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魅力にあふれた男 -『働く男』 星野源

 13, 2015 23:00
働く男 (文春文庫)
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星野 源
文藝春秋 (2015-09-02)
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の人は、どうしてこんなにかっこいいんや。

 星野源さん。最近知名度が上昇しているように思うので、「知っている!」という方も多いかもしれません。知っている!という方が浮かべたのは、どんな星野源さんだったでしょうか。ミュージシャン、俳優、物書き、ラジオDJ・・・星野源さんを浮かべる方の中にも、いろいろな星野源さんがいるのだと思います。

 そんな星野源さんの肩書は、「音楽家・俳優・文筆家」。多方面で、マルチな才能を発揮しておられます。今日紹介するのは、そんな星野源さんのエッセイ、「働く男」です。まるで星野さんの脳内をのぞいているような、そんな1冊になっていました。



心境の変化



 単行本が発売されてからこの文庫本が発売されるまで、星野源さんの中では大きな変化が生じていました。それは、この本のタイトルをひっくり返してしまうような変化です。あらたに加えられた「まえがき」で、その変化のことが書かれています。

 まずは、心境に変化が生じる前、「働く男」の一説です。

自分のやりたいと思ったことを仕事にするために、そしてその仕事を成功させるために、努力は惜しみません。どれだけ忙しくても、働いていたい。ハードすぎて過労死しようが、僕には関係ありません。(中略)これを一生やり通せるなら、僕は喜んで病人になる。それが、僕の思う「働く男」です。



 今読み返すと、つらい・・・。星野源さんは、この本の入稿後、倒れました。くも膜下出血です。2度の活動休止を経て、現在は元気に活動しておられます。病気を経て、星野源さんの心境に変化が生じました。

休養中、『働く男』を読むと別人が書いたもののように感じた。何かに取り憑かれたように、苦しみを、仕事を自分に課しているようだった



 働きたくない。この本のまえがきは、その言葉から始まります。タイトルとまるっきり逆行する言葉に、一瞬焦ってしまいました。しかし、星野源さんは腐ってしまったわけではありません。むしろ、以前よりもっとかっこいい、魅力のある大人になったように思います。

過酷な入院生活で、私は大人になった。仕事が中心の生活ではなく、己が中心の生活に変わった。「仕事がないと生きていけない」ではなく、「仕事って楽しい」「でもなるべくサボって遊んでいたい」という性格に変わった。私は「働く男」から、「働きたくない男」になった。

(中略)

昔のような依存感、中毒感、過剰な苦しみは一切感じない。楽しい。人前に立つ喜び、アイデアを表現する面白さ、そんな仕事をできる立場になった達成感。すべてを自分中心に、平熱で感じることができる。



 「楽しい」「自分中心」。そんな言葉が、読んでいて心地よかった。病気の一報を聞いた時は息が止まりそうになりましたが、ますます魅力的な大人になって活躍の場を広げられていることをうれしく思います。

楽しませたい



 大きく「エッセイ」というくくりになるのかもしれませんが、内容は本当に盛りだくさんです。エッセイ、「ひざの上の映画館」、ショートストーリー、「急須」、コラム、「モニカ病」をはじめ、星野源さんをよく知る人に星野源さんがどんな人かを尋ねたインタビュー、過去に作った楽曲や出演した作品の振り返りコーナー、ミニコーナー「俺を支える55の○○」などなど、「詰め込めるだけ詰め込んでみました!」といった感じの内容です。

 読み手を全力で楽しませたい!という星野源さんの思いを感じる内容でした。また、一人の人間がどのように生きてきたか、その変化を追いながら読むのも楽しいです。冒頭で書かれていたように、人間というのは何か一つの出来事で180°生き方が変わってしまうこともあります。どんな生き方が正しいということはありません。そうやって変わり続けることこそが人間であり人生なのではないかと思います。

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 ここでは書けないような、ちょっと下の方のネタも満載です・・・。そのあたりは、本を手に取って楽しんでいただけたらと思います。

 私が星野源さんを知ったのはわりと最近で、「くだらないの中に」という歌を聞いた時です(2011年)。この歌の歌詞が、今でもどうしようもなく好きです。何だか、体のいろいろなところがくすぐったくなってきます。

♪ 首筋の匂いがパンのよう すごいなって讃えあったり くだらないの中に愛が 人は笑うように生きる

 この曲の解説もついていました。星野さんいわく、「真摯な変態の歌」だそうです。上の歌詞の部分に下線が引っ張ってあって、「変態の気持ちで!!己の変態さを前面に出して!!」と書いてあったのには、思いきり笑いました。

 変態だけど、温かいんだよなあ。

又吉さんと語る



 本の最後を飾るのは、ピースの又吉直樹さんとの対談、名付けて「『働く男』同士対談」です。「働く」をテーマにしたこの対談はとても味わい深い内容になっていました。今をときめく2人ですが、よい意味で「ちっぽけな存在」なのだということを感じさせます。

 自分に付けられる肩書の空しさであったり、規制だらけになった今の世の中への嘆きだったり、生きづらさだったり・・・この隊普段は、今という時代を貫き通しています。

 そんな対談が、最後はこんな方向に向かっていったことに私は好感を覚えました。

星野 そうですね。だから俺、人間が好きだったんだなと最近改めて思います。
又吉 僕も好きですね。「人間が好き」という発言自体が、妖怪っぽいですけど(笑)。



 いろいろな話が展開された中で、最後にこういう発言に収束していくことこそが、星野さんと又吉さんの魅力なのではないかと思います。様々な分野で活躍を続ける星野源さん。その魅力は、この「人間が好き」という発言に凝縮されている気がしました。

レコメンド

と笑いにあふれた、当代屈指のエンターテイナー!

 体にだけは気を付けていただいて、これからも私たちに多くの楽しい時間を届けてほしいと思います。マルチに才能を発揮する星野源さんの魅力と秘密を詰め込んだ1冊です。



オワリ

 「くだらないの中に」、本当に大好きです。この曲だけではなく、星野源さんの歌うバラードは本当に温かいです。一日の終わりによく聴いています。

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  •   13, 2015 23:00