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  • 100万分の1回のねこ 10匹目 「黒ねこ」 綿矢りささん

     04, 2015 22:10
    100万分の1回のねこ
    100万分の1回のねこ
    posted with amazlet at 15.10.04
    谷川 俊太郎 山田 詠美 江國 香織 岩瀬 成子 くどう なおこ 井上 荒野 角田 光代 町田 康 今江 祥智 唯野 未歩子 綿矢 りさ 川上 弘美 広瀬 弦
    講談社
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    00万回の人生の中には

     このコーナーの10回目、ようやく綿矢りささんにたどり着きました。綿矢りささんは、この本の表紙で名前を見つけた時から楽しみにしていた作家さんです。

     綿矢りささんと言えば、史上最年少の19歳での芥川賞受賞が有名です。私も現在19歳なのですが、自分の今の年齢で芥川賞を受賞した人がいると思うと震えてしまいます(どこか遠い世界にいる人がとっている賞というイメージなので・・・)。才女であり美女でもあり・・・同級生の中にも綿矢さんに憧れている人がいました。

     今日は、そんな綿矢りささんが書いた短編、「黒ねこ」を紹介します。



    ・托シ神convert_20151004215854
    ねこ 綿矢りさ

     100万回の人生の中には、実は有名な「あの猫」の人生もあった!?有名作品をパロディーにして、猫の人生に大きな広がりを持たせた綿矢りささんの意欲作です。

    あらすじ



     語り手は、自分のことを「僕」と呼ぶ、気さくな感じのねこです。本人から自己紹介してもらうことにしましょう。

    僕の名前はプルート、人間の心の機敏がよく分かる、頭の良い猫だと思う。子供のころに拾われて、本当の親は見たことはないけれど、前世の記憶はちょっぴりあったりして。神秘的な性質なんだ。前は船に乗って船酔いして、ゲーゲー吐いた記憶があるな。



     プルートが人間の心の機敏が分かるようになったわけ、それは彼の飼い主である両親がしきりに喧嘩をするからでした。両親はささいなことからすぐに喧嘩をしてしまいます。プルートは、両親のなだめ役として、空気を読んで場を取り繕うのが上手くなっていたのでした。

    両親が不仲だと、空気を取り繕うのだけが異様にうまくなる。しかめ面やイライラのオーラや怒鳴り声に汚染された空気を、まるで魔法のほうきでささっと床を掃くみたいに、楽しげなマヌケな姿できれいにするんだ。



     そんな風にどこか余裕をかましていたプルートでしたが、ある日彼にはどうすることもできないような大喧嘩が勃発してしまいました。物入れから見つかった古い日記がきっかけになって、二人は手の付けようがないほどの喧嘩を始めます。そして、ついに・・・。

    「もう、たくさんだ!」
    父さんはテーブルの上の花瓶を両手に持ち、母さんの頭上めがけてふり下ろした。ガチャンとすさまじい音がして、母さんが床に倒れ込む。母さんの頭は割れて、みるみるうちに白髪が赤黒い血に染まっていった。僕が破片をよけながら母さんに近づくと、母さんはしばらく呻いていたが、ついに動かなくなった。



     なんと、父親が母親を殺してしまったのです。

     父は、塗ったばかりの壁を破壊して、その中に母を埋めようとしました。見ていられなくなったプルートは母の横で声を上げるのですが、父は気付かずに壁を埋めていきます。プルートは生き埋めにされそうになります。

    絶体絶命!しっくい猫になるなんて、イヤだ!



    綿矢りささんのねこ



     「黒ねこ」というタイトルやあらすじを読めば、本好きの方は気付かれるのではないかと思います。この作品は、エドガー・アラン・ポーの「黒猫」という話がモチーフになっています。

    icon_141751_32.png 黒猫

    ・・・1843年に発表されたエドガー・アラン・ポーの短編小説。酒乱によって可愛がっていた黒猫を殺した男が、それとそっくりな猫によって次第に追い詰められていく様を描いたゴシック風の恐怖小説であり、ポーの代表的な短編の一つ。(wikipediaより)



    a0960_002556.jpg

     有名な作品に登場する猫をモチーフにしてみる、という綿矢さんの大変面白い発想です。ポーの「黒猫」から着想を得て、佐野洋子さんの「100万回生きたねこ」に捧げて書いた短編、ということになります。猫という共通点を持った名作が、綿矢りささんの手によって新たな作品へと変わりました。こういう風に物語が交流していくことは大変面白みがあります。

     ではどうしてポーの「黒猫」をモチーフにしたのでしょうか。綿矢さんは作品の冒頭にある言葉でこんな風に語っておられます。

    百万回のなかには、有名猫の一生も含まれてるのでは?と思い、ポーの「黒猫」をイメージして今回の話を書きました。



     なるほど!その発想はありませんでした。百万回生きたねこの人生の中には、他の作品に出てくる有名な猫たちの一生も含まれているというのです。ということは、「吾輩は猫である」でも「11ぴきのねこ」でも、この作品に出てきた他の猫でもいいということですね。それらの猫が実は「1匹の猫」で、別の猫として生まれ変わって別の人生を歩んでいる・・・と考えたら、こんなにワクワクすることはありません。古今東西の文学に出てくる猫の姿を浮かべては楽しくなります。

     大変楽しい想像をさせてもらいました。綿矢りささん、ありがとうございます。

    黒猫の武勇伝



     たしかにポーの「黒猫」をモデルにしてはいるのですが、本家とは違って、かなり気さくでユーモア溢れる作品に仕立て上げられています。夫が妻を殺して猫と一緒に生き埋めてしまう話なので、本来は「気さくでユーモア溢れる」なんてことにはならないはずです。

     それでもユーモアを感じてしまうの原因は、黒猫プルートの語り口にありました。愛くるしくて、でもどこか生意気な語り口は、物語の序盤からいきなり親しみを覚えさせます。初めて出会ったような感じがしないのです。もしかしたら、本当にこの猫は何度も何度も生まれ変わっているのかも・・・そんな感じさえ受ける絶妙な語りでした。

    正直な話、母さんは死んでるからまだいいけど、生きてる僕からすればこのシチュエーション、恐怖以外の何物でもないよ。生き埋め、ってやつだからね。何度か意識が戻ったけど、目を開けても朝も夜も分からない、息苦しくてぴくりとも動けない、となるとまたすぐに気を失った。僕が真っ黒だから闇にまぎれて見つけてもらえなかったかと思うと、初めて自分の毛の色を憎んだね。



     生き埋めにされている状況でずいぶん余裕しゃくしゃくですが、こういった要素こそパロディーでは光ってくるものです。ポーの怪奇小説がコメディータッチになるとは思いもしませんでした。 この作品のプルートには本当に親しみが持てて、綿矢さんの語りの力を感じます。

    a0960_000386.jpg

     話の最後、猫は無事に壁の中から脱出することができました。大ピンチから脱出しても、猫はやっぱりひょうひょうとしています。

    でも実際に生き埋めにされてみなよ、きっと人生観が変わるよ。固まりかけの壁から抜け出たとき、僕はこれから何度生まれ変わることができても、生きてる間は命を楽しもうと思ったもの。



     生き埋めにされたことで「人生観が変わる」なんて言ってのけるこの図太さも好きです。「図太さ」は100万分の1回のねこを象徴するキーワードの1つですね。こういう図太さがあるからこそ、猫はこの先何度も生まれ変われるのだと思います。

     生き埋めから脱出して、次はどんな猫に生まれ変わるのでしょうか。あの物語のあの猫か、はたまたあの猫か・・・一人で想像しては、幸せな気分に浸っています。

    ・托シ神convert_20151004215854
    10匹目のねこ~私のつぶやき~

    波乱万丈の人生は100万回

    一体いくつの人生があるのでしょう。古今東西、全てのあらゆる人生が実は1つにつながっているなんて奇跡のようなことをと思ったら、ワクワクが止まらないのです。





    オワリ

     冒頭の話に戻りますが、「19歳で芥川賞」というのがかっこよすぎて、その響きにほれぼれしてしまいます。1歳違って20歳だとまた印象が変わってしまって、やっぱり未成年の「19歳」だからこそ惹きつけられるものがあります。

     そんな私が19歳でいられるのもあと少しですね。魅力の「19歳」が終わってしまうなんて、次の誕生日が恨めしくて仕方ありません。10代でいられるうちに何かやり遂げておきたいな~と思います。

    特集 100万分の1回のねこ

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    •   04, 2015 22:10
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