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社会学への扉 -『面白くて眠れなくなる社会学』 橋爪大三郎

 26, 2015 20:54
面白くて眠れなくなる社会学
橋爪 大三郎
PHP研究所
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門書の前、はじめの1冊!

 この、「面白くて眠れなくなる」シリーズのことは以前から気になっていました。多くの人に手に取ってもらえるようにかなり誇張して付けたタイトルだとは思いますが、タイトルでそういうのだからきっと面白いはずです。

 ラインナップを見ると理系の内容が多いようですが、私が手始めに取ったのは、大学で学んでいておそらく一番知識があるであろう「社会学」でした。「何を学んでいるのかよく分からない」などと手痛い一言をくらうことも多い社会学ですが、筆者はどんな風に面白くしてくれるでしょうか?



広く、浅く



 まずはじめに、筆者は社会学の難しさについて法学や経済学と比較しながら説明しています。難しさの理由は、やはり領域の広さにあるようです。法学は法を、経済学は経済を扱っていて、それは誰でもイメージできます。では社会学はどうでしょうか。同じ理屈で、社会学は「社会」を扱っているのですが・・・

 「社会」って何?と思われることが、社会学のとっつきにくさになっているのだと思います。社会というのは、もちろん専門的な定義やその歴史もあるのですが、基本的には「社会に関わることなら何でもあり」です。多くの人が興味のありそうな、マンガやアニメ、ゲームやスポーツなどは社会学でも扱われています。これまた多くの人になじみのあるLINEやtwitterなどのSNSは、最近盛んに研究されている学問分野です。

 そんな風に考えると、社会学はかなり面白い学問分野に思えてきます。ですが、領域が広くてあいまいなことが敬遠される原因になっているのかもしれません。この本は、そういった「あいまいさ」を上手く利用しているな、という印象を受けました。

 憲法や資本主義といった真っ先に避けられそうな難しそうなトピックもあるのですが、自由や正義、死といったかなり抽象的なテーマにも話が移っていきます。こういったテーマが、どうやって社会学に絡んでいくのだろう・・・気付けば、けっこう夢中になって読んでいました。

家族や死の意味



 私たちの周りに当たり前のように存在しているものを、改めて説明していこうとする試みはとても面白いです。ここでは、いくつもあるテーマの中から「家族」と「死」について書かれた部分を紹介します。

(引用)「料理した食事を、一緒に食べる。これが、家族の基本です。それは、食べ物を手に入れるために出かけなかったひとも、食べる権利があるということです。食べ物を手に入れたひとは、みんなに分ける義務があるということです。どうです、なかなかよい仕組みでしょう。ここに家族の本質があります」



 「家族」や「家族のよさ」について説明しようとしても、何やらあいまいで、困ってしまいそうです。「家族の温かみ」などというものはたしかに存在するのですが、そういった形のない情緒的なものを説明するのはかなり困難です。

 ですが、筆者の説明を見ると、大変分かりやすく感じると思います。これは「家族」に限ったことではないのですが、筆者は抽象的なものを「システム」として説明しようとします。そして、「システム」として説明するというのは社会学の大きな特徴でもあります。

 血のつながりのない人間が家族をつくり、一つ屋根の下で暮らす。人間がそんな行動をとるのには必ずわけがあるはずです。情緒的なことは説明しづらいですが、「システム」として考えていくと一気に分かりやすくなり、道が開けてきます。

 家族をシステムの1つとして考えることからはじまり、その役割や、家族をつくることの意味に話が及んでいきます。関連して「結婚」というトピックがあるのですが、こちらも同じような説明の仕方をしています。曖昧に感じていたものが理路整然と整理されていく過程は、とても面白いです。「家族って何だろう」「結婚って何だろう」・・・そういったことを考える時の、一つの道標になります。

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 では、「死」はどうでしょうか。死は家族よりもさらにあいまいな印象を受けるテーマですね。哲学や宗教学といった方に話が移されそうな感じがします。ですが、ここでも筆者はしっかり「社会学」の立場です。「死」と「社会学」・・・こんな感じになります。

(引用)「死は、考えることができるだけです。予期することができるだけです。(中略)可能性であり、必然性であり、そして不可知性です。死が何だか知ることはできないだろう。こういう、奇妙なものなんですね」



 かっちりしているようですが、とても分かりやすいと思います。死は、人間が絶対に避けることのできないものです。それなのに、いつ起こるかも分からなければ、死んだ後どうなるかも分からない・・・本当に深い、永遠のテーマです。

 人間が自分が死ぬことを恐れるのは、「自分がいなくなったあとの視点」があるからだと筆者は述べます。この部分も、大変分かりやすいです。

(引用)「自分がいなくなったあとの視点。それは、他者の視点なのです。他者から、社会から、自分を見ているという、その視点が必要だということです。この視点があればこそ、自分は、自分ひとりの命よりも大きな人生を生きることになります。(中略)自分が社会を支えていたように、自分も社会に支えられていて。その関係は自分が死んでも壊れませんよ、って思いたいからなのです。その視点があれば、自分の人生が、意味あるもの、価値あるものになります」



 人間が生きていくときに、社会の存在は切り離せません。筆者の言うように、人間の命に単に1つの命以上の重みがあるのは、他者の存在や社会とのかかわりがあるからだと思います。改めて言葉にされると、人間と社会がいかに深くかかわっているかが分かります。

 死というあいまいなテーマであったにかかわらず、どこか理論的であったという印象さえ持ちます。もちろんここに書かれていることが死の全てではありませんが、こんな風に死を社会と関連付けていく見方から考えていけることは多いと思います。

社会学的考え方



 家族と死という2つしか紹介できませんでしたが、「社会学的考え方」のイメージをつかんでいただけたと思います。難しそうと敬遠されることが多い社会学ですが、こういった学問に興味を持つ方は他の学問と比べても多いのではないか、と私は個人的に思っています。

 難しそうというイメージをほぐしてくれるようなこういった本の出版を歓迎したいと思います。私も、中学生や高校生の時に読んでいたら、もっと柔らかい頭で社会学を考えられたかもしれません。

 「面白くて眠れなく社会学」、本当に面白かったです(さすがに「眠れなくなる」は言いすぎですけど・・・)。「面白くて眠れなくなる数学」という本もあるみたいです。ぜひ読んでみたいと思います。数学の宿題が終わらなくて眠れなくなったことは何度もありますが 笑、はたして「面白くて眠れなくなる」ことはあるのでしょうか?

レコメンド

会学は、どこからでも始まります。はじめの一歩にこの1冊!

 今日は社会学の宣伝のような記事になってしまいました。宣伝したくなるくらい、面白い学問だと思います。レポートや論文には使えませんが、こういった1冊を読んでみるのもいいものですね。



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 社会学が身近にあるテーマから始まることがよく分かる本です。同じ方の著書ですが、とても分かりやすく、面白かったです。

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