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  • 笑い泣き -『家族写真』 荻原浩

     20, 2015 23:55

     今週末から、大学の期末レポート執筆のため、一時的にブログを離れます。記事は予約投稿で対応する予定です。全部で7本あるレポートのうち、今日はやっと1本が完成して、少し気持ち的に楽になりました。明日はさらにもう1本完成する予定です。今日は祝日でしたが、大学の図書館は超満員でした。レポートに追われるのは皆同じで、図書館には殺気が漂っていました・・・。大学生、やってます。

    家族写真
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    荻原 浩
    講談社
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     時期を考えると、テスト前に読む小説はこれが最後になるかもしれません。しばらく小説を読む時間が無くなるので、小説のよさをじっくりと噛みしめながらレビューを残しておこうと思います。紹介するのは、荻原浩さんの「家族写真」という作品です。荻原さんの作品は3冊目ですが、良い意味で分かりやすく、読みやすい作品ばかりです。



    ほろほろほろり



     荻原浩さんは、大変コミカルでテンポのよい文章を書かれます。この本の軸となる「中年男性」は荻原さんがもっとも得意とする人物ではないでしょうか。

     口を開けばオヤジギャクが飛び出し、子どもと妻からは馬鹿にされ、体からは加齢臭が漂う・・・そんな典型的な「オヤジ」の姿を、ユーモラスに、そしてちょっぴり切なく描きます。コントを楽しんでいるような感覚で読むことができるかと思います。

     2つ目の短編、「磯野波平を探して」などはその典型です。タイトルを見ただけで、オヤジの悲哀というのがひしひしと伝わってこないでしょうか?波平さんと同じ54歳になった主人公が、波平さんのことを思い、語りかける形で物語は進行します。年相応の振る舞いをしようとがんばる主人公ですが、なんとも痛々しくて、心がひりひりします。

     三十代の頃は、四十になれば何かが変わると信じていた。四十代になってからも、五十になれば何かが見えてくると思っていた。

     だが、実際には、何も変わらない。何も見えやしない。四十九歳の最後の夜が明け、五十歳の朝になっても、寝ぼけまなこの自分がいるだけだ。

     いつになったら、不惑が来るというんだ、なぁ、孔子。


     目をそらしたくなるような部分ですね。人間が輝いていられるのはいつまででしょう。人生の「下り坂」はどこから始まるのでしょう。大学生をやっているうちは、まだこういったことは考えないでおきましょうか・・・。

    しりとりに乗せて



     「しりとりの、り」という作品は、ドライブをする家族が車の中でしりとりをして、そのしりとりで物語が進んでいくという大変面白い構成をとります。テンポのよい荻原さんらしい発想だと思います。

     一家のお父さんとお婿さんがしりとり対決をするのですが、お父さんは娘の結婚相手であるお婿さんにどうしても意地悪をしたくなるのです。そこでお父さんは、「る」で終わる言葉でお婿さんを攻め立てる、という作戦に出ます。

    「いくぞ。しりとりの、『り』からだ。『リール』」
    「ルキノ・ヴィスコンティ」
    「人名はなしだ」
    「では、ルクセンブルグ」
    「グーグル」
    「類題和歌集」
    「ウシガエル」
    「ルポタージュ」
    「ゆ・・・ゆ・・・『夕立ガエル』」
    「お父さん、ずりいよ。そんなカエル、いないよ」
    ・・・(疲れたので中略)
    「ふふふ、そろそろ苦しくなってきたようだな。とどめか。『ウール』」
    「ルネッサンス」
    「スリル」
    「ルッコラ」
    「ラ・・・ラ・・・ラーメンライスにビール」
    「あなた、それ反則」


     何とかして「る」のつく言葉にもっていこうとするお父さんと、それに対してさらっと「る」で始まる言葉を答えるお婿さん。お婿さんに意地悪をしてやろう、自分のかっこいいところを見せようという意識が見え隠れして、これもまた「オヤジの哀愁」を感じさせる話です。この後もしりとりは続くのですが、結局お父さんは負けてしまいます。どうにもこうにも、情けないオヤジです。

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     面白い話ばかりではありません。センチメンタルで、心がやけどしそうな、そんな切ない話を書けるのも荻原さん。この本の中では、「プラスチック・ファミリー」という話がそれに当たります。

     独身の男が、マネキンを拾います。男はそのマネキンに昔職場で恋をした女性の姿を重ね、マネキンと同居し始めるのです。

     あらすじをこれだけ書いただけで、この話の切ない雰囲気が伝わってくることでしょう。

     「俺の人生は間違っちゃいない」

     力んだ表紙に放屁した。ほらな、屁をこいても誰にも顔をしかめられない。なんと素敵な人生だろう。

     「結婚するやつは馬鹿だ」


     いたたまれなくなってきます。この話は笑い要素が少なく、全体的にシリアスな雰囲気です。雨の日のアスファルトの匂いがするような小説だと思います。心地よいにおいではないけれど、どこかで求めたくなるようなにおい・・・。荻原さんの作品の中では、こういう雰囲気を出す作品が一番好きです。

    家族はそれぞれ



     家族というと、どうしてもそのイメージを美化してしまいがちです。一家団らんの幸せな家庭を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

     私はそうではなくて、家族の中にある、家族独特の「臭み」のようなものを大事にするべきだと思います。それは、家族以外の人たちにとってはあまり心地のよいものではないです。他の人の家に上がると、心がざわざわして、心の奥にどこか不快感が生まれませんか?それは、その家庭にある独特の「臭み」を感じ取っているからだと思います。

     家族を描いた小説、中年男性を主人公にした小説はたくさんあるのですが、よい作品にはこの「臭み」があります。臭みがないと、薄っぺらい物語にとどまってしまうでしょう。家族臭さ、人間臭さ、こういったものはとても大事です。

     読んでいながら、心がひりひりして、途中で本から顔をそむけたくなる。そんな作品に出会えたら、それはきっと素敵な「家族小説」です。

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    たたまれなくなるオヤジの悲哀・・・荻原浩さんが送る、心がひりひりする短編集

     この作品を読んでの感想は単純です。「ああ、年はとりたくないなあ」・・・。若さ、今のうちに大事にします。



    こちらもどうぞ

    「ビタミンF」 重松清さん
     私が上に書いたことをそのまま体現したかのような小説です。家族の臭みを書かせたら重松さんは間違いなく日本一でしょう。直木賞を受賞した代表作です。

    「明日の記憶」 荻原浩さん
     こちらは今日紹介した荻原浩さんの代表作。若年性アルツハイマーをテーマにしたシリアスな小説です。レビューを読み返してみると、私は人生の下り坂について考えていました。荻原さんの作品を読むと、同じことを考えるんですね。
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    小説, 荻原浩,



    •   20, 2015 23:55
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