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Level7 is dead -『レベル7』 宮部みゆき

 23, 2015 23:03
レベル7(セブン) (新潮文庫)  「レベル7まで行ったら、戻れない」謎の言葉が誘うミステリー

 ミステリー作品を面白くする大事な要素の1つに、「謎のメッセージ」があります。このようなメッセージがあると読む前から期待感が高まりますし、読んでいる間も、その期待感がずっと続きます。

 この作品も、謎のメッセージが出てくる作品です。今日は宮部みゆきさんの「レベル7」という作品を紹介します。謎に包まれた前半の雰囲気はなかなかのもので、たっぷりと楽しませていただきました。



ミステリーナイト    last night  × miyuki miyabe

クロネコ2 Introduction

 ある部屋の中で、見知らぬ男女が目を覚ましました。彼らは、自分の名前すら思い出すことができません。記憶喪失になっていたのです。この部屋はどこなのか、そして自分たちはなぜここにいるのか、さらには自分たちの関係は・・・。分からないことだらけの中で、2人は自分たちの腕に刻まれた文字の存在に気付きます。

Level7 M-175-a
Level7 F-112-a



 謎が深まる中、2人は部屋にあった「あるもの」の存在に気が付き、震えあがります。そこにあったのは、大量の現金、拳銃、そして血が付いたタオル。いったい、二人に何が・・・。

 その頃、みさおという女子高生が行方不明になっていました。疑似友人を提供する会社で彼女と交流があった悦子は、彼女の足取りを追うことにします。彼女は、日記に奇妙なメッセージを残していました。

「レベル3 途中で断念 くやしい」
「明日 レベル7まで行ってみる 戻れない?」



 ここにも出てきました、「レベル7」。彼女が失踪したしたことと、「レベル7」はどうかかわっているのでしょうか?

 全くつながりの見えない2つの事件。そして、「レベル7」という不可思議なメッセージ。その裏には、何が隠されているのでしょうか。大きな謎が読者に手招きをする、「奇妙なメッセージのミステリー」です。

クロネコ2 しかない序盤

 序盤の雰囲気の作り方が巧みな作品だと思います。ミステリー作品に「謎」はつきものですが、この作品の序盤は謎だらけで、霧に包まれたような雰囲気を感じます。

 レベル7とは何を意味するのか?
 見知らぬ男女の正体は?
 部屋に現金や拳銃や血の付いたタオルがあったのはなぜか?
 なぜ、男女は記憶喪失になったのか?
 なぜ、少女は失踪したのか?

 ざっと書き出しただけでも5つになりました。複雑に絡まった謎が、いやでも興味をそそります。特に気になるのは、やはりタイトルにもなっている「レベル7」です。記憶喪失の男女と、失踪した少女。全く関係ないようなこの2組を結び付けたのが、「レベル7」というメッセージでした。

 謎だらけの序盤から始まりましたが、その後の展開はかなり一直線といった感じでした。「レベル7」の正体は中盤の終わりごろに明らかになります。途中から大体予想できるのですが、かなり後味は悪いです。事件の裏にあった、悪意に満ちた恐ろしいたくらみを、読者は少しずつ知っていくことになります。

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 宮部さんの書くミステリーはどれも重厚なものばかりです。説明的な部分も多く、事件はかなり複雑で入り組んだものとなります。そんな展開でも緊張感を保ったまま読むことができるのは、やはり宮部さんの書くミステリーの質の高さが成せる技です。

すべてがあつらえられて、計画されている-いや、すべてではないにしても、誰かの、何かの意図に添ってうまく動かされている、という感じがする



 事件の裏にいる「ある人物」の存在に勘付いた場面です。今回、かなり伏線が分かりやすいこともあり、その人の正体には早くから気付くことができました。それでも、実際に文字にされるとゾクゾクするものがあります。

 宮部さんのミステリーは長いですが、終盤は大変スピード感を感じさせる内容です。複雑に絡まった謎が、一気に解き明かされていく終盤には迫力を感じます。ページをめくる速度も1.5倍ほどになるのではないでしょうか。

「ありがとうよ」と、三枝は言った。「完璧だ」
「ホントに完璧」

全く聞き覚えのない、新しい声が、そう言った。



 ホラーかと思いました。終盤になってもまったく安心できない展開で、緊張感が続きます。宮部さんは場面の切り替えというのも大変うまくて、緊迫感を途切れさせずに続けていきます。作品が終わろうかとしているときに出てきた「新しい声」・・・本当にビックリしました。

クロネコ2  力で読ませる

 この作品は宮部みゆきさんのミステリーの中でも初期の作品ということです。読んでいると、そのことを感じると思います。これまで読んだ「火車」や「理由」と比べると、荒々しく、かなり分かりやすい伏線なども目立ちます。

 それでも、面白い!細かいアラがあっても、宮部さんのミステリーの迫力や重厚感というのは初期のこのころからすでに確立されていたのだということが分かりました。細かいアラが目立ったことで、逆に宮部さんの強さを見たような気がします。迫力であったり雰囲気であったり、そういったもので長編でもぐいぐい読ませていく作家さんだと思います。

 ベストセラー作家は、時代を先取りする

 たしか、「理由」の文庫本だったかと思うのですが、宮部さんについて、こういった解説が書かれていました。私も、宮部さんの作品を読むたびにこのことを感じます。宮部さんの現代ミステリーの特徴として、鋭い時代描写という点も挙げなくてはいけません。常に時代の最先端にいて、それでいて「次の時代」まで見通しているような、そんな印象を作品から受けます。

 そんな現代ミステリーだけではなく、ファンタジーや時代物まで書かれるというのです。すごすぎて、空いた口がふさがりませんね。私はまだミステリーものしか読んだことがないので、他のジャンルの作品もぜひ読んでみたいと思います。きっとまた、圧倒してくださるはずです。




ミステリーナイト

 「ミステリーナイト」、全4回が終了しました。約1週間ミステリー漬け・・・。内容を知らずに選んだのですが、どれも読みごたえがあってよかったですよ。

第一夜 歪んだ愛のミステリー
「Nのために」 湊かなえさん

第二夜 悲しい青春のミステリー
「オーダーメイド殺人クラブ」 辻村深月さん

第三夜 法と贖罪のミステリー
「天使のナイフ」 薬丸岳さん

最終夜 奇妙なメッセージのミステリー
「レベル7」 宮部みゆきさん

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小説, 宮部みゆき,



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