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  • 不完全な生き物  -『百年法』 山田宗樹

     27, 2015 22:20
     こんにちは、おともだちパンチです。今日のブックレビューは、山田宗樹さん「百年法」をご紹介します。
    先日発表した2014年年間ランキングでは第7位に選んだこの作品。手に汗握るストーリー展開もそうですが、作品が投げかけてくるメッセージにも惹きつけられます。詳しく見ていきましょう。以下、「百年法」のレビューです。

    百年法 上百年法 上
    (2012/07/28)
    山田 宗樹

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    抜群の構成力



     新技術「HAVI」により、老化しない身体を手に入れた人類。そんな不老化処置を受ける代わりに受け入れなければいけなかったのが「寿命百年」。処置を受けた者は、その百年後に国家によって安楽死させられます。逃亡すればそ即犯罪者。国家に追われ、強制的に安楽死処置を受けることになります。

     この「百年法」を巡って揺れ動く世界を描いた、壮大なSF作品、それが「百年法」です。そのスリリングで先の読めないストーリー展開はこれまで読んだ本の中でもトップクラス! 上巻は百年法が国民投票によって凍結されるという出来事に憤慨した遊佐という男が、ある政治家を見方につけて権力を掌握していく過程が緊迫感たっぷりに描かれます。期待して読む下巻はさらに圧巻!後半の「クーデター」以降は息もつけないような流れの連続です。そして、ようやく事態が落ち着いかと思われた時、突きつけられたのは「百年法」そのものを覆す衝撃的な事実でした・・・。

     いやー、煽りがいのある小説です(笑)。しかし、ここに書いたことは決して過剰な煽りではありません。この小説の抜群の構成力には本当に驚かされます。極上のエンターテインメント、そんな言葉を送りたい作品です。

    百年という年月



     この小説、現代社会に訴えてくるものも多いと思います。その理由の1つに「百年」という年月があるのではないか、と思います。「老化しない代わりに、寿命を百年に定める」。さてこれはどうなんだろうと考えた時に、「百年」という寿命が絶妙な位置にあることに気付きます。厚生労働省の発表によると、2013年現在の日本人の平均寿命は女性が86.61歳(世界1位)、男性が80.21歳(世界4位)となっています。寿命百年、おそらくそう遠くない時代の出来事です。この、現実と、遠くない未来の間にくっきりと浮かんでくる「百年」という数字。SFでありながら作品に入り込める所以はここにありそうです。

     老化しないで百年生きられるなら万々歳でしょう、と思う人もいるかもしれません。私も、読むはじめは「百年生きられれば上等じゃない?」そんな風に思っていました。でも、違うんですね。大事なのは、

           自分の命が終わる日が決まっていること。自分の命が、国家によって奪われること。 
    このことの恐怖を軽視していました。実際、百年法を突き付けられて世界は儚いほどに脆い・・・。以下は本文からの引用です。

    人間は、無限の時間を生きるには、複雑すぎる生き物だ



    生と死の境界を失った者にとって、永遠に生きることは、死ぬことと完全にイコールとなる。


    「人間の心は弱いものです。しかし、死を恐れるその弱さこそが、人類の文明をここまで発展させてきた原動力でもあると、私は考えます。人間の人間たる所以は、その弱さにある。だからです」



    生死という禁断の領域に足を踏み入れてしまった世界。そんな世界には、当然のごとく報いが待っていました。皮肉にも、「百年法」のある世界は、その半分である50年もたたないうちに・・・。気になった方はぜひ手に取ってみてください。

    迫りくるリアリティー




     最後の1行はまさに渾身。嘆息してページを閉じます。しかし、そこで終わらないのがこの小説の凄みです。「現代社会はどうだろう」そう考えた時に、身に迫ってくる感覚があります。

     寿命百年の時代は、そう遠くないうちにやってくるでしょう。ただ、忘れてはいけないのが、「高齢者を支える若者が圧倒的に不足している」ということ。「孤独死」「地方消滅」そんな言葉で、近い将来に警鐘が鳴らされています。果たして、この先、人間の生命の尊厳は保たれるのか・・・。もしかしたら、近い将来に行き場のない人間が路上で死に果てていく光景があるのかもしれない。そんな想像すらさせてしまう、どこまでも恐ろしい作品でした。

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    小説, 山田宗樹,



    •   27, 2015 22:20
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