザーみたいな いせえび。
風にゆれるもも色のやしの木みたいないそぎんちゃく。



 私がこの作品を読んだのはもう10年以上も前だったのですが、これらの比喩はしっかり覚えていました。文字だけではなく、絵が刻まれていたからだと思います。この比喩の直前には、「こわかった。さびしかった。とてもかなしかった」という、どん底に沈むスイミーが描かれます。そこから一気に美しい海の描写が飛び込んでくるのです。教科書にすればたったの2ページですが、驚くほど豊かで、そして壮大な広がりがあります。

スイミー2

 そして、一番有名なこの場面です。スイミーが目になって、大きな赤い魚が生まれます。

「ぼくが、目に なろう」
あさのつめたい水の中を、ひるのかがやく光の中を、みんなはおよぎ、大きな魚をおい出した。



 小学校の時、この「スイミー」の劇をしました。いうまでもなく、子どもたちにとって一番「おいしい役」は真っ黒なスイミーです。最後、一番大事なセリフがあり、目になって大きな魚を完成させます。

 私はそんな「おいしい役」であるスイミーの役を・・・・やっていません 笑。そんなに世の中上手くは進まないですよ。その他大勢である赤い魚の役だったと思います。スイミー役の男の子は、クラスでもリーダー的存在のかっこいい男の子でした。「ぼくが目になろう」のセリフが本当に上手だったんです。たった一言なのに、今でも鮮明に覚えています。主役になるべくしてなったんでしょうね。

 「その他大勢」と少し自虐めいたことを書きましたが、そんなことをいってはいけません。この作品の赤い魚はたしかに数が多くて一匹一匹は目立たないかもしれませんが、だからといってその他大勢ではありません。先生がこんなことを言っていたような気がします。

 「全員が主役なんだよ」

 もしかしたら、主役になれなかった子供たちを慰める意味で言っていたのかもしれません。でも私にとってはこの言葉がこの作品のすべてです。この言葉には、2つの意味があると思っています。

 まず、全員の協力が欠かせないということ

スイミーは、教えた。けっして、はなればなれにならないこと。みんなもちばをまもること。


 誰か一人が和を乱してしまったら、大きな魚は成り立たなくなります。たしかに一番目立つのはスイミーかもしれませんが、「欠けてはいけない重要な役割」という点では赤い魚も全く同じなんです。そう考えると、スイミーがうらやましいという思いは薄れ、一匹一匹がいかに大切な存在か気付けると思います。

 2つ目に、ケースが変われば、誰もがスイミーになれるということ

 みんなが赤いのに、スイミーの体は真っ黒でした。それはすなわち、人と違うその人だけが持つもの=個性です。今回、大きな魚になる、ということを成し遂げるとき、スイミーの個性が役立ちました。スイミーがとりわけ優れていたわけではなく、この状況だったからスイミーの個性が生きたといえそうです。

 状況が変われば、違う誰かがスイミーになります。その人が持つ、他と違う部分。そんな個性を自分で発見して、勇気をもって前に出ていくこと。そして、周りがそれを認め、引き立ててあげること。その2つがそろえば、素敵な結果が生まれます。

 小学校2年生の時には気付く余地もありませんでしたが、これはまるで、「クラスのあるべき姿」を示しているようでした。自分の個性に気付いて、肯定できるようになること。周りがそれを認めてあげること。日本では人と違うことで萎縮してしまう人が多いかもしれませんが、人と違うことがどんなに素晴らしいか、それを教えてくれる作品でした。




教科書


 教科書には動物が登場する作品が大変多いです。そこにはどんな意味があるのでしょうか。今後も動物が登場する作品には注目していきたいと思います。



「大造じいさんとガン」 椋鳩十 (小学5年生)
 前回の作品。こちらも動物が登場する作品ですね。記事では表現の素晴らしさに着目して書きました。

「教科書への旅」 一覧ページ
 一覧ページです。このコーナーに興味を持たれた方、ぜひほかの作品にも触れてみてください!
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