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  • すべてよFになれ 『すべてがFになる』 森博嗣

     21, 2015 23:30

     タイトルの意味が気になり、ずっと読みたかったのですがなかなか手が出せなかった1冊がありました。今日ご紹介する本はこちらです。

    すべてがFになる (講談社文庫)
    森 博嗣
    講談社
    売り上げランキング: 13,468



     森博嗣さんの「すべてがFになる」です。惹きつけるタイトルですよね。「すべてがFになる」とは一体どういうことなのか・・・わくわくします。終盤でその意味が明かされるのですが、そこには期待していた以上の真相が待っていました―。




    これぞ理系ミステリ



     私は典型的な文系人間です。国語や英語は好きで得意なのですが、数学や理科に至っては目も当てられないくらいの惨状で、数式を見るだけで拒絶反応を示してしまうくらいです。この本に手が出しづらかった要因には、そんな「理系」への苦手意識もありました。

     推理作家の我孫子武丸(あびこ・たけまる)さんはこの作品を次のように評しています。

    リアルオーディオよりCOOLでJAVAよりもHOT。ずっと8ビットだったミステリの世界もこれでようやく32ビットになった。最新のブラウザの用意を。



     ・・・??? すごい論評ですね。何を言っているのか、さっぱり分からないです。まあ、言い換えれば、「ミステリーの新境地を開拓している」ということだと思います。1996年の発表とは思えないような、近未来的な設定がなされています。

     舞台は孤島にある研究施設。14歳の時に両親を殺害したとされる天才工学博士、真賀田四季(まがた・しき)が外界との交流を断って閉じこもっている場所です。施設を訪れて博士の部屋に入ろうとした主人公の犀川(さいかわ)と萌絵(もえ)がそこで目撃したのは、両手両足を切断され、ウェディングドレスを身にまとった博士の死体でした。しかもその部屋は密室だったのです・・・。

    謎のメッセージ



     「理系らしさ」が随所に散りばめられた作品だと思います。研究施設はレッドマジックというコンピューターによって完全管理されていました。研究員が暮らし、研究に励んでいるのですが、お互いに顔を合わせることもなく、ネットワークでコミュニケーションを行っています。異様な雰囲気が漂う空間です。

    「私、システムのエラーの方が、殺人事件なんかより、ずっと恐ろしいわ・・・・・・」


     こんなことを言う人の方がよっぽど恐ろしい気もしますが・・・。とにかく、物事には無頓着でシステムやプログラムだけを信用する研究者が集うかなり異質な空間でした。

     乾いて、どこか冷たく見下すような文体でありながら、見せ場の演出はとてもダイナミックです。死体発見の場面や、犀川が真相をひらめく場面、ラストの謎解き場面など、要所要所の演出は見事。例えば、死体を発見する場面です。

    それは、人形ではない。しかし、ゆっくりとこちらに進んでくる。それは、人形ではなかった。「ひっ!」誰かが息を詰まらせる音。「予期しないエラーです」デボラの声が部屋中に響いた
    (中略)人形の顔はこの世のものとは思えない形相だった。それは、人形ではない。生きている人間でもない。ウエディングドレスだけが純白だった。


     無機質なロボットの声が流れる中、目の前に現れる死体。インパクトは抜群、度肝を抜かれる死体登場シーンですね。

     そして、読者の興味をそそるのは、亡くなった博士が残した謎のメッセージです。

     7は孤独
     B、Dは孤独
     すべてがFになる

     私なりに推理してみたのですが、全く分かりませんでした。1つならまだしも、この3つを3つとも結び付けて説明するのは至難の業です。全く全容の見えない謎のメッセージもまた、読者へのインパクトとして、作品の終盤でその謎が明かされるまで物語を引き立てます。

     終盤で明かされるメッセージの回答は、ずっと引っ張ってきた期待を裏切らない鮮やかなものでした。アルファベットにそんな意味があったとは! 文系人間の私にはまったく縁のないものでしたね。ですが、上に挙げた3つのメッセージが見事に収束していくわけですから、十分に楽しむことができます。

     理系要素満載で、難解な用語も多かったのですが、十分に楽しめるお話です。ストーリーにメリハリが効いていることが要因だと思います。緻密に計算されており、陳腐な要素は全くありません。これがデビュー作というのですから驚きです。

    すべてがFになる快感



     無駄のなさ、完成度の高さはタイトルにも凝縮されています。「すべてがFになる」、真相を知った上で改めて見返すと、ほれぼれするくらいに見事なタイトルです。計算しつくされていて、余計な文字が1つもない・・・この「すべてがFになる」快感はぜひ味わっていただきたいと思います。

     事件の真相も衝撃的だったのですが、そのあとに静かに展開されるエピローグが圧巻です。淡々と、粛々と進むのですが、よく読むと恐ろしいことが語られています。

    「死を恐れている人はいません。死に至る生を恐れているのです」
    「そもそも、生きていることとの方が異常なんです」
    「生きていることは、それ自体が病気なんです」
    「たぶん、他の方に殺されたいのね・・・」


     「ある人物」が、自分は自殺をするのではなく、他の人に殺されたいという衝撃のセリフを言い放つ場面です。事件の真相が分かった後で読むと、この発言の恐ろしさも倍増します。

     命は尊い、という当たり前の概念さえ揺るがしてくるこのラスト。「はまりすぎ注意」という感じです。



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    小説, 森博嗣,



    •   21, 2015 23:30
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