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自由を守るために -『図書館危機』 有川浩

 16, 2015 21:59
 図書館危機    

切なものを守れるか―激動のシリーズは第3弾

 今日紹介するのは、秋に映画とスペシャルドラマの放映が控えている有川浩さんの人気シリーズです。私はこれで3作目!今回も楽しませていただきました。

 毎回毎回山場続きで、手に汗を握りながら3作目までやってきました。キャラクターの成長がうれしくなるのは、シリーズものならではですね。この「図書館危機」も相変わらずの面白さでした。



図書館戦争とは



 図書館戦争シリーズを読んだことのないという方のほうが多いと思うので、まずは図書館戦争シリーズについておさらいです。

 舞台は、「表現の自由」そして、「本を読む自由」が失われた世界―。「メディア良化法」という法律が成立し、不適切な著作物は「メディア良化委員会」の検閲にかかり、つぎつぎに回収されていきます。そんなメディア良化委員会の手から、人々の「本を読む自由」を守るため、図書館は武装化し、「図書隊」となりました。自由は守れるのか―図書隊とメディア良化委員会の戦いが幕を開けます・・・。

 このシリーズが生まれたきっかけは、作者の有川さんが図書館であるプレートを目撃したことにありました。

思いつきのきっかけは近所の図書館に掲げてあった「図書館の自由に関する宣言」のプレートです。一度気づくとこの宣言ってかなり勇ましかないかい、と妙に気になっていろいろ調べているうちにこんな設定が立ち上がってきました。(「図書館戦争」単行本版あとがきより)



 「図書館の自由に関する宣言」は実際に存在します。読みたい本が読める、そんなことが当たり前になっている時代に、あまり存在感のある宣言ではないかもしれません。ここに目をつけてこんなシリーズを生み出した有川さんは本当に素晴らしいです。と同時に、「読みたい本が読める」ということの尊さを改めて感じます。そんな意味で、本好きには胸が熱くなるシリーズです。

「図書館の自由に関する宣言」(日本図書館協会)

 かといって、堅苦しいお話ではありません。有川さんの作品は「大人のラノベ」とも言われ、文章は軽めです。とはいえ、その設定の面白さもあり、十分読みごたえのあるシリーズになっています。SFの要素、恋愛の要素、そして「本を読む自由」という大切なテーマを盛り込んだ、おすすめのシリーズです。

苦難の中の力

 
 
 主人公の郁(いく)は自分の前で本を守ってくれた「王子様」にあこがれて図書隊に入りました。その王子様の正体が、郁の現在の上司、堂上(どうじょう)です。前作では郁が「王子様」の正体が堂上だと知ってしまうのです。2人の関係がどう変わってしまうのか、どぎまぎしながら読み始めます。

 ・・・何も変わりませんでした 笑。相変わらず照れてばかりでいいムードもすぐについえてしまう2人・・・何だかじれったくなりますし、あまりに「ベタ甘」な展開に体のあちこちがむず痒くなってきます。

「あたし、王子様からは卒業します!」



 郁はいきなりすごい宣言をしてしまいました。いつまでも「王子様」にこだわるのではなく、上司としての堂上教官を見ようと決心したようですが、あまりにも甘いセリフになってしまいました。対する堂上の方も、郁を意識するあまり素直になることができず、2人の不器用さが際立ちます。

 それでも今回は、2人が距離を縮めつつあることを感じることができました。王子様でなく、堂上のことを上司として尊敬し、思いを寄せていく郁。そして部下である郁の目を見張るような成長とたくましい背中を見て、徐々に彼女を認めていく堂上。少しずつ惹かれあっていく2人の姿を見ていると、感慨すら覚えます。

 とはいえ、甘い恋愛だけを楽しんでいるわけにはいきません。今回も、人々の自由を脅かす出来事がたくさん起こります。郁と堂上、そして図書隊のメンバーたちは「自由を守る」という思いで1つになり、苦難に立ち向かっていきます。

 図書隊の階級章にほどこされいるのは「カミツレの花」。この花の花言葉が、今作で明かされます。それは、「苦難の中の力」-。それはまさに、苦難と戦う図書隊のためにある言葉でした。そしてこの花は、郁と堂上との間の恋愛にも絡んできます。なかなか憎い演出です。

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 さて、終盤には激しい戦闘シーンも出てきます。芸術作品を検閲の名のもとに奪おうとするメディア良化委員会に、図書隊が立ち向かいます。図書館で銃撃戦が行われる光景ははっきりいって異常です。それが異常だということは、前線で戦っている郁たちが一番理解していることでした。

英雄になりたくて銃を撃つだなんて!図書隊はそんなことのために銃を撃つのじゃない。

いつからか知らない、郁が生まれる前にはもう歪んでいたこの社会で、検閲に抗うために銃が必要になってしまっていた社会で、
あたしたちはもう撃たなくては仕方のない状態になったいるのだ。



 たくさんの戦闘を乗り越え、郁は大きく成長していきます。今回の戦闘では負傷をせずに戻ってくることができました。だからといって、胸を張って帰還というわけにはいきません。郁は今回初めて、相手に引き金をひきました。それは相手の命を奪わなかったとはいえ、郁にとって、大きな1つの線を踏み越えたということにほかなりませんでした。

引き金を引いた瞬間、結果的にはどうあれ、郁の中では攻め込もうとする敵を殺した。この手はもう血に塗れた。知事の言葉は郁の手が汚れたことを容赦なく指摘し、しかしそれを指摘してもらえたことに救われる。

手を汚していると分かってくれている人たちがいることに。その人たちがいると分かっているのなら、この手を汚すことなどいくらでも。



 本当に、強くなりました。なんだか郁の背中がとても遠くにいってしまったような、そんな気分です。銃を構えるしかない世界は、もう変えられない。そんな世界で、自分の正義を貫き、「本を読む自由」を守ろうとする郁。

 いちばん大事なものは、もう手に入れたでしょう。

 そう思うと同時に、「読みたい本を読む」ために銃を構えなくてはいけない、そんな世界が訪れないことを願うばかりです。

ラスト・ミッション



 そんな図書館戦争シリーズは、映画やアニメなど、さまざまなメディアに展開されています。今年の10月10日、映画の第2弾となる「図書館戦争 THE LAST MISSION」が公開されます。それに合わせ、秋にはスペシャルドラマも放送されるそうです。私の周りにもファンが多いこのシリーズ、これから秋にかけて、盛り上がりは必至です。

図書館戦争 映画

 郁・堂上役を演じるのはそれぞれ榮倉奈々さんと岡田准一さん。2人をはじめ、キャストがとてもいいですね。よくぞ揃えてくれた・・・という感じで、本を読んでいても自然に姿を当てはめることができます。映画の続編も素晴らしい作品に仕上がっていることでしょう。本で残っているシリーズも、至急読まなければと思っています。

 ずいぶんとたくましくなった郁。もうどんなことでも乗り越えられそうですが、有川さんのことですから、この先もたくさんの試練を用意しているのだと思います。「苦難の中の力」で乗り越えられるでしょうか。自由をめぐる戦いと、甘い恋の行方のつづきは、次作の「図書館革命」のレビューにて・・・。

レコメンド

から次へと襲い掛かる試練・・・乗り越えるのは、仲間と、思いと、「恋」の力。

 あらためて思い返してみると、この作品ではすごいことが起こっています。図書館で銃弾が飛び交い、隊員たちが命をかけて戦っているのです。そんな状況を乗り越えていくのは、仲間と、思いと、「恋」の力です。



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有川浩さんの本棚
 有川浩さんの本棚に「図書館危機」を追加しました。別名「ベタ甘コレクション」、図書館戦争シリーズ以外の作品もとても気になっているのですが、ひとまずこのシリーズを読み切ろうかなと思っています。
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