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  • 100万分の1回のねこ 6匹目 「百万円もらった男」 町田康さん

     10, 2015 23:57
    100万分の1回のねこ
    100万分の1回のねこ
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    谷川 俊太郎 山田 詠美 江國 香織 岩瀬 成子 くどう なおこ 井上 荒野 角田 光代 町田 康 今江 祥智 唯野 未歩子 綿矢 りさ 川上 弘美 広瀬 弦
    講談社
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    なたの才能、いくらで売りますか?

     13回シリーズのこのコーナーも、中盤にかかってきました。このコーナーにも検索が来るようになりました。この夏は、トリビュート短編集「100万分の1回のねこ」の発売、そしてミュージカル「100万回生きたねこ」が上演と、「100万回生きたねこ」が大変盛り上がりました。絵本のほうも再び脚光を浴びているようです。

     6回目は、町田康(まちだ・こう)さんの作品です。これまではハートウォーミングな雰囲気の作品が多かったように思いますが、今回はガラッと雰囲気が変わります。



    100mann-6.png
    00万円もらった男 町田康

     「あなたの才能を買いたい」その何気ない言葉に乗った男でしたが・・・。ぶっきらぼうでどこか荒れた雰囲気のあるお話ですが、最後には思わず考え込んでしまうセリフもあったのです。

    ネコ2らすじ

     ギター弾きの男がいました。この3か月間、まったく仕事がなく、男はついに一文無しになってしまいました。そんな男のもとに、電話がかかってきます。「仕事を頼みたい」、そういって、男は電話主から近くの喫茶店に来るように言われたのでした。

     喫茶店で、電話主の八甲田大八は男にこう切り出したのです。「あなたの才能を買いたいのです」―。

    (引用)
    「わかりました。そう言って貰えるの、すっげ、うれしいです。それで、あの、ひとつだけ聞きたいんですけど、俺は具体的になにすりゃあいいんですかね」

    「なにもしなくていいんです。私はあなたの才能を買いたいだけです」



     あまりにもお金に飢えていた男は、こう思ってしまいました。「才能を買いたいって、現金で買うってこと?」たとえ五千円と言われたって、今の男にはありがたい金です。そう思って、「いくらで買うおつもりですか」などと素っ頓狂な提案をした男でしたが、なんと大八は、本当にお金を出す気のようです。コントでもしたいのでしょうか。

    (引用)
    「あああ、やっぱりねぇ、いいものは高い、と言いますが本当ですねぇ。一億はおろか、五千万でも僕には無理です。諦めます。さようなら」



     男はびっくりしました。これって冗談?もう少し付き合ってみることにします。

    (引用)
    「そうですかー。困りましたけど、じゃあ、いくらだったら買えるんですかね」
    「百万円が限界です」
    「ああ、そうですか。たった百万円ですか。この俺の巨大な才能が百万円ですか。うーん。しょうがないな」



     そんなわけで、嘘みたいな話ですが百万円をもらってしまった男です。このお金は、お金がない男への、天からの恵みなのでしょうか??大金を手に入れた男は、なんとも贅沢でしまりのない生活を始めるのですが・・・。

    LogoFactory_convert_20150914201859.jpg

     
     白文字ネタバレです。ドラッグやメモ帳にコピペなどの方法で見ることができます。ネタバレを知りたくないという方は飛ばしてくださいね。

     ★ 才能を買いたいというのは、文字通りの意味でした。信じられない話ですが、男は本当に自分の才能を100万円で売り払ってしまったのです。100万円払った後、男はギター弾きとしての才能を失ってしまいました。一方、男の才能を買った相手は音楽家として大成功します。男は激しく後悔することになるのでした。

    ネコ2田康さんのねこ

     楽しく読んでいたのですが、途中であることに気づきました。これまでの作品とは違って、ねこがなかなか登場してきません。それに、「100万回生きたねこ」とどのように関わっているのかも、なかなか分かりませんでした(これまでの作品は、読んでいてすぐにひらめくものがあったのですが)。

     そんな摩訶不思議なこのお話、ねこは一番最後に出てきました。なんともさりげなく、それでいて印象に残るような登場の仕方でした。こういうねこの出し方もあるんだ、という感じで、大変面白かったです。13人の作家がいて、よくこんなに話をかぶらせずにいろいろなパターンを用意してくるものだなと感心しています。

    ネコ2妙珍妙奇奇怪怪

     先日芥川賞を受賞したピースの又吉さんは、この町田康さんの作品にかなりの影響を受けているそうです。『文芸春秋』9月号のインタビューでこんな風に語っておられます。

    (引用)
    それから町田康さんも、僕にとっては破格の存在です。単純におもしろいだけではなくて、哀愁と狂気性とお笑いとが小説の中に同居している。お笑いでも僕はそういう作品が好きです。



     そのままこの作品の感想文にできそうなコメントです。哀愁と狂気性とお笑い・・・この作品を読んでいるときに感じた何とも言えない心地の良い味わいは、そういった言葉で言い表すのが適切なようです。

     又吉さんは町田さんに影響されすぎないようにしたい、と語っておられますが、それでもかなりの影響を感じました。それぐらい、一度読んだら忘れられないというか、癖になるタイプの作家さんだと思います。

    a0002_hi00076.jpg

     百万円を手に入れた男ですが、その百万円はみるみるうちに使われていきます。百万円が減っていく様子が、かなり細かく描写されていて、そういったところに感じさせるのはまさに「お笑い」です。

     しかも、百万円の使い道がなんとも情けなく、寂しいのです。ぼったくりバーで女にほれてしまい、その女のためにぼったくりバーに通い詰めるという始末・・・。その結果、男の百万円は一月半で二十五万円になってしまいました。

     「百万円」というのは、よく大金のたとえとして使われます。ですが、実際にその百万円で生活していくことを考えると、一気に夢がしぼんでいくような気はしないでしょうか。ちょっと贅沢をしようものならすぐに底をついてしまいますし、普通の生活をしていても、百万円だったらそのうち使い果たしてしまいます。「百万円」という響きには飛びつきたくなってしまいますが、いつかなくなってしまう、だんだん減っていくものって空しいんだなあ・・・ということを感じさせます。

     お金が手に入ってからというもの、男はギターのほうもさっぱりです。

    (引用)
    まず、無難に演奏できたのですが、以前のような、乗り、がいまひとつつかめませんでした。男は内心で、おかしいな、と思いました。仲間もそう思ったようで、以前は休憩時間など、冗談を言ってゲラゲラ笑うなどしていたのが、そんな雰囲気ではなく、みな、不機嫌に押し黙っていました(と男は感じました)。



     演奏ができても、「乗り」が戻ってこないのです。百万円を手に入れて、何か慢心でもしてしまったのでしょうか。男にはまた仕事もパッタリと入らなくなってしまうのでした。

     作品のテーマは、「才能」です。才能って、とても難しいですね。私はこの言葉にちょっとコンプレックスさえあります。才能、と聞くたびに自分の平凡さを突き付けられるようで、なんだか悲しくなってしまうのです(でも、続けることが最大の才能、なんて言葉もありますね。こんなブログでも、続けていたら何かの才能になるのかもしれません)。

     「才能をいくらで売るか」というこの作品の底にある問いがとても面白いのです。才能って、その才能を持っている本人が一番無自覚であったりします。気付かないまま終わるかもしれないし、突然花開くかもしれない。人の役に立つ才能が有れば、まったく役に立たない才能もある。才能とはそういう不思議な存在です。努力などと違ってコントロールできないのですが、コントロールできないことこそが人間の面白さになっている、と考えることもできそうですね。

    100mann-6.png
    匹目のねこ~私のつぶやき~

    自分にはどんな才能があって、その才能にはいくらの値段が付くのだろう。

    0円かもしれないし、100万円かもしれないし、何かの間違いでもっと跳ねるかもしれない。自分の才能がどんな風に生かされるのか決めるのは良くも悪くも自分。自分の才能に気付いて、それを生かせることがある意味一番の才能かもしれません。





    オワリ

     感想部分は、ネタバレを読んでも読まなくても自然に読めるようにしてあります。

    特集 100万分の1回のねこ
     今までの5回の中では、一番最初に紹介した江國香織さんの作品がもっともよく検索されています。後半はもっと有名な作家さんが次々に登場すると思うので、お楽しみに。

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    町田康,



    •   10, 2015 23:57
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