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  • 天才の文才  -『恋文の技術』 森見登美彦

     17, 2015 12:24

    文が小説になりました

    書影

    恋文の技術
    森見 登美彦(著)
    ポプラ社 発売日:




     こんにちは、おともだちパンチです。ブックレビューの第2回は、森見登美彦さん「恋文の技術」をご紹介します。実は私のハンドルネーム「おともだちパンチ」は森見さんの「夜は短し歩けよ乙女」という作品から頂戴しているものなんですね。森見作品の魅力はどこにあるのか、そういったことも考えながら、以下「恋文の技術」のレビューです。



    手紙の魅力



     「恋文」「文通」・・・この言葉の響きだけで、ご飯3杯は食べられそうな気がします。主要なコミュニケーションツールがLINEやtwitterなどのSNSにとって代わってしまった今でも、直筆の手紙が持つ魅力は色あせることを知りません。手紙にはどんな魅力があるのでしょうか。森見さんは以下のように書いています。

    なぜあんなにも夢中になったのであろうと考えるに、それは手紙を書いている間、ポストまで歩いていく道中、返信が来るまでの長い間、それを含めて「手紙を書く」ということだったからだと思います。



     SNSは「直感」と「瞬発力」のツールでしょう。数えきれないくらいの言葉が次々に生み出されては、それらの多くはすぐに消えていく・・・。「思い」を込める暇もなければ、「思い」を読み取る暇もない、そんなことが時に気ぜわしさとなり息苦しさとなります。じっくりと、ゆっくりと・・・手紙からその人の思いを手探りで掴んでいく、そんな体験に現代人は飢えているのかもしれません。

    天才のリズム



     さて、作品をみていきましょう。くだらなくも愛おしい、何だか癖になる文章はこの作品でも健在です。「桃色ブリーフ」「阿呆」「破廉恥」「おっぱい」・・・といつもこんな感じなのでありますが、神出鬼没で当意即妙、摩訶不思議なその文体には熱狂的なファンが数多く存在します。一見くだらないようなことを、これほどまでに愛おしく描ける、これこそが森見さんの才能なのだと思います。

     能登の地で一人懊悩する大学院生、守田一郎が、様々な人と手紙のやり取りをする本作。ユーモアが混ざったテンポのよい文体に、「ああ、文才あるな」と読み進めるのですが、恋する相手、伊吹さんのこととなるとそんな手紙の調子は一転。気取ってみたり、砕けてみたり、改まってみたり・・・どこかちぐはぐな彼の恋文が展開される第9話「失敗書簡集」には大いに笑わされました。今作は「手紙」という手法を取ったことで、森見さんの文章の魅力がいつもにも増して感じられたように思います。その心地よいテンポはまさに「天才の文才」。思わず声に出してみたくなる、そんな名文が詰まっています。

    息苦しい現代社会へ



    「教訓を求めるな、ということです。教訓を得ることもできない阿呆な話が人生には充ち溢れているということです」



     この一言がよかったですね。森見さんが描くような大学生活を送ってみたい、と思っても、現実はなかなかそうはいきません。乾ききって、息苦しい世界に窒息しそうになります。肩の力を抜いて、背筋を伸ばさず、思いっきり笑う、そんなことが小説の中なら許される、そこに心地よさを感じます。

     ニッコリ笑って「やむを得ぬ!」、伊吹さんのそんな微笑ましい姿が最後に描かれていました。しかめっ面で「許さぬ!」とばかり言っている現代社会にも、こんな人が増えるといいんですけどね。



    オワリ

    「新釈 走れメロス他四篇」 森見登美彦さん

     「走れメロス」や「桜の森の満開の下」など、日本文学の名作がパロディーになりました。文学が森見さんの作風に染まっていくのが分かって面白いです。
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    小説, 森見登美彦,



    •   17, 2015 12:24
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