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「東京防災」3つの本気

 12, 2015 22:48
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れは、命を守る本

 今日の午前5時49分、東京都調布市で震度5弱を観測する強い地震がありました。幸い大きな被害は発生しませんでしたが、早朝に突然起こった地震は、改めて地震の恐ろしさを強く印象付けるものでした。そして、ツイッターで多くつぶやかれていた言葉が「首都直下型地震」。いつ起きてもおかしくないと言われている地震の存在が人々の間で浸透してきています。

 そんな地震を含め、様々な災害への対策・対応をまとめた東京都の防災ブック、「東京防災」の内容が大変充実している、と最近話題になっています。私も、ネットで公開されている防災ブックに全て目を通しました。パラパラとめくられただけで投げ出され、後はほこりをかぶっていたようなこれまでの防災ブックとは違い、この防災ブックは「本気」です。「東京防災」から感じる3つの本気を、今日はまとめようと思います。



ヤギ京防災の本気・1

「今やろう」、いつ起こるか分からない災害に備える、本気のことば

 最初の数ページで、この本の本気が伝わってきます。繰り返されるのは、「今やろう」のことば。いつ起こるか分からない災害への対策に、「後で」はないのです。後回しにしてはいけない、ほこりをかぶらせておいてはいけない、そんな強い覚悟と信念を感じさせる本です。

東京が一瞬にして姿を変えるその瞬間、あなたはどうする?今想像しよう。今正しい知識を得よう。今備蓄しよう。今家族や近所の人たちと話そう。一つひとつの小さな備えが、あなたを守る盾になる。人は、災害と戦える。今やろう。災害から身を守る全てを(p4-5)



 今、今、今。その姿勢は一貫しています。1つのことばを繰り返す、もっともシンプルな方法ですが、制作側の本気がダイレクトに伝わってきます。

 「人は、災害と戦える」。強い言葉に、目が留まりました。災害と戦う、という言い方は案外耳にすることが少なかったかもしれません。災害はある日突然やってくるものですし、人間が抗えるものではありません。しかし、自分や他人の身を守れるのか、被害の規模がどれぐらいになるか、それを決めるのはたしかに人間なのです。

 戦うではなく、「戦える」。やれるだけのことを全てやろう、そして、来たるべきその日に備えよう。強い決意を感じさせる言葉です。

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 本のいたるところに、「今やろうマーク」が付けられ、人々に迅速な行動を促しています。また、「今やろう 10の防災アクション」ということで、私たちが取るべき行動が分かりやすく示されています。行動を呼びかけるだけでなく、取るべき行動を分かりやすく示しているところが良いですね。

ヤギ京防災の本気・2

たちの想像力を駆り立てる、分かりやすい本気の説明

 行動を促すには、私たちの心に直接訴えかけるような工夫が必要だと思います。この「東京防災」は、そういった点もずいぶん考えて作り込まれているようでした。最初に「想像しよう」と言っているように、私たちの想像力をいやでも駆り立て、危機感を覚えさせるような工夫が凝らされていたように思います。

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 挿絵が多く、大きいことがその特徴です。例えば災害時のNG行動を伝えているこのページですが、大きな挿絵に、これでもかというくらい大きな「×」が書かれています。絶対にダメなんだ、ということが一瞬で理解できると思います。絵で伝えるという方法は、文字で伝えるという方法に比べて、私たちの視覚に訴え、直感を働かせるような効果があるのではないでしょうか。

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 挿絵はいたるところに用いられていて、またかなりインパクトのある配置です。上の写真だったら、注意報と警報、特別警報の危険度の違いが一瞬で伝わります。いざという時、私たちはここに書かれていた絵を頭の中によぎらせることができるかもしれません。そうやって私たちに後で思い出させる力も、文字より絵の方が強いのではないかと思います。

 (ちなみに上の写真は大雨や暴風の危険を伝えたページですが、この本には地震以外の災害についての記述も盛り込まれています。集中豪雨や土砂崩れ、火山噴火といった自然災害はもちろん、テロや武力攻撃、核爆発、感染症といった脅威についても説明されていました。危険対応への本気度と徹底ぶりが伝わります。)

  細かいところまで読んでいると、絵だけではなく、文字の説明にも工夫が凝らされているから驚きです。絵と同じように、文字もまた直感に働きかけるような記述がされています。例えば、集中豪雨のページにあった記述です。

もくもくと積乱雲が大きくなった、真っ黒な雲の接近、雷鳴がとどろくなどの前兆の後、集中豪雨はあっという間に都市を襲います。(p150)



 集中豪雨がやってくる前兆について説明した部分ですが、雲の変化などを分かりやすい言葉で説明しています。専門家が使うような型通りの説明ではなく、私たちの想像力を駆り立てようとする説明です。細部の文章にも徹底したこだわりを感じました。

ヤギ京防災の本気・3

去を生かす― データをふんだんに用いた、本気の教訓

 阪神・淡路大震災や東日本大震災といった過去の大災害への言及が目立ちます。そこから伝わってくるのは、過去の災害から得られた教訓を絶対に生かそう、という強い思いです。

 地震が起こった時、何が私たちの命をおびやかすのか。過去の地震のデータに言及しながら、危険について想像しやすくする、という工夫が随所に見られます。

阪神・淡路大震災の死因の約10%が焼死ということからもわかるように、初期消火はとても重要です。火災を発見した場合は、火が小さいうちに消火器や水バケツなどで消化します(p46)



近年の地震の負傷者の30~50%は、家具類の転倒、落下、移動が原因です。部屋に物を置かないことが最大の防御。次に下敷きにならないように家具類を配置する。その上で器具による転倒・落下・移動防止対策を行えば、ケガのリスクを低くすることができます。(p94)



阪神・淡路大震災の死者の約8割が建物倒壊による圧死です。今から30年以上前の1981年5月31日の建築基準法施行令改正以前に建築された建物は大地震への安全性が低いと言われています。耐震化チェックのために、耐震診断を受けましょう。(p106)



 最初にデータを呈示して、その後で説明という流れがパターン化していることが分かります。このデータがあるかないかでは大違いです。説得力が違います。失われた命は帰ってきませんが、失われた命を決して無駄にしない、と教訓にしていくことで新たに守られる命があります。

 過去の震災の被災者へのインタビューや、被災者の経験を活かした、「被災地を経験して重要だった物リスト」なども掲載されていました。被災者の方の声は、その1つ1つが大切な教訓です。その教訓の全てを生かしていこう、という決意が見て取れます。

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 避難所に避難できたとしても、苦難の生活は続きます。避難所でどういった人に配慮しなければいけないのか(=要配慮者)の説明など、災害後の生活についての説明も丁寧にされていました。

 特に印象に残ったのは、上の写真にもある、「子どもの遊び」についてのページです。災害の対策マニュアルに子供の遊び?と思われる方もいるかもしれませんが、これはとても大事なことです。こんなことが書いてあります。

子どもは大きなストレスを受けていても、ニコニコしていたりおとなしくしていることもありますが、決して平気なわけではありません。遊ぶことによって子どもたちは安全・安心感を再確認したり、避難生活のストレスを解消したり、心の奥に閉じ込めている感情(悲しみ、怒り、自責感、孤独感など)を遊びの中で表現できるようになります。(p220)


 
 盲点になりやすい場所かもしれません。災害の後の子供のストレスやトラウマといったものは深刻な問題で、何が深刻かというとそれが表からは見えづらい点です。そういったストレスやトラウマのことを想定して、子供のための遊びまで示しているこの本は純粋にすごいな、と思いました。

 災害対策マニュアルの究極版、といってもいいでしょう。「東京防災」から伝わってくる本気に、ぜひ多くの人が触れていただけたらと思います。

コンクルージョン

れは「日本防災」。いつかやってくるその時に、必ず私たちを助けてくれる。

 完全東京仕様と説明には書いてあったのですが、日本全国の人が生かせることがたくさんつまった本です。私は「日本防災」と呼んでも差し支えないと思います。「今やろう」本の強いメッセージを、聞き流さないようにしたいものです。



オワリ

東京防災 東京都防災ホームページ
 ネットで防災ブックを閲覧することができます。よかったら閲覧してみてください・・・といつもはそんな言い方で締めるところですが、今日はもっと強い、「見てください」という言葉が必要なのだと思います。

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 かわぐちかいじさんが描いた漫画もあります。15ページほどですが、危機感が伝わってくる内容です。これだけでも見ていただけたらと思います。今日は漫画の最後にあった言葉で締めます。

これはもしもの物語ではない 近い将来確実に現実になる物語である

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