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最果てアワード2015 ★ 文学部門 (20~16位)

 28, 2015 00:00
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年もあと4日 最後は珠玉の文学20作品で年忘れ!

 いよいよ今年も残すところ4日になりました。「最果ての図書館」今年最後の企画は、年間ランキング「最果てアワード」文学部門の発表です。先日は「総合部門」のトップ10を発表しました。文学部門はよりたくさんの本が対象となるので、順位を拡大してベスト20を発表します。2015年最後の4日間、私が読んだ約100の文学作品の中から選び抜いた珠玉の作品たちが飾るグランドフィナーレです!

 選考作業は本当に悩ましいものでした。20冊の中に入りきらず、泣く泣くランク外になってしまった作品もあります。トップ10になってくると本当にイスの奪い合いという感じで、最後まで頭を抱えながら決めた順位になりました。すべて私のおすすめの作品なので、思い入れたっぷりに毎日5冊ずつ紹介していきます。1日目の今日は、第20位から第16位までの発表です。



文学部門 (20位~16位)


20

流星ワゴン (講談社文庫)
重松 清
講談社
売り上げランキング: 2,561


〔書名〕 『流星ワゴン』
〔作者〕 重松清
〔ジャンル〕 現代の文学(大衆文学)
〔読了日〕 3月8日
〔記事〕 ブックレビュープレミアム

 スペシャルな20冊は重松清さんの『流星ワゴン』で開幕です。重松清さんと言えば「家族」をテーマにした小説を数多く世に送り出されています。特に「父と子」をテーマにした作品には心が震えます。「教科書への旅」のコーナーで紹介した『カレーライス』という作品もそうでしたね。

 この作品は、1月クールにTBSの「日曜劇場」でドラマ化され、改めて話題を呼びました。原作と同じように、ドラマもしっかり作りこまれていましたね。ブログでは、「ブックレビュープレミアム」のコーナーで2回に分けて紹介しました。

コーヒー が書いた記事から

幽霊の登場にタイムマシンと、かなりファンタジー要素の強い作品です。ですが、解説の斎藤美奈子さんの言葉を借りれば、「身につつまされる」作品に仕上がっていると思います。大きくなるにつれて、どこか気恥ずかしくなり、知らずと目をそらすようになっていた親子の関係、そして、人生にたくさん存在していて、気づかないうちに通り過ぎってしまった分かれ道の存在に気付かされます。



この作品のメインテーマは「父と子」ですが、もう一つのテーマに「信じる」ということがあるように思います。息子の広樹は合格を信じて懸命に勉強に励みます。ですが、一雄はすでに広樹が受験に失敗することを知っているのです。がんばれ、きっと受かる、もう少しの辛抱だ・・・そんな言葉の全てが意味を持たなくなります。そんな状況でも、「信じて」やることができるか。ここにこの作品の真髄がありました。



 重松さんは、とても「まっすぐ」な方という印象を受けます。ど真ん中に投げ込まれるストレートのように、その描写は熱く、力強く、私たちの心を射抜きます。家族という難しいテーマに真正面から挑み続ける、そんな素晴らしい作家さんです。

 父と息子、男同士で譲れないプライドのようなものがあります。そんなプライドが邪魔をして、素直になれない父子・・・読んでいて本当に胸にくるし、何だかくすぐったくもなるのです。今年は『流星ワゴン』、『ビタミンF』、そして『カレーライス』の3作品を読みました。いずれも本当に素敵な作品だったと思います。

19

太陽の棘(とげ)
太陽の棘(とげ)
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原田 マハ
文藝春秋
売り上げランキング: 40,703


〔書名〕 『太陽の棘』
〔作者〕 原田マハ
〔ジャンル〕 現代の文学(大衆文学)
〔読了日〕 5月27日
〔記事〕 ブックレビュー #49


 熱い作家が続きます。続いて第19位は原田マハさん『太陽の棘』です。重松さんと同じく、原田さんも情熱にあふれるといったイメージがある作家さんです。圧倒的な美術への造詣が織りなす描写はまさに圧巻の一言。私は今年原田さんの小説を3作品読みましたが、原田さんは10本の指に入るくらいに好きな作家に仲間入りしました。

 美術作品を前にした時、人の心の奥に眠る何かが呼び起こされ、そして湧き上がってくる。作品の中に訪れるカタルシスの心地よさでは、日本の小説家でも有数の部類に入るでしょう。読むたびに、私は圧倒的な情熱と感動に襲われました。

コーヒー が書いた記事から

書きたい、ではなく、「書かなければいけない」。その言葉に、作家・原田マハさんの強い決意がうかがえます。



ここまで勢いのある文を書く作家さんはなかなかいません。読んでいるこちらも、思わず前のめりになってしまいます。それに加え、今回は沖縄と美術という、原田さんがこだわる2つのテーマが出会った作品です。その喜びがあふれだし、突き抜けるような生命力になっています。



 私の記事でも、「情熱」や「エネルギー」といった要素が伝わるように、かなり熱く書いています。読んだ直後はその情熱に触れてかなり興奮していたのでしょう、レビューのトーンはかなり高めです。

 そして、この本のレビューを読んで、『太陽の棘』に手を伸ばしてくださった方がいました。自分のレビューがきっかけで本を読んでもらえるというのは、1つの目指すところでもあり、とても喜ばしいことでした。その方も『太陽の棘』を絶賛しておられましたね。感動を分かち合えたようでうれしかったです。

18

草枕
草枕
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(2012-09-27)


〔書名〕 『草枕』
〔作者〕 夏目漱石
〔ジャンル〕 近代の文学(純文学)
〔読了日〕 5月9日
〔記事〕 ブックレビュー #44

 文学部門では、現代の小説だけではなく、近代以前の日本文学ももちろん対象になります。夏目漱石や谷崎潤一郎、三島由紀夫など、これまでたくさんの有名な作家の作品を読んできました。中でも宮沢賢治は、ブログのコーナーとして定期的に読み続けています。

 そんな日本文学から、夏目漱石の『草枕』を18位に選びました。あまり安売りしたくない言葉ですが、夏目漱石は「天才」と断言して構わない作家だと思います。代表作の『こころ』はもちろんですが、この『草枕』もそのことを存分に感じた作品でした。

コーヒー が書いた記事から

いったいこんな状況でどう話を進めていくのだろう、と思いながら読みました。結論を言えば、男は人情と非人情のギリギリのところで、実に繊細に、巧妙に立ち回っていました。針の穴に糸を通すような、とでも言ったらいいでしょうか。本当に絶妙な、ギリギリのラインです。



私は、先程書いた、男の「心の余裕」なるものが、文明化や西洋化に対立しているのかなと思いました。男は、文明とは全く交わらないところにいます。そんな男が、巨大な文明というものに対して、ささやかに、かつ大胆に抵抗している、そんな印象を受けました。



 一見、淡々としていて凄みが分かりにくい作品です。ですが、注意深く読んでいるとこの作品がいかに奇跡的に成立しているかに気付かされ嘆息してしまいます。「非人情の境地」をテーマにしているのですが、これは簡単に書けそうで実に困難を極めたテーマなのです。夏目漱石の天才ぶりをまざまざと見せつけられます。

 コメントのほうで、『私の個人主義』も併読してみるとよい、とアドバイスをいただいています(いつも有益なコメントありがとうございます)。『私の個人主義』、読んでみました。たしかに『草枕』と根底に流れているものが同じでした。文明が個性を破壊することを、夏目漱石がいかに憂えていたかが分かりますね。

17

スクラップ・アンド・ビルド
羽田 圭介
文藝春秋
売り上げランキング: 265


〔書名〕 『スクラップ・アンド・ビルド』
〔作者〕 羽田圭介
〔ジャンル〕 現代の文学(純文学)
〔読了日〕 9月1日
〔記事〕 ブックレビュープレミアム

 世間的にも、今年を代表する1冊の1つに数えられそうですね。芥川賞を受賞した羽田圭介さんの『スクラップ・アンド・ビルド』が2015年の第17位です。

 芥川賞は複数回に分けてレビューを書くのがこのブログでは恒例になっています。この作品も2回に分けて紹介しました。純文学の作品としてはかなり読みやすいほうに入ります。私は文学に出てくる「危うさ」が大好きなのですが、この作品に出てくる若者も理解できない老人の前で「危うさ」を見せます。

コーヒー が書いた記事から

健斗がこのような「危うい」方向へまい進してしまう原因は1つだと思います。それは、自分が理解することのできない人間を目の前にした時の気持ちの揺れです。自分とは価値観が全く合わない人間が目の前にいるときに、人間はどのように対処しようとするのか。これこそが、羽田さんが書こうとしたテーマでもあります。



介護の傍らで、健斗が自分の筋肉を鍛えることにまい進する、という設定が面白いです。目の前の老人には未来がなく、この先死に向かって進んでいくしかないのに対し、自分にもこの先も長い未来と人生がある。筋肉を鍛えることは、未来のない祖父を突き放し、自尊心を確保するための行為なのでしょうか。ユーモラスで、どこかちぐはぐな感覚を作品にもたらしています。



 若者と老人は、生きた時代も価値観も全く異なる「別の生き物」といって構わないと思います。私も老人にいら立ってしまうことが正直あります。「ジェネレーションギャップ」とは言いますが、自分と全く価値観が相容れない人と人間はどう向き合うべきなのか、とても難しい問いですね。「文藝春秋」に掲載されたインタビューで羽田さんがそのことについて語っておられます。こちらも要チェックです。

 羽田圭介さんと言えば、テレビで見かけない日は多いくらい露出が多くなっています。又吉さんと同時受賞という効果もあると思うのですが、これだけ露出が多いのは羽田さん自身に魅力があるからに他なりません。作品を読んだときは聡明な方だと思っていたのですが、テレビで見ていると飄々として着飾らない面白い方だという印象があります。

16

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (講談社文庫)
辻村 深月
講談社 (2012-04-13)
売り上げランキング: 30,427


〔書名〕 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』
〔作者〕 辻村深月
〔ジャンル〕 現代の文学(大衆文学)
〔読了日〕 6月20日
〔記事〕 ブックレビュー #53

 今年は辻村深月さんの本をたくさん読みました。作家別では、小川洋子さんと並んで一番多かったのではないでしょうか。それもそのはず、辻村さんの作品はどれも水準が高く、信頼して手に取れるからです。「ストーリーの面白さ」「文学性」という2点を兼ね備えた作家さんはなかなかいません。

 辻村さんの作品の中からどの作品を選ぼうかとても迷ったのですが、今年読んだ中ではこの『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』です。歪んでいく愛を描き切ったその力量は見事の一言です。もちろん、ストーリーも読者を惹きつけるものであり、辻村さんの実力の高さを思い知らされた一作でした。

コーヒー が書いた記事から

辻村さんの描写はエグい。自分の心に刃物が刺さり、それだけではとどまらず、ぐりぐりと回されていくようです。読む途中で、何度も放心状態になりました。心の奥底から、えぐりとられる内面という塊。こういった描写をさせたら右に出る作家はいないのではないのでしょうか。



愛の裏にある、「歪み」。愛することは、かけがえのないことでしょう。ですが、その裏には、制御できない恐ろしい魔物が棲んでいます。



 私が感じた印象ですが、このように歪んだ愛に狂わされていく女性、というのは辻村さんがもっとも得意とされる描写対象なのではないでしょうか。それぐらい、描写が鋭く冴えわたります。誰にも手が付けられないくらいのキレキレの描写でした。

 上にも書いたように、惹きつけるストーリーと高い文学性の両輪がしっかり駆動しているので、辻村さんの作品は抜群の読みごたえがあります。2014年に読んだ作品なのでランキングの対象外になったのですが、代表作の『ツナグ』は絶対に読んでおきたい傑作中の傑作です。



◇ 次回は15位から11位を発表します。質の高いミステリー作品が3冊連続で登場します。そして、ドラマで話題になったあの小説もランクイン!トップ10に入りきらなかったとはいえ、素晴らしい小説が並びます。年末を彩る豪華なラインアップをお楽しみに!!
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  •   28, 2015 00:00