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貧困観の必要性 -『子どもの貧困 ―日本の不公平を考える』 阿部彩

 15, 2016 18:01
子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)
阿部 彩
岩波書店
売り上げランキング: 3,950


相な貧困観の改善を

 前回紹介した『子どもの貧困と社会的排除』につづき、「子どもの貧困」について書かれた本です。

 著者の阿部彩さんは、貧困や社会的排除を専門に研究をしておられます。今回は2008年に岩波新書から出版された『子どもの貧困―日本の不公平を考える』の情報をまとめます。



内容


健康、学力、そして将来…。大人になっても続く、人生のスタートラインにおける「不利」。OECD諸国の中で第二位という日本の貧困の現実を前に、子どもの貧困の定義、測定方法、そして、さまざまな「不利」と貧困の関係を、豊富なデータをもとに検証する。貧困の世代間連鎖を断つために本当に必要な「子ども対策」とは何か。

(「BOOK」データベースより)

400字書評


400字書評

 筆者はまず子どもの貧困の蓄積を指摘する。15歳時の貧困は大人になっても解消されていなかったというのである。力のない子どもが生まれた時から貧困を背負わされ、それを乗り越えられない社会の現状は問題だろう。

 子どもの貧困による社会的損失の推計が先日発表された。子どもは将来への可能性を秘めた社会の財産であり、社会がその可能性を潰すようなことは絶対にあってはいけないと改めて強く感じる。後半には、日本の合意基準アプローチ(必需品であると社会が認めたもの)の基準が他国より非常に厳しいことが明らかにされた。このデータの解釈は様々であろうが、日本が貧困に対して「仕方ない」「自己責任だ」と捉えるような風潮は根強いものがあるのではないだろうか。

 そのような風潮の根底にあるのが、筆者が指摘する日本人の「貧相な貧困観」である。子どもの可能性を奪い、ゆくゆくは社会全体も衰退させていく貧困を、私たちは危機感を持って捉えなければいけない。(407)

ピックアップ



栞

「教育の平等」「機械の平等」が支持されない社会とは、どのような社会なのであろうか。不利な状況を背負って生まれてきた子どもたちが、そのハンディを乗り越える機会を与えられない社会とは、どのような社会なのであろうか。自らが属する社会の「最低限の生活」を低くしか設定せず、向上させようと意識しないことは、次から次へと連鎖する「下方へ向けてのスパイラル」を促し、後々には、社会全体の生活レベルを下げることになる。私たちは、まず、この貧相な貧困観を改善することから始めなければいけない。



 「貧相な貧困観」ということばが大変印象に残りました。貧困について勉強を始めてから、私自身も痛感していることです。筆者が指摘するように、相対的貧困の概念は理解されにくいのかもしれません(いくら「6人に1人」などと言われても…)。

 その意味では、第6章で紹介されている「合意基準アプローチ」は日本人の貧困観がよく分かる概念だと思います。子どもたちに最低限何が必要なのか、自らに問うてみることで貧困を引き寄せて考えられるようになりたいと思います。



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