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「本屋大賞」は読まずに当てられるのか

 10, 2015 23:59
 コラム

 今日はなんとも過激なブログタイトルです。「何を言っているんだ」とお怒りになる方もいるでしょう。決して本屋大賞を馬鹿にしようと思って書いているわけではないので、ぜひ読んでいって下さい。

 世の中にはたくさんの文学賞・本の賞が存在します。そして、そこで表彰された本は注目され、多くの人の手に取られることになる。そんな風にして、本の市場が回っているわけです。世の中にインパクトを与える賞は何でしょうか。個人的には、第3位が「このミステリーがすごい!」(迷走している感はありますが)、第2位が「芥川賞・直木賞」、そして第1位が「本屋大賞」ではないか、と思っています。なんたって本屋大賞は、「全国書店員が選んだ一番売りたい本!」と銘打っているくらいですから、その売り込みはすごいものがあります。大賞受賞作は書店で大きく取り上げられるほか、各メディアにも展開していますね。

 私自身、本屋大賞は大好きです。過去のノミネート作品を見てもらえばわかると思いますが、本屋大賞のノミネート作品はいわゆる「世間受け」がよいものばかりで、実際に読んでみてもその満足度はかなり高いです。私も読書をする際に大きく参考にしています。本屋大賞で作品を知り、本屋に走るあたり、すっかり「市場の歯車」になっていますね 笑。

 そんな本屋大賞ですが、好意的に捉える人ばかりではありません。「本屋大賞 批判」でウェブ検索をかけると、たくさんの記事が出てきます。そこではなんと、世間に名の知れた作家さんが本屋大賞を公然と批判しているものもあるのですね。もう有名になっていると思いますが、その代表格が「チーム・バチスタの栄光」シリーズで有名な作家、海堂尊さんの発言です。海堂さんが自身のブログで痛烈に本屋大賞を批判したのですが、そのタイトルが「読まずに当てよう、本屋大賞。」 このタイトルに込められた凄まじいまでの皮肉が感じられます。

リンク 
 海堂さんブログ 2014.2.24

 海堂さんが何を批判しているのか、詳しく見ていくことにしましょう。

 まず海堂さんが指摘するのが、本屋大賞の作品は飛ぶように売れているものの、小説全体の売り上げは減少しているということ。その上で、「書店員が一番売りたい・・・」というコピーに問題があるのではないか、と述べています。

「本屋さんが一番売りたい本」があれば、それ以外の本は「本屋さんがそんなに売りたい本ではない」というメッセージになってしまうからです。すると読者は本屋大賞受賞作だけ読めばいい、と思っても不思議はありませんし、他の本は、本屋大賞以下なので読む価値がない、とみなす人も出てくるでしょう。



 本屋大賞の陰で冷遇される作家・作品の存在を訴えつつ、本屋大賞は「書店を愛してやまない作家を、書店アンチしてしまう仕組み」だと切り捨てています。

 海堂さんは人気・実力ともに申し分ない作家さんですが、本屋大賞の過去年度も見ると、確かにノミネートがない・・・。ちょっとというか、かなり意外でした。そして本屋大賞のノミネート作品を見ていて気付くのが、「一部の作家が何度もノミネートされている」ということ。あまり意識したことがなかったので、これにはさらにびっくりでした。海堂さんもこのことを指摘しています。そして、本屋大賞に何度もノミネートされている以下の作家さんたちを、「本屋大賞・神7」と皮肉たっぷりに命名しています。

8回 ☆伊坂幸太郎

4回 ☆小川洋子 ☆三浦しをん ☆百田尚樹 有川浩 万城目学 森見登美彦


(数字はノミネート回数、 ☆は大賞受賞者)

 伊坂幸太郎さんのノミネートの多さが際立ちますね。しかも、ここには今年の作品が含まれていません。・・・勘の良い方はもう気付かれたかもしれませんね。今年は伊坂さん、2作ノミネートです。(アイネクライネナハトムジーク、キャプテンサンダーボルト)今までもぶっちぎっていたわけですが、今年は2作ノミネートということでさらに他の作家さんたちとその差が広がっていくことになります。

 もちろん、伊坂さんは素晴らしい作家さんです。本屋大賞に10作がノミネートされるだけの力量と魅力はある、と断言します(先日、「SOSの猿」のレビューを書いたばかりです)。その他の作家さんもこれまた素晴らしいメンバーで、小川洋子さんや森見登美彦さんなどは私が特にお気に入りの作家さんです。この名前の並びを見ているだけで満足してしまいます。ただ、海堂さんが指摘するように、一部の作家が優遇されていることは否めません。

 作品が話題になる → 本屋大賞 → 書店での優遇、メディアを通した広がり → 次の作品も注目され、話題になる → 次の作品も本屋大賞 → 次の作品も・・・   

 こんな流れが容易に浮かびます。海堂さんはここに悔しさを覚えておられます。読まれるべき素晴らしい作品が「討ち死に」している、と。自身の作品が受賞していないから、ただの僻みだと思う人もいるかもしれません。ですが、私はそうは思えませんでした。一部のお金持ちが勝ち続け、貧乏人が負け続ける、そんな格差社会の縮図をみたような気がして、どんよりとします。もう一度断っておきますが、本屋大賞でノミネートされる作品はもれなく素晴らしいのです。満足度はすごく高い。私にとっては、すごく優秀で頼りになるコンテンツ。

 だけど、「本屋大賞でノミネートされる作品以外にも素晴らしい作品がたくさんある」、ということを忘れてはいけません。そういった作品とどうやって出会うか、というのがとても難しいことで、そこで行き止まる感はあるのですが。



 結論。

 たくさんの文学賞があって、多くの本が脚光を浴びます。それをきっかけに、本と出会って、好きになる。たくさんの文学賞が本との出会いの「入口」になってくれるのは素晴らしいことです。というか、そのために文学賞があるのでしょう。

 だけど、価値観を凝り固めてしまうことには注意です。私の場合、「本屋大賞」のミーハーにならないこと!そして、本に順位をつける、そんなランク付けにもあまり過剰に反応しないこと!今日はこんなことを教訓に思いました。いろいろな方の読書ブログはその意味でとても参考になります。文字通り「十人十色」、利権の絡まない純粋な本の紹介は、読んでいるこちらがとても刺激を受けるものです。

 本屋大賞は、作品を読んで決めるものですよね。 
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