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  • 「あってはならない」の意味 -『現代の貧困』 岩田正美

     12, 2015 18:49
    現代の貧困―ワーキングプア/ホームレス/生活保護 (ちくま新書)
    岩田 正美
    筑摩書房
    売り上げランキング: 146,768


    まりにも深刻な、社会の病理―

     「政府に第一優先で取り組んでほしい政策課題は」などという質問がありますが、私はそういう質問をされた時に「貧困対策」を思い浮かべるようになりました。昨年から貧困に関する本を多く読んできて、そして、貧困が「人権」にかかわる問題だということを痛感しているからです。

     貧困の現状は凄絶です。社会の最底辺は、まさに「地獄」というより他ありません。貧困に関する本を多く読んできましたが、データを並べて机の上で論じているだけではいけない分野だということも、また痛感しています。



    貧困と格差



     この本が出版されたのは2007年。それを見て、思い出します。この本が出版されたころ、社会は一種の「貧困ブーム・格差ブーム」状態でした。流行語大賞のページを確認しに行きました。2006年には「格差社会」が、2007年には「ネットカフェ難民」が、2008年には「蟹工船」(小林多喜二の小説で、現代社会の格差や貧困と結び付けられ大ブームになりました)が、そして2009年には「派遣切り」が・・・なんと、毎年のように貧困、格差関係のワードが名を連ねています。毎年流行語大賞に言葉を送り込むほど、貧困や格差は社会の問題として叫ばれ続けてきたのですね。

     2006年や2007年といえば私はまだ小学生ですが、貧困、格差ブームはよく覚えています。思い出すのは、テレビで流れていたネットカフェ難民や年越し派遣村などの様子です。もう10年近くたつのに、記憶はかなり鮮明です。小学生だった私ですらこれほどよく覚えているのですから、大人の方はもっと鮮明に記憶に残っているのではないでしょうか。

     「ブーム」という言い方がひっかかります。流行語大賞になったお笑い芸人たちの言葉は、時が経つにつれすっかり忘れ去られてしまいました。しかし、貧困・格差関係の言葉はそうはなりませんでした。今でも何も解決していない。流行語だった貧困や格差が「定着」してしまった。これは大変深刻なことです(ただし、貧困や格差は流行語になった時に突然現れたものではなく、それ以前から存在していたものであるということには注意しなければいけません)。

     貧困と格差をまとめて使ってきましたが、この2つには違いがあります。筆者は最初にその違いを指摘するのですが、2つの概念を曖昧に理解していた私にとってはこれがとても勉強になりました。

    格差 ⇒基本的にはそこに「ある」ことを示すだけでも済む

    貧困 ⇒人々の生活状態を「あってはならない」と社会が価値判断することで、発見されるもの。



     「あってはならない」の部分にハッとさせられます。たしかに、貧困というのは「あってはならない」と判断されたから貧困と呼ばれるのです。貧困の概念がこんなに一般的になったのは、実はごく最近のことです。貧困という言葉がすっかり定番になって、まるで貧困が存在することが当たり前だと考えるようにはなっていなかったでしょうか。自分にはそういう面があったので、激しく反省しました。「そうか、貧困は『あってはいけないもの』なんだ」、まずは冒頭で自分に言い聞かせます。

     「あってはいけないもの」が、当たり前のように存在する社会。社会全体を覆う深刻な「病気」です。

    貧困が取り上げられることが多くなったといっても、多数の日本人にとって、貧困はまだ「他人事」であろう。だが、「他人事」であるはずの貧困の「再発見」は、同時に社会の誰にとっても「あってはならない」状態を明確にしていくプロセスに他ならない。



     2007年から8年経ちました。さすがに、(一般市民の間では)貧困が「他人事」ということはなくなったのではないでしょうか(そう信じたいです)。貧困の再発見は少しずつされてはいると思います。それでも、まだ発見されていない貧困は山のようにあるでしょう。「病気」のあまりの深刻さに、呆然とするしかありません。

    「不利な人々」の存在



     筆者は、貧困に陥りやすい「不利な人々」が存在することを指摘します。挙げられているのは、以下の3つです。

    <貧困に陥りやすい「不利な人々」>
    ①低学歴
    ②不安定雇用
    ③未婚(=家族を作れない)



     「低学歴」とありますが、これは決して中卒や高卒の人を差別して使っているわけではありません。筆者もそのことを強く述べています。筆者が指摘しているのは、中卒や高卒だと、その後の人生において圧倒的に不利になりやすい、という状況です。様々なデータがそのことを示しているのです。繰り返しますが、決して中卒や高卒の人を差別しているわけではありません(これを強く言っておかないと誤解されそうです)。

     不利な人々の3つの条件を挙げましたが、やっかいなことに、この3つは数珠のようにつながっています。低学歴→不安定雇用に陥りやすい→結婚できない、家族を作れない、という流れがたしかに存在しています。

     「貧困の連鎖」。貧困の本を読むたびに、その深刻さを痛感します。貧困の負のスパイラルに陥っていく、という意味もありますし、親から子へ、貧困が受け継がれてしまうという意味もあります。

     ここまで深刻な貧困を生み出した原因に、「雇用の不安定化、流動化」があると思います。安定した仕事に就くことができないと、今の社会はあまりにも脆く、一気に「貧困の連鎖」が迫ってくきます。それなのに・・・

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     非正社員の割合が、初めて4割を超えました。「これでは一億総活躍ではなく一億”総貧困”」などといった、あまりにも悲観的な声も飛んでいます。数字だけを見てヒステリックになることは避けなければいけませんが、深刻な状況であることは間違いありません。

     「普通」や「安定」を手に入れることが、極めて難しくなっています。そして、「普通」や「安定」を手に入れられなかった人には、もっと酷な状況が待ち受けています。

    これらの「状況」の重なり合いが、「不利な人々」を貧困の中に閉じこめ、社会的な諸関係から排除するような”装置”として機能しているのである。 (p159)



     貧困の後に待ち受ける「社会的排除」。これは、本当に恐ろしい状態です。単に貧しいだけではなく、健康、教育、安全、人間関係などあらゆるものから排除されている状態を指します。貧困の先にある、真の恐ろしさです。

     お笑い芸人の言葉のように、一時期だけ話題になってそのあと一気に消えていってくれたら、どんなによかったでしょうか。しかし、この問題は消えません。消えるどころか……ですね。

    子どもは悪いことをしたのか



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     こちらも、新聞記事からです。先月から朝日新聞で始まった、「子どもと貧困」という特集です。毎回、衝撃的な見出しが並びます。

     「姉妹 1か月ぶりの風呂」
     「毛布1枚 父子で取り合い」
     「むし歯放置 10本が根だけに」
     「短大進学 生活苦しく風俗へ」

     子どもは、何か悪いことをしたのでしょうか。

     貧しい家庭に生まれてきて、どん底のまま、一生這い上がれない人生を過ごす子ども。あるいは、突然親が仕事を失ったり亡くなったりして、一気に貧困に突き落とされる子ども。 データを並べているだけでは分からない、「貧困のリアル」を突き付けられます。

     そんなに困窮している子どもはごく一部にすぎない、と考える人がいるかもしれません。しかし、厚生労働省の行っている国民生活基礎調査によれば、子どもの相対的貧困率は16.3%(2012)です。2003年から増加の一途をたどり、過去最悪の数字になりました。16.3%というのは、ごく一部と流せる数字ではないと思います。「約6人に1人」と言えば、深刻さが伝わるでしょうか。

     貧困という社会の病気には、もう1つやっかいな側面があります。「貧困を見えないものにしてしまう」ことです。貧困に陥った人は、社会から排除されやすくなります。その結果、貧困が見えないものになってしまうことがあります。今何不自由なく暮らしている人にとっては、どうしても見えにくい問題なのかもしれません。町にいるホームレスが、交通費を渡されて違う町に追いやられるなどというのも、「貧困を見えないものにする」例です(何一つ、解決になっていません)。

     「貧困を見えないものにする」流れにほんの少しでも立ち向かうために、これからも貧困の本は読みます。そして、紹介します。もちろん、本を読んでいるだけではいけないということも分かっています。自分は何をしなければいけないか、いつも考えています。

    レコメンド

    まらない連鎖 終わらない貧困

     立場ごとにいろいろな貧困があります。高齢者、シングルマザー、中高年男性などなど・・・。その中でも、私は記事の中で紹介した「子どもの貧困」に最も衝撃を受け、胸を痛めています。あまりにも、あまりにも酷な現実です。



    オワリ

    「反貧困」 湯浅誠さん

     貧困について知りたいというときのマスト本だと思います。貧困が「自己責任」で切り捨てられることの恐ろしさ、それに機能していない3つのセーフティネットなどについて書かれています。

    「ルポ 貧困大国アメリカ」  堤未果さん

     海の向こうの話ではありますが、こちらも有名な貧困本です。アメリカの話じゃん・・・と思われるかもしれませんが、読んでいるうちに「日本」が重なってくるのが、この本の恐ろしいところ。

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    •   12, 2015 18:49
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