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  • やさしくなりたい -『神様のカルテ0』 夏川草介

     12, 2015 18:37
    神様のカルテ0
    神様のカルテ0
    posted with amazlet at 15.09.05
    夏川 草介
    小学館
    売り上げランキング: 39,323


    んなに優しい小説、他にはない-。
     
     今日は先日発売されたばかりの新刊、夏川草介さんの「神様のカルテ0」をご紹介します。


     発売直後の単行本を買うのは久しぶりでした。「神様のカルテ」シリーズは、文庫本の発売が待ちきれないほど大好きなシリーズです。とにかく、「優しい」。このシリーズには、どれだけ救われ、どれだけ多くのことを教えられてきたことかと思います。

     「神様のカルテ0」も、期待に違わぬ、素晴らしいお話でした。



    おかえりなさい



     長野の美しい風景と、人物たちのハートウォーミングな描写はこの続編でも健在です。このシリーズは読んでいて心が洗われます。「空気がおいしい」、そんなことを感じさせる作品です。

     「神様のカルテ0」というタイトルからも分かる通り、今作はこれまでのストーリーの前日譚、プレストーリーになっています。4つの短編が収録されています。主人公の一止たちの研修医時代を描いた「有明」、一止が来る前の本庄病院のエピソードを明かす「彼岸過ぎまで」、一止の妻、榛名(ハル)が登山中にある人たちと出会う「冬山記」、そしてこの作品のタイトルの由来が明かされる「神様のカルテ」です。

     「24時間365日」の看板をかかげ、常に患者の対応に追われている本庄病院。その「24時間365日」という看板が掲げられるようになった理由が、「彼岸過ぎまで」という話で明かされます。そして、一止がこの病院にやってきた理由も、この看板にありました。「24時間365日」の対応についてどう思うか、問われた一止はこう答えます。

    「医療の基本だと思います。」「無理もあります、リスクもあります。しかし病院という場所は24時間365日、困った人がいれば、手を差し伸べてくれる場所であってほしいと思います」



     何事もなかったように、しれっと、一止はこう答えます。この作品では医療の厳しい現実も描かれ、なかなかこういった理想論を唱え続けるのは難しいところがあります。しかし、一止の姿勢は揺らぐことがありません。病院に来る前の研修医時代から一止は全くぶれていなかったのですね。何だかたまらなくうれしくなる場面でした。

    優しい人



     「神様のカルテ」という短編で、一止と患者さんの会話の場面があります。これが、昨日書いた「読書離れ」のコラムと関わってくるところです。

     一止が担当する患者さんは、胃がんの発見された元国語教師でした。本を読んでも肝心なときには役に立たない、そう嘆く一止に、彼はこう語りかけます。

    「本にはね、先生。「正しい答え」が書いているわけではありません。本が教えてくれるのは、もっと別のことですよ」


    「ヒトは、一生のうちで一個の人生しか生きられない。しかし本は、また別の人生があることを我々に教えてくれる。たくさんの小説を読めばたくさんの人生を体験できる。そうするとたくさんの人の気持ちも分かるようになる



     本を読むことは他の人生の体験で、本を読むことで人の気持ちが分かるようになる、というおじいさん。私が印象に残ったのはここからです。「人の気持ちが分かるといいことがあるのか」そう尋ねる一止に、彼はこう答えます。

    「優しい人間になれる」


    「優しさは弱さではない。相手が何を考えているのか、考える力を「優しさ」というのです


    優しさとは、想像力のことですよ



     私はコラムで「想像力」に触れました。読書は想像することで、読書離れや読書離れをスマホ批判で片づけることは「想像力が欠如」している、と言いました。この作品では想像力を「優しさ」と結び付けています。当たり前のようで、意表を突かれる言葉でした。コラムを書いているときに、「優しさ」などという言葉は心の片隅にもなかったからです。

     読書をすると、優しくなれる

     なんて素敵なことばでしょうか。文庫本まで待たずに、単行本を買いに行って本当によかったと思っています。1日でも早くこの作品に出会えて本当によかった。自分が満足しただけではなくて、「人にもすすめたい」と心から思いました。「神様のカルテ」シリーズのファンはもちろん、全ての本を読む人々におすすめしたい1冊です。

    苦労人



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     そんな言葉を語った後で、おじいさんは静かにつぶやきます。

    「しかし優しい人は、苦労します」



     その通りですね。人の気持ちが分かるようになり、優しくなるということは「人の痛みを背負う」ということでもあります。悲しみや苦しみ、嘆き。そういった気持ちまで分かるようになるということですから。

     実際、一止はこれからたくさん苦労していくことになります。この短編から「神様のカルテ」シリーズが始まるのですが、一止はその優しさ故に何度も立ち止まり、悩み、もがき苦しんでいくことになります。それを知っているからこそ、この何気ない一言には重みがありました。

     でも、一止は一止のままでいてほしいのです。優しいままでいてほしい。命に対して真摯に向き合う姿勢を忘れないでほしい。また続編が出ることを願ってそう思います。

     私自身も、優しい人でありたいです。現実は小説と違います。「優しくありつづける」ことは困難を極めています。それでも、「優しくあろう」とする気持ちだけは忘れずに・・・。そして、「優しくありたいから、本を読む」のですね。

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    「神カル」シリーズがたどり着いた、「優しさ」の意味とは-。

     待望の続編。期待値は大きかったですが、それを上回る素晴らしい1冊でした。本を愛する全ての人に贈りたいです

    ◆殿堂入り決定!

    「最果ての図書館」は『神様のカルテ0』を「ゴールド」に認定しました。おめでとうございます!


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    小説, 夏川草介,



    •   12, 2015 18:37
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