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最果てアワード2015 ★ 文学部門 (10~6位)

 30, 2015 00:00
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ンキングは最終章!本への愛と、作家へのリスペクトがあふれるトップ10!!

 年末は街が何だか浮足立っていますね。テレビ番組も年末恒例の長時間プログラムが名を連ねています。そんな年末のスペシャルな雰囲気にブログでものっかってみよう、ということで、年間ランキングを作って発表しています。題して「最果てアワード2015」!

 ランキングは今日からいよいよトップ10に入ります。12月のなかばに選考作業を行っていたのですが、かなり悩んだ末に付けた順位なので紹介していて感慨深いものがあります。今日は10位から6位までを発表していきながら、2015年の読書ライフも振り返っていくことにします。



文学部門 (10位~6位)



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舟を編む (光文社文庫)
三浦 しをん
光文社 (2015-03-12)
売り上げランキング: 3,038


〔書名〕 『舟を編む』
〔作者〕 三浦しをん
〔ジャンル〕 現代の文学(大衆文学)
〔読了日〕 2月12日
〔記事〕 ブックレビュー #12

 文庫本の装丁がとてもきれいですね。単行本で読んだのですが、あまりにきれいな装丁に気付くとまた手に取っていました。年間ランキングトップ10は三浦しをんさんの『舟を編む』で開幕です。本屋大賞も受賞した、三浦しをんさんの代表作です。

 ブックレビューの第12回で紹介している、このブログではかなり初期の作品になります。最初の頃は私のレビューは相当拙いものでしたが、下手くそなりに一生懸命書いているなあ、それほど感銘を受けた作品だったなあ、と懐かしい思いに浸りました。

コーヒー が書いた記事から

言葉というのは何かを生み出しているようで実はそうではありません。生み出している何かより、はるかに多くのものがその瞬間に消えていくのです。ここで書いている言葉にしたってそうです。本を読みながら思ったことを、100%言葉にできるということはありえません。無限にある言葉の組み合わせから、私はこの言葉の組み合わせで伝えようとしています。そして、それと同時にその他多くの言葉は使われることなく、姿を消しています。



言葉を生み出すのがいかに難しいのか、そんなことを痛感させられる一方で、作者の三浦さんが生み出す言葉の力にはただただ圧倒させられます。これが「作家」なんですよね。一般の人が心には思っても逃してしまう言葉を、その手でがしっとつかみ取る。これまでに何作も読んで大好きだった作家さんですが、今回は初めて「凄味」を感じました。小説の原点である「言葉」というテーマに向き合い、こんな作品を仕上げたんですから・・・。



 「ことば」をテーマにした小説を読むと、私は背筋が伸びます。「ことば」というのは文学を突きつめて行ったときに最後にたどり着く場所。その世界は深く、果てしなく続く海のようです。そんな「ことばの海」を、三浦しをんさんは見事に小説にしています。人物が躍動していて読んでいて快感を覚えるのはどの作品もそうですが、「ことば」をテーマにした分、『舟を編む』は特別です。

 この小説もそうですが、三浦しをんさんは特定の職業の人を扱った「職業小説」の名手として知られます。このブログでも、『舟を編む』のほかに『神去なあなあ日常』や『仏果を得ず』などの作品を紹介しました。いずれもとにかく読んでいて心地よい素晴らしい作品たちです。自信を持っておすすめしたいと思います。

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火花
火花
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又吉 直樹
文藝春秋
売り上げランキング: 23


〔書名〕 『火花』
〔作者〕 又吉直樹
〔ジャンル〕 現代の文学(純文学)
〔読了日〕 4月3日
〔記事〕 ブックレビュープレミアム


 真打がきたな・・・という感じですね。「今年を代表する1冊」がこの本だということに異論のある方はいないでしょう。芥川賞を受賞し、普段本には興味のない人も巻き込んで社会現象になったこの1冊、ピースの又吉直樹さんの『火花』が年間9位です。

 話題になったから年間9位に選んだのではありません。たしかに私も、最初に手に取った時は「お笑い芸人の小説」ということへの興味が半分でした。しかし、今は違います。今はもう、「小説家」の又吉直樹さんです。ブログではブックレビュープレミアムのコーナーで3回にわたる大型レビューを展開しました。

コーヒー が書いた記事から

特に工夫をしなくても、もはや「存在自体が笑い」のようになっている芸人さんがいれば、必死にネタを考え、飽きられないように、忘れられないように、必死に声を張り上げている芸人さんもいます。常にトップに居続ける芸人さんがいれば、一時期の「流行」にのっかって、一時期だけ「時の人」になれる芸人さんもいます。そして、一時期の「流行」にすら乗れず、一生日の目を見ることのない芸人さんも。お笑い芸人だけではないと思います。「才能」が求められる世界全てです。成功できるものと、できないもの。その境目にある「線」が見えてくるのは、この上なく残酷です。



 又吉さん、凡人を描ききったなあ・・・と思わせる場面でした。そうなんです。結局、凡人である限り世間を無視することはできないのです。この話には救いのある解決などなくて、この場面で凡人と天才の住む世界の決定的な違いが示されます。それが「真実」なのだから、この終わりしかない。私はそう思いました。



 「お笑い」をテーマにしていて、しかも作者はお笑い芸人の又吉さんです。もちろんクスリと笑えるような心地よい描写にも富んでいて、そこはさすが芸人さんだと思わされるのですが、この本にはお笑いをさらに突きつめて行った先に見える、「人生」の深層が描かれていました。平凡と非凡、世間と孤独、そして自分と他人。対照的な2人の芸人の姿にそんなテーマを重ねながら読んでいましたが、又吉さんの核心を突く描写の数々に衝撃を受け、作品に没入しました。

 話題作というのはその評判だけが過剰に膨らんでいってしまうこともあり、そういうものを見せられると私は何とも言えない残念な気持ちになります。しかし、この作品に関してはそういったことは全くありません。評判に「実力」がしっかり付いている、と私は力強く断言したいと思います。

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何者 (新潮文庫)
何者 (新潮文庫)
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朝井 リョウ
新潮社 (2015-06-26)
売り上げランキング: 6,331


〔書名〕 『何者』
〔作者〕 朝井リョウ
〔ジャンル〕 現代の文学(大衆文学)
〔読了日〕 2月9日
〔記事〕 ブックレビュー #11

  こちら、「若者の危うさ」シリーズの第3弾になります(ここまで『スクラップ・アンド・ビルド』、『ボトルネック』)。朝井リョウさんの『何者』が年間ランキング第8位です。この本は若者を中心に本当によく読まれました。この本を読んだ若者は、私を含め、皆驚いたはずです。「自分たちの日常が、本になっている!!」・・・これまでそんな小説を見たことがなかっただけに、衝撃は大きかったです(逆に若者以外の人からの受けはあまりよくないのですが・・・)。

 朝井リョウさんは、「今時の若者」を書かせたら間違いなく日本一です。彼が小説に書くことは、私たちの世代にとってはあまりにもリアルであり、とても小説を読んでいるような気にはならないのです。朝井リョウさんの小説を読んでいると、嫌でも自分を省みなければならなくなる。私にとっては「怖い作家」です。

コーヒー が書いた記事から

自分だって例外じゃありません。SNSに熱狂するのはさすがに気が引けてしまうので距離を置いていますが、いつも心にもないことを言っては愛想笑いをし、適当に話をつないで・・・。本質的にはSNSに熱狂している人たちと何も変わらないんですよね。「現実を直視したくない」「自分を傷つけたくない」・・・そして、「自分って何者?」この本のタイトルにたどり着きます。



 意識高い系がむかむかする訳、それは自分へのブーメランでした。この話の主人公と同じなんです。結局は自分に返ってくる、自分が見ている。大馬鹿野郎だったこの話の主人公ですが、一歩間違えれば自分もこんなことになっている、そんな風に感じるから怖さが増幅します。



 朝井リョウさんは、幼いころからあまり本は読まれなかったそうです。作家と言えば幼いころから本の虫だった人が多いですから、朝井さんのようなタイプは珍しいですね。本を読んでこなかったというのは、朝井さんの文章を読んでいるとよく分かります。古くからの日本文学の血を引くような表現はほとんど見られません。そのかわり、あらゆる表現がストレートで力強く、そして容赦ないのです。「本を『読まなかったこと』がこれほどの武器になるのか!」、と読書好きの私は驚愕しました。

 「怖い作家」の朝井リョウさん。今年は3冊の本を読み、いずれもレビューを書きましたが、3本とも嵐のような大荒れのレビューになりました。朝井リョウさんが包み隠さず放ってくる本気の言葉に、怖いですがこれからも向き合っていきたいと思います。

 ちなみに、「若者の危うさ」シリーズはこの先もう1冊登場します。

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神様のカルテ0
神様のカルテ0
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夏川 草介
小学館
売り上げランキング: 10,435


〔書名〕 『神様のカルテ0』
〔作者〕 夏川草介
〔ジャンル〕 現代の文学(大衆文学)
〔読了日〕 3月11日
〔記事〕 ブックレビュー #22


 「ありがとう」、ですね。この小説から私が思い浮かべる言葉は「ありがとう」です。夏川草介さんの『神様のカルテ』シリーズ。優しくて、温かい、出会えたことに心から「ありがとう」と言いたい、そんなシリーズなのです。

 「こんな優しい小説、他にはない」私はレビューの最初にそう書いています。その思いは今も全く変わることはありません。どうしたら、ここまで優しい小説が書けるのでしょうか。語りきれない感謝の気持ちを込めて、最新作の『神様のカルテ0』を第7位に選ばさせていただきました。

コーヒー が書いた記事から

読書をすると、優しくなれる -なんて素敵なことばでしょうか。文庫本まで待たずに、単行本を買いに行って本当によかったと思っています。1日でも早くこの作品に出会えて本当によかった。自分が満足しただけではなくて、「人にもすすめたい」と心から思いました。「神様のカルテ」シリーズのファンはもちろん、全ての本を読む人々におすすめしたい1冊です。



一止はこれからたくさん苦労していくことになります。この短編から「神様のカルテ」シリーズが始まるのですが、一止はその優しさ故に何度も立ち止まり、悩み、もがき苦しんでいくことになります。それを知っているからこそ、この何気ない一言には重みがありました。でも、一止は一止のままでいてほしいのです。優しいままでいてほしい。命に対して真摯に向き合う姿勢を忘れないでほしい。また続編が出ることを願ってそう思います。



 本を読んでいる時も、レビューを書いている時も、私はとにかく幸せでした。『神様のカルテ』という作品から滲み出る優しさと温かさが自分を包み込むような感覚がありました。今でもあの感覚がよみがえってくることがあります。特に、落ち込んだり、心が汚れてかけている時によみがえってきます。この作品は、読み終えてから月日がたった今でも、私の背中を支えてくれているような気がします。

 「本と作家へのリスペクトを込めて、1冊1冊大切に紹介しています」、私はブログのプロフィールにそう記しています。この気持ちが原点だと、『神様のカルテ』を見返していて改めて思いました。素晴らしい作品とそれを書いた作家さんには、心の底から尊敬の気持ちが沸き起こっています。その気持ちを自分の言葉にしていく、そのためのブログでありたいです。また、この作品に心が洗われました。

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第七官界彷徨 (河出文庫)
尾崎 翠
河出書房新社
売り上げランキング: 123,669


〔書名〕 『第七官界彷徨』
〔作者〕 尾崎翠
〔ジャンル〕 近代の文学(純文学)
〔読了日〕 7月27日
〔記事〕 ブックレビュー #83

  『神様のカルテ』をこれ以上ないくらいに絶賛しました。そんな『神様のカルテ』が7位という結果が、この後出てくる本の素晴らしさを無言で語ってくれているようです。『神様のカルテ』を差し置いてでも上の順位に置きたい本が6冊もあった、ということです。ここからは、文章を書いているだけでも鳥肌が立ってしまいそうな、そんな本たちの登場です。

 第6位は尾崎翠の『第七官界彷徨』です。レビューを書いたのは先月なので、記憶に新しいという方もおられるかもしれません。レビューを書いたのは11月ですが、最初に読み終えたのは7月です。そのあと、何回読み直したでしょうか。まさに「穴が開くほど」読みました。レビューに書いたように、3週間かけてノートにメモを取りながら詳細に読んだこともあります。読んだというより、「研究した」という感じでしょうか。膨大な時間をかけたこともあり思い出は深く、『神様のカルテ』よりも上の順位に来ました。

コーヒー が書いた記事から

意味不明な小説は、実はプログラミングのように緻密な計算のもとで、複雑に絡み合い、構成されていました。たしかに読んでいくとそれが見えてくるのです。それはもう・・・興奮します。気付いた時には徹夜していました。3週間読み込みましたが、本当によい読書になったと思います。



配列地図には、尾崎翠本人にしか分からないような膨大な情報が記されていたと言います。そして、上のパネルにあるように、全ての場面において、「前後の関係を保つ」ことが意識されていました。ですから、人物のさりげない仕草であったり、何気なく登場するアイテムであったり、そういうものにも全て前後の関係を保つための「意味」があるというのです。


 
 尾崎翠はこの作品を書くにあたり、緻密な「配列地図」を用意したと言います。本人以外には解読不可能な膨大な情報が書き込まれていたそうです。・・・それだけでワクワクして、興奮が止まらないような話ではありませんか!作品を詳細に読み込んでいくと、その緻密な配列地図の存在を垣間見ることができます。少しでも彼女が意図したものを読み解けるように、宝探しをする子どものような気持ちで読んでいました。

 読書が死ぬほど好きだという読書通の人に本を勧めるのはとても難しいですね。軽く読める本だったら満足してもらえませんし、有名な作品やベストセラーだったら当然読んだことがあると鼻で笑われそうです。ですが、私は読書通の人にも勧めたい素晴らしい1冊を見つけることができました。この本を徹夜で読み明かして、目を真っ赤にしながら語り合う―そんなことを誰かと一度でいいからしてみたいものです。





◇12月20日から計5回にわたって紹介してきた年間ランキング「最果てアワード」も、残すはあと1回、文学部門のトップ5の発表を残すのみとなりました。これまでこの部分では次回にランクインする本の「ヒント」を書いていました。ですが、最終回はヒントを出さずにおこうと思います。ずっとブログを訪問いただいている皆様、私が最後の5冊に何を持ってくるか、よかったら予想してみてください。もし予想を当てていただけたら、それだけ記事を真剣に読んでくださったということなのでうれしい限りです。

 文学部門のトップ5は大みそかの深夜0時にアップ予定です。最後の5冊、語り尽くし、書き尽くします!

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  •   30, 2015 00:00