HOME > 友情・恋愛 > title - 二人に春は来るのか -『永すぎた春』 三島由紀夫

二人に春は来るのか -『永すぎた春』 三島由紀夫

 22, 2016 00:00
 前回紹介した『命売ります』につづき、三島由紀夫の小説を紹介します。学期末のレポートで三島由紀夫について書くので、最近は三島由紀夫漬けの毎日です。レポートということで細部にまで気を配って読んでいるのですが、彼の小説はとにかく「巧い」の一言なのです。軽く流すように書いているであろうエンタメ小説でも、細部まで技巧が凝らされているのです。まさに天才作家の名にふさわしいと思います。

永すぎた春 (新潮文庫)
三島 由紀夫
新潮社
売り上げランキング: 96,024


 『金閣寺』などの本格的な純文学がもちろん彼の本流で、前回紹介した『命売ります』や今回紹介する『永すぎた春』といったエンタメ小説は「遊び」の部類に入るかと思います。ですが、そこはさすがの天才作家、「遊び」のクオリティーがとても高いのです。時にはコミカルに、時にはシニカルに、軽妙洒脱な筆致が冴えわたります。



内容紹介


ブックレビューリトル

 T大法学部の学生宝部郁雄と、大学前の古本屋の娘木田百子は、家柄の違いを乗り越えてようやく婚約した。一年三カ月後の郁雄の卒業まで結婚を待つというのが、たったひとつの条件だった。二人は晴れて公認の仲になったが、以前の秘かな恋愛の幸福感に比べると、何かしらもの足りなく思われ始めた…。永すぎた婚約期間中の二人の危機を、独特の巧みな逆説とウィットで洒脱に描く。

(「BOOK」データベースより)

400字書評



400字書評

 1年3か月という長い婚約期間を経て結婚する2人。彼らが過ごす「永すぎた春」を1章1か月の12章構成で描きます。2人を巡って次から次へと事件が起こり、軽妙洒脱に物語は進行します。恋愛に溺れる2人の瑞々しい感情や、焦らし合うことによる嫉妬、若さゆえの過ちと描写される心情も豊かで、彼らの「端正の若さ」を感じながら楽しく読める物語だと思います。

 当時の価値観を今と比べながら読むのも面白いかもしれません。作中では古い「身分ちがい」の考えと身分にとらわれない2人の恋愛関係が印象的に対置されています。今でこそ恋愛結婚は当たり前ですが、当時は様々な困難があったでしょう。階級的なひがみからとんでもない嫌がらせを受けることもあるのですが、純粋な2人はそれらの障害を乗り越えて行きます。最後のある場面は解釈が分かれそうです。読者に想像させて何ともじれったい気持ちにさせるところはさすが三島由紀夫。軽いタッチですが、細部にまで技巧が凝らされています。(415)

ピックアップ



栞

百子の危惧が郁雄にはわからなかった。百子は、若い独身の男たちの中で、郁雄がすでに彼女の良人(おっと)のように落ち着いて鈍感に見えることを望まなかったのである



 タイトルになっている『永すぎた春』というのは「長い婚約期間」を指します。結婚するまでに2人は1年3ヵ月も猶予の時を与えられるのです。そんなに長い期間、2人の愛が何事もなく持続するわけはなく、愛は様々な感情をミックスしながら変質していきます。そんなところを楽しめるのがこの小説の魅力です。

 おとなしく1年3か月待てば、2人は結婚できるのです。それにもかかわらず、2人は次々と「危ない行動」に出ます。小説とはいえ、ハラハラとさせられますね。若い2人にとって、盲目的に愛し合うことは何かが物足りなく、上の引用でいう「鈍感」さを感じてしまうことだったのです。婚約期間が間延びすることで生まれるけだるさや鈍感さというものが伝わってきます。それをはねのけるような、若い2人のみずみずしいスリル満点の愛に注目です。



ブックレビューリトル

 関連書籍の情報をお届けします。

命売ります (ちくま文庫)
三島 由紀夫
筑摩書房
売り上げランキング: 516


『命売ります』 三島由紀夫

 三島由紀夫のエンタメ小説で2冊続けてみましたが、これが想像以上に面白く、コーナーを作って定期的に紹介したいくらいの勢いです。ちょっと中毒気味になるくらい表現が心地よいのです。

 さて、こちらは前回紹介した『命売ります』です。ちくま文庫さんは今この本を猛プッシュされているみたいですね。この本は三島の代表作というわけではなく、かなりマイナーなほうに入ると思います。それにもかかわらず、なんと・・・

命売ります

(ちくま文庫ホームページより)

 26万部!かなり売れているようです。三島のエンタメ小説というのが最近注目され出しているようで、私も開拓していきたいなと思っています。『命売ります』は前回の記事でも書いたとおり、ぜひ「買って読みたい」タイプの文庫本です。ちくま文庫さんの公式ツイッターに私のツイートをリツイートしてもらったので、お礼もかねて宣伝させていただきました。買って読みたい本ですし、宣伝したくもなる本なのです。

スポンサーサイト

三島由紀夫, 小説,



  •   22, 2016 00:00