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  • 父よ子よ 〔前編〕 ( 流星ワゴン / 重松清さん )

     09, 2015 19:05
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     今回から前後編で、重松清さんのベストセラー「流星ワゴン」のレビューをお送りします。現在TBS系列で連続ドラマが放送中で、話題になっているこの作品。「父と子」という永遠のテーマに、重松さんが真正面から挑んでいます。胸が熱くなるような父と子のドラマに迫ります―。

    流星ワゴン (講談社文庫)流星ワゴン (講談社文庫)
    (2005/02/15)
    重松 清

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     死んじゃってもいいかなあ、もう・・・。

     「イヤな事だらけの世の中」に絶望し、そんなことをふと思った主人公の永田一雄。その時、彼の目の前に一台のワゴン車が現れました。

     「早く乗ってよ。ずっと待ってたんだから」

     ワゴン車に乗っていたのは5年前に事故で命を落とした親子の幽霊でした。ワゴンに乗った一雄は、後悔で塗り固められた過去への旅に出ます。不幸の連鎖で崩壊してしまった自分の家族・・・。一雄はやり直しを図るべく、家族と向き合うことを決意します。そこに現れたのは、自分と同じ38歳の姿となった父、忠雄の姿でした・・・。

     幽霊の登場にタイムマシンと、かなりファンタジー要素の強い作品です。ですが、解説の斎藤美奈子さんの言葉を借りれば、「身につつまされる」作品に仕上がっていると思います。大きくなるにつれて、どこか気恥ずかしくなり、知らずと目をそらすようになっていた親子の関係、そして、人生にたくさん存在していて、気づかないうちに通り過ぎってしまった分かれ道の存在に気付かされます。

    「父親」でありながら「息子」でもある、そんな時期にこそ書いておきたかった (文庫本あとがき 重松清さん)


     解説でも出てきますが、この小説には女の人がほとんど出てきません。出てきても脇に徹しています。それは、「父と子」というテーマに真正面から向き合おうとした重松さんの覚悟のあらわれではないでしょうか。子として生まれ、父の背中を見て育ち、そして父になる。これまで延々と繰り返されてきた男の人生を、渾身の描写で描きます。

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     3組の親子の姿を見ていきましょう。まずは主人公の一雄と、父の忠雄(チュウさん)です。「仕事を継ぐ」という行為は、時に親子に溝を生む、一種の宿命のようなものです。この親子もそうでした。父が金貸しの仕事を始めてから、父を嫌い、避け続けてきた一雄。それでも、父が死の淵に瀕したとき、一雄は父のことを想わずにはいられませんでした。

    父のことを思い出す。父は強い人だった。怖いひとで、冷たいひとで、ひとりぼっちのひとだった。この半年間、父を思い出す機会が増えた。思い出をたどったり懐かしんだりというのではなく、あのひとだったら ―と考える。



     ワゴンに乗った一雄のもとに、父が現れるのですが、上手いなと思ったのが、父が自分と同い歳(38歳)の姿で現れる、という設定です。自分と同い年の姿の父に、一雄は自分の知らなかった面影を見ます。そして、親子ではなく「朋輩」として、しだいに心を開いていくのです。

    「親子って、なんで同い歳になれないんだろうね」



     ハッとさせられるセリフでした。そうです、親子が同い年になれたら、きっと気心の知れた、なんの遠慮もいらない関係を築けると思うのです。ですが、親子が同い歳になれることは、現実では一生ありません。悲しいかな、親子は生きてきた時代が違います。同じ血が流れていても、年の違い、生きてきた時代の違いが邪魔をする・・・。子供が一番ひねくれてしまう思春期に、一つ屋根の下に暮らす父は、最も疎ましく、苛立たしい存在になる・・・。血が繋がっているからこそ、ややこしい。一番よく分かるはずなのに、分かりすぎて分からなくなる。そんな複雑で歪な形をした親子の形が浮かび上がります。

     一雄にもまた、息子の広樹がいました。子であった一雄は、父になります。これが二組目の親子です。広樹は中学受験に向け、友達との遊びも捨てて、勉強に打ち込みました。しかし、合格の夢は叶いませんでした。突き付けられた現実は残酷です。広樹を待っていたのは、小学校時代の同級生からのいじめ。そして、広樹が家庭内暴力を振るうようになり、さらには・・・。

     小学生の背中にのしかかった、受験というあまりにも重い荷物。実は、広樹は受験前からいじめられていて、絶対に落ちられない受験だったのです。父である一雄は、そんな重い荷物のことを理解してやれませんでした。父だから、分かってやれている。そんな思いは、実は全くの逆だったのです。父だから、何も分かっていない。知らずのうちに息子を追いつめていたことを反省し、一雄はもう一度、過去に戻って息子と向き合おうとします。

     

    「・・・嫌いってわけじゃないけど」
    「正直に言っていいんだぞ」
    「・・・だから、嫌いっていうか、そういうんじゃなくて・・・っていうか」



     過去に戻った一雄が、広樹の本音に迫るシーン。辛い。痛いほどわかるから辛い。きっと、息子にとっての父親とは、一番好きであり、一番嫌いである存在なのだと思います。心が揺れる思春期に、一生懸命嫌いになろうとする、「嫌い」と思おうとする。でも、実際は・・・。思春期の息子の複雑な心理が見える名場面ですね。

     そして、3組目の親子です。自動車事故で命を落とすことになった橋本親子。現実を受け入れられず、なかなか成仏できない息子の健太くんを成仏させてやろうと、父の義明さんは幽霊になってもワゴンを走らせます。

     実はこの親子、本当の親子ではありませんでした。義明さんは妻の再婚相手。血のつながりのない親子の姿は、上で見た血のつながった親子と対比され、その関係性の難しさが浮かび上がってきます。何とか「父親」になろうとした義明さん。でも、そんな風に「演じて」しまうこと自体が本当の親子でないという証でした。血が繋がっていなければ、本当の親子にはなれない。血が繋がっていても難しいのに、血が繋がっていないのはもっと難しい。親子って本当に難しいですね・・・。

     今日は3組の親子の姿を追いました。次回の後編では「過去をやり直す」ことにフォーカスしてみます。ワゴンに乗って、過去への旅に出る一雄。そこで直面したのは、あまりにも辛い事実でした・・・。    つづく



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    後編 こちらからどうぞ

    ドラマ「流星ワゴン」はTBS系列で日曜午後9時から放送中。主人公の一雄は西島秀俊さん、父の忠雄役は香川照之さんが演じておられます。3月15日に第9話、そして3月22日に最終話が放送予定です。
    ドラマ 「流星ワゴン」 公式

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    小説, 重松清,



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