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  • さいはてに吹く風 -『さいはての彼女』 原田マハ

     17, 2015 17:32

     原田マハさんの「楽園のカンヴァス」を借りようと図書館に行ったのですが、残念ながら貸し出し中でした。肩を落として帰ろうとしたところで目に留まったのがこの本。

    さいはての彼女 (角川文庫)
    原田 マハ
    角川書店(角川グループパブリッシング) (2013-01-25)
    売り上げランキング: 11,646



     「最果ての図書館」というブログをやっているので、このタイトルに目が留まりました。中身は4つの作品が収録されている短編集のようです。これも何かのご縁ということで、初・原田マハさんはこの短編集にしたいと思います。



    風が吹く本



     よかったです。想像以上によかったです。思わぬ形で素晴らしい作品に出会えて本当に幸せでした。

     1人旅をする女性を主人公にした4作の短編集。最初の短編「さいはての彼女」と最後の短編「風を止めないで」がリンクするという形をとっています。

     最初と最後の短編に出てくるのは、耳が聞こえなくなってしまった少女、ナギ(凪)でした。彼女は耳が聞こえませんが、抜群の集中力でバイクをのりこなします。そのバイクの名前が「サイハテ」です。彼女には二つの力がありました。1つは読唇術で人の言葉を読み取る力。そしてもう1つが、聞こえない音を感じる力でした。

     音が聞こえないからこそ研ぎ澄まされる感覚。その感覚を、瑞々しく、大胆かつ繊細な文章で描きます。「風のような少女」と称されるナギ。まるで、作品の中に風が吹いているようです

    人生を足掻こう



    カッッ、カッッ、カッッとかすれていた音を出していたエンジンは、何度目かに、パッパッパラパラパラララ、と歌い出すような音を上げ始めた。


     バイクのエンジンがかかる場面です。作品のリズム感や、作品に詰まったエネルギーを感じていただけると思います。勢いよく飛び出したバイクは、広大な大地の中を疾走します。

    速い。風景のすべてが、緑色の絵の具になって飛んでいく。全身にびりびりとくる、痺れるようなエンジンの振動。張り詰めた大気に、がむしゃらに突っ込んでいく。最初はぎゅっとつぶっていた目を恐る恐る開いてみた。見渡す限りの緑の大地を貫いて、道はどこまでも続いている。永遠のようなはてしなさだ。


     エネルギーに溢れていて、リズミカル。五線譜の上にあった音符が勢いをつけて空に飛び出していくようです。読みながら背中に風を感じるようでした。

     バイクが目指すのは「さいはて」の地です。さいはて、といったら何もない寂れたところ、というイメージがあるかもしれません。終わり、行き止まり、そんなイメージもあります。ですが、この作品ではそんなイメージを大胆に越えていきました。

    こいつは魔法の乗り物だ。こいつに乗れば、どこまでもいける。どんな遠くまでも、さいはてまでも。「線」なんか、どんどん越えて。


     さいはて、という言葉を、「無限の可能性」に言い換えています。とても大胆な転換です。さいはて=ゴールなのですが、それはいつかたどり着けるゴールではなくて、人間が永遠に目指し続けるゴール。原田さんが「さいはて」という言葉を選んだのは見事です。短編にもかかわらず、作品の世界観はどこまでも広がります。広がる世界と吹き渡る風。快感すら覚えるダイナミックな作品です。

    a1130_000239.jpg

     そんな作品に原田さんが乗せたのは、どこまでも前向きなメッセージでした。

    人生の成功者と言われなくても、目の前の50メートルを全力で駆け抜けるのだって、十分気持ちいいじゃないか。まだまだ遠くにあった40歳も、気がつけば目前に迫る。それはそれとして、とりあえず、もう少し。人生を。もっと足掻こう。


     現実は乾いて殺伐としているものですから、こういった考えで生きていくことは大変です。しかし、この作品ではこんな前向きな言葉が自然に受け入れられるのです。大胆で直球なメッセージ。作者の作家としての充実度が伝わってくるようでした。

    すごい冒険



     かといって、大胆で直球なメッセージばかりかというと、そうではありません。繊細で壊れそうな人間模様も描いています。
     
     最初と最後に挟まれた2つの短編は、そういった面が大きいです。窮屈な人間社会に追い込まれた人が、なにもない土地に踏み出します。「人間と自然」が上手く対比されています。窮屈な人間社会と、限界がなくどこまでも続く雄大な自然を印象的に対比させながら、やはり最後は前向きでエネルギッシュな結末が用意されています。

     ここでも、バイクの話で吹いていた「風」が生かされています。風の勢いが他の短編にも影響を与え、作品全体が躍動する感じが圧巻でした。

     短編でありながら、大胆な部分と繊細な部分が絶妙にお互いを引き立てあう。短編でありながら空間的な広がりをもったスケール感。この作者の「冒険心」はすごいですね。終始わくわくしながら読みました。

     初めての短編集でしたが、大当たりだったと思います。次の作品でも作者の「冒険心」が見られるか楽しみです。

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    小説, 原田マハ,



    •   17, 2015 17:32
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