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  • 果てしなく深い海 -『舟を編む』 三浦しをん

     12, 2015 11:59
     更新が遅くなりました、おともだちパンチです。今日は2012年の本屋大賞受賞作、三浦しをんさんの「舟を編む」をご紹介します。三浦しをんさんの本は、前回の 「神去なあなあ日常」 以来、2冊目のご紹介になります。箱根駅伝に林業、そして辞書の編纂・・・いつも斬新な切り口からそのテーマの新たな魅力を発掘してくださる三浦さん。今作も評判に違わぬ作品でした。では、以下「舟を編む」のレビューです。

    舟を編む舟を編む
    (2011/09/17)
    三浦 しをん

    商品詳細を見る


    果てしない嘆息



     タイトルの「舟を編む」とは何を意味するのでしょうか。もう有名になっているかもしれませんが、もう一度確認してみたいと思います。

    辞書は、言葉の海を渡る舟だ」
    「ひとは辞書という舟に乗り、暗い水面に浮かび上がる小さな光を集める。もっともふさわしい言葉で、正確に、思いをだれかに届けるために。もし辞書がなかったら、俺たちは茫漠とした大海原を前にたたずむほかないだろう」



     『大渡海』という辞書の編纂に挑む主人公馬締光也(まじめ・みつや)と周囲の人々の奮闘記。言葉を海に、そして海に乗り上げていく辞書を舟に例えています。この「言葉の海」、「舟」の例えは、作中で何度も何度も効果的に使われています。ため息がでるほど美しく、これ以上ないと思えるような例えでした。果てしなく、底の見えない海。その深遠さは人間を惑わし、畏敬の念を抱かせます。しかしそれでもなお人間は憧れを捨て去ることはできません。終わりがあるかも分からないような船旅に、人は舟をこぎ続けているのです・・・。

    ことばをつかまえる



     海や舟を例えに出しながら作品から浮かび上がってくるのは、「ことばをつかまえる難しさ」。こんな一説があります。

    どれだけ言葉を集めても、解釈し定義づけをしても、辞書に本当の意味での完成はない。一冊の辞書にまとめることができたと思った瞬間に、再び言葉は捕獲できない蠢きとなって、すり抜け、形を変えていってしまう。



     例えを通して言葉の深遠さを見事に表現しているいることが、この部分に深みを出しています。言葉というのは何かを生み出しているようで実はそうではありません。生み出している何かより、はるかに多くのものがその瞬間に消えていくのです。ここで書いている言葉にしたってそうです。本を読みながら思ったことを、100%言葉にできるということはありえません。無限にある言葉の組み合わせから、私はこの言葉の組み合わせで伝えようとしています。そして、それと同時にその他多くの言葉は使われることなく、姿を消しています。

     ・・・ただレビューを書いていただけなのに、見たこともないような深みに片足をつっこんでしまいました。この「海」や「舟」の例えがどれだけ素晴らしい例えだったのか、あらためて実感しているところです。

     そんな風に言葉の深遠さを強調する他方で強調されているのが、辞書の編纂を通じて言葉に向き合おうと必死にもがく人々の姿。どんな言葉を生み出したところで、それは「完全」にはなりえない、そう分かっているのにです。どうして人は言葉と向き合い続けるのか?言葉の魅力って何? そんな疑問は、作者の三浦しをんさんが素晴らしい言葉で紡いでくれました。ここでも、「海」と「舟」が印象的です。

    有限の時間しか持たない人間が、広く深い言葉の海に力を合わせて漕ぎ出していく。こわいけれど、楽しい。やめたくないと思う。心理に迫るために、いつだってこの舟に乗り続けていたい。



     言葉を生み出すのがいかに難しいのか、そんなことを痛感させられる一方で、作者の三浦さんが生み出す言葉の力にはただただ圧倒させられます。これが「作家」なんですよね。一般の人が心には思っても逃してしまう言葉を、その手でがしっとつかみ取る。これまでに何作も読んで大好きだった作家さんですが、今回は初めて「凄味」を感じました。小説の原点である「言葉」というテーマに向き合い、こんな作品を仕上げたんですから・・・。

    言葉は証



     先程は触れずにスルーしましたが、主人公の「馬締(まじめ)」という名前、すごく面白いと思いませんか。この名前で主人公は何度もいじられるんです。でも、彼の名前は彼の人柄や雰囲気にぴったりで、「この名前しかないんじゃないか」と思わせるようなフィット感。ここにも三浦さんの凄味がのぞきます。本当に今回は圧倒され、嘆息するばかりです。

     言葉の裏で多くの言葉にならないものが消えていくと言いましたが、逆に言えば生み出した言葉は一生残り、消えることがないわけです。言い換えれば、言葉はそれを生み出した人間の「生きた証」。ネタバレになるので言えませんが、この話のラストはこのことを強く感じさせるものになっています。とても悲しく、切ないのだろうけど、どこまでも続く青い海を見て、そこに悲しみが溶けていくような、そんな感じ。まだまだ余韻に浸っています。

    ◆殿堂入り決定!

    「最果ての図書館」は『舟を編む』を「シルバー」に認定しました。おめでとうございます!





    こちらもどうぞ

    この小説も「言葉」がテーマ。共通するメッセージがすごく多いです。
    「ふくわらい」 西加奈子さん

    「舟を編む」の公式サイトです。映画の予告篇や作品紹介(素敵なイラスト付き)が見られますよ!
    特設サイト「舟を編む」

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    三浦しをん, 小説,



    •   12, 2015 11:59
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