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  • 塀の外へ踏み出して -『すれ違う背中を』 乃南アサ

     30, 2015 18:00

     本の表紙をめくったところで、私はいきなりしくじりに気付いてしまいました。帯に、こう書いてあったのです。
    「・・・・・・人気シリーズ第二弾!

    すれ違う背中を
    すれ違う背中を
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    乃南 アサ
    新潮社
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     というわけで、シリーズものだということも知らず、私はこの本を手に取ってしまったのでした。シリーズものを途中から読むというのは作品の世界に入りづらくてなんともちぐはぐなところがところがありますが、せっかく手にとったのだからと思い、読んでみることにしました。 



    外の世界へ



     主人公は刑務所で服役し、罪を終えて出所した女性2人です。その設定を読んで、この話がドラマ化されていたことを思い出しました。NHKで放送されていた、「いつか陽の当たる場所で」というドラマです。主演は上戸彩さんと飯島直子さん。ドラマをあまり見ない私の母が、このドラマのことは絶賛していました。とてもよく作り込まれていたドラマだったそうです。

     「語れない過去があります。捨てられない想いがあります。」

     ドラマのキャッチコピーです。小説を読み終えた後で見ると、この言葉が胸に染みわたってきます。刑務所に服役していた、という「語れない過去」、そして前科という暗い過去を背中に背負いながらも、「捨てられない想い」。2人の女性の心理描写が丹念に描かれていきます。

     上戸彩さんが演じた芭子(はこ)は、大学時代に昏睡強盗を繰り返し、ついに逮捕されてしまいます。受けた罰は懲役7年。20代のほとんどを塀の中で過ごした彼女でしたが、現在は更生し、ペットショップで働きながら自分の居場所を見つけています。

     そんな芭子が刑務所で出会い、出所後も付き合いを続けているのが飯島直子さん演じる綾香です。綾香はDV夫から息子を守るために夫を殺害しました。情状酌量の余地もあり、懲役は5年。彼女の夢はパン職人になること。芭子と励まし合いながら、時には対立しながら、人生をやり直していこうとします。

    背中の重み



     長く続いた塀の中での生活。やはり、外の世界は新鮮なようです。

    ことに受刑期間が長かったものにとって、外の世界は実に新鮮だ。規律に縛られ、豊かな色彩などまったくない世界で生活していた受刑者の目には、一般社会に溢れている鮮やかな色彩も、様々な騒音も、人々の自由な流れも、何もかもが刺激的で、場合によっては恐怖にさえ感じられる。



     自由であるということのありがたみをあらためて感じますね。長い間塀の中にいた人間にとっては、何もかもが新鮮に映るのでしょう。こればかりは想像するしかありませんが、2人の目線から見た時に全く違って見える世界が新鮮で、読んでいるこちらも作品に入り込んでいきます。

     しかし、塀の中から出られたからといって、2人は自由になれたわけではありません。穏やかに進む日常に、突然現れてくる「前科持ち」という影。特に芭子は、自らの過去が露見することをとても恐れています。懲役を終えたからといって、罪が消えるわけではありません。犯した罪は一生消えず、見えない手錠となってその人間を縛り付ける、そんな恐ろしさに気付きます。

    芭子だって綾香だって、犯した罪は懲役という形でとうに償いを終えている。それでも、これからどれほどの年月が過ぎようと、何かあれば「前科者」という目で見られることに変わりはなかった。だからこそ、ひたすら目立たないように、息を殺して地道に生きて行かなければならない。そういう中で自立を目指す難しさなど、「あそこ」にいるときには想像もしていなかった。自由なようで自由でない。常に怯えて緊張している。正直なところ、出所後の今の方がよほど重い罰を受けている気分になることもあるほどだ。



     もしかしたら、本当の罰は、塀の外に出た時から始まるのかもしれません。

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     読んでいると、2人が前科者であることを忘れそうになります。ペットショップでペット用の服を作り、それが売れるようになって社会の中にようやく居場所を見つけた気持ちになる芭子。過去から吹っ切れたように明るく、前を向いてパン職人を目指す綾香。塀の外で生きる人間よりも、よっぽどまっとうで、まともな人間に思えてしまいます。

     前科者であるということを忘れさせてくれないのが「世間」です。久しぶりに再会した綾香の同級生が、彼女に言い放った一言。芭子と顔見知りの警察官が、彼女にかけた一言。背中に冷たいものが流れます。その瞬間、2人はまた「前科者」という背中に背負った重い荷物に気付くのです。

     間違いは、一瞬。償いは、一生。一瞬の間違いが、本人や、周りの人の一生を狂わせてしまいます。2人の背中をみながら、あらためて罪を犯すということの重みを感じずにはいられませんでした。

    やり直せる限り



     現実は厳しいのですが、2人は常に足を前に進めようとします。私はこのまま前向きな感じで話が終わるのかと思っていました。そんな先入観で読むと、最後の「コスモスのゆくえ」という作品の後味の悪さには驚かされるでしょう。

     この話では、2人が夫からDVを受けているある女性と出会います。DVといえば、そう、綾香の過去が重なります。2人は何とか彼女の力になろうとするのです。ですが、力になろうとするうちに彼女の「どうしようもない側面」に気付いてしまい、そして・・・。

     どうしてこんな結果になってしまったんだろう・・・。

     少し呆然としてしまいました。2人が前科を背負って懸命に生きている姿を見て来ただけに、なんともやるせなく、軽く衝撃的な結末と言えるかもしれません。

     罪を憎んで人を憎まず。まさにこの2人のためにあるような言葉です。2人は罪を犯しましたが、この作品を読んで2人を糾弾するような人はほとんどいないと思います。罪を犯したことで、2人はたくさんのことを犠牲にしました。それでも、2人には残っているものがあります。「やり直す権利」、そして「前に進む権利」です。

     その権利を捨て去らずに、やり直し、前に進もうとする2人。きっと、その背中を押したくなるでしょう。

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    中には重い荷物。それでも、前に進む二人―。

     このシリーズは全部で3作出ているそうです。私は真ん中の2作目から読んでしまったんですね。なんて中途半端な・・・ 笑。とてもよかったので、1作目と3作目も読みたいと思っています。




     今日の記事は予約投稿3本目です。予約投稿の期間中も訪問して下さっている方がおられましたら、どうもありがとうございます。

     次回から戻ろうと思うのですが、しばらく間が空いたので、テンプレートを変えてリニューアルしようかなと思っています。かっこいい感じになっていますので、どうぞご期待ください!
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    小説, 乃南アサ,



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