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  • 潰される声と未来 -『子どもの貧困と社会的排除』 テス・リッジ

     13, 2016 02:05
    子どもの貧困と社会的排除
    テス リッジ
    桜井書店
    売り上げランキング: 412,495


    こえていますか、子どもの叫び

     先日のニュースで「子ども食堂」の話題が取り上げられていました。かなり時間が割かれていたように思います。最近、「子どもの貧困」への問題意識が高まってきました。「日本の子どもの6人に1人が貧困状態にある」、というインパクトのあるデータと共に、テレビやネットでも取り上げられることが多くなったと思います。

     このブログでも貧困に関する本をたくさん紹介してきました。小説以外の本では、貧困がメインテーマという感じになっています。ですが、「子どもの貧困」だけをピックアップするのは今回が初めてでしょうか。子どもの貧困の何が深刻で、何が問題なのか。短い記事ではありますが、少しでも伝えられたらと思います。

    (約3,200字)

    届かない声



     子どもの貧困は貧困の中でも最も深刻な問題だと思います。その理由は「当事者目線からの知見の圧倒的な欠如」ではないでしょうか。何だか仰々しい言葉になってしまいましたが、要するに「子どもたちの声が届かない」「実態がつかめない」ということです。

     注目が高まってきたと最初に書きましたが、まだまだ危機感が足りないとも感じています。子どもたちは貧困に抵抗する力をまだ持ち合わせていません。そんな力のない子どもたちが貧困に苦しみ、声をあげることもできない状況にあります。貧困が子どもたちの未来を奪っている、という点も深刻です。そして、子どもたちの未来を奪うということは「国の未来を奪う」ことと同義です。昨年子供の貧困による社会的損失の推計も発表されましたが、この問題は「国の未来」にかかわる本当に深刻な問題なのです。

     今日紹介する本はテス・リッジの『子どもの貧困と社会的排除』です。著者のリッジも、「当事者目線」の重要さを訴えています。そして、実際に子どもたちに取材して得られた声をもとに貧困を論じています。イギリスの話ではありますが、日本でも共通して問題になりそうなことはたくさんあります。

    子どもたちの生活は多種多様であり、貧困のリスクや経験も人によって異なる。子どもたちの生活や彼らの貧困経験について、その多様性をより豊かに、より総合的に見なければ子どもたちの生活を蝕む要因だけでなく、彼らの生活を安定させたり、向上させたりしている要因を見過ごしてしまうことになる。



     子どもたちは「もの言わぬ階級」だという指摘も出てきます。この問題の本質を鋭く突いた言葉ではないでしょうか。いかに子どもたちが苦しめられ、聞こえない叫び声を上げているのか。今日は、本の4章で言及されている「学校」の問題を中心に見ていきたいと思います。

    学校はサバイバル



     子どもたちには「衣服」が大切である

     そう言われたら、どうしてそうなのか、どんな理由が想像できるでしょうか。「寒さを乗り切るため」「清潔感が大切だから」、そんな理由を浮かべられた方、それはもちろん間違いではないと思います。しかし、衣服が大切な理由には見落としがちなこんな側面もあります。

    ちゃんとした服を着ないと、仲間内で浮いたようになってしまう。みんなと違っちゃうのよ。ちゃんとした服を着ることが正解ね。」



     筆者が取材した子どもの声です。寒さを乗り切るといった側面より、私はこちらの側面の方がある意味子どもたちにとって深刻な問題なのではないかと思います。

     子どもたちがある集団に「溶け込む」ために衣服が必要である、衣服は「アイデンティティ」であると筆者は指摘します。そして、子どもたちがいかに衣服に気を使っているか、切実な声が多く紹介されています。学校で私服で登校するとき、怖くて震える子どもがいました。「前と同じ服を着ているとばれないだろうか」、貧しい子どもたちは深刻に悩むのです。

     着る服があればそれでいい、寒さがしのげればそれでいいという訳ではありません。貧困はそんな浅い次元にはないと思います。「社会から排除されることの恐ろしさ」、子どもたちの場合は「学校の中で友人から排除される恐ろしさ」にその本質があります。

     衣服の他にも、様々なトピックが挙げられています。例えば学校行事。貧しい子供たちは、行事がやってくるたびに震えます。いいえ、正確には行事のたびにやってくる「集金袋」に震えます。そう、自分の家にはそんなお金を払う余裕がないからです。

    「友だちは、あなたはこれするの?とか、それするの?とか言ってくる。わたしはいいえと答える。お金に余裕がないからとか、そんな理由よ。友だちがなにかしようと計画を立てても、わたしはお金を用意することができない。だから、『だめ、わたしはそれをできない。わたしにはお金に余裕がないから』と言うの。」



     行事に参加できないダメージはその時にとどまらないとリッジは指摘します。行事に参加できなければ、「思い出」が共有できないのです。クラスの中で自分だけが行事の思い出を共有できない、あるいは友人の中で自分だけが遊びに行けず思い出を共有できない。・・・再び、「排除」という闇が見えてきました。

     友人関係や行事などで得られる「思い出」というのは、お金に替えられるものではなくイメージがしにくいと思うのですが、子どもたちを貧困から救う貴重な「資源」です。学校はそんな資源を提供するこれまた貴重な場所なのですが、逆に「排除を生み出す可能性もある」というのが厄介なところです。

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      「給食費を払えない家の子どもには、無料で給食を提供しよう」

     


     上の意見に、「そうだ!」と思った方がいたら、要注意です。本の中では無料給食の実際も紹介も取り上げられています。無料給食にお世話になる子どもは、とても辛い思いをします。「自分だけ無料で、他の子どもたちに白い目で見られないだろうか」「自分の家が貧しいとばれてしまう」、そうやって子どもたちは震えます。そして、もっと深刻な問題も。給食がない休み明けに、子どもたちは学校に帰ってくるのです。ガリガリにやせ細った姿で。

     上のような一見良さそうに見える意見が、実は表面的なものでしかなく、かえって子どもたちの首を絞める可能性があることに注意しなくてはいけません。無料で給食を、貧しい家庭には給付金を、そんな表面的な考えでは絶対に解決しない問題です。

     「排除」の恐ろしさを考えなくてはいけません。子どもが生活するのは学校だけではなく、「家庭」が学校以上に重要であることは忘れてはならないと思います。何より、子どもたちの「繊細な心」に気付かなくてはいけないと思います。

    誰よりも繊細な存在



     子どもは、大人が考えているよりも、はるかに繊細な存在です。

     些細なことで傷つき、悩み、思い煩います。大人になってから振り返ると、「小さい世界だった」と思うかもしれません。しかし、その世界の真っただ中にいる子どもにとってはどんなに些細なことも重大な問題で、そこには大人が思いもしないような悩みが隠されていることがあります。

    子どもたちは鋭い感覚を備えた一個の主体であり、自分の親のニーズやパースペクティヴに共感する能力を十分に持っている



     著者のリッジもこう指摘します。子どもたちが「主体」であるということを私たちは決して忘れてはいけないと思います。未熟で力がない子どもたちですが、未熟だから何も考えていないというのは大間違いです。わんぱくで素直で何の悩みもない・・・そんなイメージがあるとしたらそれは幻想です。何も考えていないどころか、子どもたちは大人よりもずっと鋭い視線で大人や社会を見つめています。学校で子どもたちが繊細なコミュニケーションをとる様子を紹介しましたが、子どもたちは本当に驚くほど繊細なのです。

     そんな子どもたちに「貧困」が襲いかかっている・・・改めて考えてみると、こんな恐ろしいことはないでしょう。社会全体で取り組み、子どもたちを守っていかなくてはいけないと思います。子どもの声はとてもか細く、届きにくいものです。その声を受け止められるかどうかに、まさに国の未来がかかっています。



    オワリ

     子どものまっすぐな目を見ると、どこかいたたまれない気持ちになります。そんな気持ちになって目をそらしたくなるということは、どこかに「うしろめたいもの」があるということでしょう。自分がどうしてそんな風になってしまったか、社会がどうしてそんな風になってしまったか、最近よく考えます。

    『現代の貧困』 岩田正美さん

     貧困をテーマに本を紹介し続けています。前回紹介した岩田正美さんの本です。記事では「子どもの貧困」についても言及しています。貧困の本がだいぶ増えてきたので、特集ページを作ることを考えています。

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    •   13, 2016 02:05
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