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教科書への旅 #10 「野原はうたう」 工藤直子さん

 28, 2015 23:05

 「教科書への旅」のコーナー、おかげさまで10回目に到達です。今回はこちらの作品をご紹介します。

野原はうたう1

 工藤直子さんの「野原はうたう」(中学1年生)です。光村図書の中学1年生の教科書でトップを飾っています。ぶかぶかの制服に身を包んだ初々しい新中学1年生が、最初に国語で学ぶ単元です。教科書の章タイトルは「新しい世界へ」-。希望が膨らむ中学校生活の幕開けにふさわしい、みずみずしい感性で書かれた詩になっています。



概要



教科書


 工藤直子さんは1935年生まれの詩人、童話作家です。子ども向けに数多くの作品を発表しており、この作品を含め、教科書に多くの作品が採用されています。

 「野原はうたう」は、1984年から発表されているシリーズもの、「のはらうた」から一部の作品を抜粋したものです。教科書には4つの作品が収録されています。

 うちゅう・いるか (いるか ゆうた)
 あしたこそ    (たんぽぽ はるか)
 おれはかまきり  (かまきり りゅうじ)
 ひかる      (ほたる まどか)

 動物や植物がみな「じぶんのうた」を歌っている、と語る工藤直子さん。平易な文体で書かれた親しみやすい詩からは、みずみずしい感性と、そして動物や植物たちの独特の存在感を感じます。

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それぞれの詩について



 それぞれの詩について簡単に触れておきます。詩の中で一番素敵なベストフレーズもあわせてどうぞ。

・うちゅう・いるか
 大きな「うちゅう」でおよぐ、ぽっかり小さいいるかを描いた詩です(地球ではなくて宇宙、というのが広いスケールですね)。

そんなでっかいうちゅうでおよぐ ぽっかりちいさいぼくだけど
ぴかっとひかるいのちをだいて いまここぼくはいきている!



・あしたこそ
 たんぽぽのわたげが舞い上がる様子を、出会いへの希望に重ねた詩です。4つの詩の中では一番好きですね。

とんでいこうどこまでも
あした たくさんの「こんにちは」にであうために



・ひかる
 「わたしのぜんぶのからだとこころで」光るほたる。小さくてもかけがえのない存在・そして命であることが伝わってきます。

わたしをみつけて!とひかります
わたしのぜんぶの からだとこころで(これで全文です)



・おれはかまきり
 4つの詩の中で最もインパクトを残したのは間違いなくこの詩でしょう。「かまきりりゅうじ」の名は、この教科書で学んだ全ての子どもたちの頭に否が応でも刻まれることになるのです・・・。くわしくはのちほど。

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(右上から時計回りに、「うちゅう・いるか」「あしたこそ」「ひかる」、そして「おれはかまきり」)

再読!「野原はうたう」



 希望が膨らむ中学校生活の幕開けにふさわしい、みずみずしい感性で書かれた詩になっています。

 そう私は冒頭で書きました。が、しかし!正直私はこの作品にあまりいい思い出がありません。この単元の目的は、「声を届ける」、つまり、声に出して詩を朗読してみることにあります。教科書を見ると、はっきりと読むこと、速さや強弱に気を付けること、間の取り方など、かなり細かく書いてあります。

 朗読がメインの単元ということで、授業内容はおのずと決まってくるのではないでしょうか。そう、「朗読会」です。こういうことが好きな子どもと嫌いな子どもにはっきりと分かれるでしょう。私は典型的な後者でした。希望が膨らむ中学生活・・・そんなムードなんてこれっぽっちもありません。私にとっては、いきなりの試練でした。朗読が嫌で、腹痛をこらえながら学校に行った記憶があります。思い出すと今でもお腹が痛くなりそうですから、よっぽど嫌だったのでしょう。

 しかも、です。4つの詩があって、そのうち3つは、春らしい希望にあふれた詩になっています。この3つの詩の朗読なら、まだ少しは楽しくやれたかもしれません。しかし、こういう時はとことん悪い方向に事が運ぶものです。列ごとか班ごとに朗読する詩が決められたと思うのですが、私が当たったのはよりによって、「おれはかまきり」・・・。

かまきりりゅうじ

 忘れもしません。彼が「かまきりりゅうじ」くんです。かまきりりゅうじ、すごい名前ですよね。「蟷螂隆二」、漢字にするとさらに迫力が増します 笑。忘れたくても忘れられないかまきりりゅうじ君の詩を振り返ってみることにしましょう。

おれはかまきり かまきりりゅうじ

おう なつだぜ おれは げんきだぜ
あまりちかよるな
おれの こころも かまも どきどきするほど ひかってるぜ

おう あついぜ おれは がんばるぜ
もえる ひをあびて かまを ふりかざす すがた
わくわくするほど きまってるぜ



 すごいテンションですよね。いわゆる「チャラ男」のような・・・。今の時代をこのテンションで生き抜ける人はそう多くはないと思います。中学1年生の私は度肝を抜かれました。

 もちろん、素晴らしい作品だと思います。かまきりの勇ましい感じ、勇猛果敢さを自然な感性で捉えています。これぐらいのテンションに振りきれたほうが、詩としての魅力は増すのではないでしょうか。でも、考えてみてください。この詩を朗読してください、と言われた時の、中学1年生の私の気持ちを!

 先生「動物や植物の気持ちを考えて、情感たっぷりに読んでみましょう!」
 私 「・・・・・・・・・・。」
 先生「おれはかまきり、はかまきりの勇ましさを表現してみましょう!」
 私 「(は、はぁ・・・) (^_^;)」
 先生「さあ、次はおれはかまきりのグループに行きましょうか!」
 私 「(保健室ってどこにあったっけ・・・)」

 保健室には行っていません!嫌ではありましたし、保健室が頭をよぎりましたが、子ども心にさすがにそれはダメだと思って朗読はしました。ただ、クオリティーは散々なものだったように思います。

 私「ぉ、おぅ・・・ なつだぜ・・・ おれは げんき・・・だぜぇ・・・・・・」

 完全に詩の力強さに力負けしました。か細い声で「げんきだぜ」と読まれる光景は、さぞかしシュールなものだったでしょう。情けないなあ、と思われる人もいるかもしれませんが、こういう朗読は人によって本当に得手不得手が激しくて、苦手な人にとっては苦難の時間です。私は国語が好きで得意科目でもあったのですが、これだけはからっきしでした。中学の最初がよりによって朗読とは・・・。しかも、よりによって「おれはかまきり」!国語に関しては最もトラウマになっている単元です。

 こう書くと詩のこと悪く言っているようなので最後にフォローしておきますが、「のはらうた」は素晴らしい詩だと思います。感性が素敵ですし、言葉がすーっと入ってきます。詩をもとに歌になったものも多いそうですが、たしかにこれらの言葉は歌にするとより輝きを増すものだと思います。

 悪いのは、その素敵な詩を受け止めることはできても、表現ができない私ということで・・・。朗読が上手な人がうらやましいです。今、「おれはかまきり」を上手く朗読できるか、と言われたら余計下手くそになっていると思います。「恥ずかしい」と思ってしまうあたり、どうしようもありませんね。




オワリ

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